聴いてみた 第181回 パール・ジャム
21年目に突入した珍妙希少情弱BLOG、今日のお題はどういうわけかパール・ジャム。
彼らのデビューアルバム「Ten」を聴いてみました。
「Ten」は1991年8月リリース。
前年にマザー・ラブ・ボーンというメタルっぽいバンドを解散させた後、ベーシストのジェフ・アメントとギタリストのストーン・ゴサードは、新しいギタリストのマイク・マクレディ、ドラムのマット・キャメロン、クリス・フリエルとともにリハーサルを開始。
この時録音したのは全てインストで、5曲入りのデモテープを作成した。
そのデモを聴いた元レッチリのジャック・アイアンズ(後にパール・ジャムに加入)が、友人のエディ・ヴェダーにもデモテープを聴かせた。
エディはデモにオリジナルの歌詞をまぜてボーカルをかぶせて録音。
それを聴いたメンバーはエディを気に入り、バンドに迎え入れることにした。
バンドはすぐにエピック・レコードと契約。
さらにデイブ・クルーセン(D)が加わり、バンド名はパール・ジャムとなった。
なおデイブは「Ten」発表前に脱退している。
「Ten」は91年にシアトルのスタジオで約1か月という短い期間で録音された。(あまり予算がなかったらしい)
ニルヴァーナの「Nevermind」よりも発表は先だったが、「Nevermind」は空前の大ヒットを記録する。
すると同期同郷芸人のパール・ジャムにも注目が集まり、2つのバンドが先頭でグランジというジャンルを牽引する形に発展。
全米の音楽業界の潮流を覆すほどの展開となり、結果的に「Ten」はじわじわチャートを上昇し最終的に全米2位の大ヒットアルバムとなった。
タイトル「Ten」は、バスケットボール選手のムーキー・ブレイロックの背番号10から来ているらしい。
グランジ2大巨頭のパール・ジャムの「Ten」。
果たしていまだにグランジ慣れしていない遅すぎな自分は、このアルバムを聴いて10点満点をとれるのでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1.Once
2.Even Flow
3.Alive
4.Why Go
5.Black
6.Jeremy
7.Oceans
8.Porch
9.Garden
10.Deep
11.Release
うーん・・・・・
直感的に言って考え込む音楽ではある。
おおおいいね!とか、楽しいね!とか、気分が高揚する音はどこにもない。
まあそうでしょうねという感覚。
やはり自分が聴いてきた80年代産業ロックとは相当遠い位置の音楽である。
歌詞もどの曲もひたすら重く暗い。
全曲エディ・ヴェダーが書いてるそうだが、自身の過酷な経験や暗い世相や痛ましい事件など、とにかく「本来起きてほしくなかったこと」について語る内容。
ただ難しい言い回しや例えなどはあまり使っていないようで、訳詞を読んでもエディの傷んだ心の叫びであることは理解できる。
これ、発売当時に何の知識もなく聴いていたらまず定着しない音楽だと思う。
今聴いても定着する予感は全然ないけど。
ニルヴァーナの「Nevermind」は実際そうだったし。
たぶんグランジに熱狂する年下の人たちにうっかり「・・・これ、何がおもろいん?」と地雷な質問を漏らしてしまって軽蔑されていた・・いた気がする。
メタリカのブラック・アルバムでも感じたことだが、「これなら売れたのもわかる」ではなく「こういうのがそんなに売れたんだ・・」という感覚。
やはりエア・サプライやデボラ・ハリーで喜んでた自分が気安く聴ける音楽ではないのだ。
しかし。
30年以上経過はしてしまったが(遅すぎ)、今グランジに関する表層知識を自分なりに装備し、ニルヴァーナやカートとの関係なども学習して聴いてみると、かなり深い音楽であることがなんとなくわかる。
グランジなのでやはりちっとも明るくなく、退廃的な音楽というくくりではニルヴァーナに共通するものもあるだろうけど、ギターとベースとドラムとボーカルという誠実な構成だし、サウンドの根幹にブルースやハードロックのニオイは感じるのだ。
実際メンバーはツェッペリンやキッスに影響を受けていると明かしている。
