聴いてない 第309回 ドナ・ルイス
21年目最初の聴いてないシリーズ、お題目はドナ・ルイス。
みなさんはこの人をご存じでしょうか?
ドナ・ルイス、唯一聴いているのは96年の大ヒットシングル「I Love You Always Forever」だけ。
プロモ・ビデオの音声をテープに録音したので、映像で姿は見てたはずだが顔はもう思い出せない。
同時に録音したのがロス・デル・リオの「Macarena(恋のマカレナ)」で、アメリカのチャートでは「I Love You Always Forever」はこの「恋のマカレナ」に首位を阻まれて最高2位だったとのこと。
他に知ってる情報は一切なく、聴いてない度は2。
そこでいつもの通りドナ・ルイスの情報を調査開始したところ、いきなり不思議な展開に。
どうも伝えられている生年月日が2パターンあるようなのだ。
まずウィキペディアでは英語版も日本語版も最初に「1973年7月6日生まれ」と書いてある。
さらに日本語版の略歴には「1973年、イギリス・ウェールズの首都カーディフに生まれる。」とある。
だが英語版を訳すと「生年月日については、相反する記述がある」となっている。
具体的には、上記の1973年8月6日生まれ説と、1957年から1966年の間に生まれた説があるようだ。
どういうこと?
もう少し英語版を読んでみると、「雑誌「People」の記事によれば、カレッジを卒業したのは1979年で、1996年11月時点で30代」となっている。
デビュー当時のインタビューでも本人がそう答えており、ロード・マネージャーと10年間結婚生活を送っていたとのこと。
この情報が正しければ、ドナ・ルイスは1957年から1966年の間に生まれたことになるのだ。
まあ日本でもたまに年齢サバ読み芸能人てのはいるけど、ここまで情報に開きがあるヒトも珍しい気がする。
57年から66年の間でも10年の幅があるし、57年生まれと73年生まれだと16年も違うんですけど・・・
とりあえず生年月日以外に疑惑はないようだ。
出身はウェールズのカーディフという都市で、父親はアマチュアのジャズピアニストという家庭に育つ。
ドナは6歳でピアノを始め、その後クラシックの作曲を学び、音楽学校卒業後いったんは音楽教職に就くが、プロのミュージシャンを目指してバーミンガムに移る。
ヨーロッパ各国でバンド活動をしながら、自宅で録音したデモテープをレコード会社に送っていた。
そのデモテープにあった「I Love You Always Forever」をアトランティック・レコードの社長だったダグ・モリスが気に入り、ドナに連絡を取るところからサクセスストーリーが始まった。
ダグ・モリスはドナをニューヨークに呼び寄せ、94年にアトランティックと契約させる。
96年にデビューシングル「I Love You Always Forever」をリリース。
これが大ヒットとなり、全英シングルチャートで5位を記録し14週間もチャートインした。
全米チャートでは前述のとおりロス・デル・リオの「Macarena」 に阻まれて9週連続で2位だった。
なおウェールズ出身の歌手が全米10位以内に入ったのは、83年にボニー・タイラーが歌った「Total Eclipse of the Heart(愛のかげり)」以来のことだったそうだ。
知らなかった・・・というかボニー・タイラーもウェールズ出身だったのね。
バリバリのアメリカンガールかと思ってました・・・
ドナ・ルイスのセカンドシングル「Without Love」も全英39位・全米41位のヒットとなった。
シングルのヒットに引っ張られてデビューアルバム「Now in a Minute」も全英52位を記録。
全米チャートでは31位となりプラチナ認定を受けた。
しかしドナの快進撃は残念ながらデビュー当時だけの結果に終わることになる。
97年の映画「アナスタシア」のサントラからのファーストシングルとして、リチャード・マークスとのデュエット「At the Beginning」がリリースされた。
(ドナもリチャードも作詞作曲はしておらず、他の人の作品)
全米45位と健闘はしたものの、以来ドナもリチャードも全米100位以内に入るヒット曲を出せておらず、現時点では2人にとって最後のヒット曲となっている。
ドナは98年に2枚目のアルバム「Blue Planet」を発表。
シングル「I Could Be The One」「Love Him」「Falling」もリリースし、音楽評論家からの評価は高かったが、実績は伴わずアルバムは全英全米とも100位に届かなかった。
(シングルは「I Could Be The One」がかろうじて全英99位)
がっかりしたアトランティックは契約を解除。
低迷の理由は方向性の転換にあったようだ。
ファンは当然ドナに「I Love You Always Forever」のような路線を期待したが、ドナ自身は「同じような曲を書かないといけないと思ってしまうのはダメ」と考えていたらしい。
