読んでみた 第25回 自遊人

しばらく音楽関連書籍ばかり採り上げていた「読んでみた」シリーズですが、今回は一般誌に戻ってみます。
読んでみたのは「自遊人」。
名前はなんとなく知ってましたが、読むのは初めてです。

「自遊人」は隔月発行雑誌である。
買ったのは2008年7月号、630円。
判型はA4、140ページ。
版元は株式会社カラット
申し訳ないが会社名は初めて聞いた。

Jiyuujin

サイトのアオリは「自分のために時間を過ごしたい、ゆとりある大人のために。『自遊人』は旅や食、住、趣味など、オフタイムの楽しみを提案する雑誌です。」となっている。
「自遊人」というフリーダムな書名から、自由に生きる遊び人のためのスカシ系雑誌だと勝手に思っていたが、チカラいっぱい勘違いであることが判明。
アオリだけだとBRIOラピタとあんまし変わらないようにも思えるが、コンセプトはもっと素朴で純粋なもののようだ。

今月号のテーマは「『すし』のいろは。」
実は寿司はかなり好きなほうだ。
もっとも高級な寿司店でお好みを注文などといったセレブな食い方はできないので、いつも回転寿司ですけど。
外で食べる割合としては、回転寿司とカレーとラーメンだったら5:4:0.1くらいである。
なので「自遊人」、パラパラめくってみてうまそうだったので買ってみました。
果たしてどんなうまいネタが登場するのでしょうか。

・・・・・読んでみた。

目次はこんな感じである。

●日本人なら知らないと!
 「すし」のいろは。
●そもそも「江戸前」ってどういう意味?
 「江戸前ずし」の定義。
●「い」 第一部
・江戸前ずし「仕事」ファイル
・すし屋になくてはならない「鮪」の話。
●「ろ」第二部
・進化する江戸前ずし
●「は」第三部
・鮨よ、さらば。
●別冊付録
・主要なタネ全掲載! すしダネ図鑑
●好評連載中!
本物の「食」────森枝卓士
〈新連載〉百年食堂────椎名誠

140ページのうち100ページ以上を寿司に費やしており、雑誌ではあるがかなり当月テーマ一本に絞った編集方針である。
単なる寿司のウンチクだけでなく、東京を中心とした各地の名店を紹介している。
どこも予算のはる名店ばかりだが、ページから受けるイメージにはスカシた印象はほとんどない。
寿司屋でのマナーやしょうゆの付け方なんかも写真で案内するなど、意外に一般受けな編集だが、「こういうお店なら女性もイチコロ(死語)」のような記事は全くない。

江戸前の寿司屋というのはそもそも寿司を食わせる店であって酒など出さず、客もさっさと食って長居はしないのが粋であるとされていた。
しかしながら最近は酒も含めてじっくり味わっていただきます店も増えている。
各店のデータには「酒をゆったり」なのか「すしをささっと」なのかを4段階にわけて紹介する指標がついており、これはわかりやすいと感じた。(でもどっちみちあたしが行けるような店はありませんが・・)

「鮨よさらば」というページはかなり深刻な内容である。
ここ10年、日本の多くの港における漁獲高は軒並み減少傾向にある。
原因はひとつではないが、温暖化や環境破壊による生態系の変動もあり、また漁業従事者の高齢化や後継者不足による絶対数の減少もあるようだ。
加えて安価な輸入モノの氾濫、ニセブランド魚の横行など、シビアな問題がたくさんあるのが実態だ。
ときどき1皿100円の回転寿司で明らかにクスリっぽい味のするネタに出会うことがあるが、こんなものを食って喜んでいる我々消費者がいるため、事態はいっそう深刻なものになっているとも言えそうだ。

記事の中でけっこう驚きだったのが、「寿司で重要なのは鮮度ではなく、締めと熟成である」ということ。
回転寿司店でも生け簀や水槽から魚を引っ張り出して調理する店があるので、新鮮なほうがうまいと単純に考えがちなのだが、そうでもないようなのだ。
どうやって魚を締めるかのほうが重要であり、また締めてすぐ食うよりも寝かしたほうがうまい魚もあるということ。

似たような話として、「マグロは産地が重要なのではなく、どこの港でどう処理されたのかが重要」ということも書いてあった。
日本近海で回遊するマグロは、ある意味どこでもとれる魚とも言えるが、各港の業者がどのような処理を行っているかで価値が全く変わってくるそうだ。
マグロは繊細な魚なので、締める時にストレスがかかると味に非常に影響が出るらしい。
高級マグロを扱う業者の場合、締め方も企業秘密としているとのこと。
一カン千円以上するようなマグロも、なんでそんなに高いのかあまりよくわからなかったが、こういう背景もあっての値段なのね。(どうせ食えませんけど・・)

綴じ込みの別冊付録「すしダネ図鑑」はなかなか優れた内容である。
寿司ネタに使われる魚について、寿司と元の姿の写真が載っており、小学生向けの教材のような感じだ。
寿司は好きだが、ネタについての知識は全然なく、もともとどういう姿の魚なのかもよく知らないままベルト上の皿をつい取ってしまっている。
安い回転寿司のネタが全部ホンモノだとは思っていないけど、元の姿がどんな魚なのかくらいは知ってないと恥ずかしいんでしょうね。

ということでかなり勉強になる内容ではあったが、一方で段組と読む順序が合っておらずどうにも読みにくいレイアウトのページがあったり、記事によっては書体や級数が案外バラバラで落ち着かない印象を受けたりもした。
また表紙は白地に全国の名店の板前さんの写真である。
うーん・・・
ベタな意見なのは承知の上だが、ここはやはり寿司ネタか魚の姿でよかったのでは?
他の雑誌との差別化を意識してのデザインなのかもしれないが、だったらもう少しやり方があっただろうと思う。
各板前さんの全身はとても小さいので、表情もあまりよくわからず、なんだか机の上にフィギュアを並べているような感じなのだ。
これは個人的な感覚だが、上段の板前さんの足の下に、その下の段の板前さんの顔がある構図になっているが、人によっては「オレの頭の上に他のヤツの足があるじゃねえか!」などと不快に思わないだろうか?
そんなココロの狭いことを言うのはあたしだけでしょうか・・・

この雑誌の編集部は新潟県南魚沼市にある。
元は東京の日本橋にあったが、2006年に移転している。
なぜ新潟?と誰もが不思議に思う話だが、会社のサイトに説明があって、おもしろいことが書いてある。
「お米のことがもっと知りたかったから」というのが移転した理由だそうだ。
健康や地球環境などもテーマとして採り上げる雑誌なので、かなりしっかりしたポリシーを持っていると感じる。

そんなわけで読んでみました「自遊人」。
思ったより硬派な雑誌です。
夜の新幹線でクツまで脱いで煮崩れてビール飲みながら読むなんてことはちょっとできないような気がします。
あたしは全く当てはまりませんが、それなりに世間の常識をわきまえた目的意識の高い大人の雑誌だと思います。
バックナンバーには京都や温泉をテーマにした号もあるようなので、読んでみてもいいかなと思いました。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

読んでみた 第24回 プログレッシブ・ロック入門

BLOGを始めて4年半になりますが、もしBLOGをやっていなかったらおそらくなかっただろう出来事がいくつもあります。
多くの方にご指導いただいたこともそうですし、そのうち4人の方とは実際にお会いできました。
またじゃじゃ麺富士宮焼きそばにも出会い、ユリイカに掲載され、ポリス再結成コンサートにも行くこともできました。

そして。
もしBLOGをやっていなかったら、おそらくプログレというジャンルには一生アプローチしないまま死んでいたと思います。
それくらい自分にとっては距離を置いた音楽だったわけです。(そんなの他に山ほどあるけど)
そんなあたしが、最近すっかりナイスなチョイスで有名なM市立図書館でまたも借りてみたのが、「プログレッシブ・ロック入門」。
まさに自分のような万年素人にとって指南書となる本ではないでしょうか。

Nyumon

「プログレッシブ・ロック入門」、編者はロック・クラシック研究会、版元は河出書房新社
定価1,785円、A5判で 208頁。
シリーズとしては「ロック・クラシック入門」てのもあるらしい。

5大バンドを中心としたアーチストの歴史や名盤紹介、業界ではプログレ者として有名な大槻ケンヂや高嶋政宏のインタビューなど、タイトルのとおり全編プログレ紹介の入門書である。
目次はこんな感じ。

1 プログレッシブ・ロックってなに?
 岩本晃市郎インタビュー―プログレッシブ・ロックとはなにか?
 対談・ROLLY VS 難波弘之―プログレッシブ・ロックを語る ほか
2 プログレ5大バンドを制覇せよ
 ピンク・フロイド、エマーソン・レイク&パーマー ほか
3 プログレッシブ・ロックの系譜を知る
 プログレッシブ・ロック盛衰記
 プログレッシブ・ロックをさらに楽しむために―5大バンド以外のプログレ・バンド&代表作40 ほか
4 プログレッシブ・ロックの楽しみ方
 大槻ケンヂ・インタビュー―僕がプログレを聴くのは、音楽の趣味趣向がメインストリームにない自分を確認したいから
 スターレス高嶋(高嶋政宏)インタビュー―プログレッシブ・ロックは僕にとって音楽の本流 ほか

