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聴いてない 第315回 ヴィクセン

女性だけのバンドと言えばゴーゴーズバングルスなどが思いつくが、その中でもHR/HMに傾倒してたバンドがヴィクセンである。
みなさんはご存じでしょうか?

ヴィクセン、聴いたことがあるのは89年の「Cryin'」だけ。
リアルタイムなエアチェックではなく、2000年くらいに「NOW」系CDをレンタルで聴いたらたまたま収録されていたという状況。
アルバムは聴いてないので、聴いてない度は2。

デビュー当時雑誌でヴィクセンの写真付き記事を見た記憶がかすかにあり、「女豹」「女性版ボン・ジョビ」などと表現されていた気がする。
小岩のCDレンタル店「友&愛」にもアルバムが並んでいたこともぼんやり覚えている。
美貌のガールズバンドだけど、メタルな人たちという情報だけ知って遠ざけたんだと思う。
ちなみにヴィクセンという同名のバンドは他にも存在し、マーティー・フリードマンが82年頃に在籍したメタルバンドもヴィクセンというそうだ。

で、ガールズのメタルバンド、ヴィクセン。
当時の日本での人気や知名度は全くわからない。
そこで生涯初のヴィクセン調査を開始。

ヴィクセンはアメリカのハードロック/ヘビー・メタル・バンド。
ミネソタ州セントポールでジャン・クエネムンドを中心に1980年に結成された。
その後ジェネシスに改名したりメンバー交代があったりしたが、84年に以下のメンバーでコメディ映画「ハードボディーズ」にバンド「ダイパー・ラッシュ」として出演した。
・ジャン・クエネムンド(G)
・ジャネット・ガードナー(Vo)
・ピア・マイオッコ(B)
・ローリー・ヘドランド(D)
・タマラ・イワノフ(G)

なので音楽より映画デビューのほうが先ということになる。
さらに87年にはドキュメンタリー映画「西洋文明の衰退 II: メタル イヤーズ」にも出演。
ドキュメントなので演技はなくインタビュー出演だったが、この映画にはファスター・プッシーキャットやメガデスのライブ映像や、オジー・オズボーンエアロスミスアリス・クーパーキッス、メガデスやW.A.S.P.などメタルな人たちのインタビューが収録されており、サントラ盤も発売された。
豪華なメタルバンドに混じってデビュー前のヴィクセンも出演していたのは驚きである。

88年頃にはドラムがロキシー・ペトルッチ、ベースがシェア・ペダーセンに代わり、4人体制の「クラシック・ラインナップ」が形成された。
この4人でデビューアルバム「Vixen」をリリース。
最初のシングル「Edge of a Broken Heart」はリチャード・マークスとフィー・ウェイビルの共作で、リチャードはプロデュースも担当し、全米26位・全英51位を記録。
続く「Cryin'」は全米22位・全英27位で、最大のヒット曲となった。(アルバムは全米41位)
ヴィクセンは翌89年に世界ツアーを行い、オジー・オズボーンやスコーピオンズ、ボン・ジョビなどのアーティストをサポートしたり、ヘッドライナーを務めたりした。

90年には2枚目のアルバム「Rev It Up」を発表。
直後にツアーを開始し、1年かけて欧米を巡り、ステージでメインを務めたり、キッスやパープルのサポート・アクトで演奏した。
しかしこのツアー中にメンバー間に摩擦が生じ、92年にヴィクセンは解散する。

以降のヴィクセンの歴史は、メタルバンドの鉄則である離合集散の連続だった。
ガールズではあっても、やはりメタルの血の掟からは逃れられなかったようだ。

97年にロキシー・ペトルッチとジャネット・ガードナーが新メンバー2人を加えてヴィクセンを再結成する。
全米ツアー中に1人が脱退し、98年に3人でアルバム「Tangerine」を発表。
直後にロキシーの妹マキシンがベースとして参加するが、バンドは創始者ジャン・クエネムンドから商標権侵害で訴えられた。
結果はバンド側が勝訴したが、一部ジャンの要求も受け入れられ、痛み分けみたいな話になったらしい。
やはりジャンにしてみれば、自分の作ったヴィクセンが自分抜きで再結成されて活動してることが不満だったんだろう。

その後ジャンとメンバーは和解し、99年にはベスト盤「The Best of Vixen: Full Throttle」もリリースされた。
2001年にヴィクセンはジャン・クエネムンド、ジャネット・ガードナー、ロキシー・ペトルッチ、新ベーシストのパット・ホロウェイで再々結成された。
再々結成ヴィクセンはめでたく全米ツアーを開始。
だがツアーの途中で意見の相違というやっぱりでド定番な理由によりジャンと他の3人の間にまた亀裂が生じ、3人は脱退。
結局ジャンだけがヴィクセンに残ることになった。

ジャンは残りのツアーを続けるため、急遽後輩芸人3人を招集。
呼ばれたのはジェナ・サンツ・アジェロ(Vo)、リン・ルイーズ・ローリー(B)、キャスリン・キャット・クラフト(D)。
だが2004年にアメリカのテレビ番組「Bands Reunited」でデビュー当時のメンバーでのライブが放送された。
番組を見たファンの間でオリジナルメンバーでの再結成も期待されたが、やはりテレビ用のイベントだったようで、結局実現はしなかった。
新生ヴィクセンは2006年にスウェーデンでのライブを収録した「Extended Versions」と、スタジオ盤「Live & Learn」を発売。
「Live & Learn」ではデビッド・ボウイの「Suffragette City」をカバーしている。