なのでシングル3曲はどれも「I Love You Always Forever」とは全く曲調が異なるそうだ。
契約は打ち切られたが、自らの意志に正直でありたかったドナは、アコースティックにシフトしたアルバム「Be Still」を自主制作する。
商業的な成功にはならなかったが、本人は満足していたようだ。
2000年代に入ると、トランスやハウス・ミュージックのレコーディングにゲスト参加。
2008年に4枚目のアルバム「In the Pink」をリリース。
シングル「Shout」は映画「32A」のサウンドトラックにも収録されている。
2010年4月にサイド・プロジェクトの「シュート」のリードボーカルも務めた。
2012年にはプログレッシブ・ハウス・デュオのプロジェクト46やダブヴィジョンとコラボし、「You and I」をリリース。
2015年3月に約10年ぶりとなるアルバム「Brand New Day」を発表。
このアルバムはジャズの影響を受けたカバー集で、デビッド・ボウイの「Bring Me the Head of the Disco King」やフレッド・ニールの「Everybody's Talkin'」を収録。
また自身の「I Love You Always Forever」を異なるアレンジで再録音し収録した。
2016年にはオーストラリアの女性シンガーのベティ・フーが「I Love You Always Forever」をカバー。
昨年ドナもニック・ゲイルやノラ・エン・ピュアといったハウス系ミュージシャンと組んで「I Love You Always Forever」の別バージョンを発表している。
以上がドナ・ルイスの経歴だが、当然知ってた話は全くなし。
一発屋扱いとなっていることも知らなかった。
アコースティックやトランスやハウスといったジャンル横断の活動履歴だが、結局デビューの頃の雰囲気をなぞった曲は全く出していないとのこと。
意志の強いアーチストだとは思うが、やや残念な気もする。
唯一聴いた「I Love You Always Forever」だが、実はかなり好きな曲である。
深夜の番組で知ったこともあるが、この曲は夜聴くのに向いていると思う。
決して暗くはなくリズムよく流れるメロディなのだが、どこか儚げで霞がかったイメージのサウンドが非常によい。
声やビジュアルはシンディ・ローパーに少し似ていると感じる。
ドナ・ルイスがこの曲を書いたきっかけは、イギリスの小説「ラヴ・フォー・リディア」だったそうだ。
歌詞で繰り返す「I Love You Always Forever、Near and Far Closer Together」という部分は小説に書いてあった文章をそのまま採り入れており(いいのか?)、さらに曲のタイトルも最初は「リディア」だったとのこと。
さすがにタイトルまで拝借したらマズかろう・・・と思って変えたらしいけど、大ヒットデビュー曲が盗作騒動にならずに済んでよかったスね。
96年当時はもうFMエアチェックや新譜レンタルなどもやめていて、年末にMTVなどで放送されるヒット曲プロモ・ビデオ総集編みたいな特番だけを録画していた。
なので「恋のマカレナ」、クラプトンの「Change the World」やアラニス・モリセット「Ironic」、シェリル・クロウの「If it Makes You Happy」など96年のヒット曲もかろうじて覚えている状態。
その中でも「I Love You Always Forever」の独特の淡い雰囲気は気に入っていた。
だが。
今回久しぶりに「I Love You Always Forever」のプロモ・ビデオを見てみたが、驚くほど簡素でカネのかかってなさそうな映像だ。
映るのは室内で歌うモノトーンなドナの姿とたまに出てくるピアノだけで、他に誰も登場せず風景も演出もなし。
80年代のムダにきらびやかな映像とは対極的な作りである。
レコード会社側も偉い人の肝いりでデビューさせることにはなったけど、新人のプロモーションにそんなにお金はかけられなかっただろうし、まさかあんなに大ヒットするとは思ってなかったので・・といったところだろうか。
というわけで、ドナ・ルイス。
「I Love You Always Forever」は好きな曲なのでこれを頼りにアルバム鑑賞、と行きたいところですけど、どうやら彼女のキャリアの中ではこの曲だけ突出していて似たような雰囲気の曲もないらしいので、その点は不安ですが・・・
それでもドナ・ルイス学習には「Now in a Minute」は必須だとは思いますので、感想や聴き所など教えていただけたらと思います。
ドナ・ルイス Now in a Minute |
ドナ・ルイス Brand New Day |
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