観てみた ボヘミアン・ラプソディ
映画を全然観ない自分を2年ぶりに劇場へと向かわせる素晴らしい作品が公開されました。
そう、話題の大ヒット映画「ボヘミアン・ラプソディ」です。
公開前からネット上では様々な情報が飛び交っていたのは知っていましたが、それほど熱心に事前学習はしませんでした。
今回はクイーンのドキュメンタリーではないし、そもそも音楽も映画もプロアマ問わず他人の評価は自分にとってあまり意味がありません。
世間では評判の良くない作品がけっこう好きだったり、歴史的名盤を聴いても全く感動も定着もしなかったことなどしょっちゅうです。
なのでこの「ボヘミアン・ラプソディ」も世の中の反応はどうでもいいと考えており、観た後もそれは変わっておりません。
クイーンは80年の「The Game」の頃からがリアルタイムという、リスナーとしては少し出遅れた自分ですが、いちおうスタジオ盤は全て聴いている数少ないバンドのひとつです。
長さだけは40年近くにおよぶ自分の低レベルな音楽鑑賞歴の中で、ビートルズやポリスと並び大きな位置を占めるクイーン。
フレディの生涯とクイーンの歴史功績を採り上げた映画ですので、さすがにスルーするわけにもいきません。
仕事も中途半端に切り上げて川崎市内の映画館へと向かいました。
中途半端はいつものことですが・・
自分が観たのは平日の夕方です。
見た感じ300席のうち半分くらいの入りで、自分は中段右端に座りましたが、前後隣は誰も来ませんでした。
新宿や渋谷など都心では平日でも毎回満席みたいな話でしたが、郊外ではそうでもないようです。
客層としては当然自分を含む中高年が大半ですが、中には高校生くらいの若者も来ていました。
果たしてクイーンは世代を超えて日本のファンを感動させるのでしょうか。
これより先、映画の内容にふれる記述となりますので、鑑賞前の方はご注意ください。
・・・・・観てみた。
ロンドンでバンド「スマイル」を組んでいたブライアンとロジャー。
そこに空港で荷役のバイトをしていたインド系のファルーク・バルサラが登場し、ボーカルの抜けたばかりのスマイルへの加入希望を表明。
ファルークの歌唱力に納得した二人は加入を了承し、ジョン・ディーコンも加わって「クイーン」が誕生。
「Killer Queen」のヒットで地位を確立したクイーンは、マネージャーやレコード会社の重役など大人達の思惑に翻弄されながらもバンドの信念を押し通し、名作「ボヘミアン・ラプソディ」と名盤「オペラ座の夜」を完成させる。
その後もメンバーそれぞれの才能をぶつけ合いながら絆を深め、「We Will Rock You」「We Are The Champions」「地獄へ道連れ」など世界規模の大ヒットを生み出していく。
しかしファルーク=フレディ・マーキュリーは自らのアイデンティティやゲイであることへの葛藤などで次第にバンド内で孤独を感じるようになっていく。
フレディがソロアルバムを制作する話をきっかけに他の3人との間にも溝が生じてしまい、元マネージャーでゲイパートナーのポールの誘導により、事態はバンドにとって良くない方向に進んでいく。
さらに自らがエイズにかかっていることを知るフレディ。
同じ頃クイーンとしてライブ・エイドへの出演の話が持ち上がり、元妻メアリーの助言やポールの裏切りを知ることにより、「家族」でもあるクイーンの一員に戻って最後までやり遂げることを決意。
ここに4人は再び結束し、より強固な絆によってクイーンは再起。
ライブ・エイドで伝説の21分間の演奏を見せたのだった・・
勝手にまとめたあらすじとしてはこんなところでしょうか。
なおこの映画が始まる際の20世紀フォックスのファンファーレは、ブライアンとロジャーの演奏だそうです。
