« 聴いてない 第327回 ブルー・マーダー | トップページ | 聴いてない 第329回 ジョーン・バエズ »

聴いてない 第328回 ヴァレンシア

自分が洋楽の沼に浸かっていたのはほぼ80年代限定なので、90年代以降に活躍したアーティストの鑑賞は基本的に壊滅状態である。
その暗黒の90年代に登場し、なぜか1曲だけ聴いているのが、オランダの貴公子ヴァレンシア。
93年のデビューシングル「Gaia」だけ、MTVの音声をテープに録音している。
映像は全く覚えておらず、オランダの若い人という情報以外仕入れることもなかった。
聴いてない度は2。

今回ヴァレンシアを調べて初めて知ったが、この人はクイーンに強く影響を受けたことを公言していて、2003年にはカバー集アルバム「Queen Tribute」までリリースしているそうだ。
これで俄然興味がわいたので、採り上げることにしました。(安直)

ヴァレンシアは1971年4月13日にオランダのハーグで生まれた。
父親はインドネシア人、母親はオランダ人。
父母は逆だが、ルーツの組み合わせはヴァン・ヘイレン兄弟と同じである。
本名はアルダス・バイロン・ヴァレンシア・クラークソンという長い名前。
幼少の頃暮らしていたスペインでピアノやギターを始めた。

その後オランダに戻りバンド活動を始め、16歳でレコード会社にデモテープを送るようになる。
すでにこの頃にはクイーンをよく聴いていたようだ。
デモに注目したプロデューサーから連絡を受けたヴァレンシアは、91年マーキュリー・レコードと契約。
93年に最初のアルバム「Valensia(邦題:ガイア)」をリリースし、オランダのチャートで2位に達した。

デビューシングル「Gaia」は6分近くもある長尺曲で、ラジオ向きでないためレコード会社内ではシングル発表に否定的な意見もあったらしい。
新人歌手の長すぎるデビュー曲という大胆な決断ではあったが、結果は大ヒットで成功を収めた。

デビューアルバムは翌年日本でもリリースされ、10万枚のセールスを記録。
日本でのヒットに気を良くしたヴァレンシアは、クリスマスソング「21st Century New Christmas Time」やデュラン・デュランの「A View to a Kill」のカバーを含む5曲を収録したミニアルバム「The White Album」を日本限定で発売する。

96年には2枚目のアルバム「Valensia II - K.O.S.M.O.S.(邦題:遥かGAIA(地球)を離れて)」を発表。
シングル3曲を収録し、その中の「Thunderbolt」は日本でのみ発売である。
この年には初の来日公演も行われ、日本滞在中はテレビやラジオ番組に出演したり、CDショップでサイン会も行われたそうだ。
ヴァレンシア本人やレコード会社が、日本市場をわりとマジメに重視していたことがよくわかる。
97年には早くもベスト盤「The Very Best Of Valensia」も発売している。

98年にアルバム「V III - Valensia '98」を日本限定でリリース。
方向性に若干の変更が見られ、ややロック寄りにシフトしたサウンドになったが、ヴァレンシア本人はあまり気に入っておらず、後に「レコード会社からの指示で仕方なく作った」などと発言している。

99年にはオランダのミュージシャンであるロビー・ヴァレンタインとのプロジェクト「V」名義でアルバム「V」をリリースした。
2002年6月にもV名義で「Valentine vs Valensia」を発表。
ファンの間では2枚目のほうがゴージャスで高評価なようだ。
てっきりこのままユニットで活動すんのかと思いきや、翌月にはヴァレンシアとして「The Blue Album」をリリースしている。
案外多作なヴァレンシア。