構成としては堅調にプログレ入門を説いた状態である。
本書の使い方としては、一通りの知識を学んだ後、あちこちに掲載される各アルバムのレビューで興味がわいたものから聴いてみればいいはずだ。

自分の好きな情報として「ファミリー・ツリー」がある。
プログレ好きな人にとっては鉄板なものだが、5大バンド全てのツリーが掲載されているのはとても良い。
ただひとつ欲を言えば、ツリーは全て70年代で終わっているので、できれば80年代以降も追ってほしかった。
このあたり「プログレと言えば70年代まで」という編集側の堅いポリシーのようなものを感じます。
あ、それはプログレ者の間ではやはり常識でしょうかね。
80年代のイエスやエイジアなんかは「プログレのアーチストがたわむれにやってみた実験ポップスに過ぎないのさ」みたいなもんでしょうか。(ややヒネています)

大槻ケンヂのエッセイ本はかなり読んでいるが、この人の着眼点と表現力は非凡なものがあるといつも思う。
この本ではインタビューなのだが、プログレ・アーチストのファッションセンスを嗤うくだりは文字通り爆笑である。
「プログレのアーチストって、もうちょっと考えようよってかっこうで来日する」
「クリス・スクワイアがカリブの海賊みたいなかっこうで来日したけど、太っていたのでスタン・ハンセンみたいだった」
など、さすがオーケンならではの表現で笑わせてくれる。
まあ来日時のカッコウが変なのはプログレに限らないとも思いますけど。

高島政宏がプログレ者なのはかすかに知っていた程度だったが、インタビュー記事を読むと半端でないことがわかる。
実際バンド組んでクリムゾンをコピーしたりもやるそうなので、ただの「プログレ好き俳優さん」では収まらないようだ。
変拍子が当然のプログレを好んで聴いてきたので、ミュージカルを演じる時も、他の役者が変拍子に苦労する中、全く違和感なくこなせたそうである。
人生、何が役に立つかわからないもんですね。

他はよくあるレコード・レビューのページ。
当然聴いてないものばかりなので、この情報を頼りに聴いてみる、という便利な本である。
なおボストンやジャーニーやスティクスやELOをプログレに含めるといった大胆な編集方針は、さすがに採用していないようだ。

しかし。
読んでいてふと思ったのだが、この本、果たして本当に入門書として使われることが多いのだろうか?
実際にはすでにかなりの量のプログレを聴いてる人が「ふふーん」とか言いながら自分の知識のスキマをパテやバースコークで埋めるような感覚で読んでみる、といったケースが多いんじゃないだろうか?
そもそもプログレ、「興味はあるけど聴いてない」という自分みたいなド素人はあんましいないわけで、世の中の人は「興味はあって充分聴いてる人」「興味もなく聴いてもいない人」に大別されると思う。
とするとこの本を手にする人の多くは、実は「すでに充分聴いてる人」なのではないか?

なのでプログレ好きな人からすれば、この本の内容はおそらく「やや物足りない」になると思われる。
入門書なので当然だが、それほど深い内容にまで踏み込んでおらず、検定で言えば3級程度なのだろう。
インタビューはおもしろいけど、レコードのレビューなどは「ああ違うんだよなぁ」「わかっとらんな」など解釈が割れたりするんじゃないだろうか?

そんなわけで読んでみました「プログレッシブ・ロック入門」。
自分のような初心者には当然入門書として実に有益な書籍なので、これを機にあらためてプログレの再受講と参りたいところですが、この本については個人的にはむしろプログレに詳しい方の評価を聞いてみたい気がします。
もし読んだ方がおられましたら、感想などお寄せいただければありがたいです。

| | コメント (7) | トラックバック (0)

読んでみた 第23回 ブラック・ナイト リッチー・ブラックモア伝

みなさん、こんばんは。
パープル・ファミリーのもめ事ファンのSYUNJIといいます。
今回そんなあたしにとって、まさに教典とも言うべきナイスでファンキーな本を発見しました。
ブラック・ナイト リッチー・ブラックモア伝」。
もう題名だけで笑いが止まらない、リッチー御大の波乱と闘争といたずらに満ちあふれた半生を綴った幸せの福音書です。
自分でも何を言ってるのかよくわかりません。
あらかじめお断りしておきますが、今日のエントリは終始こんな調子で非常におかしなテンションですので、どうかご了承下さい・・・

Blackmore

ジェリー・ブルームス著、上西園誠訳、416ページの超大作。
はっきり言って重いです。
電車の中で立って片手で読むのは苦痛ですが、御大のためなら耐えられるでしょう。
発行は我らがシンコーミュージック・エンタテイメント、定価2800円。
黒っぽい装丁は読む前からわくわくさせてくれます。
しかも見返しは紫色というベタな演出。
さすがシンコー、スキがありません。

リッチーのステキな悪の教典、実は出版されたことは不覚にも知りませんでした。
図書館の新刊コーナーにふつうに置いてあったのを発見。
おそらく自分が一番乗りで借りています。
もう返すつもりはありません。(ウソです)
いやあM市立図書館のバイヤー(っているのか?)、実にグッジョブなチョイスです。
のびるよ、この子は!!(偉そう)
税金の有効な使い方をよくわかってます。

御大の蛮行狼藉の大ファンを自認するあたしですが、まだまだ知らないエピソードもたくさんあるはずです。
果たしてあたしはリッチー検定に見事合格できるのでしょうか。

・・・・・読んでみた。

生い立ちからアウトローズなどの下積み時代を経て、パープル、レインボー、またパープル、またレインボー、ブラックモアズ・ナイトまでを18章に分けて克明に記録している。
本人へのインタビューが中心ではあるが、時代ごとの関係者や業界人の証言も多数登場しており、相当切り込んだ素晴らしいルポルタージュだ。

結論から言って全編大爆笑である。
3ページに1回くらい笑えます。そんなのあたしだけでしょうけど。
音楽活動におけるリッチーのすごさは今さら説明の必要なんかないだろう。
たくさんの伝説や逸話が紹介されているが、やはり楽しいのは他のミュージシャンとの関係話だ。

たとえばクラプトン
この二人の関係はけっこう微妙だ。
お互い若い頃、リッチー自身はクラプトンの音楽性には大して興味はなかったそうだが、クラプトンはリッチーも同じ日のライブに出演することを知ると、ひどくいらいらしたらしい。
リッチーが一人で全部の客を引きつけてしまい、他のバンドやギタリストはやりにくくてしょうがなかった、ということのようだ。
神様と呼ばれたクラプトンも、リッチーの腕のすごさは脅威に思っていたということだろう。

リッチーのクラプトン評価は意外と厳しく、ヤードバーズやクリームで不動の地位を築いてきたクラプトンについて、「たいがいのパブに行けば、あのくらいの腕のやつはざらにいた」という意見だった。
後にクリームの前座をパープルがつとめた時、リッチーのものすごい演奏がメインのクリームを完全に食ってしまい、クリームはパープルの人気を気に入らずツアー同行からはずしたこともあった。
ただ二人は決して仲が悪かったわけではなく、リッチー36歳の誕生日にはクラプトンからアヒルのおもちゃ(木製)をもらい、数日間はアヒルをひきずって歩くリッチーの姿が見られたそうだ。

たとえばペイジ
この本には残念ながら思ったほどジミー・ペイジの名前は出てこない。
でもリッチーは下積み時代にはペイジのことはむちゃくちゃ意識してて、同じ日のライブにペイジも出演することを知ると、「ジミーが来てる。負けられない!」と言ったらしい。
残念ながらペイジを殴ったりしたことはないようだが、若い頃からライバルとして尊敬していたようだ。

リッチーと言えばいたずら。
実際やられたほうはたまったもんじゃないような度を超したいたずらを、バンドのメンバーやスタッフや一般人にまでしかけてきた、という話がとにかく何度も出てくる。
若い頃は移動中のクルマの窓から小麦粉入りの袋を通行人に命中させることに熱中。(ひでぇ・・)
レインボー時代には新入りのトニー・カレイに、あたかも霊のしわざと思わせる手のこんだいたずらをしかけて結局追い出したり。(ひでぇ・・)
ホテルの壁灯の中にうんこを仕込み、メンバーが夜ホテルに戻ってあかりをつけると、熱でどんどんニオイがひろがってきて、しかけられたメンバーはどこから臭ってくるのかわからず、パニックになってフロントに訴える、といういたずらも。(ひでぇええ・・)
今の人権団体が聞いたら卒倒しそうな御大の華麗なる蛮行の数々、本当に素晴らしいですね。