しかし結果的にこれがジャン在籍の最後のアルバムとなる。
新生ヴィクセンは2011年頃には次のアルバムを制作中であると表明したが、ジャンは密かにジャネット・ガードナー、シェア・ロス、ジーナ・スタイル、ロキシー・ペトルッチによるクラシックなヴィクセンを再結成する計画を立てていた。
だが再結成を発表する直前にジャンが癌と診断され、発表は無期限延期となる。
ジャンは残念ながら回復することなく2013年10月に59歳で亡くなり、クラシック・ヴィクセン再結成は永久に不可能となった。

残されたクラシック組のジャネット、シェア、ロキシーは、ジャンの遺志を尊重しヴィクセンの活動継続を決意する。
ジャンの構想どおりジーナ・スタイルがバンドに復帰し、翌2014年からジャン追悼ライブをアメリカやカナダで行った。
ツアー後ロキシー・ペトルッチは、ヴィクセンがジャンに捧げる曲を収録した新しいアルバムを制作中であると語った。

だがジャンが亡くなった後も、ヴィクセンはメンバーチェンジが止まらなかった。
2017年3月にジーナ・スタイルが脱退し、ブリット・ライトニングが加入。
2019年1月にはボーカルのジャネット・ガードナーが、家族との時間やソロキャリアを優先するためヴィクセンを脱退したとFacebookで発信。
バンドはジャネット脱退後も活動を継続し新しいスタジオアルバムを制作中であると発表。
後任にロレイン・ルイスが加入する。
2022年2月、今度はシェア・ロスが活動休止宣言し、後任にリッチー・コッツェンの妻としても知られるブラジル人のジュリア・ラージが加入する。

ヴィクセンは現在も活動中で、昨年10月にはシングル「Red」も発表している。

以上がヴィクセンの栄光と混乱の歴史である。
知ってた話はやはり今回もゼロ。
在籍した人の総数が20人以上もいるという変動相場制バンドだった。

初期の映像や写真を見ると、メンバー全員がボリュームのある長髪をしていて、ビジュアル面でもメタル系を強調していることがわかる。
ただし歌唱力や演奏は比較的実直で、絶叫や重低音を売りにしていた感じではない。
ステージで豚の生首を客席に投げたりギターに火を付けて振り回したりブーツに凶器を仕込んで反則したり、といった狼藉をはたらいたりはしていないようだ。
少なくとも「Cryin'」はふつうのロックナンバーで、ハートのアルバムに入っていても全く違和感はない曲である。
もしデビューが5年早ければ、きっと柏村武昭も番組で紹介していただろうと思う。

というわけで、ヴィクセン。
スタジオ盤は4枚なので全盤学習も難しくはなさそうですが、聴くとしたら正直デビューアルバムだけでもいいかなとも思っています。
みなさまの鑑賞履歴はいかがでしたでしょうか?

Vixen

ヴィクセン Vixen

Tangerine
ヴィクセン Tangerine
Vixen-147236

ビクセン(Vixen) 双眼鏡 アトレックIIHR8×32WP 14723-6 ブラック

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
全く知りません。名前も初めて聞きました。ついでに、
>>在籍した人の総数が20人以上もいるという変動相場制バンドだった。

(笑)ドゥービーの14人より多いです。クリムゾンでも20人以下(多分)。
イエスは離合集散が激しいので今なら20人以上いるかもしれません。

女性だけのバンドだから、といって聞くことはありませんが、
ゴーゴーズはベリンダの流れで聞いています。
あとは、レココレ誌のアメリカンハード特集で見たランナウェイズ。
ヒット曲「チェリーボム」はいいですが、他はちょっと…でした。
もちろん、女性だけバンドだからちょっと、というわけではありません。
こういうのは男性だけバンドでもいやというほどありました。

そもそも、80年代くらいまでは女性だけのバンドは少なかったのでは
ないでしょうか。欧米でも職業の性差別があってソロ(歌手)は
成立しやすくても、全員女性バンドは難しかったのかもしれませんね。

投稿: モンスリー | 2024.05.17 20:27

モンスリーさん、コメントありがとうございます。
ヴィクセンご存じなかったですか。
延べメンバー20人以上は自分も調べて初めて知りました。

>あとは、レココレ誌のアメリカンハード特集で見たランナウェイズ。

ランナウェイズはデビュー当時からボーカルが下着姿で歌うという情報は日本にも伝わってましたね。
リタ・フォードやジョーン・ジェットが在籍してたことでも有名ですね。聴いてませんけど・・

>そもそも、80年代くらいまでは女性だけのバンドは少なかったのではないでしょうか。

そう言われるとあまり思いつきませんね。
他はバナナラマくらいか・・この人たちはバンドというよりグループというイメージですね。
70年代に登場した、その名も「ガールスクール」というバンドがありましたが、ボーカルだけ美人だったんでミュージックライフの読者欄では「造語 ガールスクーる:ブスばかり集まる」などとヒドイ言われようでした・・

投稿: SYUNJI | 2024.05.18 18:38

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