聴いてない 第343回 スザンヌ・ヴェガ
前回1曲だけ聴いたレベル42を採り上げたが、ほぼ同時期にやはり1曲だけ録音できたのがスザンヌ・ヴェガである。
代表作「Luka」だけ聴いているので、聴いてない度はレベル42と同じく2。
「Luka」が子供の虐待をテーマに作られた曲であることは当時の雑誌やFM音楽番組で紹介されていたので、レベル42よりも知識レベルはわずかながら上である。(エラくもなんともない)
というか例によってそれ以外の情報は一切持っていない。
このままだと「スザンヌ・ヴェガは虐待を歌った人」だけで終わってしまうので、この機会に情報をアップデートしてみることにした。
スザンヌ・ナディーン・ヴェガは1959年7月11日、カリフォルニア州サンタモニカで生まれた。
両親はスザンヌ誕生後まもなく離婚し、その後母親と共にニューヨークに移り住む。
高校生の頃に音楽活動に目覚め、大学進学後はマンハッタンの小さな会場で演奏し始める。
ニューヨークのフォーク歌手ジャック・ハーディの作曲グループに定期的に参加し、84年にA&Mレコードと契約。
85年5月にデビューアルバム「Suzanne Vega(街角の詩)」を発表。
全米チャートでは91位だったが、ニュージーランドで9位・イギリスやオランダでは11位と健闘した。
翌86年にはスティーブ・アダボと共作したシングル「Left of Center」がリリースされ、全英チャートで32位を記録した。
この曲にはジョー・ジャクソンがピアノで参加しており、ジョン・ヒューズ監督の映画「プリティ・イン・ピンク」のサウンドトラックにも収録されている。
87年の2枚目のアルバム「Solitude Standing(孤独)」は全英2位・全豪7位・全米11位と成功を収め、アメリカでは100万枚以上を売り上げた。
虐待を受けた子供の視点から書かれた話題作「Luka」が収録され、アコースティックギターに焦点を当て続ける一方で、よりポップ志向で充実したアレンジが特徴となっている。
なおシングル「Tom's Diner」は全英58位でヒットにはならなかったが、DNAという名のイギリスの電子音楽プロデューサー2人によって無断でハデにリミックスされ、ブートレグで話題になった。
これを聴いたスザンヌがレコード会社を通じてDNAにリリースを許可。
すると90年に全英2位・全米5位とオリジナルを超えた大ヒットとなった。
なお87年にはアルバム「Solitude Standing」発表前後に早くも二度来日し、東京郵便貯金会館、渋谷公会堂、中野サンプラザなどで新曲「Luka」「Tom's Diner」も披露している。
また「Tom's Diner」は87年に日本でAGFマリームのCMにも使われた。(覚えてませんけど・・)
90年に3枚目のスタジオ盤「Days of Open Hand(夢紡ぎ)」は、それまでのフォークロックスタイルに、多様な楽器編成と実験的なアレンジを融合させた作品で、シンセサイザーやサンプラーの使用が増えた実験的な作品となった。
評論家からも好評で全英7位・全豪9位を記録したが、本国アメリカでは50位止まりに終わった。
スザンヌ・ヴェガを語るサイトには書かれてはいないが、アメリカでの不調の要因にはグランジ台頭もあったのではないかと思う。
実際スザンヌ・ヴェガの作品は、アメリカ市場ではこのアルバムから下降線をたどっていくことになる。
92年に4枚目のアルバム「99.9F°(微熱)」をリリースした。
99.9度で微熱なの?と思ったら、華氏99.9度は摂氏37.72度くらいなのでまあ微熱ですね。
フォークとポップミュージックにエレクトロニックやダンスビート、インダストリアルな要素を融合したサウンドで、過去の作品よりも明るく対照的なイメージとなっている。
・・・と言われてもよくわかりませんけど・・・
アメリカで50万枚以上を売り上げたことでゴールド認定を受けた・・とあるが、チャートの順位は86位とさらに後退。
ただスザンヌはこの頃にはあまり順位や売り上げを気にしておらず、「微熱」を自身のスタジオアルバムの中で一番のお気に入りだと述べている。
なおスザンヌは後にこのアルバムのプロデューサーであるミッチェル・フルームと結婚したが、3年ほどで離婚している。
スザンヌ・ヴェガはグランジ旋風にも臆することはなく、96年にはアルバム「Nine Objects of Desire(欲望の9つの対象)」が発表された。
全英40位シングル「No Cheap Thrill」や、映画「The Truth About Cats & Dogs」や「Closer」の予告編にも使用された「Caramel」を収録。
「微熱」までのシンプルな曲調とインダストリアルな要素を融合したスタイルに、ジャズやオルタナ、さらにはボサノバも加えたものとなっている。
全英は20位だったが全米は前作と同じく86位。
