聴いてない 第312回 ロマンティックス
名前はとてもわかりやすいけど、日本での知名度はおそらくC-C-Bよりは低いであろう、ザ・ロマンティックス。
もちろん聴いてないのですが、みなさんはこのバンドご存じでしょうか?
ロマンティックス、聴いてるのは大ヒット曲「Talking in Your Sleep」と、「One In A Million」の前半。
どっちも当時の若者向け一流FM音楽番組「サンスイ・ベストリクエスト」で録音したが、「One In A Million」はテープが足りず途中で切れてしまい、以来二度とフルコーラス録音ができなかった。
従って聴いてない度は事実上2。
雑誌に紹介記事があったこともかすかに覚えており、なんか黒い革ジャン姿の面々だったと記憶している。
当時日本のFM番組で曲がかかるくらいのアーティストであれば、今はネットでほぼ氏素姓や略歴や賞罰やイザコザが(真偽は別として)調査可能だ。
今回ロマンティックスも調べたらいろいろな情報が見つかったが、日本での「Talking in Your Sleep」だけの一発屋バンドという評価は、本国ではかなり違うことが判明。
詳細は以下のとおり。
ザ・ロマンティクスは1977年にデトロイトで結成されたアメリカのロックバンドである。
・・・いきなり勘違いで恐縮だが、ずっとイギリスのバンドかと思ってました・・
パワーポップやニューウェーブといったカテゴリーに組み入れられることが多いらしいが、どちらかというと50年代の古き良きアメリカのロックンロールやモータウンなどのR&B、また60年代のガレージロックに影響を受けたバンドだそうだ。
そう言われてもあまりよくわかりませんが・・
結成当時のメンバーは以下のみなさんである。
ウォーリー・パルマー(Vo、G)
マイク・スキル(Vo、G)
リッチ・コール(B)
ジミー・マリノス(D)
主にウォーリー・パルマーとマイク・スキルが作曲を担当し、メンバー全員がボーカルを取れる。
77年のバレンタインデーにデトロイトで初の公演を行い、バンド名をザ・ロマンティックスとした。
78年にインディーズレーベルでシングル「Little White Lies」「Tell It to Carrie」を発表しレコードデビュー。
79年にCBSと契約しこれらのシングル曲を再録音し、セルフタイトルのアルバムをレコーディングした。
このアルバム収録のシングル「What I Like About You」がヒットし、全米49位、全豪2位を記録。
アルバムも20万枚以上の売り上げとなった。(全米61位)
なおこのアルバムではキンクスの「She's Got Everything」をカバーしている。
80年にセカンドアルバム「National Breakout」をリリースするが、直後にマイク・スキルが脱退。
後任ギタリストのコズ・キャンラーが加入し、3作目アルバム「Strictly Personal」をレコーディングした。
しかしその後リッチ・コールが音作りに不満が募り脱退。
脱退したマイク・スキルがベーシストとして復帰することになった。
83年の4枚目のアルバム「In Heat」はロマンティックスにとって最大の商業的成功となる。
1・2枚目のアルバムをプロデュースしたピーター・ソリーを再度プロデューサーに起用。
ピーターさんはプロコル・ハルムの元メンバーで、エリック・クラプトンやホワイトスネイクのレコード制作に参加したことがあり、ピーター・フランプトンやモーターヘッドのプロデュースもしたことがある人物だそうだ。
さらにミキシングを担当したのがイギリスのエンジニアであるニール・カーノン。
この人の実績を調べたら、ニール・ダイヤモンド、ジューダス・プリースト、ホール&オーツ、イエス、カンサス、ドッケン、クイーンズライクなど、ものすごい数の作品でプロデュースやミキシング、アレンジや演奏を手がけている。
このピーター&ニール効果もあって、アメリカではゴールドアルバムを獲得し、最終的には90万枚以上の売り上げを記録。
ファーストシングル「Talking in Your Sleep」はアルバム制作の最後に録音した曲で、当初はインストだったが、出来の良さにメンバーが共感して歌詞やサウンドを追加。
この判断が奇跡を起こし、「Talking in Your Sleep」は全米ビルボードホット100チャートで4週連続3位となる大ヒット。(カナダでは1位)
セカンドシングル「One In A Million」も翌年のチャートで37位、ダンスチャートでは21位を記録した。
ロマンティックスは「In Heat」のヒットを機に全米や国外でコンサートツアーを行い、テレビ番組にも多数出演。
だが。
この絶頂が実にわかりやすくバンド内外に様々な摩擦と軋轢を生むことになる。
84年にドラムのジミー・マリノスがバンドを脱退し、デヴィッド・ペトラトスが加入。
85年にまたピーター・ソリーがプロデューサーとなってアルバム「Rhythm Romance」をリリースするが、ピーター効果も前作に遠く及ばず最高72位に終わり、シングル「Test of Time」も71位と惨敗。
「Rhythm Romance」ツアーはチケットも売り上げが悪く、徐々にバンドとマネジメント会社やレコード会社との間に緊張が高まっていく。
その後バンドはソニー系のレコード会社から離れることになった。
80年代後半、ロマンティックスのマネージャーがレコードやライブから得た利益を不正に流用していたことが発覚。
さらにバンドのヒット曲「What I Like About You」が、テレビコマーシャルに使用するために勝手にライセンスされていた。