メンバーとの諍いはいつの時代にもあったようだが、やはりレインボー時代の話が一番おもしろい。
ロニー・ジェイムス・ディオをクビにした後、かつての盟友かつ宿敵のイアン・ギランにレインボー加入を依頼するくだりは本当に爆笑ものである。
リッチーはこの件でわざわざギランの家をたずね、夜も酒を飲みながら話しこんだ。
ギランは「いやあたずねてきてくれるなんてうれしいよリッチー」とけっこう喜んだのだが、リッチー自身はホントにこれがイイ話なのか疑問にも思い、心の中は「くそっ!オレはいったい何をやってるんだ」と葛藤していたのだった。
結局ギランはレインボーには加入はしなかったんですね。
御大の揺れ動く胸中がつぶさに表現された感動秘話だと思う。

デヴィッド・カバーディルとの確執はもっと野蛮で楽しい。
三頭体制の頃、リッチーはカバがことあるごとにマスコミにリッチーやレインボーをけなすような発言をしていたことが許せなかった。
カバがホワイトスネイクのニュー・アルバムについて聞かれると「レインボーよりもいいよ」といった答え方をする、といったことがいちいち気にさわったらしい。
そんなある日、たまたまあるコンサート会場でカバと激突。
ライブが終わったリッチー、通路で女と話し込むカバ発見。
血が上った御大、襟首つかんでつまみだそうとしたがカバは背が高く(爆笑)、二人はもみあいになって廊下に倒れ込む。
「クソ野郎」「死ね」(原文ママ・大爆笑)の罵声が飛び交うすぐそばに、なぜか非常にくつろいでガールフレンドと会話中のクイーンのロジャー・テイラー。(大爆笑)
結局カバはリッチーめがけてパンチを出したところ、止めに入ったプロモーターをぶん殴ってしまった、というエピソード。

このバトルの描写はとにかく笑えるのだが、現場の状況説明で「ロジャー・テイラーとベースの男がいた」というリッチーの証言の表現に、非常にリアルなものを感じた。
おそらく本当にリッチーは著者にそう話したのだろう。
「ベースの男」とはもちろんジョン・ディーコンだが、リッチーにしてみれば印象の薄いジョンの名前が出てこなかったか、本当に知らなかったんだと思う。
訳でもここを「ロジャーとジョン」と直さなかったのは秀逸な編集だ。

巻頭と真ん中あたりに写真ページが少しあるのだが、やはりリッチーって笑顔の写真が少ないですね。
若い頃の写真でもほとんど笑っておらず、いつもこんな表情で道行く人に小麦粉をぶつけていたのだろうか。
怖い・・・

リッチーが実はアバのファンだという話はかなり有名だが、この本にもそれはちゃんと書いてある。
アグネタとのコラボのような企画も話としてはあったそうだ。
パープルやレインボー時代のリッチーだと、アバとのコラボなんてちょっと想像しにくいが、ブラックモアズ・ナイトをもう10年も続けているのを思えば、案外実現しても受けは良かったかもしれない。

著者は本の最後で、宿敵イアン・ギランがもっとも鋭くリッチーという人間を分析していたことを明かしている。
ギランによればリッチーは「とても不安定で心のどこかに壁を作り人と交わるのを嫌う」が、「関わったプロジェクトに対する貢献度の高さ」や「ギターの腕前は誰よりも高い能力を持っている」ことを認めている。
ギランが「煎じ詰めて行き着いた結論」にはうなりました。
「あの男がいなかったら、人生ってやつは退屈になるんじゃないか?」

ということで、大笑いさせてもらった「ブラック・ナイト リッチー・ブラックモア伝」。
これまでビートルズやツェッペリンやクラプトンの伝記本などいろいろ読んできたが、やはりこの本はそれらとはステージが全然違う。
ますます御大のファンになりました。(薄っぺらい・・)
リッチーと著者の名誉のために言っておくが、もちろんリッチーの音楽に対する情熱や演奏技術の素晴らしさもたくさん書いてあるんですよ。(もう遅いよ)
多くの人が音楽も性格も行動も頭髪も「この世の人間とは思えない」という評価をしている、リッチー・ブラックモア。
これを超えるような爆笑本はもう出ないんじゃないかと本気で思います。

| | コメント (8) | トラックバック (0)

読んでみた 第22回 アンディ・サマーズ自伝 ポリス全調書

今回読んでみたのは「アンディ・サマーズ自伝 ポリス全調書」。
日本では先日のポリス来日公演に合わせて出版された、アンディ・サマーズの自伝である。

Andy

公演の日に水道橋駅から東京ドームに向かう途中、書店に山積みされていたのをルドルフさんと見ていたので、出版されたことは知っていた。
値段とページ数にビビって買わなかったのだが、先日図書館に入荷されたのを見つけて早速借りた。
CDの品揃えはイマイチだが、今回の新刊チョイスは偉いよ、M市立図書館。
この調子でもっと音楽関連書籍を充実させておくように。義務。

版元はブルース・インターアクションズ、2500円。
400ページのハードカバーでかなり厚い。
普段安っぽい文庫本とか雑誌ばかり読んでるので、この厚さ重さはかなりこたえるか?と心配だったのだが、電車の中で立って読んでいても思ったより苦痛ではなかった。
内容がよかったからだろう。

版元サイトの紹介ページにはこんなアオリが記されている。

☆ロンドンで名を馳せたバンドマン青春時代とロマンティックな愛の実話。
☆スティングとスチュワート・コープランドとの運命的な出会い。
☆パリで「ロクサーヌ」が生まれた夜、ポリスが警察に連行された日。
☆ウォーホルが書いた「アンディーからアンディーへ」。
☆俳優ジョン・ベルーシと食べた「マジック・マッシュルーム・オムレツ」。
☆「シンクロニシティーII」の"あの音"はローディーの○○○の音?
☆3人がバラバラの心のまま「見つめていたい」が完成した瞬間の感動秘話。
☆そして新しい夢……。

本のタイトルは「アンディ・サマーズ自伝 ポリス全調書」だが、「ポリス全調書」は副題である。
だが表紙や背にある文字級数は副題のほうが倍くらいでかい。
これは日本での販売を考えるとしかたのないことだろう。
「ポリスを知っていてもアンディを知らない」という人もそれなりにいるであろうと版元が判断したためだ。

で、アンディ自伝なので当然アンディの半生を本人が綴るのだが、生い立ちから始まってスティングやスチュアートが登場してポリス結成となるまでに200ページくらいかかっている。
つまり本の半分はポリス以前のアンディ話なのだ。
これは少し意外だった。

アンディはスティングやスチュアートよりも10歳くらい年上であり、二人とは比較にならないキャリアを持ってポリスを結成している。
なのでポリス以前の音楽活動の中で、様々なビッグネームと交友関係を築いていたようだ。
エリック・クラプトンジミ・ヘンドリックスキース・ムーンジョン・ロードロバート・フリップなど、有名なアーチスト名が続々と、しかもさらっと出てくる。
ロバート・フリップとは古い友人でアルバムも共同で作成したことは知っていたが、同じクリムゾンのマイケル・ジャイルズとはかつて同じボーイ・スカウトにいたことがある、とのこと。
この話はもちろんこの本で初めて知ったのだが、クリムゾンのファンにもおそらくあまり知られていないのではないだろうか。

国や人種にもよるだろうが、10歳違うと「同世代」という感覚は共有しづらいと思う。
が、この本を読む限りではアンディは自分よりずっと若い二人のミュージシャンとしての才能を認めていて、自分のキャリアや年齢を押しつけるようなことはしていないように感じた。

ともかくアンディはサイケやヒッピーといったフラワーな文化にモロに影響を受けた世代であり、自伝にもマリファナやコカインやマジック・マッシュルームなどを試したくだりが何度も出てくる。
ジョン・ベルーシとはマジック・マッシュルーム入りオムレツを一緒に食べて幻覚を楽しんだ間柄だそうだ。

やはり興味深かったのはポリスの音楽性についてふれているあたりだ。
その後のスティングのジャズに傾倒したソロ活動の方向性を考えると、どうしてポリスはパンクやレゲエを土台にしたのかがずっと不思議だった。
本当のところスティングはどう思っていたのか、他の二人もパンクやレゲエを本当にやりたかったのか、知りたいと思っていたのだ。
今回この本を読んで、そのあたりの疑問が少しだけ解けたような気がした。
もちろんスティングではなくアンディの考えなのだが。

アンディはパンクというジャンルは自身の方向性とは違うことをはっきりと書いている。
他のパンクなバンドとともにツアーに出て、バスの中でパンク連中が大騒ぎする中、スティングは静かに本なんか読んでいて、はじめはスチュアートもそんなパンクから浮いたポリスがカッコ悪くてイヤだったらしい。