2001年9月、A&Mレコードからの最後のリリースとなった6枚目のスタジオアルバム「Songs in Red and Gray」が発売された。
彼女の本来のトレードマークであるアコースティックなフォーク・サウンドに戻り、90年代に行った実験的な試みを捨て去っている。
これは元夫でプロデューサーのミッチェル・フルームとの決別を表明したもので、歌詞でも結婚生活の破綻を歌っているそうだ。
だが商業的には振るわなかったため、A&Mレコードは2003年に21曲を収録したベストアルバム「Retrospective」をリリースし、スザンヌ・ヴェガとの契約を終了した。
スザンヌ・ヴェガにはティムという異母弟がいた。
ティムはニューヨークでグラフィック・デザイナーをしており、スザンヌのアルバム「99.9F°」のイメージTシャツのデザインも手がけ、販売も手伝ったりしたそうだ。
だが、ティムは2002年4月29日に36歳の若さで亡くなってしまう。
ティムはワールドトレードセンターで開催された音楽フェスティバルの制作アシスタントとして働いていた。
2001年9月11日の同時多発テロ事件当日は病気で仕事を休んでいて、犠牲者になることは免れたものの、事件により精神的に大きなダメージを受け、その後のアルコール依存症が致命傷となった。
スザンヌが2007年にリリースしたアルバム「Beauty & Crime」は弟ティムに捧げられている。
2008年には21年ぶりの日本公演が行われ、心斎橋クラブクアトロ、名古屋クラブクアトロ、東京国際フォーラムのステージに立った。
2010年から2012年にかけて、「Close-Up」シリーズというアルバムを4枚発表した。
過去の60曲をアコースティックで再録音したもので、未発表の5曲も収録されている。
「Close-Up Vol. 2, People & Places」には「Luka」「Tom's Diner」も収録され、アメリカのフォークチャートでは10位を記録した。
2013年に苗場で行われたフジロックフェスティバルに参加。
2014年には7年ぶりに「Tales from the Realm of the Queen of Pentacles」という長いタイトルのアルバムを発表。
キング・クリムゾンのトニー・レヴィンがベースで、またロンドン在住の日本人ミュージシャン広田穣治が太鼓や尺八で参加している。
全米チャートでは100位にも入らなかったが、ヨーロッパでは好評で全英37位の他、ベルギーやドイツやオランダでも50位以内に達している。
9枚目のスタジオアルバムも「Lover, Beloved: Songs from an Evening with Carson McCullers」とまた長いタイトルで2016年にリリースされた。
現時点での最新作は昨年発表の「Flying with Angels」。
今回も当然ながら知ってた話は全くなし。
「Luka」以降も活動してたことも、フジロックに来てたことも全然知らなかった。
子供の虐待という問題を歌う社会派ミュージシャン・・なのかと勝手に思っていたが、確かに「Luka」はそういう曲ではあるが、本人はそうした固定化なイメージで捉えられるのは本意ではないそうだ。
「Luka」がヒットした後には虐待に悩む人からの相談みたいな内容の手紙が増えてしまい、困ったとのこと。
ただ最近になって、実はスザンヌ自身子供の頃に養父から虐待されていたことを告白している。
「Tom's Diner」の原曲とDNA版をYou Tubeで両方聴いてみたが、DNA版では全く違うヒップホップな曲になっていた。
他人のヒット曲をサンプリングしてヒットさせた例は、SWVの「Right Here」やワイクリフ・ジョンの「Another One Bites The Dust」などが思いつくが、元歌以上にヒットさせたのは珍しいのではないだろうか。
スザンヌ・ヴェガはDNA版「Tom's Diner」の大ヒットを喜んでいたそうなので、まあ良かったんでしょうけど。
というわけで、スザンヌ・ヴェガ。
聴くなら当然「Luka」を頼りに「Solitude Standing」からでしょうけど、明るいサウンドという「微熱」にも少しだけ興味はあります。
日本で入手可能なのかわかりませんが、他におすすめのアルバムがあれば教えていただけたらと思います。
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| スザンヌ・ヴェガ Solitude Standing |
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| スザンヌ・ヴェガ 99.9 F° |
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。
