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聴いてみた 第184回 メン・アット・ワーク

2025年最初の聴いてみたシリーズ、今回はメン・アット・ワークを聴いてみました。(場内失笑)
・・・まあそうでしょうね。
自分でも「なぜ今それを聴く?」と問いただしたい感覚はわかります。
ジョン・レノンクラプトンブルース・スプリングスティーンなど他にやらなきゃいけない宿題がたまってるのに・・・
大学入学共通テスト前日なのに突然原付免許を取りに行って同級生からあきれられた高校生みたいな状態ですが・・・
なんかぼんやりと昔の洋楽の動画なんかを眺めてるうちに「そういや聴いてなかったな」と突然思い出し、急遽入手したのが3枚目のアルバム「Two Hearts」。

メン・アット・ワークをBLOGで採り上げるのは初めてである。
なんでかっつうと一応「Business as Usual」「Cargo」は聴いているからだ。
いつもの通り貸しレコード屋で借りたんですけど。
「Who Can It Be Now?(ノックは夜中に)」「Down Under」「Be Good Johnny」「Overkill」「It's a Mistake」などのシングルもだいたいエアチェックしたし、どれも嫌いではない。
ただアルバムを録音したテープはもう手元になく、それほどマジメなリスナーではなかった。(毎度のこと)

で、シングル「Everything I Need」も無事エアチェックし、3枚目の「Two Hearts」が出ていたことも知ってはいたが、売れ行きも評判もあまり良くないことも伝わってきていたので、レコードは借りなかった。
この後バンドは解散し、学習もそれっきりで終了。
聴いておけばよかった後悔は多少はあったが、特に深刻にとらえることなく40年ほど経過。(遅すぎ)
今回聴いてみたのも全くの思いつきで、聴くにあたっての不安材料もないが切迫感や義務感も全然ない。(失礼)

Two-hearts_l

一応鑑賞にあたり経緯や背景を確認。
「Two Hearts」はメン・アット・ワークが1985年4月にリリースした3枚目のアルバムである。
83年の前作「Cargo」が全米3位・全英8位・全豪1位と大ヒットしたが、この後メン・アット・ワークもロックバンドあるあるな展開で不安定になっていく。

「Business as Usual」「Cargo」の大ヒットで、見たこともない額のお金を手にしたメン・アット・ワーク。
しかし世界中を巡るツアーの連続でメンバーは次第に疲弊していき、バンド運営や演奏をめぐって衝突が積み重なっていった。
ドラムのジェリー・スパイザーとベースのジョン・リースの2人は、マネージャーを巡ってコリン・ヘイと対立する。
ジェリーとジョンはコリンの友人であるマネージャーを「田舎者でカネの扱いを知らないので解雇すべき」と主張し、コリンが反対したため「Two Hearts」制作前にジェリーとジョンがバンドを脱退(コリンによるクビという説あり)。
なおコリンとジェリーは結成当初からのメンバーだが、少し後から参加したジョンはジェリーが連れてきた友人だった。

残ったコリン・ヘイとグレッグ・ハム、ロン・ストライカートの3人は、セッションミュージシャンを雇ってレコーディングを開始したが、今度はロン・ストライカートがコリンと衝突し、アルバム制作途中にバンドを脱退した。
クレジットにはロンの名前もあるが、全曲演奏したわけではなく10曲中8曲参加だそうだ。

こうして混乱の中「Two Hearts」が完成。
オーストラリアでは最高16位、全米では50位どまりで、過去のアルバムに比べ大幅に後退した結果となった。
シングルも「Everything I Need」のみがオーストラリア(37位)とアメリカ(47位)でチャートインしただけで、他の3曲「Man with Two Hearts」「Maria」「Hard Luck Story」は100位に入らなかった。

コリン・ヘイとグレッグ・ハムはさらにサポートメンバーを招集して「Two Hearts」ツアーを続けたが、ツアー中にグレッグが脱退。
一人になったコリンはサポート隊とともにツアーを終えた後、86年に解散を表明。
結果的に「Two Hearts」はメン・アット・ワーク最後のアルバムとなった。

思っていた以上に複雑な背景(でもないけど)で作られた「Two Hearts」。
サウンドはドラムマシンとシンセサイザーに大きく依存し、前作とは違った雰囲気になっているとのこと。
イヤな予感しかしないが、果たしてどんなアルバムだったのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1.Man With Two Hearts
2.Giving Up
3.Everything I Need
4.Sail To You
5.Children On Parade
6.Maria
7.Stay At Home
8.Hard Luck Story
9.Snakes And Ladders
10.Still Life