一方でアンディはパンクの持つ音楽性やエネルギーや反骨精神は嫌いではなく、当時の世間を覆うパンクのムーブメントは決して無視できないものだったことも認めている。
なので音楽の要素としてパンクやレゲエは採り入れることはしても、スタイルやファッションには同調しないというスタンスをとったのである。
アンディはレゲエやパンクを土台にしても、スティングの作曲に自らのギターを乗せて「ポリスな音」にしてみせることに絶対の自信を持っていたと思う。
これは土台にプログレやジャズやクラシックを持ってきても同じだろう。

独創的な彼らはあっという間にスーパーバンドに成長。
あちこちのバンドを渡り歩き、浮き沈みの激しい生活を送っていたアンディも、スターとして世界を飛び回ることになる。
だが成功と引き替えに私生活は崩壊し、バンドが人気絶頂の時に離婚を経験する。
これは時期はそれぞれ異なるが他のメンバーもスタッフにも共通した話のようだ。

ポリスが解散するあたりの話はかなり淡泊に書かれている。
アンディ自身の意図なのか編集の都合なのかはわからないが、バンド解散とともにめでたく妻とも復縁し、アンディ的にはハッピーエンドで本は終わっている。

400ページの大作だが、内容がおもしろいので読み終えるのが惜しいくらいだった。
本当にアンディが書いた原語を翻訳したものという前提での話だが、翻訳としても非常に優れた文章で、臨場感にあふれた描写が多い。
新刊なのに書体や紙質がちょっと古くさいのだが、慣れると結構味わい深いものに思えた。
ただし誤字脱字は案外多い。
まあ400ページもあればしかたがないし、なにしろ日本公演前には店頭に並べなければならなかったのだから、編集や印刷もすんごいタイトなスケジュールだったのかもしれない。

そんなわけで読んでみました「アンディ・サマーズ自伝」。
もちろんポリスを知らなければ楽しめない内容ですが、これまで読んだ様々なアーチスト本の中でも上位にランクしたいと感じました。
最後に、最も印象に残ったチカラのある一文をご紹介して、終わりにしたいと思います。

「ポリスは僕の夢のひとつでしかない。ひとつだけ確かなことは、僕には音楽があるということ。」

| | コメント (7) | トラックバック (0)

読んでみた 第21回 Newton

今回読んでみたのは科学雑誌「Newton」。
1981年創刊だが、まともに読むのは今回初めてである。

創刊当時の宣伝はわりと記憶に残っている。
ふんだんにイラストを使った新しい科学雑誌としてかなり派手に宣伝していたと思う。
元東大教授で物理学者の竹内均先生が編集長だった。
進化の過程や宇宙の神秘を説くイラストが印象に残っている。
ただ当時は科学にはそれほど強い興味はなく、音楽や女の子ばかり追っていたので、読んだことはなかった。

Newton

今回読んでみたのは4月号、1000円。
書店にどっさり平積みになっていたことにまず驚いたが、価格にもっと驚いた。
140ページ程度でこの値段。高い・・・
版元はニュートンプレス社、発行部数は28万部。
この部数は「SPA!」や「サライ」よりも多い。
実売は不明だが、テーマが科学という学術雑誌なのに、かなりの部数だと思う。
今さらだが何もかも驚きの連続である。
中身も驚きの連続なんだろうか。

・・・・・読んでみた。

今月号の目次はこんな感じである。

・地球の生物を支えている光合成
 CO2を吸収し,太陽光と水を使って「合成」するしくみとは?
・“偵察機”が見た火星
 史上最高画質のデータが続々と到着
・リサイクルは有効か?
 環境への負荷はこれだけかわる
・人はなぜ確率に弱いのか?
 直感と計算の「ズレ」にせまる
・「天からの手紙」を立体的に見る
 電子顕微鏡がとらえた雪の結晶
・身近な“?”の科学
 フグと毒
・メディカル・トピックス
 食品に混入した農薬「メタミドホス」の正体

巻頭特集の光合成からお得意のイラストが全開である。
CGかとも思える精巧な絵だが、おそらくは手で描いたものだ。
しかも特集ページ全てがどかーんと見開きイラストである。
雑誌ではあるが、ノリは子供向け学習図鑑に近い。
実際文章の漢字にはところどころルビがふられていて、小学生から大人まで幅広く科学してみよう!という熱い編集側のテンションがにじみでている誌面である。

光合成なんて文字にふれるのも高校生の頃以来だが、説明そのものよりもイラストのゴージャスさにどうしても目を奪われますな。
はっきり言って光合成そのもののしくみはほとんどアタマに入りません。
あたしがバカなだけでしょうけど、器が豪華すぎて味がわかんない高級料亭の料理に似ています。

実はもっと驚いたのが次の特集ページ「“偵察機”が見た火星」である。
NASAの火星探査機が撮影した火星の地形表面の写真が、これまた見開きでどおおーんと16ページにわたって掲載されている。
しかもその写真が非常に鮮やかで、縮尺も1/2500くらいの寄りなのである。
もし火星の地表面にぷく先輩が寝ていたら、じゅうぶん識別できるくらいの距離です。(ホントかよ)

火星と言えば、子供の頃見た学習図鑑なんかには、荒廃した赤っぽい砂山の想像図くらいしか載ってなかったように思うんだが、この写真は「南米の特殊な地形です」なんて言われても信じてしまうくらい、リアルに地球っぽいのだ。
可視色のままではないと思うが、地表面の色も非常にバラエティに富んでいる。
こんな写真はネットでいくらでも見られるんだろうけど、「Newton」で見るとやはり迫力がある。

「リサイクルは有効か?」という記事も、「Newton」ならではの科学な視点でリサイクルを分析している。
最近製紙業界でも再生紙偽装が問題になったが、古紙を再生する場合、インクの除去にかなり負荷がかかり、しかも新紙のような白さや品質にはなかなか到達できないものらしい。
結局エネルギー換算では古紙からの再生のほうが多くのエネルギーを必要とするため、再生紙が地球にやさしいと言い切れるものではないそうだ。
この記事では「リサイクル(再生)よりもリユース(再使用)、それよりもリデュース(抑制)」と結論づけている。
これがどんな状況にも当てはまるかどうかはわからないが、この問題は混沌とするばかりである。

どんな雑誌でもそうだが、やはり興味のあるテーマとそうでない記事では、理解度や楽しみ度合いが違ってくる。
「Newton」はもともとほとんど興味のわかない科学という分野の雑誌なので、正直おもしろくない・理解できない記事も半分くらいあった。
メタミドホスの話も当然科学としての考証が書かれており、週刊ポストとは明らかに論調が違う。(当然か)
難しくて興味のない記事も我慢して読んだが、眠いし苦痛だった。
全ページ理解できてる小学生がいたとしたら大したものだと純粋に思う。

体裁面はどうだろうか。
長年こうしたテンションで誌面を作ってきただけあって、レイアウトや文字組みのデザインは見事である。
イラストや写真の上に文字を「乗せる」ページが多いが、この処理は全くスキがない。
編集がずさんな雑誌だと、写真と文字の色調に配慮がなく読みづらい部分があるが、「Newton」にはそれがない。

書体や級数はページによって違うが、ゴシックで比較的大きめの文字が多い。
個人的にはルビがややくどい気はしたが、小学生には必要なのだろう。
「Newton」の光合成特集を熱心にルビ追って読む小学生ってのもスゴイと思うけど。

表紙は独特の赤い色にでかいロゴ。
公式サイトでバックナンバーを見ると1998年もデザインはほぼ同じ。
たぶんそれ以前からもずっとこの表紙だろう。
悪くはないが、変えてみてもいいような気もする。

感想。
もっとトンデモなテンションで難しいことがたくさん書いてあるのかと思ってましたが、中身はけっこう直球です。
まあ全ての記事に興味がわいたわけではなかったので、読んでいて退屈だったページも半分くらいありましたが、これは雑誌の内容の批判ではなく、自分の好みの問題ですね。

このページ数で1000円は直感的に高いと思うが、広告も少ないしイラストや写真に編集経費がかかってる背景もあろうかと察するので、まあいたしかたないかも。
ただ毎月買うのは勇気がいる値段です。

そんなわけで読んでみた「Newton」。
イラストや写真は見応え充分ですが、いかんせん偏差値の低い自分にとっては、ハードルが案外高い雑誌です。
突っ込もうにも難しくてどうしていいかわからないというか・・
偶然いっしょにカラオケ行くことになって、普段から謹厳実直なのでいったいどんな曲歌うのかな?と少し期待していたら、「わたしのぉおおおはかのぉまああえでぇえぇぇなかないでぇくださあいいいいぃい」とものすごく上手に歌い始めちゃって、誰も突っ込めなかった大学助教授・・・のような感じ。
こんなの歌われたら、もういっしょにカラオケ行くこともないだろうな・・と思わせるような、知性教養に満ち満ちた雑誌でした。

| | コメント (8) | トラックバック (0)

読んでみた 第20回 編集会議

今回読んでみたのは「編集会議」。
雑誌や書籍やWEBで編集を担当する人たちをターゲットにした月刊誌である。
自分も一応出版社で働く編集くずれのサラリーマンですけど、実はこの雑誌は全く読んだことがなかった。
新宿のブックファーストで雑誌を物色中、平積みになっていたので買ってみました。

