聴いてみた 第187回 ハート
先日大成功に終わったオアシスの日本公演。
あたしは行きませんでしたが、ネットでもマスコミでも夢の再結成をこぞって絶賛するという幸せな展開でなによりです。
だけど。
自分が「Morning Glory?」「Be Here Now」などを喜んで聴いていた30年くらい前は、カート・コバーンの死後も引き続きグランジの暗さがまだしばらく支持されており、高名な音楽評論家ほど「オアシスなんか聴いてるヤツはダサい」「あんなのはビートルズのモノマネ」などといった論調で音楽雑誌などに批判めいた文章を寄せていたのだ(と思う)。
それが30年経って兄弟殴り合わずにホントに日本に来たら、まあこの盛り上がりよう。
ダサいとか言われてたけど、やっぱみんなオアシス好きだったんじゃねえかよ・・・
再結成のニュースをぼんやり眺めながら、そんな歪んだ感想を持ちました。
そんな曲がった自分が今日聴いてみたのはハートのデビューアルバム「Dreamboat Annie」。
相変わらずヒドいフリでオアシスとは何の関係もありませんが、ハートの70年代の作品を初めて聴いてみました。

鑑賞前に心の友ウィキペディアを中心にハート結成の経緯をおさらい。
ロジャー・フィッシャー(G)とスティーブ・フォッセン(B)が、ドン・ウィルヘルム(K・Vo)とレイ・シェーファー(D)と共に67年頃に作ったジ・アーミーがハートの源流である。
バンドはその後メンバー交代を機にホーカス・ポーカスと改名。
さらに70年から3年ほどホワイト・ハートを名乗り、この間にロジャーの弟マイクとアン・ウィルソンが出会う。
アンとブライアン・ジョンストン(D)、ジョン・ハンナ(K)がカナダでバンドに加入し、ハートとして活動開始。
74年にはアンの妹ナンシーも加わり、バンクーバーを拠点にライブなどを行うようになる。
75年に最初のシングル「How Deep It Goes」を発表するが、あまり注目されなかった。
続くシングル「Magic Man」「Crazy On You」がモントリオールのFM局で流れ始めると人気に火が着き、9月にアルバム「Dreamboat Annie」をリリースする。
直後の10月に行われたロッド・スチュワートのモントリオール公演で、ハートはオープニングアクトに抜擢される。
アルバムは発売後数か月でカナダ全土で3万枚を売り上げ、最終的には20万枚に達しダブル・プラチナに認定された。
売上はゆるやかに上昇したため、カナダのアルバム・チャートにランクインしたのは1年後の76年9月で、10月に最高20位を記録した。(全米は7位)
ハートになる前にはそれなりに下積みはあったものの、新人バンドとしては順調なスタートである。
ウィルソン姉妹はお飾り的存在なのかと思ったら、収録曲のほとんどを姉妹が作っていた。
リーダーはロジャーさんだったかもしれないが、初めから姉妹を中心に活動してきたのは間違いないようだ。
80年代復活後のハートとはおそらくかなり異なるであろう原点アルバム「Dreamboat Annie」。
果たして80年代にまみれた浅薄な自分のハートにはどう響くのでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1. Magic Man
うなるギターでスタート。
この曲はライブ音源で聴いたことがあったはずだが、あまり覚えていない。
ギターが目立つサウンドは案外シンプル。
アンが当時つきあっていたマイクのことを想って書いた曲とのこと。
2. Dreamboat Annie (Fantasy Child)
アルバムの主題曲で邦題は「夢見るアニー」。
同じ曲が3パターンあるが、これは一番短いバージョン。
3. Crazy On You
これもライブバージョンで聴いている。
イントロはアコースティックギターだが全体はスピーディーなロックで、どこかフォークの香りもする。
4. Soul Of The Sea
波の音とともに始まる静かな曲で、どこかツェッペリンのような雰囲気。
中盤で曲調がプログレっぽく変わり、組曲風になっているが、やや難解な印象。
5. Dreamboat Annie
前の曲につながる形で始まる。
これが3パターンのうちの本編という感じで、バンジョーなどいろいろな楽器の音がする。
6. White Lighting & Wine
ブルース色の辛口なメロディ。
すでにアンのボーカルは確立されており、この曲で一番激しく叫んで歌っている。
どんな曲でもこなせる非凡なシンガーであることがよくわかる。
7. (Love Me Like Music) I'll Be Your Song
比較的おだやかなナンバーで、これもどこかフォークっぽい音がする。
姉妹のコーラスもこの曲が一番よく聞こえる。
8. Sing Child
再びヘビーで重いブルースロック。
途中フルートが混じったりジミー・ペイジ風のギターソロがあったりの構成。
フルートはアンが吹いているそうだ。
9. How Deep It Goes