まず多くの方が同じ感想だと思いますが、クイーンのメンバー4人を演じた役者さんが、それぞれメンバー本人によく似てますよね。
もちろん似せる努力も相当したと思いますが、日本で長く伝わってきたクイーンの4人のパブリックなイメージを、そのまま持ってきてくれたと思います。
特に主役のフレディを演じたラミ・マレックと、ブライアン役のグウィリム・リーは素晴らしい演技でした。
ライブ・エイドのステージシーンと実際の映像を比較できるサイトも見ましたが、体の動きや表情など、この二人は特に細かいところまで丁寧に再現していました。
4人が集まったり肩を抱き合うシーンもありましたが、ブライアンが一番背が高いところまでそっくりでしたね。
あとこれもネットで見かけた意見に共感しましたが、初期のフレディを演じるラミ・マレックはミック・ジャガーにも似ています。
もしストーンズの伝記映画なんか撮ることがあったら、ぜひともミック役に挑戦してほしいと感じました。
ロジャーを演じたベン・ハーディは本物よりちょっと幼い感じのジャニーズ系ルックス。
あのチャラいイメージも劇中では両手にガールフレンドを伴うなどしっかりフォローされてましたが、フレディと真っ先に衝突するのがいつもロジャーという位置づけで描かれていました。
少しだけ気になったのがジョン・ディーコン役のジョゼフ・マゼロ。
(自分が勝手に持っていた)ジョンの柔和な雰囲気とは少し違って、ややシニカルな表情で皮肉も平気で言うクセの強いベーシストになっていました。
もっともブライアンによれば、契約など細かい箇所までチェックしてきっちり主張するバンド運営上のリーダーは実はジョンだったそうなので、そのあたりもしっかり踏まえた上での演技だったのかもしれません。
楽器も歌もプロではない彼らが、世界レベルの技巧派バンドの演奏や歌を演じるには、ものすごい苦労と努力があったことは間違いありません。
音源のほとんどはクイーンそのものやトリビュートバンドのものを使っているそうですが、少なくともピアノやギターやドラムを鳴らす動作で気になるようなところは全くありませんでした。
ブライアン・メイとロジャー・テイラー本人も、役者の演技を絶賛してましたね。
役者が本人に似てるのはメンバーにとどまらず、フレディの両親を演じた役者も、フレディの最後のパートナーとなったジム・ハットン役のアーロン・マカスカーも本人にそっくりです。
この点は制作側や監督が相当こだわったんでしょうか。
ただライブ・エイドのシーンでボブ・ゲルドフが登場しますが、この人だけは役者のダーモット・マーフィーのほうが断然イケメンでした。(失礼)
さて、この映画に対して指摘されてる意見として「史実と違う部分がある」「時系列が違う」があります。
史実との違いをまとめたサイトがあったり、中身は褒めてるはずなのに「ウソ」「史実との違い」という表題であおったマスコミの評論文も見ました。
実際クイーンに会ったこともないので「史実」がどうなのかもわからないですけど、こんな自分でも観ていて気付くシーンは確かにありました。
ただ、この映画はドキュメンタリーじゃないので、多少史実とは違っても本質的なテーマがしっかりしていれば、そういう点を気にせず楽しんだほうがいいのではないかと思います。
クイーンに詳しくなるほど史実との違いが気になるのは理解はできますけど、それをことさらネットで主張してしまうのも、「クイーンに詳しい俺様」自慢意識がにじみ出てしまい、あまり共感はできない気がします。
そういう現象について一番自分が共感できた意見はこれでした。
テレビのニュース番組やネットで「多くの中高年が号泣」と紹介している「ボヘミアン・ラプソディ」。
まあテレビなんかは多少配給会社への忖度もあるのかもしれませんけど、多くの方がフレディの姿に感動して涙したとのこと。
果たして自分はどうだったのか?