買ったのは2月号、880円。
版元は「宣伝会議」という名の会社である。
判型はA4、146ページ。

出版社の編集者なんてかなり特殊な職種だと思うので、この雑誌も一般向けではないことだけはわかる。
が、そんな雑誌が書店にふつうに平積みというのはちょっと驚きである。
ブックファーストだとそんなに売れるんだろうか。
でも「いったい誰が読んでるんだよ」と不思議に思う雑誌が、書店やコンビニに結構並んでたりしますけど。
この雑誌であたしは果たして実りある会議に参加できるのでしょうか。

・・・・・読んでみた。

今月号の目次は以下のような内容である。

・巻頭インタビュー:8年目の告白 伊坂幸太郎
・特集:タレント本 裏側の攻防
・特集:転職して編集者になる!
・新編集長紹介
 『日経ヘルス プルミエ』編集長 西沢邦浩氏
 『L25』編集長 内田正剛氏
・好評連載
 編集者のための「校正・校閲講座」vol.4
 入門「編集塾」最終回

特集の「タレント本 裏側の攻防」では、藤原紀香・神田うの・小池栄子といった、最近結婚と同時に本も出したタレントと編集者との、出版に至る過程の苦労話が紹介されている。
どれも突然の結婚発表に合わせて同時出版というインパクトな戦略なので、事前の広告にも「結婚します」ということも書けず、秘密裏に進行せねばならなかったことが共通している。
しかも相手はそもそも執筆が本業でないタレントさん。
ただでさえ時間がない中でタレントをおだててやる気にさせたり徹夜で校正したりテープ起こしたり取次にダミー渡したり・・という、涙なくして語れない編集者の苦労が紙面からにじみ出ている。

だが。
自分にタレント本を手がけた実体験がないので、残念ながら共感は全くできなかった。
ある編集者が「全員寝ないで校了日をむかえた時は本当に感動しました」などと書いているが、申し訳ないがなんだか脱力してしまった。
自分はこういう業界特有の古くさいノリは実はとても苦手なのである。

「藤原紀香はゲラにアカイレをびっしり書いてきた」という点にだけはちょっと驚いた。
タレントさんの中には全部ゴーストに書かせて出版まで全然見ない、という方もいるそうですが、紀香さんは全く違うみたいです。
その昔松本伊代ちゃんがまだ10代のアイドルだった頃、自分の著書発売をテレビ番組で宣伝した時、実に屈託のない顔で「私まだ読んでないんですけどぉ」と言ってしまった、という話がありました・・・

もうひとつの特集は編集者に転職してきた人たちの話。
やはり編集者って職業は、やりたい人はホントにものすごい情熱持ってやりに来るんですよね。
だいたいが「日程きつくて職場汚くて本売れなくて恋人作れなくて」というような状態のはずなのだが、「それでもやりたいから!」といっていろんなヒトがスキマにもぐりこんでくるような、そんな職種です。
でもって業界自体が小さいからそんなに求人もないし、その割に異業種から転職してくる人も多いし、変な業界ですね。

「新編集長紹介」のページでは、記事内容よりも編集部の写真に目が行ってしまった。
どうしてヨソの会社は会議室がみんなキレイなんだろうか・・・
こういうキレイな会議室で打ち合わせすれば、さぞかしナイスな企画がどっかんどっかん出るんだろうなぁ・・・などと己の企画力のなさを屋根までぶん投げてそんなことを考えました。

さて体裁面はどうだろうか。
例によって誤字誤植脱字なんか探してみたのだが、さすがは編集会議、そんなものは見あたりません。
編集者のための「校正・校閲講座」という連載まであるくらいだから、それは当然でしょう。
1カ所だけ「、」が二重打ちになっていたところがありましたが、、、、

気になったのは、その『編集者のための「校正・校閲講座」』のページなんだが、地色にグレーを入れているところ。
しかも書体は細い明朝である。
このデザインは少しおかしくないか?
自分が老眼なだけかもしれんが、正直読みづらい。
校閲を説くページデザインがそれでいいのかね、とやや意地悪な感想を抱いてしまった。

もっとおかしいと思ったのは表紙。
このデザインは何?
全面黄色に書名よりでかい記事見出「伊坂幸太郎 8年目の告白」。
しかもこの記事って、巻頭インタビューだけど13ページで、他の特集記事よりページ数は少なかったりする。
なんか理由があってこうなってるのかなぁ?
あとタレント本特集があるので表紙にもその見出とイラストがあるのだが、イラストがチカラいっぱい昭和。
このセンスはどうしちゃったんだろう・・・

手にとった時から「変な表紙だなぁ・・」と思っていたのだが、全部読んでみていっそう強く感じた。
本文のページデザインやレイアウトは全く問題ないからである。(むしろイイ感じだ)
バックナンバーをまだ調べていないので、たまたま今月号だけヘンなのかもしれないけど、「編集会議」でこの表紙はちょっと・・・という感じです。

この雑誌、広告は非常に少ない。
しかも出版や編集に関連する業界のものばかりで、他業界では表4(裏表紙)にサプリメントの広告があるくらいだ。
クルマとかスーツとか化粧品とか幸せを呼ぶネックレスとか恋人ができるペンダントとか、よその雑誌ではどかどか出てくる広告ページは全然ない。
読んでてこの点はラクでいい。

感想。
率直に言って、自分にはあまり楽しめない雑誌だと感じた。
業界誌のようなものなのだが、それが故にどこかなじめないというか・・・
気のせいかもしれないけど、「美しく素晴らしい業界で楽しく働く編集者」を強調しすぎなんじゃないだろうか。
どこの業界でもそうだと思うけど、本当はもっと業の深いどろどろな世界なのに・・・(本当か?)
まあ編集者本人だけでなく、それを目指してがんばってる人もターゲットにしてると思うから、あまり悲惨な話オンパレード(死語)な紙面だとよろしくないんでしょうね。
個人的にはそーいう猥雑で陰惨な裏事情系記事のほうが圧倒的に好きなんですが。

というわけで、「編集会議」。
中途半端にからんでる業界の話なので、なんつうか終始座りの悪さを覚えました。
全然知らない業界雑誌のほうが、驚きや感動や発見も多かったのかもしれない。
まあやはり雑誌は趣味で読むものを選ぶべきだったんですね。
仕事にからんでくるとどうしても楽しくならないというか・・・
次回は自分には全く関係のない雑誌をチョイスしたいと思います。

| | コメント (14) | トラックバック (0)

読んでみた 第19回 コミック・ガンボ

読んでみたシリーズとしては初めてですが、フリーペーパーを採り上げてみます。
ご存じの方も多いと思うが、コミック・ガンボ
漫画週刊誌としてはおそらく初めてのフリーペーパーである。
創刊は今年の1月、価格は当然0円。
創刊当時は首都圏の主要ターミナル駅前での配布のみというスタイルをとっていた。
いつかもらいに行こう行こうと思いつつ、なかなかその機会もなく過ぎてしまったが、今日ようやく手にすることができた。
実はもらいに行ったわけではなく、電車の中で拾ったんですけど。

漫画雑誌そのものの売り上げ実績がどれも落ち込んでいるご時世に、あえてフリーで配布というスタイルで打って出たコミック・ガンボ。
一般読者としてより、業界の人間として非常に興味のある話である。
フリーペーパーということは、ふつうの漫画雑誌とは違って取次や書店への流通コストはかからない、ということになる。
通常の雑誌流通ルートで全国の隅々まで行き渡らせることができない代わりに、確実に需要のある大都市圏の駅前での配布を行うことで部数をさばくという方法をとっているわけだ。

理屈はともかく、漫画雑誌なんだから大事なのは中身であることは言うまでもない。
その中身、果たしてどんな漫画が載っているのだろうか。

・・・・・読んでみた。

今回読んでみたのはNo.40
自分が知っている漫画家は江川達也とすがやみつるだけだった。
どの漫画も連載の途中を1回分見ただけなので、話のおもしろさがきちんとわかる状況ではないのだが・・
微妙な感覚ではあるが、思っていたほど品質は悪くはないと思う。
フリーペーパーなんであまり期待もしていなかったのだが、絵に関して言えば一定のレベルの作家は揃えてあるようだ。
漫画雑誌でもチカラのない雑誌になると、ガサツで粗悪な作品ばっかし、ということもよくある。
でも「こんなんで売れてんのかなぁ」と思うような雑誌が、毎週ちゃんと書店やコンビニに置いてあるから不思議だ。

しかしだ。
コミック・ガンボ、フリーペーパーだからこの水準でもまあいいかということになるだけで、純粋に漫画雑誌としてどうか?と問われれば、品質としてはやや厳しいところだと思う。
率直な感想として、残念だが続きを読みたいと思わせる漫画がない。
江川達也は漱石の「坊ちゃん」を連載しているのだが、今回読んだ範囲で言えば、全くダメだ。
つまらないというか、かなり痛い。
江川達也はクセのある作品が多いが、決して嫌いな作家ではない。
が、今回の作品(1話だけですけど)は自分にはおもしろいとは思えなかった。