ハートとしての最初のシングルで、静かに始まる抑えめの曲。
ストリングスやピアノ、フルートの音もするクラシカルなサウンド。
10. Dreamboat Annie (Reprise)
ラストは再び「夢見るアニー」。
このバージョンが一番壮大に聞こえ、エンディングにふさわしい仕上がりとなっている。
聴き終えた。
ロジャーのギターとアンのボーカルが中心であることが伝わる楽曲とサウンドである。
ブルース色の強いロックと、フォーク調のアコースティックなバラードが交互に流れ、多面的で緻密な構成となっている。
若いバンドにありがちな不安定さもなく、完成度の高いデビューアルバムだと思う。
ただし。
ハートを聴いてきた誰もが感じるところだろうが、80年代の復活後のハートとはかなり違う。
全体的に辛口で暗いメロディが多く、自分の好みからもやや遠い。
若い頃に聴いていたらおそらくローテーション入りは難しかっただろう・・というのが正直な感想になる。
元々姉妹がやりたかったのがこの路線で、そのまま80年代に突入してなかなか受けなかったので、プロデューサーにロン・ネヴィソンを起用し、外部のソングライターが作った歌で大ヒットしてバンドは復活・・というのが、よく知られているハートのサクセスストーリー。
復活後は自分みたいな極東の素人リスナーでも聴いたくらい売れたのでよかったじゃんとも思うが、売れる一方でロン・ネヴィソンが推進する産業ロック路線には納得できない面もあった、とアンは発言している。
スティクスやジャーニーやイエスなど、路線を変更して80年代にめでたく売れたバンドはおそらくどこも同じような話があったと思われる。
ジャケットはハートマークを真ん中に置いた姉妹の背中合わせの写真。
なんとなく昔の少女漫画の付録みたいなかわいらしい雰囲気だが、中身の楽曲やサウンドとはあまり合っていないような気はする。
というわけで、ハートの「Dreamboat Annie」。
秀逸で精緻な楽曲と歌唱・演奏ではありましたが、やはり自分が好きなハートのサウンドとは違ってやや難しい印象でした。
ジャーニーのデビューアルバムを聴いた時の感覚に近いです。
ただ70年代ハートの学習はもう少し必要と感じてはいますので、次の「Little Queen」も聴いてみようと思います。
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| ハート Dreamboat Annie |
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| ハート Little Queen |
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| 猪木啓介 兄 私だけが知るアントニオ猪木 |
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コメント
SYUNJIさん、こんにちは。
私も聞き直しました。
久しぶりに1stアルバムを聞くと、ここにハートの全てが詰まっていると実感しました。
2000年以降の作品は、1stアルバムに立ち返るような硬派なハードロックとアコースティ
ック曲を両立させた作品が多いからです。同じように、サウンドの特徴といえるハードな
中にアコースティック楽器、これはナンシーのギターが中心ですがこれが活躍しています。
アルバム全体を通しても、ハードロックな曲とドリーミーな曲を巧みに取り入れています。
まさに、Heartならではの、ハードとアコースティックの融合した作品だと思います。
3曲目「Crazy On You」はスピード感を増してアクセル全開に。ナンシーの華麗なアコー
スティックギターソロから一気にヒートアップ。さらにアコースティックギターのドラ
イブ感にエレキとベースがのり、アンが静と動を振幅させる見事なボーカル、ブリッジ
から始まるコーラスも見事です。
8曲目「Sing Child」もよいです。ヘヴィーなギターのリフとアンのセクシーなボーカル
にはレッド・ツェッペリンの影響を感じます。間奏のリード楽器がアンのフルートと
いうところも驚きですが、多彩な楽器、さらにフルートと代わってエレキソロが割り込む
ところにもツェッペリン感があります。
ハートのもう1つの魅力である、アコースティックな曲も充実しています。
4曲目「Soul Of The Sea」はSYUNJIさんと同じくツェッペリン、特に「限りなき戦い」
を感じました。激しく歌うだけではないアンの歌のうまさ、アコースティックギターの
透明感に弦楽器を加える構成の複雑さを聞かせます。
>>次の「Little Queen」も聴いてみようと思います。
うろ覚えですが、レココレ誌のアメリカンハード特集で取り上げられたハートの作品
は「Little Queen」だったと思います(ドッグ&バタフライだったかも)。
「Little Queen」」には名曲「バラクーダ」が収録されていますので、是非!
