聴いてない 第335回 デバージ
前回採り上げたブロック・ウォルシュの「This Time」を録音した際、同時にエアチェックしたのがデバージの「Time Will Reveal(時のささやき)」である。
いずれも柏村武昭の異色経歴でもあるFM洋楽番組「サンスイ・ベストリクエスト」で録音したのだが、デバージも結果的にこの1曲のみの鑑賞で終わっている。
柏村武昭に落ち度はないけど、聴いてない度は2。
聴いてないけど、デバージが兄弟グループであることや、エル・デバージやチコ・デバージの名前もなんとなく知ってはいた。
同じく兄弟グループであるジャクソン・ファイブと比較されることも多かったらしい。
だが調べてみたら、ただ比較されるだけでなく、実はかなり深い関係にあったこともわかった。
以下はネットで調べたデバージの壮絶な略歴である。
デバージはデトロイト出身のデバージ兄弟により結成されたグループで、活動期間はほぼ80年代の10年間。
父親は白人の兵士、母親は黒人ゴスペル歌手。
だが夫婦仲は良くなく、結婚後4年で離婚。
しかも父親は離婚後も子供達を虐待するなど、兄弟は複雑で過酷な家庭環境で育つ。
兄弟は70年代半ばからデトロイトで音楽活動を始める。
長男ボビーと次男トミーは76年、グレゴリー・ウィリアムス、エディー・フルーレン、フィリップ・イングラム、マイケル・マクグローリー、ジョディー・シムズらと共にスウィッチというグループを結成。
スウィッチは78年モータウンからデビューし、「There'll Never Be」「I Call Your Name」「Best Beat in Town」などのR&B曲がヒットした。
スウィッチのデビューを後押ししたのが、ジャーメイン・ジャクソンと言われている。
スウィッチのメンバーがモータウンの事務所があったビルのエレベーターでジャーメインにデモテープを渡したところ、ジャーメインが気に入り、モータウンでのデビューを勧めたそうだ。
なんか映画や小説のような展開だが、本当なんだろうか?
80年にザ・デバージズという名でデビュー。
兄弟の中で参加したのは以下のみなさんである。
・長女バニー(Vo)
・長男ボビー(Vo・D・K)
・三男ランディ(Vo・B)
・四男マーティ(Vo・D)
・五男エル(Vo・K)
デバージズは81年にデビューアルバム「The DeBarges」を発表。
次男トミーはデバージズには参加せず、長男ボビーはアルバム発表まではスウィッチと掛け持ちだったらしい。
残念ながらアルバムはチャートを賑わすような実績は残せなかったようだ。
その後長男ボビーはいったんグループを離脱。
82年には六男ジェームスが加わり、全曲デバージ兄弟の作品で構成された2枚目のアルバム「All This Love」をリリース。
全米24位(R&Bチャートは3位)となり、シングル「 I Like It」「All This Love」もヒットした。
「All This Love」は後にビルボードのアダルト・コンテンポラリー・チャートで1位を獲得している。
83年9月、3枚目のアルバム「In a Special Way」をリリース。
前作と同様全曲デバージ兄弟の作品で、自分が聴いたシングル「Time Will Reveal(時のささやき)」も収録されている。
「Time Will Reveal」は全米R&Bチャートで1位を記録し、アルバムもゴールド・ディスクを獲得した。
だが人気の陰でトラブルも起こる。
84年、六男ジェームズ・デバージはジャネット・ジャクソンと極秘結婚。
すぐにジャネットが結婚を公表したが、翌年には離婚。
・・というか結婚自体が無効とされたそうだ。
ジャネットの若気の至りとも言われたが、ジェームスはこの頃薬物中毒だったらしく、結婚式の直後もジャネットに隠れてクスリをやってたとのこと。
デバージは85年のモータウン製作映画「ラスト・ドラゴン」のサウンドトラック用として「Rhythm of the Night」を録音した。
この曲はシングルとしてもリリースされ、全米3位・全英4位を記録。
グループ史上最大の売上となった。
また同名のアルバムにはデビッド・フォスターやスティーブ・ポーカロも参加し、ビルボードR&Bチャートで3位の成績およびプラチナ・ディスクを獲得した。
だが絶頂の裏でグループ内のパワーバランスは崩れつつあった。
エル・デバージがグループの中心として台頭しつつあることを察知したモータウンは、次のアルバム制作をエル一人で行わせようとした。
モータウンはエルの実力を信頼する一方で、ジェームスの薬物依存症の問題を懸念していたとも言われている。
結果的にグループの命運は、このモータウンの判断によって決定されてしまう。
アルバム「Rhythm of the Night」の大ヒット後、モータウンはエルとバニーに高額なソロ契約をオファー。
二人はソロ歌手として活動することを決意し、グループを脱退する。
モータウンは二人の力強いハーモニーを失った残りのデバージには商業的価値はないと判断し、86年に契約を解除する。
アメリカの芸能界も厳しい・・・
危機感を覚えた残デバージは、87年に長男ボビーが加入し建て直しを図ったが、メジャーレーベルとの契約に失敗したため、インディーズレーベルのストライプド・ホース・レコードと契約し、アルバム「Badboys」をリリースした。
だがストライプド・ホースはやはりカネがなく、満足なプロモーションもできず、モータウンの支援も受けられなかったため、アルバムはチャートインしなかった。
結果的にこれがデバージとしてのラストアルバムとなる。
デバージはその後もライブなど活動を続け、オープニングアクトには七男のチコを起用したり、テレビの歌番組にゲスト出演した。
なおチコ・デバージはソロ歌手で活動しており、兄たちのグループのデバージには加入していない。
・・・なぜ?