すがやみつるはあの「ゲームセンターあらし」の成人版?の「サラリーマントレーダーあらし」という作品を連載している。
あらしが成長して証券マンになっている設定なのだが、ノリがやはり昭和テイストで少し痛い。

「ターゲットは30代40代の男性ビジネスマン」らしいが、この世代は生まれた時からすでに漫画雑誌が数多くあり、テレビアニメもやたら見て育ってきたはずだ。
漫画について最も目の肥えた世代に対し、この内容で読んでもらおう、読み続けてもらおう・・というのはかなり厳しい話じゃないだろうか。
たとえばこの内容で定価150円でもいいから書店においてみたら・・と考えればすぐわかる。
おそらく売り上げはヤングジャンプやモーニングには遠く及ばないはずである。
フリーだから読んでるヒトも多いだろうし、駅前で配布してもどんどん持っていってくれるのは、タダということを知っててもらうからだ。
版元側がこれを「多くの人に支持されている」と考えていたりしたら、ちょっとマズイかもしれない。

「タダなんだからそんなにチカラのある作家は集められない」というなら、出版した意味がない。
この内容で広告がいったいいつまで集められるのか、気になるところだ。
広告に法律事務所がいくつかあるのもなんとなく気になるけど。
全体を読んで感じるのだが、もう少しインパクトのある作品がほしいと思う。

漫画雑誌ではないが、その点同じフリーの「R25」は真剣に脅威だ。
明確に目的意識を持って「取りにいく」人がかなり多いところまで来てしまっているからだ。
内容は薄いが、次も読もうと思わせる作りになっていて、実際そのとおりだと思う。

コミック・ガンボを手にとってページをめくるとすぐにわかるのだが、紙がふつうの漫画週刊誌よりも薄い。
かといって感触が悪いわけではなく、むしろ表面はきめが細かく印刷もきれいだと思う。
少年誌などはかなり目の粗い紙を使っていて、インクの乗りも悪くて時間が経つと裏写りするようなこともあるのだが、それに比べるとコミック・ガンボはいい紙を使っていると思う。
実際の紙の種類は正確にはわからないので、ふつうの漫画雑誌とコストの面でどう違うのか、知りたいところだ。

コミック・ガンボはサイトでも漫画が読めるようになっている。
バックナンバーもあって「見逃しても大丈夫」ということだが、ノートパソコンで見ると若干判型が小さく、文字が読みづらいが、拡大も一応できるので、それほど問題ではない。
こうした試みはおもしろいし便利だ。
もちろんふつうの漫画雑誌はサイト上で作品を無料公開とはいかないだろうけど、雑誌のあり方を考える上で意味のある実験だと思う。

というわけで、コミック・ガンボ。
漫画週刊誌でフリーペーパーという新しい出版方法は、業界のしくみを考え直す形で一石を投じていると思う。
あとは漫画の品質をどう向上させて採算や利益を維持するかだ。
もちろんこんな形での出版で内容がむちゃくちゃおもしろかったら、既存の漫画週刊誌にとっては非常に脅威なんですけど。
自分としてはいろいろ考えさせられる雑誌なので、シンから楽しめなかったのかもしれません。
あと「コミック・ガンボ」という名前は、ちょっとセンスがいまいちではないかと思いました・・・

| | コメント (9) | トラックバック (0)

読んでみた 第18回 dancyu

全日本地方都市限定グルメ評論家友の会関東事務局のSYUNJIといいます。(デタラメ)
先日のじゃじゃ麺探訪以来にわかにBLOGの方向性が大きく変わりそうな予感ですが、実際自分は食には大して興味はありません。
なにしろ成人男子としては驚くほど食が細い自分。
さすがに中年になって周りからとやかく言われることもなくなりましたが、若い頃はあまりの食べなさぶりに上司や取引先からは決まって「何遠慮してるんだよ」「カラダの調子悪いのか」と言われたもんです。
これが結構つらいもので、どんなに「遠慮じゃなくてホントに食べられません」と主張しても、あまり信じてもらえませんでした。

加えて自分、酒をいっさい飲まないのですが、これも若い頃は異星人のように扱われました。
昭和のサラリーマンにとって、「食べない・酒飲まない」ヤツってのは、存在自体が信じられないことだったのでしょう。
「酒は飲めない」と言っても「じゃあ焼酎なら飲めるだろう」と真顔で上司から言われた時はキレてしまいました。(若い)
めんどくせーので「宗教上の理由」とか言ったろかとも思いましたが、それは宗教に失礼なんでやめました。
とりあえず、自分にとって昔から酒全般は青汁と同じです。(アルコールの味がダメ)

前置き長くなりましたが、そんな飲食に無関心な自分が今回読んでみたのは、あろうことか「dancyu」。
もちろん読んだこともなく、手にとることすら初めてでした。
お料理すらできないのに、いったい何を考えているんでしょうか。
もはや音楽評論では食っていけなくなった三流ライターが、編集部の提案でグルメ記事にも手を出さざるを得なくなったような有様。
そこには一流編集者ルドルフさんのご指導と、ぷく先輩の圧力があったのでございます。(誇張)
例の富士宮やきそばが掲載されているとの情報がルドルフさんから寄せられ、翌日買いに行きました。(単純)

Dancyu20071000

買ったのは10月号、860円。
判型はA4判か?
版元は普段から縁のないプレジデント社である。

「dancyu」とは「男子厨房に入るべからず」という言葉を逆説的に表したもので、「男子どんどん厨房に入りましょう」という男性向けお料理お誘い雑誌である。
食にも酒にも興味のないあたしは果たして厨房に入ることができるのでしょうか。

・・・・・読んでみた。

今月号の目次はこんな感じである。

特集/ おいしいチャーハンが食べたい!
・感動の「福臨門酒家」と「大宝」。その真髄に迫る
 最高のチャーハン「必殺技」大公開
・金華ハム、干しナマコと具材も華やかな“五目チャーハン”の最高峰
 きみは本物の「揚州炒飯」を食べたか!
・玉子の生かし方次第で、かくも旨くなるものなのか!
 わが家の「たまご炒飯」を究めるぞ 文・北吉洋一
特集/ ニッポン縦断「ソース焼きそば」の旅
 三大“ご当地焼きそば”の魅力に迫る
 焼きそば「三国同麺」のおいしい愛され方
 富士宮・横手・太田
地元民なら誰でも知っている“ふるさとの味”
 わが町に「焼きそば」ソウルフードあり
進化する雲上の美食
 「機内食」コレクション2007
厳選「取り寄せ」カタログ 第199回 ── 青森県の旨いもの
台所の時間 70  中華包丁

その名から勝手に勘違いしていたのだが、お料理作るぜコノヤロというだけの雑誌じゃないんですね。
今回の特集のように全国のチャーハンの名店紹介やご当地やきそばなど、「作る」のではなく「食べる」側としての記事が半分以上ある。
全ページレシピや食材や調理器具の紹介かと思ってましたが、そこまで合羽橋な雑誌ではないようです。

ただしそこは「dancyu」なので、チャーハンの名店紹介でも単純にメニューだけの内容ではなく、ちゃんと各店の調理工程が掲載されている。
自分のような素人でも記事はなかなかおもしろい。
なにより写真がどれもうまそうである。

さて特集のチャーハン。
チャーハンすらまともに作ったことのない自分だが、各店で作り方がそれぞれ違うのはけっこう驚きだった。
チャーハンの卵って、ごはんにかけて炒めます?それとも先に卵で後からごはん?
またごはんは冷やごはんですか?それとも炊き立て?
これ、正解はないようで、各店で(メニューにもよるのか?)やり方が違っていて、いずれの方法もあるようなのだ。
あ、決して「どれでもOK」というわけではなく、それぞれの店の料理人がきちんとメニューとして考えての話ですね。
今回「家庭で作る場合」として紹介されている方法では、先にごはん(暖かいヤツ)で後から卵をかけるやり方である。
うちの嫁さんはどうやってたっけ・・・?