変拍子や転調で小細工したりムダに絶叫したり火を吹いたりサーベルで若手をどついたりという演出はなく、たまにバラードも混ぜたりの実直なロックアルバムだと思う。
そういう意味では恐れていたほどの拒絶感はなかった。
「Black」「Oceans」などメロディやサウンドが美しいと思う曲もある。
実績としては前述のとおり最終的に全米2位まで上昇する大ヒットとなったが、1位獲得を阻んだのがビリー・レイ・サイラスの「Some Gave All」だったそうだ。
「Some Gave All」は17週連続1位という驚異的な記録を立てており、「Ten」も時期をずらして発表してたら間違いなく1位をとれたはず・・と今も言われているとのこと。
ジャケットはピンクっぽい背景に集結するメンバーの手の写真。
どこか野球チームっぽい演出で、あまり予算のないアマチュアバンドのようなデザイン。
バンド名ロゴはジェフ・アメンが作ったそうだ。
だがその後の躍進を示唆するような若いアートでもあり、こういうところも実直なロックバンドの雰囲気が出ていてよいと思う。
比較ばかりで申し訳ないけど、「Nevermind」はジャケットも中身と全然関係なくメンバーもいない強烈なインパクトだが、「Ten」のジャケットにはそこまでの衝撃は感じない。
というわけで、パール・ジャム「Ten」。
好みかと言われると非常に微妙(なんだそれ)でしたが、勉強にはなったというおかしな感覚はあります。
パール・ジャムもアルバムごとの作風はかなり違うとのことなので、機会があれば他のアルバムも試してみようかと思います。
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パール・ジャム Pearl Jam |
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。
3年ぶりに聞き直しました。
改めて聞くと、「デビュー作品でこれだけ!」という大物感があります。
これは、ヴェダーのボーカルに負うところが大きいですが、ギターや
ドラムもいい音で収録されています。「予算がなかった」
というのが信じられませんが、低予算をものともしない勢いが
あったのかもしれません。
目を付けたレコード会社の営業も、大したもんです。
ですが、「これからどんどん聞きたい!」とはなりません。
私の好きなキャッチーな音作り、ポップな曲からは程遠いからです。
ハード系としてとらえても、パープルの「ハイウェイスター」
のような疾走感や高揚感がありません。
この作品が発売されたころはもうロックも成熟しきって
いて、下手に売れ線に走ろうものなら「80年代の遺物」として
無視されていたことでしょう。
自分たちのメッセージをそのまま演奏にぶつけた方がよく、
支持も大きくなったはずです。ここらあたりは時代が味方した、
あるいはヴェダーが流れを読んでいたのかもしれません。
>>気安く聴ける音楽ではないのだ。
御意。ポスト80年代、難しいです。
投稿: モンスリー | 2024.02.08 21:29
モンスリーさん、コメントありがとうございます。
>改めて聞くと、「デビュー作品でこれだけ!」という大物感があります。
確かにそうですね。
デビューアルバムですが完成度の高い音楽だと感じます。
>ですが、「これからどんどん聞きたい!」とはなりません。
>私の好きなキャッチーな音作り、ポップな曲からは程遠いからです。
>ハード系としてとらえても、パープルの「ハイウェイスター」のような疾走感や高揚感がありません。
全て同感です。
モンスリーさんとこれだけ意見が合うことも珍しい気もしますが、とにかくキャッチー・ポップ・高揚といった表現が当てはまらないですね。
>この作品が発売されたころはもうロックも成熟しきっていて、下手に売れ線に走ろうものなら「80年代の遺物」として無視されていたことでしょう。
このあたりが90年代の難しかったところですね。
成熟しきってたのは感じましたが、グランジ・オルタナという転換には全くついていけませんでした。
今もですけど。
ただ、この1枚で結論付けも短絡的ですので、他のアルバムやニルヴァーナ、フー・ファイターズなども併せて学習したいと思います。(手遅れですけど・・)
投稿: SYUNJI | 2024.02.11 18:04