ビージーズに参加しなかった弟アンディ・ギブみたいなもんかな?
栄光のデバージ兄弟にとって最大の問題は、音楽ではなく薬物にあったようだ。
88年、ボビーとチコは麻薬密売の容疑で逮捕され有罪判決を受け、別々に刑務所に収監された。
この逮捕と収監によりデバージの音楽活動は終焉を迎え、89年に解散する。
薬物は音楽活動だけでなく個人の生活や兄弟仲にも深刻なダメージを及ぼし、破綻して命を落としている者もいる。
困ったことに兄弟のほとんどに薬物使用による逮捕歴があり、中でもエル・デバージは何度も逮捕され、治療を経て復帰も果たしたが、2018年に仲間との口論で逆上し車のフロントガラスを叩き割り、器物損壊で逮捕されている。
ボビーは長年のヘロイン中毒の末、エイズに感染し95年に死亡。
トミーも薬物の影響で腎臓が機能不全となり透析を受けていたが、2021年に腎不全で亡くなっている。
2008年、長女バニーは「The Kept Ones」と題した家族についての本を執筆した。
貧しい家庭に育った兄弟が成功していくというアメリカンドリームな内容で、2020年には続編も出版されたが、弟たちからは不評で、SNSなどで「バニーが書いた本は嘘だらけのフィクションだ」と言われたようだ。
以上がデバージの短く儚い栄光と炎上の過酷な歴史である。
知ってた話は当然皆無。
最大のヒット曲「Rhythm of the Night」もYou Tubeで聴いてみたが、全く知らない曲だった。
ジャーメインやジャネットなどジャクソン・ファミリーとの関係も全く知らなかった。
もっと言うとエル・デバージやチコ・デバージも当然デバージの一員で、グループでもソロでも並行して活躍してるのかと思っていたが、エルはグループを脱退してソロになっており、チコはそもそもデバージには参加していなかった。
この経歴を正確に把握してた日本人リスナーはどれくらいいるんでしょうか・・?
デバージ兄弟は歌ったり演奏したりはもちろん、ソングライターとしての才能も持っていた。
発表した曲の大半は兄弟の誰かが作ったもので、他人の作った曲やカバー曲はかなり少ない。
才能は間違いなくあったデバージ兄弟。
ジェームスの娘クリスティニアにもそれは受け継がれ、2009年に歌手デビューしている。
彼女が父親や叔父たちのようなトラブルに見舞われないよう祈るばかりだ。
才能や素質に恵まれながら、グループとしての活動期間はほぼ80年代限定だった。
長くは続かなかった原因の一つは間違いなく薬物だろう。
まあビートルズやストーンズやツェッペリンやクラプトンなど、60~70年代に活躍したミュージシャンの大半は薬物と酒でダメージを負ったり逮捕されたりしていたが、残念ながらデバージ兄弟はそうした先輩方のトラブルを教訓とはできなかったようだ。
仮定は無意味だが、もし兄弟が誰一人薬物には手を出さなかったら、少しは違った展開になっていたのではないかと思う。
「Time Will Reveal(時のささやき)」はゆったりしたオトナ向けバラード。
ただ個人的にはビージーズやアース・ウィンド&ファイアーを思わせるファルセットでコーラスというスタイルがやや苦手で、他の曲も聴いてみようという気にはならなかった。
というわけで、デバージ。
正直鑑賞意欲はほとんどありませんが、もし聴くとしたら「時のささやき」を頼りに「In a Special Way」から、ということになりそうです。
最大のヒット作「Rhythm of the Night」も含め、みなさまのデバージ鑑賞履歴をご紹介いただけたらと思います。
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| デバージ In a Special Way |
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| デバージ Rhythm of the Night |
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