続いて今回の目玉企画(死語)、ご当地焼きそば特集!!ぷっきー大感激!!きぃー!!(なぜ?)
こっちの記事では詳細な調理方法までは載っていないが、皿に盛られた各地の焼きそば写真はどれも食欲をそそるに充分な臨場感である。
富士宮焼きそばの特徴としては「麺は硬め、具は肉カス、仕上げに鰯の粉末」だそうです。
ぷく先輩、合ってます?
しかも「日本一有名」とまで書いてある。
すいません、全然知りませんでした・・・

焼きそばなのでどこも気取った店ではなく、本当に地元で愛される飾り気のない店が多いようだ。
焼きそば専門店だけでなく、喫茶店やスナックや駄菓子屋でも出している店が多いらしい。
このあたりは宇都宮餃子のようなテンションとは少し違うのかもしれない。
見た目は確かにうまそうだが、やはりこれは食べてみないことにはわかりませんね。
じゃじゃ麺も味は想像していたのとは少し違ってたし。

なお横手焼きそばは「甘口ソースと柔らか麺に目玉焼き」、太田は「一店一味。同じ味は一つもない」だそうです。
どちらも全然知りませんでした。
いずれのご当地やきそばも、都内で食べることはなんとかできそうだが、専門店ではなく居酒屋のメニューのひとつとして出してるような感じだそうです。
これはやはり富士宮までロケに出かけねばなるまい。
あ、「ぷくちゃんと行く秋の富士宮焼きそばオフ会」っての、どうです?みなさん!(ツアコン?)

そのご当地焼きそば特集に続く「地元民なら誰でも知っている“ふるさとの味”」というページに、「ソース焼きそばにトマトソースをかける?」というタイトルで、新潟のイタリアン焼きそばが紹介されている。
自分はこのイタリアンを以前テレビで見て知ってはいたが、それでもやはり驚いた。
趣味の範囲でそうやって食べる人がいるかもしれないよねレベルの話ではなく、新潟界隈ではイタリアン焼きそばは定番のメニューとして通用しているらしい。
正直あんましうまそうとは思えないんですけど、どうなんでしょうか?

食に興味のない自分だけど、あたし的にご当地モノとしてちょっとだけみなさんに驚いてほしいなと思うのは、北海道の赤飯である。
ふつう赤飯というのは小豆と一緒にもち米を炊くからあの色になるのだが、北海道では米を炊く前に食紅で色を付けるのである。
なので色を忠実に表現するなら「ピンク飯」だ。
しかも入っている豆は小豆ではなく、甘納豆である。(この甘納豆は金時豆のことで、和菓子の甘納豆とは全く別モノです)
大きさは小豆の3倍くらいあるだろう。
こんな北海道赤飯を弁当に持っていくと、周りの人はまず驚くのだ。
色はピンク、しかもでかい甘納豆がごろごろ。
自分も妻も関東育ちだが、偶然にもお互い両親は北海道の人間で、赤飯を作るのに全く衝突もなく、今でもこのピンク飯を食っている。
味は豆のせいでだいぶ甘いんですけど、ごま塩をかけてちょうどいい感じになります。
興味のある方は北海道出身の人に作ってもらって下さい。

さて雑誌全体の感想。
記事の見出しが意外に高いテンションである。
「きみは本物の「揚州炒飯」を食べたか!」とか、「わが家の「たまご炒飯」を究めるぞ」「タイ式炒飯・カオパットも楽しいぞ」など、語りかけ口調はどこか「ビッグ・トゥモロウ」を思わせる。
まあ許容の範疇なんだが、あんましくどいと読むのがつらくなるだろうなぁ。

お料理雑誌なので写真が非常に重要だ。
当然それに精通したカメラマンや編集スタッフが起用されているのだろう。
構図やピントの合わせ方、明るさや立体感の出し方など、さすが食の雑誌だけあって実に見事である。
また書体やレイアウトなど、編集の基礎的な部分には全く隙がない。
しかも全ページオールカラー、コート紙。
こういう点は非常に評価したいところである。

ページ数は150程度なので、軽いし持ち歩くには便利だが、このボリュームで860円てのは適正なんだろうか?
値段のわりに物足りないという批判もあるかもしれない・・とこっちがやや不安。
まあプレジデント社だし、1000円以下の雑誌にグダグダ言う貧乏人はハナから相手にしてないとは思いますが。

雑誌につきものの広告だが、飲食関連ものが多いのは当然だが、広告ページ量はそれほど多くない気がする。
今月号の表4(裏表紙)はクルマの広告である。
少し意外です。

そんなわけで、初めて読んでみました「dancyu」。
思ったよりもずっと一般向けで、結構おもしろかったです。
塩ラーメン特集でも組まれたら、ぜひ買ってみようと思います。
(難しいかな・・・)

| | コメント (13) | トラックバック (0)

読んでみた 第17回 ランティエ

男性誌をめぐる旅人のSYUNJIです。
出版不況のさなか、どこの版元も男性誌には苦労してると思いますが、40代50代の大半のオトコって、おうちのローンだの子供の学費だのクルマの保険だの知り合いの連帯保証人だの尿管結石だので、基本的に金持ってないんだよね。
そういう境遇にある人たちに雑誌を買わせるってのも、そう簡単ではありません。

そんな男性誌業界にあって、やや異彩を放つ雑誌を発見しました。
それは「ランティエ」。
今回初めてその存在を知った月刊誌である。

Rentier

キャッチは「40~50代男性向けライフスタイル提案誌」。
これだけだと「ゲーテ」とか「BRIO」なんかと同じような気がしますが、もう少し詳しいコンセプトがあります。
「読み物・ファッション・芸術・ライフスタイルなど、「和」をベースにしながら幅広く特集を展開。日本の風土・伝統・美意識を読者に伝承する雑誌を目指しています。」とのこと。
中年向け雑誌といえば精力剤やカツラやリーチ麻雀店の広告イメージしか思い浮かばない自分ですが、この雑誌はどうやらそういう路線ではなさそうです。

発売元は角川春樹事務所
この会社、角川書店とは関係ないそうだ。
今回読んでみた9月号は880円。
判型はA4、総ページ数は154。
和をベースに展開すると宣言してるだけあって、表紙には「9月号」ではなく「長月」なんて書いてある。
書名としては正確には「ランティエ。」だそうです。
果たしてあたしはこの雑誌に自分の居場所を見つけることができるでしょうか。

・・・・・読んでみた。

今月号の見出しはこんな感じである。

■夏、魂が蘇る 熊野詣で。
 熊野山三/那智/本宮、新宮
■特集
 美味しい「冷麺」を教えます。
 各界の食通達が食す「とっておきの一品」
■「鳥居」
にっぽんの情景/カミの居る場所
■晩夏光
フォーマルを着回し、夏の終わりの「夜美」となる

和テイストの雑誌だけあって、見出しなどに明朝でもゴシックでもない独特の書体を使っており、このあたりのセンスはなかなか良い。
熊野や鳥居の特集記事も、写真が中心であまり細かい説明はなく、情景が伝わる誌面である。
こうした日本の伝統にはそれほど興味はないのだが、熊野にまつわる歴史上の人物紹介や、原田芳雄の熊野詣でのエッセイなど、意外におもしろい。

「賢人放談」というやや鼻につくタイトルの連載コラムも、勝谷誠彦や安部譲二などスジ者の文章は鋭くて読み応えはある。
堤堯の小沢一郎に関するコラムなんて、まるで文春か日刊ゲンダイのような切り込み方である。

また本誌とは別に、付録のような形で「ランティエ。文庫」という名の小冊子がはさまれており、北方謙三や山本一力の連載小説が掲載されている。
これだけはずして電車の中ででも読んでちょうだいってな企画なのだろうか。

特集の冷麺も、いわゆる焼き肉屋で出てくる冷麺だけでなく、ざる蕎麦や冷やしラーメンなども紹介してあり、これも思ったほどおっさんくさい内容ではない。
なので単に和風をおだやかに紹介する爺さん雑誌というわけではなく、それなりに硬軟のメリハリは考えての編集のようだ。

しかしだ。
読み進んでいくうちに、どこかバランスの崩れを感じるページが増えていく。
「晩夏光」というページはジャケットや靴の広告特集であり、例によってスーツとベストで126,000円とかフザケた値段が書いてあり、見せ方が多少違うだけでやってることは他の男性誌と同じである。
版元の都合なんだろうが、この雑誌のコンセプトからすれば、せめて和服や草履の広告であるべきだろう。
せっかくいい感じで編集してきているのに、やっぱりこんなページがあるのは残念である。

ページをめくるうちにおかしさ加減は加速していく。
巻末には読者プレゼントのページがあるが、今月号は「春樹先生より5名様に特製名入り柳刃包丁」である。
モノは確かにいいんだろうけど、春樹先生から包丁もらうってのも・・・
先生もそんなことはちゃーんとわかっていて、「危険な漢(おとこ)からの、夏のお中元」などと書いてある。
しかも先生の写真はグラサン姿。
危険なオトコ春樹先生、ウィキペディアによれば服役中はいじめられてたという話ですけど・・・

もっともイカレてると感じたのが、占いのページ。
タイトルが「星の縁起」ってのは大丈夫なのだろうか。
男性誌の占いページなんぞ真に受ける人もあまりいないだろうが、この占いもそれをいいことに言ってることはかなり乱暴である。
蟹座の恋愛運なんていきなり「思いがけぬ妊娠に遭遇しやすい。」などと書いてあるが、結びは「恋探しは盛り場でナンパで収穫あり」。
イケてるんだかダサいんだか全然わからない表現ですが、まあがんばってみてよ、蟹座の男性。
他にも牡牛座の恋愛運は「もてます。」と言い切ってみたり、射手座は「ラブアフェア接近」などと変な表現だったり、牡牛座の総合運には「痔や歯周病には医療+親や先祖を敬い、子や部下を慈しむ」とか、終始どこかズレてるような状態です。
「笑わせるページ」だと思って読めば、ツッコミどころがそこかしこにあるので、楽しいかもしれない。

