読んでみた 第25回 自遊人
しばらく音楽関連書籍ばかり採り上げていた「読んでみた」シリーズですが、今回は一般誌に戻ってみます。
読んでみたのは「自遊人」。
名前はなんとなく知ってましたが、読むのは初めてです。
「自遊人」は隔月発行雑誌である。
買ったのは2008年7月号、630円。
判型はA4、140ページ。
版元は株式会社カラット。
申し訳ないが会社名は初めて聞いた。

サイトのアオリは「自分のために時間を過ごしたい、ゆとりある大人のために。『自遊人』は旅や食、住、趣味など、オフタイムの楽しみを提案する雑誌です。」となっている。
「自遊人」というフリーダムな書名から、自由に生きる遊び人のためのスカシ系雑誌だと勝手に思っていたが、チカラいっぱい勘違いであることが判明。
アオリだけだとBRIOやラピタとあんまし変わらないようにも思えるが、コンセプトはもっと素朴で純粋なもののようだ。
今月号のテーマは「『すし』のいろは。」
実は寿司はかなり好きなほうだ。
もっとも高級な寿司店でお好みを注文などといったセレブな食い方はできないので、いつも回転寿司ですけど。
外で食べる割合としては、回転寿司とカレーとラーメンだったら5:4:0.1くらいである。
なので「自遊人」、パラパラめくってみてうまそうだったので買ってみました。
果たしてどんなうまいネタが登場するのでしょうか。
・・・・・読んでみた。
目次はこんな感じである。
●日本人なら知らないと!
「すし」のいろは。
●そもそも「江戸前」ってどういう意味?
「江戸前ずし」の定義。
●「い」 第一部
・江戸前ずし「仕事」ファイル
・すし屋になくてはならない「鮪」の話。
●「ろ」第二部
・進化する江戸前ずし
●「は」第三部
・鮨よ、さらば。
●別冊付録
・主要なタネ全掲載! すしダネ図鑑
●好評連載中!
本物の「食」────森枝卓士
〈新連載〉百年食堂────椎名誠
140ページのうち100ページ以上を寿司に費やしており、雑誌ではあるがかなり当月テーマ一本に絞った編集方針である。
単なる寿司のウンチクだけでなく、東京を中心とした各地の名店を紹介している。
どこも予算のはる名店ばかりだが、ページから受けるイメージにはスカシた印象はほとんどない。
寿司屋でのマナーやしょうゆの付け方なんかも写真で案内するなど、意外に一般受けな編集だが、「こういうお店なら女性もイチコロ(死語)」のような記事は全くない。
江戸前の寿司屋というのはそもそも寿司を食わせる店であって酒など出さず、客もさっさと食って長居はしないのが粋であるとされていた。
しかしながら最近は酒も含めてじっくり味わっていただきます店も増えている。
各店のデータには「酒をゆったり」なのか「すしをささっと」なのかを4段階にわけて紹介する指標がついており、これはわかりやすいと感じた。(でもどっちみちあたしが行けるような店はありませんが・・)
「鮨よさらば」というページはかなり深刻な内容である。
ここ10年、日本の多くの港における漁獲高は軒並み減少傾向にある。
原因はひとつではないが、温暖化や環境破壊による生態系の変動もあり、また漁業従事者の高齢化や後継者不足による絶対数の減少もあるようだ。
加えて安価な輸入モノの氾濫、ニセブランド魚の横行など、シビアな問題がたくさんあるのが実態だ。
ときどき1皿100円の回転寿司で明らかにクスリっぽい味のするネタに出会うことがあるが、こんなものを食って喜んでいる我々消費者がいるため、事態はいっそう深刻なものになっているとも言えそうだ。
記事の中でけっこう驚きだったのが、「寿司で重要なのは鮮度ではなく、締めと熟成である」ということ。
回転寿司店でも生け簀や水槽から魚を引っ張り出して調理する店があるので、新鮮なほうがうまいと単純に考えがちなのだが、そうでもないようなのだ。
どうやって魚を締めるかのほうが重要であり、また締めてすぐ食うよりも寝かしたほうがうまい魚もあるということ。
似たような話として、「マグロは産地が重要なのではなく、どこの港でどう処理されたのかが重要」ということも書いてあった。
日本近海で回遊するマグロは、ある意味どこでもとれる魚とも言えるが、各港の業者がどのような処理を行っているかで価値が全く変わってくるそうだ。
マグロは繊細な魚なので、締める時にストレスがかかると味に非常に影響が出るらしい。
高級マグロを扱う業者の場合、締め方も企業秘密としているとのこと。
一カン千円以上するようなマグロも、なんでそんなに高いのかあまりよくわからなかったが、こういう背景もあっての値段なのね。(どうせ食えませんけど・・)
綴じ込みの別冊付録「すしダネ図鑑」はなかなか優れた内容である。
寿司ネタに使われる魚について、寿司と元の姿の写真が載っており、小学生向けの教材のような感じだ。
寿司は好きだが、ネタについての知識は全然なく、もともとどういう姿の魚なのかもよく知らないままベルト上の皿をつい取ってしまっている。
安い回転寿司のネタが全部ホンモノだとは思っていないけど、元の姿がどんな魚なのかくらいは知ってないと恥ずかしいんでしょうね。
ということでかなり勉強になる内容ではあったが、一方で段組と読む順序が合っておらずどうにも読みにくいレイアウトのページがあったり、記事によっては書体や級数が案外バラバラで落ち着かない印象を受けたりもした。
また表紙は白地に全国の名店の板前さんの写真である。
うーん・・・
ベタな意見なのは承知の上だが、ここはやはり寿司ネタか魚の姿でよかったのでは?
他の雑誌との差別化を意識してのデザインなのかもしれないが、だったらもう少しやり方があっただろうと思う。
各板前さんの全身はとても小さいので、表情もあまりよくわからず、なんだか机の上にフィギュアを並べているような感じなのだ。
これは個人的な感覚だが、上段の板前さんの足の下に、その下の段の板前さんの顔がある構図になっているが、人によっては「オレの頭の上に他のヤツの足があるじゃねえか!」などと不快に思わないだろうか?
そんなココロの狭いことを言うのはあたしだけでしょうか・・・
この雑誌の編集部は新潟県南魚沼市にある。
元は東京の日本橋にあったが、2006年に移転している。
なぜ新潟?と誰もが不思議に思う話だが、会社のサイトに説明があって、おもしろいことが書いてある。
「お米のことがもっと知りたかったから」というのが移転した理由だそうだ。
健康や地球環境などもテーマとして採り上げる雑誌なので、かなりしっかりしたポリシーを持っていると感じる。
そんなわけで読んでみました「自遊人」。
思ったより硬派な雑誌です。
夜の新幹線でクツまで脱いで煮崩れてビール飲みながら読むなんてことはちょっとできないような気がします。
あたしは全く当てはまりませんが、それなりに世間の常識をわきまえた目的意識の高い大人の雑誌だと思います。
バックナンバーには京都や温泉をテーマにした号もあるようなので、読んでみてもいいかなと思いました。
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