私もスザンヌ・ヴェガはほぼ聴いていませんが、「Solitude Standing(孤独)」のアルバムジャケットは、当時の雑誌上で頻繁に目にして印象に残っています。知的で芸術家肌の繊細なオネーさん、というイメージを勝手に抱きました。実際にどうなのかは知りませんが。
「Solitude Standing(孤独)」を聴きましたが、「Luka」以外の曲には興味が持てなかったので、私の中ではゲームセットとなり、以後は聴かなくなりました。
その「Luka」のテーマが子供の虐待であることは知っていましたが、明るくポップな曲調なので、英語が判らないのをいいことに、いまだにゴキゲンな曲として愛聴しています。スザンヌさん、ごめんなさい。
SYUNJIさんのおかげでその後も音楽活動を続けていたことを知り、なぜか嬉しく思いました。大好きな80年代のアーティスへのノスタルジーゆえでしょうか?おそらく今後も聴くことはないでしょうが、益々のご活躍をお祈り申し上げます。
投稿: えふまる | 2026.04.07 23:08
えふまるさん、コメントありがとうございます。
>知的で芸術家肌の繊細なオネーさん、というイメージを勝手に抱きました。
自分のイメージもほぼそういう感じでした。
ゴージャスなステージ衣装とか派手な私生活といった情報があまり似合わないイメージですよね。
>その「Luka」のテーマが子供の虐待であることは知っていましたが、明るくポップな曲調なので、英語が判らないのをいいことに、いまだにゴキゲンな曲として愛聴しています。
全く同感です。
厳しい社会問題を採り上げた歌詞に対してサウンドは軽快で明るく聴きやすいですね。
このテーマで重く暗いメロディだと多くの人に聴いてもらえないことをわかっていたのではないかと思います。
>SYUNJIさんのおかげでその後も音楽活動を続けていたことを知り、なぜか嬉しく思いました。大好きな80年代のアーティストへのノスタルジーゆえでしょうか?
自分も今回調べて初めて知りましたが、スザンヌ・ヴェガに限らずまだ現役で活動中の80年代アーチストは意外に多いですね。
聴いてないのになぜかうれしくなるのも共感します。
投稿: SYUNJI | 2026.04.08 17:44
SYUNJIさん、こんばんは。
図書館で1998年のベスト盤「Tried & True: The Best of Suzanne Vega」を
借りてきました。
完全に初めて聞くミュージシャンです。こういう場合はつい知っている
ミュージシャンと比較してしまいますが、ベガの場合はシェリル・クロウ
からロック色を低減したような感じでした。
1曲目「Luka」が代表曲なんですね。私も気に入りましたが、
内容は子供の虐待を扱う厳しいのですね。
この曲のように、アコースティックギターと穏やかなシンセサイザーを組み合わ
せた曲がこの人の持ち味だと思いました。3曲目「Marlene on the Wall」は
ベガ自ら演奏するアコースティックギターとボーカルの組み立て方がよい
です。6曲目「Small Blue Thing」は、透明感の中に悲しみを表現して
います。
一方で、特に1990年代の曲に多いのですがエレクトロニカに走る曲が
あります。これは好きになれませんでした。5曲目「99.9F°」、7曲目「Blood
Makes Noise」、12曲目「No Cheap Thrill」などです。
どうも1980年代の曲の方が私の好みのようです。1987年の2nd「Solitude
Standing」も借りましたので、いずれこちらにも挑戦してみます。
投稿: モンスリー | 2026.05.03 19:06
モンスリーさん、こんばんは。
>図書館で1998年のベスト盤「Tried & True: The Best of Suzanne Vega」を借りてきました。
図書館にスザンヌ・ヴェガのベスト盤があるんですか!
渋いチョイスの図書館ですね・・
>シェリル・クロウからロック色を低減したような感じでした。
あー・・どちらもほとんど聴いてないですけど、なんとなくわかります。
声のトーンや高さは似ていますね。
>この曲のように、アコースティックギターと穏やかなシンセサイザーを組み合わせた曲がこの人の持ち味だと思いました。
そのようですね。
スザンヌ・ヴェガを語るサイトの多くに同じ感想があります。
>一方で、特に1990年代の曲に多いのですがエレクトロニカに走る曲があります。これは好きになれませんでした。
うーん、そうなんですか・・
エレクトロニカに走るスザンヌ・ヴェガの曲というのもあまり想像がつきませんけど、おそらく自分も苦手ではないかと思います。
そうなると自分もやはり「Solitude Standing」から学習するのがよさそうです。
・・・ベスト盤も「Solitude Standing」もある図書館てすごいですね。
熱心なファンの職員がいるのかな・・?
投稿: SYUNJI | 2026.05.04 18:14