観てみた レッド・ツェッペリン:ビカミング
昨年末の話ですが、ようやく記事にすることになりました。
基本的に映画を観ることをほとんどしない自分ですが、今年も映画を1本も観ずに終わるんやろとぼんやり過ごしていた年の瀬。
ところが音楽関連の映画が立て続けに公開され、どうしようかと思っていたところにちょうど近所の映画館にようやくやって来たのが「レッド・ツェッペリン:ビカミング」。
他にも「夢と創造の果てに ジョン・レノン最後の詩」や「スプリングスティーン 孤独のハイウェイ」も公開中でしたが、場所が遠かったり時間が合わなかったりで、こちらは鑑賞保留となりました。
前回ツェッペリンの映画「Celebration Day / 祭典の日」を観たのは13年も前でした。
再結成のライブだったんでファンの評価はやや微妙な印象でしたが、今回はデビュー前から初期にかけてのドキュメンタリーで、世界中で大人気となり、興行収入も2億円を突破したとのこと。
これはやはり観に行かねばなるまい・・・
ということで、観に行ってみました。
150席の小さな映画館だったので客が殺到してんのかと不安でしたが、行ってみたらガラガラ。
日曜の昼間でしたが、たぶん20人もいなかったと思います。
当然観客は高齢男性ばかり。
空いてるほうがこっちとしてはありがたいですけど。

公式サイトによれば、初期の貴重なライブ映像、それを見ながらのメンバー3人のインタビューに加え、未公開のジョン・ボーナムの生前音声など、見どころが盛りだくさんらしい。
自分のような素人三流リスナーは当然知らない映像とエピソードだらけのはずなので、学習教材として申し分ないことは間違いありません。
果たしてどんな映画なのでしょうか。
これより先は映画の内容にふれる部分がありますので、未鑑賞の方はご注意ください。
・・・・・観てみた。
映画は大まかに言うと以下のような流れ。
・メンバー4人の生い立ち
・それぞれが音楽活動を始めた頃の話
・ペイジを中心にレッド・ツェッペリンを結成
・ファーストアルバム制作
・アメリカ市場を制覇、イギリスに凱旋
全体的に、自分は知ってた話はほとんどありませんでした。
メンバーの生い立ち紹介の部分でも、ギター少年ペイジがプロになる前にバンドを組んでテレビに出た映像を、昔どこかで観たことがあったかも・・くらい。
なので自分みたいな後追いの偏差値の低いリスナーにとってはありがたい教材でしたが、リアルタイムでツェッペリンを聴いてきたコアな陽一系ファンには答え合わせ的な内容かもしれません。
ロバート・プラントが親から公認会計士になるよう言われて専門学校に通っていたことも初めて知りました。
ジョン・ポール・ジョーンズはペイジがいたんで仕方なくベースに回ったのかと勝手に思ってましたが、子供の頃に自らベースギターが弾きたいと父親に頼んでベースを買ってもらったくらい、根っからのベース芸人とのこと。
もしジョーンジーがギタリストとして加入していたら、おそらくはペイジと衝突して早々に脱退していたんじゃないかとも思いますけど。
その後ペイジとジョン・ポール・ジョーンズはセッションミュージシャンとして様々なアーチストと仕事をするようになります。
ペイジはジェフ・ベック、エリック・クラプトン、デビッド・ボウイ、ザ・フー、キンクスなどの楽曲にギターで参加しますが、ビートルズとは仕事の機会がなかったと話していました。
やはりペイジとしてはビートルズとも仕事したかったんでしょうね。
またこれも初めて知ったのですが、シャーリー・バッシーが歌った映画「007/ゴールドフィンガー」のテーマソングのレコーディングに、ペイジとジョン・ポール・ジョーンズが参加してたんですね。
歌は有名なのでもちろん知ってましたが、二人が参加してたことを全く知らずに聴いていました。
その後はよく知られているとおり、ペイジはジェフ・ベックに誘われてヤードバーズに加入します。
ただし誘ったベックはペイジ加入後半年くらいで脱退。