うーん・・・
やはり評判どおりやや地味な印象がまずある。
メン・アット・ワークの魅力は、曲により当然違いはあるが、レゲエ調のリズムに乗せた進行や、どこか皮肉っぽいメロディ、間奏後のコリンのギアを上げたボーカル、サックスやフルートの効果的な使用などがあると思う。
だが「Two Hearts」にはこの特徴を強く感じる曲がない。
好みの点でもシングル「Everything I Need」を超えるようなステキな曲は見当たらなかった。

サウンドは確かにメン・アット・ワークだが、どの曲もあまり高揚感がなく淡々と進む感じ。
ドライブ中に聴いたりスーパーマーケットの中で流れる分には違和感はないが、このアルバムの各曲でイントロやサビで観衆が大歓声・・というシーンも想像しづらい。
B面特集のようでやはり物足りないという感想になる。
3曲ほどグレッグ・ハムがメインで歌っているが、コリン・ヘイに比べるとボーカルとしてはやや弱い。
そう考えるとやっぱり「Who Can It Be Now?」「Down Under」「Overkill」は、後半コリンの盛り上がるボーカルが秀逸で名曲だと思う。

世間の評判と自分の感覚が大幅に乖離することも多いが、今回は評判どおりだったようだ。
発売当時に聴いていたらそれなりにローテーションはしてたかもしれないが、評価はやはり「Business as Usual」「Cargo」よりも低い点にしかならなかったはずである。
次々にメンバーが脱退という過酷な混乱の中で作られた事情を考えれば「まあしょうがないよね」とも言えるが、ロックバンドでは内部の人間関係と作品の完成度は必ずしも整合しないので、コリン・ヘイももう少しやりようはなかったのかと思ったりした。(エラそう)

なおメン・アット・ワークは96年にコリンとグレッグを中心に再結成し4年ほど活動するが、イベントでのステージや、ライブと数曲のレコーディングだけで、スタジオ盤は発表していない。

2010年に「Down Under」のフルートのメロディが、童謡「Kookaburra」からの無断盗用だと版権を持つレコード会社から訴えられ、バンド側が敗訴。
判決にショックを受けたグレッグ・ハムは精神を病み、2012年4月に58歳で心臓発作のため亡くなる。

その後コリン・ヘイはリンゴ・スターのオールスター・バンドに参加(2003年以降ほぼ常連)したり、ソロアルバムを出したりしている。
2022年にコリンはリンゴ・スターがドラムで参加した新曲「Now and the Evermore」を発表した。
メン・アット・ワークを名乗って今も時々活動はしているが、オリジナルのメンバーはコリン以外は参加していないとのこと。
まあ昔も今も、メン・アット・ワークはコリンのワンマンバンドという定義で問題はないと思いますが。

というわけで、メン・アット・ワーク「Two Hearts」。
単品で考えれば悪くはないけど、「Business as Usual」「Cargo」との差もがっちり思い知らされる点で残念な感覚にはなってしまいました。
これで全盤制覇とはなったんですが、達成感は全くありません。
聴いてない80年代名盤はもっと他にもたくさんあるはずなので、ジョン・レノンやクラプトンなど王道学習と合わせて鑑賞していこうと思います。(薄い)

Two-hearts
メン・アット・ワーク Two Hearts
Work-songs
メン・アット・ワーク Business as Usual
Ringo-starr2
リンゴ・スター&ヒズ・オールスター・バンド Live At The Greek Theater 2019

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
80年代限定のビッグネームになるかもしれない、MAW
ですが、私は全く聞いていません。が、そういえば「Overkill」
だけは大げさなイントロが好きで、聞いていた記憶があります。
ですので、このアルバムも収録曲も全く知りません。

ですが、好き勝手な編集版を作るためにツタヤでレンタル
したオムニバス盤に2曲入っていたので、あわてて聞きました。
「ノックは夜中に」と「ダウンアンダー」です。
どちらも、イギリス系ニューロマな感じですが、なぜか
レゲエへのこだわりが。この人たち、オーストラリアなんですね。

多分、リアルタイムではこのレゲエ感にひっかかりがあって
まるで聞かなかったと思います。今なら、80年代的「あの頃は
よかった」と思い出補正が入るので、それなりに行けます。
特に「ノックは…」はいいですね。