ところでランティエってのはどういう意味か?
フランス語で「土地を貸したり資産を運用したりして利益を得る人」という意味らしいが、雑誌の中では「高等遊民」と称している。
比較的裕福で日本の文化や風土などに興味を持つ中高年を指しているのだろう。
「LEON」の「ちょい悪オヤジ」や「ゲーテ」の「24時間仕事バカ」というスタンスとは明らかに違う。
「ガツガツせず優雅に行きましょう」というお誘い雑誌だが、なんて言うんだろ、本当の上流階級の人たち向けではないですね。

というわけで、「ランティエ」。
いろいろな意味で、俳人春樹先生の人生がそのまま投影された雑誌である。(大げさ)
記事そのものはそれなりに質は高いし、全体の雰囲気もそれほど悪くはない。
が、徹底して上品かというとそうでもなかったりで、どこか不思議な香りのする微妙な本だ。
普段は物静かで仕事もそれなりにやってくれるけど地味で目立たないし特に話す機会もなかったが、ある日偶然町中で見かけた時の私服のセンスが驚くほどヘンだった総務の次長さん・・・という感じ。
相変わらず意味不明な例えですみませんが、また気が向いたら読んでみようかと思います。

| | コメント (16) | トラックバック (0)

読んでみた 第16回 広告批評

今回読んでみたのは「広告批評」。
コラムニスト天野祐吉が編集長の広告関連雑誌である。
が、実は読むのは初めてだ。

自分は普段広告とは縁のない仕事をしており、また特に広告に興味があるわけではない。
コピーライターやプランナーやアートディレクターやクリエイターやターミネーターやダイ・ハードといったカタカナ職業の人とのつながりも全くない。
なのでこの雑誌の存在自体は知っていたが、手にとったことは全くなかった。
今回も興味があって買ったわけではなく、たまたまその日荷物がやや重かったので、判型の小さい薄めの雑誌を探しただけである。

Hihyo

今回買ったのは7月号、590円。
なんとも半端な定価である。
版元はマドラ出版。
判型はA5、総ページ数は150弱である。

批評というからには、巷にあふれる広告についてほめたり批判したりする雑誌なのだろうか。
たぶんCMに登場する若いアイドル予備軍を注視したりはしていないだろう。
イメージ的には「広告という世界を語るわりにやや硬派で実直な雑誌」のようにとらえていたが、果たしてどうなのだろうか。

・・・・・読んでみた。

今月号の目次はこんな感じである。

○10年でWebはメディアになった
杉山恒太郎

○世界のWeb広告アーカイブス1998-2007
大岩直人

○そろそろ次のことを
福田敏也

○ウェブってスポーツに近いメディアだと思う
伊藤直樹

○デザイナーとして、
ビジュアルは捨てたくない
カイブツ

○面白いコンテンツを
作っていたいだけなのかも
中村洋基

エンターテインメント精神でもてなしたい
朴正義

○ウェブの美をいかに伝えるか
中村勇吾

○Webは広告を解体するか
西垣通

○図版でわかるインターネット10年


特集としては「Web広告10年!」となっている。

いきなり内容でなくて体裁の話になるが、まず感じたのが4段組構成のページが多いことである。
2段組・3段組のページもあるが、その違いの意味はよくわからない。
同じようにWeb広告について語る文章なのに、2段だったり3段だったり4段だったり。
もちろんページごとに適度に変化があっていいのだが、書体や級数や色は同じで段組だけ違っていたりで、なぜ変えているのかが不明である。
インタビューや対話文は2段組かな?とも思ったが、そうでもないようだ。
文章中心の雑誌だが、この変化はやや抵抗がある。

特に4段組は正直読みづらい。
1段は14字だが、今回はWebを語る内容だからだろうか、横文字が多く、また改行がかなり少ないため、気になってしかたがなかった。
慣れていないせいもあるのだろうが、クリエイティブな方面の雑誌のわりにページデザインは案外甘いんだなぁ・・・と思ってしまいました。

今回のWeb広告特集には業界の様々な人が文章を寄せたりインタビューに答えたりしている。
が、当然文章表現においては個々にかなり違いがある。
それぞれの文章はさほど長くないが、テンポよく読める文章もあれば、何が言いたいのかよくわからない人もいて、同じ業界でもいろいろである。
こうして読み比べると、文章の優劣が驚くほどはっきりわかる。

特集の中で世界中の秀逸なWeb広告を写真で紹介しているが、当然写真ではWebに仕込まれたしかけは体感できないので、なんとなく不満な気持ちになる。
テレビCMやミュージック・ビデオの紹介ページもそうだが、これは紙媒体の限界であり、仕方がない話だ。
でも広告を批評する雑誌なんだから、そこはもう少し工夫してもいいのではないかと思う。
単にテレビ画面やWebページを切り取って紙面で紹介する方法自体、ちょっと古いんじゃないだろうか。
(じゃあどうしろと?と言われても、特にアイディアがあるわけではないのですけど)
今回Web広告が対象だったんで、よけいにそんなことを感じた。

「今月の新作CM50連発!」という、ちょっとアレなタイトルのコーナー。
「やはり」と言うべきか「あえて」なのかわからないけど、例のアップルジャパンの「こんにちはMacです」「こんにちはパソコンです」シリーズが紹介されている。
Mac側のホームムービー役には中谷美紀、パソコン側は同じ格好をした女装のおっさんが出てくる、あのCMである。
個人的には、あのCMシリーズは嫌いである。
なぜか?
それは自分が世にも珍しい「Mac挫折ユーザー」だからである。
まあそれを割り引いても、あのCMにはそれほどセンスがあるとは思えないのだ。
で、これを含めた50のCMが紹介されとるんだが、ホントにただ紹介してるだけで、ここには「批評」はない。
せっかくの「広告批評」なんだから、こういうコーナーこそ独自の視点で切り込んでいくべきではないか?と感じる。

センスと言えば、何かと話題の「Docomo2.0」。
今月号にはあのCMのクリエイティブディレクターによる文章もある。
CMが始まって少し日が経ってしまっているが、CMそのものはなんとなくドラマ仕立てでおもしろいとは思う。
ただし。
このディレクター氏は「今さら2.0かよ」という世間の評価を全く考えていないようである。
「2.0はウェブ2.0から来ているのでしょう」などとかなり不用意に書いちゃってるが、大丈夫なのだろうか。

巻頭には橋本治の連載がある。
今回は社会保険庁について語っている。
広告と何か関係あるんだろうかと思って読んでみたが、後半にやや強引に広告と関連づけたくだりがあっただけだった。
この人の連載はこの本の中では評判がいいらしいが、そもそも題材が絶望的なので読んでいて楽しくなかった。

感想。
特集がWeb広告だったこともあるが、今月号にはそれほどの鋭さは感じなかった。
やはりページデザインが読みづらいのが前に来てしまい、文章の中身に集中できなかったのが残念だ。
歴史も人気もあるクオリティの高い雑誌だと思っていたのだが、今回読んでみた範囲では、そこまでのものはなかったと思う。

体裁としては軽いし小さいし薄いので、持ち歩いて読むには適している。
対象が広告なのでほとんどのページがオールカラーであり、また紙質にもそれなりの配慮がある。
写真をきれいに読ませる(「見せる」、ではない)ため、反射のきついコート紙を避けているところはさすがである。
また書体は基本的にゴシックであり、これも紙質との組み合わせにおいてベストな選択だ。
ここまで配慮の効いた編集なだけに、4段組多用のレイアウトはやはり惜しいと思う。

この会社のサイトは非常に淡泊だ。
広告批評だけでやっている版元のようだが、他の出版社のようなハデな画像やフラッシュによる本の宣伝が全くない。
本誌の内容に相当自信があるからだろうか。
出版社のサイトなんてセールス的には大した効果なんかないんだろうが、この方針はちょっと驚きである。

というわけで、「広告批評」。
評価としてはちょっと微妙なところです。
段組というデザイン面で抵抗を感じてしまったのはかなり残念です。
また文章表現も人によって力量にかなり格差があり、内容になかなか没頭できなかったことも惜しい点でした。
今後興味のある内容で特集でも組まれれば、また読んでみようかと思いますが、そこでまたデザイン面で引っかかってしまうのではないかと、つまらないことを気にしています。

| | コメント (8) | トラックバック (0)

読んでみた 第15回 暴れん坊本屋さん

本も雑誌も読まない出版社勤務の三流サラリーマン、それがあたし。
いばれる話じゃないんだが、最近はとうとう漫画も読まなくなってしま