ロッド・スチュワート、ロン・ウッド、ニッキー・ホプキンス、エインズレー・ダンバーといった手練れの仲間を連れて自らのグループを旗揚げします。
意外だったのは、この頃のペイジは「仲間だったエリックやジェフがバンドを率いて成功していることに焦っていた」という点。
ヤードバーズという営業中の店舗にするっと入り込んだペイジに比べ、ベックやクラプトンは開店準備や従業員集めから始める苦労があったんじゃないのかとも思いますが、ペイジほどの技量や才覚があっても、友人の成功はやはり穏やかならぬものがあったんですね。
またニューヤードバーズ結成の頃、ペイジ以外の3人はすでにパートナーがおり、しかも揃って奥様方の存在が想像以上に大きかったようです。
ペイジがバンドを作るらしいとの話を聞いて、「ジミーに連絡してみたら?」と夫に参加を勧めたのはジョーンジーの奥さん。
「プラントと組むのだけはやめて!彼はハチャメチャよ」とお願いしたのはボンゾの奥さん。
どっちも言ってることはある意味的確だったようですが、特にボンゾは奥さんに頭が上がらないタイプだったそうです。
奥さんの意見に逆らってプラントと組んでみたらハチャメチャになってしまったのはボンゾのほうだった、というのは悲しい話ですが。
結成当時のデンマークでのライブ映像(Communication Breakdown)が流れました。
契約上まだニューヤードバーズとして北欧でツアーをこなす必要があったうちの一会場と思われますが、場内には座席もステージもなく、観客は見た目30人くらいでそれぞれ座布団?を引きずってプラントの目の前の床に座るという、村の寄り合いみたいなものすごく貧相な光景。
調べたらグラッドサクセ・ティーン・クラブという小さな街の小さな会場で、これが4人で観客の前で初めて演奏した時の映像とのこと。
プラントやボンゾはともかく、すでにミュージシャンとしてそれなりの実績は持ってたペイジにしてみれば帰りたくなるほどの客の入りだったはずですが、4人はペイジの「客の人数なんか関係ない。自分たちにしかできない音楽をやる」という信念のもと、ものすごいパフォーマンスを見せています。
レッド・ツェッペリンと改名した後、バンドはアメリカ進出を目指してアトランティック・レコードと契約。
この時ペイジが直接アトランティック・レコード社に出向き、自主制作したファーストアルバム音源を重役たちに聴かせ、さらにシングルは作らない・今後も制作方針に口出しさせない・アメリカでのツアーも行うなどの条件を提示して交渉に当たります。
ギタリストでバンドマスターでもあるジミー・ペイジですが、このビジネスマンとしての商才は、やはり後の成功に不可欠だったと思われます。
ピーター・グラントという敏腕かつガラ悪い相棒の同行もモノを言ったとは思いますが・・
契約と同時に進められたアメリカでのツアーで、バンドは人気と自信をどんどん身につけていきます。
プラントとボンゾはライブの成功に困惑していましたが、ペイジには当時のアメリカのヒッピー文化などに関する傾向と対策に裏打ちされた戦略があったようです。
アルバムでもステージでも、まずはでかい音で客を引きつける。
そこから一転してバラードやアコースティックやバイオリン奏法など様々な技法や怪しいサウンドで客を感心させ、最後に熱狂させてファンにしてしまう。
インパクトの強さと、動静の落差、完成度の高さ。
さらには既存のブルース曲のメロディや歌詞の借用(パクリ)と、オリジナルを凌駕するほどの強引なアレンジ。
かつてのビートルズとはまた違った、こうした革新的な要素が、アメリカでの人気に確実に結びついたと思われます。
バンド初期の曲が訳詞付きで紹介されますが、この頃の曲は「良い時も悪い時もあったけど!望んだものは手に入れてきた!オレのいい女がどっかの男のところに行っちまったけど気にしない!ああでも好き!きぃー!!」とか、「コミュニケーション不能!でもいつものこと!でも好き!きぃーー!!」とか、「お前落ち着けよ!俺はマジメだ!もう一度中学校でやり直せよ!でも好き!胸いっぱいの愛をやるぜ!きぃいぃーー!!」など、なんか結局ヤバイ女に惚れちゃって混乱してるヤバイ男の叫び系が多いよなぁと、字幕観ながらあらためて思いました・・