メンバーは87年にマネージャーに対して訴訟を起こしたが、面倒な訴訟手続きによりバンドは90年代半ばまで新曲のレコーディングをすることができなかった。
そんな事態にもめげずバンドは活動を続行。
90年にデヴィッド・ペトラトスが脱退するが、元ブロンディのクレム・バークがに加入する。
だがロマンティックスはその存在をほとんど忘れられ、小さな会場で地味にライブ活動を行う日々が続いた。
90年代半ばにバンドにようやく復活の兆しが訪れる。
マネージャーに対する訴訟で勝利したことで、曲のライセンス料がバンドに入ることが保証され、再びレコーディングができるようになった。
まず93年にイギリス限定のEP「Made In Detroit」を録音。
またベスト盤やライブ盤も発売された。
96年から97年にかけては、ドラマーのジミー・マリノスが一時的にバンドに戻りライブを行った。
2003年、プリティ・シングスの「Midnight To Six Man」やキンクスの「I Need You」をカバーした、ブルース志向の強いアルバム「61/49」を発表。
このアルバムでは一時期復帰したジミー・マリノスが半分の曲でドラムを叩いている。
ただ残念ながら商業的には成功とはいかず、チャートでも100位以内には入っていない。
2004年、クレム・バークが再結成ブロンディに参加のため脱退。
バンド4人目のドラマーはブラッド・エルビスで現在も在籍中。
2010年にはベースのリッチ・コールが28年ぶりにバンドに復帰。
2011年にギタリストのコズ・キャンラーがバンドを脱退し、マイク・スキルはようやく本来のポジションであったリードギタリストの座に戻ることができた。
息の長いバンドは他にもたくさんあるが、元リードギタリストが脱退せずに30年近くベースをイヤイヤ(かどうか知らんけど)務め、またリードに戻ったというのも珍しいケースのような気がする。
バンドは現在も活動継続中とのこと。
ただウォーリー・パルマーは若い頃よりだいぶ太ってしまったらしい。
以上がロマンティックスのロマン輝く栄光と軋轢の架け橋である。
知ってた話は当然なし。
多くの日本語サイトには「Talking in Your Sleep」のみの一発屋などと書いてあるし、実際自分もほぼそういう印象しかなかったが、本国ではやはり状況や認識が異なるようだ。
バンド初のヒット曲が実は「Talking in Your Sleep」ではなく79年の「What I Like About You」である、という情報はおそらく日本にはほとんど入ってこなかったんじゃないだろうか。
当時姉が読んでたミュージックライフにロマンティックスが載っていた記憶は全くない。(載ってたらすいません)
その「What I Like About You」はアメリカでバドワイザーのCMやテレビドラマの主題歌に使われ、複数のアーティストによってカバーもされてるそうだ。
さらにテレビゲーム「Guitar Hero Encore」にも使われており、エラい大儲けやん・・と思ったら、バンドはゲーム開発者側を不当な楽曲利用で訴えたとのこと。
ゲームソフトでカバーされた「What I Like About You」の出来が良すぎて本物のバージョンと区別がつかず、「消費者を混乱させ、バンドが実際に音楽をゲーム開発用に録音し製品を支持していると誤解させる」というのがロマンティックスの主張。
バンドはゲームソフトの販売中止と損害賠償を求めたが、提訴の翌年に連邦地方裁判所が「ゲーム開発側はライセンスを適切に取得している」として訴えは棄却されたそうです。
いずれにしろ多くのアメリカ国民に支持されたヒット曲であることは間違いない。
一方「Talking in Your Sleep」はイギリスでは全然売れず全英100位にも入らなかったが、バックス・フィズというグループがカバーして全英15位を記録したとのこと。
同じ曲なのに本家がこれほど売れずカバーしたほうが売れた・・・なぜ?
バックス・フィズというグループも初めて知ったが、アバと同じ男女混生4人組でイギリスではかなり人気があった人たち、だそうです。
ロマンティックスはむしろ当たった「Talking in Your Sleep」だけが、どうも彼ら本来の特徴や持ち味とは違ってたようだ。
本業はもっとワイルドでブルージーなパワーポップで、切り刻むカッティングやガヤ系コーラスが魅力のはずだったらしい。
そう言われると「Talking in Your Sleep」もリズムよくビートを刻むギターやドラムがよく聞こえる曲ではある・・が、サウンド全体はやはり80年代のラメっぽい造りが施してある気がする。
なのでその一般受けするサウンドがゆえに全米で大ヒットしてしまい、同じ路線を期待したニワカなファンが続きを聴いてみたら「なんか違う」となった・・・んじゃないかと思われる。
ロマンティックスを聴いてもいない素人の自分が仮定するのも無意味だけど、最初から得意技のパワーポップ路線で売り出していたら、「Talking in Your Sleep」のような大ヒットはなかったにしても、固定ファンもたくさん付いて違った展開だったんじゃないだろうか。
というわけで、ザ・ロマンティックス。
スタジオ盤アルバムは6枚なのでやる気さえあれば全盤制覇も可能ではありますけど、今日本で全部入手できるのかはわかりません。
聴くとしたら当然最大のヒットアルバム「In Heat」でしょうけど、皆様の鑑賞履歴はいかがでしょうか?
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ザ・ロマンティックス In Heat |
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