>>見たこともない額のお金を手にした
>>世界中を巡るツアーの連続でメンバーは次第に疲弊していき
>>こうして混乱の中「Two Hearts」が完成。

メンバーはまじめな人ばかりだったのかも。
似たような毎日を送っていたツェッペリン、イーグルス、Fマック
はライブ→らんちき騒ぎ→ライブ、が延々と続く中でも
傑作を生み出していたからです。

投稿: モンスリー | 2025.01.26 21:05

モンスリーさん、こんばんは。

>80年代限定のビッグネームになるかもしれない、MAW
ですが、私は全く聞いていません。

やはりそうでしたか・・
まあプログレやAORとは異なる音楽で、ご指摘のとおり日本では80年代前半限定の人気でした。

>「ノックは夜中に」と「ダウンアンダー」です。
>どちらも、イギリス系ニューロマな感じですが、なぜかレゲエへのこだわりが。この人たち、オーストラリアなんですね。

この2曲で人気が出たんですが、確かに「ノックは夜中に」はニューロマの、「ダウンアンダー」はレゲエの香りがしますね。
後者は失われたオーストラリア精神を皮肉やユーモアも込めて歌った曲だそうです。

>多分、リアルタイムではこのレゲエ感にひっかかりがあってまるで聞かなかったと思います。

自分はあのレゲエ調にそれほど拒否感はなかったですね。
むしろ「Be Good Johnny」「Overkill」「It's a Mistake」はポリスにも似ていて好きでした。

>似たような毎日を送っていたツェッペリン、イーグルス、Fマックはライブ→らんちき騒ぎ→ライブ、が延々と続く中でも傑作を生み出していたからです。

メン・アット・ワークが真面目な人たちだったかは不明ですけど、無名から突然世界中で大ヒットとなれば、やはり人間関係はどこかおかしくなるんでしょうね。
ライブ→衝突→ライブ→脱退→ライブ→加入という中で傑作を連発してたパープルという人たちもいますけど・・

投稿: SYUNJI | 2025.01.27 21:04

SYUNJIさん、こんばんは。ノックは夜中に!…まだ23時前ですが。

1980年代前半のヒットチャートフリークの私としては、メン・アット・ワークとくれば黙っているわけにはいきません!

…と、イキリたいところですが、「ノックは夜中に」と「ダウン・アンダー」だけをiPodに残し、1stアルバムとベスト盤を売り飛ばして見切りをつけた身としては、果敢にも3rdアルバムにアタックしたSYUNJIさんには失笑…もとい、敬意を表するのみです。

コリン・ヘイのとぼけた歌声も、グループの軽めの演奏も好みではあるのですが…何かが足りない。かつてのサッカー日本代表のような決定力のなさです。

ウィキペディアのメン・アット・ワークの項目には3rdアルバムへの言及がありません。寂しすぎます。SYUNJIさん、編集をお願いします。

投稿: F丸 | 2025.02.06 22:42

F丸さん、コメントありがとうございます。

>1980年代前半のヒットチャートフリークの私としては、メン・アット・ワークとくれば黙っているわけにはいきません!

やっぱりそうですよね、当時はメン・アット・ワークって日本でもたくさん流れてましたし。

>…と、イキリたいところですが、「ノックは夜中に」と「ダウン・アンダー」だけをiPodに残し、1stアルバムとベスト盤を売り飛ばして見切りをつけた身としては、果敢にも3rdアルバムにアタックしたSYUNJIさんには失笑…もとい、敬意を表するのみです。

まあ2025年に初めて「Two Hearts」を聴いてるのも東洋では自分だけでしょうね・・
そんなに重大な決意があったわけでもないんですけど。

>コリン・ヘイのとぼけた歌声も、グループの軽めの演奏も好みではあるのですが…何かが足りない。かつてのサッカー日本代表のような決定力のなさです。

これはまさにその通りです。
大きく方向転換したわけでもないんですが、2枚目までにあった彼らの良さが薄まった印象ですね。

>ウィキペディアのメン・アット・ワークの項目には3rdアルバムへの言及がありません。

そうなんですよ。
「Two Hearts」についてだけでなく、あれだけ日本でも流行ったはずなのに、日本語版は全体的にかなり淡泊ですね。
今回「Two Hearts」については英語版をムリヤリ翻訳して調べました。

投稿: SYUNJI | 2025.02.08 20:28

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