まあ当時の英米の流行歌やブルース全般がそういう傾向にあったのかもしれませんが。
どのレビューにも書いてあったことですが、ボンゾの生前のインタビュー音声を聴いていたメンバー3人がみんなおだやかに思い出をかみしめた表情だったのが印象的でした。
やはりツェッペリンて基本的に仲良し集団だったんだなと感じます。
ただ残念なことに残っていたのは音声だけのようで、ボンゾ本人が語る映像はありませんでした。
最期は破綻して命を落としたボンゾですが、言ってることは実直で誠実さにあふれており、酒さえ飲まなければ4人の中では一番マトモだったんじゃないかとも思います。
ペイジ自身も認めていますが、初期のツェッペリンは完全にペイジが独裁者で、音楽性や楽曲や歌詞やサウンドの全てを取り仕切り、ビジネスとしての方向性や戦略も全部ペイジ主導でした。
ただし重要だったのは他の3人が単なるペイジのバックバンドメンバーではなかった点。
特にプラントとボンゾはキャリアの浅い立場でありながら、ペイジの要望や指示に全て応え、さらには期待の上を行くパフォーマンスをスタジオでもステージでも披露しています。
自らの企てに絶対の自信を持っていたペイジですが、プラントとボンゾを発掘したことも、今でも誇りに思っているはずです。
アメリカでの成功を抱え、バンドはイギリスに凱旋。
結成後わずか2年でロンドンのロイヤル・アルバートホールでライブを行うという快挙をなしえたところで映画は終わります。
アルバムで言うと「Led Zeppelin II」発表あたりまで。
曲をわりとマジメに長く聴かせる映画なので、2時間ではツェッペリンの全歴史を語るには全然足りません。
この調子で解散まで全て紹介したら上映時間は6時間でもおそらく足りないはずです。
なのでエンドロールが流れると「ああ今回はここまでなんだ」とややがっかり。
これでは誰もが続編を期待すると思われます。
この映画はツェッペリンを含む全ての音源について、AI加工は一切行っていないそうです。
今の技術なら映像も音声ももっとクリアで高いレベルにまで持っていけるはずですが、監督はあえてそれをせず、観客にツェッペリンが登場した時のサウンドがいかに衝撃的だったかを、当時の人々と同じようにはっきりと体感してほしいとの思いで仕上げたとのこと。
なので確かにどの曲もムダに音量はでかいです。
また映像もビートルズ映画のようなAI加工はナシ。
若いペイジがアコースティックギターを奏でる映像なんかは、ノイズで画面が上下に分断されたままでした。
このあたりのこだわりは重要であることもわかりますが、自分が観た映画館はIMAXではなく音響がそれほど高精度でもなかったようで、でかいツェッペリンの楽曲は時々音が割れて聞こえるなど、個人的にはやや不快な部分もありました。
IMAXシアターで観たら(聴いたら)、また違った感想になるんでしょうか・・?
あと少し引っかかったのがタイトル。
「ビカミング」とは「なりつつある」「変化している」「ふさわしい」などの意味を持つ言葉だそうですが、ツェッペリンを聴いていた年代の日本人にはいまいちなじみのない英語のような気がします。
なのでここはやはり覚醒とか躍進・源流・黎明・飛翔伝説・原子心母・天龍革命・龍原砲など(後半適当)、かつては当たり前のように付けられていた洋楽アルバムタイトルのような副題を用意してくれたほうが、日本の元青少年にはより響いたんじゃないかと感じました。
というわけで、「レッド・ツェッペリン:ビカミング」。
バンドの足跡と楽曲を克明に紹介したわかりやすい構成で、月並みな感想ですが、自分のような素人でも非常に楽しめました。
栄光の歴史はさらに続きがありますので、やはり続編をぜひ観たいと思わせる映画でした。
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