投稿: モンスリー | 2025.11.09 15:23
モンスリーさん、コメントありがとうございます。
ハートの70年代アルバムをご紹介いただいてから13年も経ってしまいました・・
>久しぶりに1stアルバムを聞くと、ここにハートの全てが詰まっていると実感しました。
そのようですね。
当たり前ですけど、この安定した演奏や歌唱の土台に、ロン・ネヴィソンのアレンジやサウンドを乗せたのが、自分が聴いていたハートだった、という図式がよくわかりました。
>2000年以降の作品は、1stアルバムに立ち返るような硬派なハードロックとアコースティック曲を両立させた作品が多いからです。
なるほど・・
やはり姉妹のやりたかった方向性は、80年代の路線とは少し違っていたんでしょうね。
>4曲目「Soul Of The Sea」はSYUNJIさんと同じくツェッペリン、特に「限りなき戦い」を感じました。
あー・・言われてみると確かに少し「限りなき戦い」の香りはしますね。
個人的な感想ですが、雰囲気としてはアルバム「聖なる館」に収録されていても違和感はないかも・・というような感覚にはなりました。
>「Little Queen」」には名曲「バラクーダ」が収録されていますので、是非!
「バラクーダ」はライブ音源でしか聴いてませんが、得意の疾走感あふれるロックですよね。
内容はレコード会社や業界に対する怒りがテーマだそうですが・・
次回は「Little Queen」を試そうと思います。
投稿: SYUNJI | 2025.11.09 20:35
SYUNJIさん、こんばんは。
ハートは“復活”と言われていた1980年代にピンときませんでした。ですから、“復活前”は全く聴いたことがありませんでしたが、SYUNJIさんの記事を読んで「聴かずとも良い」という自信が確信に変わりました。厚く御礼申し上げます。
アン・ウィルソンはランディ・マイズナ―、マイク・レノ、ロビン・ザンダーとのデュエット曲がありますが、いかにもな男女デュエット曲で特に可もなく不可もなく。
しかし、ハート関連で1曲だけ“ハート”に突き刺さった曲があります。
それは「For Our Children」(1991年)というチャリティのオムニバス・アルバムに収録されている、アン&ナンシー・ウィルソン姉妹による「Autumn to May」。
ピータ、ポール&マリーのカバー曲で、素材の良さはあるにしろ、アンとナンシーのデュエットがメッチャ魅力的です。ケルト音楽風味をパパッとふりかけているのもグッド!
「For Our Children」には、ジャクソン・ブラウン&ジェニファー・ウォーンズによるビートルズの「Golden Slumbers」のカバーも収録されています。心に染み入る“夢の必殺デュエット”!
2曲ともYouTubeでご覧になれますので、お時間がありましたらドーゾ。
投稿: えふまる | 2025.11.27 18:07
えふまるさん、こんばんは。
>ですから、“復活前”は全く聴いたことがありませんでしたが、SYUNJIさんの記事を読んで「聴かずとも良い」という自信が確信に変わりました。
いや、そのご判断は危険です。
こんな素人の感想などアテになりませんので・・
>それは「For Our Children」(1991年)というチャリティのオムニバス・アルバムに収録されている、アン&ナンシー・ウィルソン姉妹による「Autumn to May」。
>「For Our Children」には、ジャクソン・ブラウン&ジェニファー・ウォーンズによるビートルズの「Golden Slumbers」のカバーも収録されています。心に染み入る“夢の必殺デュエット”!
タイトルを検索して思い出しました。
このアルバムはレンタルで聴いてます!
英米のスターが子供向け童謡を歌っているチャリティアルバムですよね。
残念ながらウィルソン姉妹の「Autumn to May」はほとんど覚えてませんが、ご指摘の「Golden Slumbers」のカバーや、ポール・マッカートニーの「Mary Had A Little Lamb」、キャロル・キング「Child Of Mine」などはよく覚えています。
情報ありがとうございます。
あらためてウィルソン姉妹の「Autumn to May」も聴き直してみます。
投稿: SYUNJI | 2025.11.27 18:25