結論から言うと、自分はこの映画は泣けませんでした。
決して涙をこらえていたわけではなく、全編通してそういう性質の映画ではないと感じたのです。
単純に自分の感性が著しく衰えていて、人の心がわからないだけなのかもしれませんが・・
映画の見方は人それぞれなので、泣く方も泣かない方もいて当然ですが、自分はこの映画を相当表層的にとらえていたと思います。
ストーリーそのものを深く追いかけ、フレディやメンバーに感情移入する、といった見方はしていませんでした。
映画鑑賞としては決定的に間違っているかもしれませんが、どのシーンにおいても、ずっと感じていたのは「よくできてるなぁ」という感想でした。
役者の演技、ストーリー展開、衣装やステージ風景、ウェンブリー・アリーナの大観衆、各シーンのディテール、病院でのフレディと少年とのやりとり・・
どれをとってもドキュメンタリーと見まごう映像の連続に、一番感動していたのです。
初めて(というかまだ一度しか観てませんけど)本編を観たにも関わらず、始めから終わりまでメイキング映像を観ていたような感覚でした。
フレディがメアリーを追いかけて家の外に出て行くシーンがありますが、この時扉の上の壁に金閣寺のお札が貼ってありました。
この後降りしきる雨の中メアリーの言葉によってメンバーとの絆に気づくフレディ、というストーリー上は非常に重要かつ印象的なシーンなのですが、自分は金閣寺のお札を見て「あっ!ウチと同じ!」などとバカな興奮をしていたのです。(我が家の扉の上にも金閣寺のお札が貼ってあります)
ライブ・エイドのシーンでも、死を覚悟したフレディが圧倒的なパフォーマンスで観客を魅了する・・という感動の場面なんですけど、自分はやっぱりその「再現力」に圧倒されっぱなしだったのでした。
言い訳がましい話ですが、あの日同じ場所で観ていた方々の中で、号泣していたような人は見当たりませんでした。
観客全員の顔を出口でチェックしながら帰ったわけでもありませんが、場内からすすり泣きが聞こえることもなく、ハンカチで目を押さえるようなしぐさも見つけられず、みなさん非常に落ち着いて鑑賞されていたように見えました。
なので「中高年大号泣」といった報道も、実は人それぞれだと思います。
自分もあと何回か観たら泣けるのかもしれません。
少しだけストーリーの内部に反応した箇所がありました。
フレディの元マネージャーでゲイ仲間のポール・プレンター。
ポールはフレディにライブ・エイド出演依頼の話を伝えず、フレディをメンバーから遠ざけ、フレディから決別を言い渡されると、フレディのスキャンダル情報をテレビ番組で暴露するという悪役の設定で描かれています。
実際のポール・プレンターもクイーンではなくフレディ個人のマネージャーを長年務め、後に愛人関係となり、他のメンバーからはよく思われていなかったそうです。
気の毒なことに彼もフレディが亡くなる3ヶ月ほど前にエイズで亡くなったとのこと。
簡単に言うとポールは「あのフレディを裏切った悪いヤツ」ということになりますが、一方で誰よりもフレディを愛していたのもポールではなかったかと思います。
ただしその愛情は残念ながら「独占欲」「支配欲」という形で表れてしまい、対象こそスーパースターであるフレディ・マーキュリーですが、ポール・プレンターも骨の髄まで極悪人というわけでもなく、どこにでもころがっているありふれた話だよなぁ、と感じました。
なお後から知ったことですが、映画館によっては「応援上映」という、「バーフバリ」みたいな特殊?な鑑賞を許しているところがあるようです。
主にTOHOシネマズやユナイテッド・シネマ系で行われているそうですが、コスプレも拍手も手拍子も歌っても全部OKで、ヒゲと胸毛をつけてスクリーンに向かってペンライトを降りながらクイーンの曲を大声で歌って楽しもう!という企画(でいいの?)。
これは自分は絶対ダメです。
拍手や手拍子くらいはやってもいいですが、ヒゲつけて大声で歌ったり隣の知らないおっさんのあまりうまくない歌声を延々聞かされたりはやはり勘弁ですね。
たまたま自分が観た川崎市内の映画館では、応援上映は行っていないようで良かったです。
知らずに観に行って周りの客が突然歌い出したら、たぶん途中で出てきてしまうと思います。
というわけで、「ボヘミアン・ラプソディ」。
浅い感想で説得力も全然ありませんけど、非常に良かったです。
観るまでは結局再現ドラマの域を出ないレベルなんじゃないかと疑っていましたが、そういう次元ではありませんでした。
偏差値の低いファンである自分ですが、この映画の大ヒットをきっかけにジョン・ディーコンが再び合流してステージに立ったり新曲を発表してくれないだろうか・・
映画館を出て帰る途中そんなことを考えました。
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