そして2003年にクイーンの曲を自ら演奏し歌ったアルバム「Queen Tribute」を発表。
12曲全てクイーン作品ではなく、クイーンの前身バンドのスマイル時代の「Polar Bear」や、モット・ザ・フープル「All the Young Dudes(全ての若き野郎ども)」が収録されている。
また「Man From Manhattan」という曲もカバーしており、元曲はエディ・ハウエルという人が76年にリリースしたシングル。
なんでこんなのカバーしたのかと思ったら、オリジナルはフレディがプロデュースしてピアノを弾き、ブライアンがギターで参加した曲とのこと。
しかも演奏をサポートしたミュージシャンの労働許可違反が発覚し、リリースはしたもののすぐに廃盤となっている。
こんな曲クイーンのファンでも知らない人多いんじゃないの?
クイーンをカバーした人は世界中にいると思うが、ヴァレンシアも相当コアなクイーンマニアのようだ。

また同年メタル・マジェスティという名で弟のデビッドとユニットを組み、アルバムを発表。
デビッドはドラムを担当し、ギター、ベース、キーボードはヴァレンシアが演奏している。
なお日本盤はバンド名そのままのタイトルだが、ヨーロッパ盤は「This Is Not A Drill」という名前で2004年に発売され、収録曲も異なるそうだ。
メタル・マジェスティとしては2005年にもアルバム「2005」をリリースしているが、日本では未発表。
この頃は日本市場をどう見ていたのか、あまりよくわからない。

2010年にはシングル「One Day My Princess Will Come」を発表したが、直後にまたも販売中止となった。
中止の理由は不明で、どのサイトも「種々の事情」と書いている。
なのですでに流通に乗った盤だけがわずかに店頭販売されたというレアな曲になったそうだ。
なんかヴァレンシアさんはどうもこういう展開が多い気がする。
本人が悪いわけではなさそうですけど。

2014年9月、「Valensia VI - Gaia III - Aglaea - Legacy」というアルバムをリリース。
ヴァレンシアは活動休止を宣言し、レコード会社も「最後のアルバム」として発表している。
これでミュージシャンとしては引退・・となるはずだったが、思ったより早くヴァレンシアは復活する。

2017年に未発表曲をクラウドファンディングの特典として配布するなど、わりと珍しい形で活動を再開。
2019年に7枚目となるアルバム「7EVE7(セブン)」も発表。
2022年には3Dシューティングゲーム「Air Twister」の音楽を担当し、2枚組サントラアルバムも制作している。
最近はK-POPの楽曲を手がけているという情報もあるそうだ。

今回も知ってた話は全くない。
歌手というより作曲や演奏もこなすマルチプレーヤーと、どのサイトでも紹介されている。
若い頃から人見知りで内向的でインドアなタイプだったようで、大人数での会食などが苦手なため、来日中も毎晩ホテルの部屋で一人飯を食っていたとのこと。
なんか共感するなぁ。
楽屋で殴り合ったりステージで火を吹いたり生きたコウモリを食いちぎったりホテルの窓から女を投げ捨てたり・・・といった往年の野蛮なロックスターの行動様式とは無縁の人のようだ。

「Gaia」だけしか知らないが、言われてみればあのサウンドやワルツなリズムや構成は確かにクイーンっぽい気はする。
ビートルズが発したサイケやプログレな部分もなぞっている感じはするし、ティアーズ・フォー・フィアーズにも似ていると思う。
壮大でやや大げさな楽曲だが、中性的なボーカルが乗ると悪くはない。
他の曲もおおむねこの路線であれば、それほど拒絶感なく聴けそうな気はする。(本当か?)

というわけで、ヴァレンシア。
聴くなら当然「Gaia」収録のファーストアルバムからでしょうけど、「Queen Tribute」でどんなカバーに仕上げているのかも興味はあります。
ユニット名義も含め、他におすすめのアルバムや曲があれば教えていただけたらと思います。

Gaia
ヴァレンシア Valensia
Air-twister
Air Twister オリジナル・サウンドトラック
Orange

ネーブル バレンシア 果物 フルーツ

| |

« 聴いてない 第327回 ブルー・マーダー | トップページ | 聴いてない 第329回 ジョーン・バエズ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 聴いてない 第327回 ブルー・マーダー | トップページ | 聴いてない 第329回 ジョーン・バエズ »