« 聴いてない 第308回 エイス・ワンダー | トップページ | 2023年の終わりに »

聴いてみた 第180回 ELO その3

70年代ELO中高年強化合宿補講シリーズ、3時限目は彼らのデビューアルバム「The Electric Light Orchestra」を聴いてみました。
先日聴いてみたブルー・オイスター・カルトとともに近所のユニオンで購入。

強化合宿とか言いながら、前回「オーロラの救世主」を聴いたのは3年も前である。
ELOについてはこの3年間特に危機感もなく過ごしてきた。
というか、もともとELOに危機感を覚えたことはないという面倒でやっかいな中高年リスナーである。(いいから聴けよ)

Elo

聴く前にELO結成とアルバム制作の過程を稚拙にSLシータップで睡眠学習。(意味不明)
ELOの源流はザ・ムーヴというバンド。
1965年末にロイ・ウッド、ベヴ・ベヴァンを含む5人組として結成され、4枚アルバムを発表した。
3枚目のアルバム制作前にジェフ・リンが加入し、その後セカンドネームのような愛称として「エレクトリック・ライト・オーケストラ」を使い始める。
ムーヴの最後のアルバム「Message From The Country」はELOデビューアルバムと同じメンバーで並行して作られていった。

アルバム「The Electric Light Orchestra」は71年12月にリリースされた。
ロイ・ウッド、ジェフ・リン、ベヴ・ベヴァンが全曲で演奏し、フレンチ・ホルンはビル・ハント、バイオリンをスティーブ・ウーラムが担当。
アメリカでは72年3月に別名「No Answer」というタイトルでリリースされている。
レコード会社の重役(秘書と書いているサイトもあり)がアルバムタイトルの電話連絡を誤解したため、という理由だそうです。

その後ムーヴを名乗ることをやめ、ELOとして活動することになる。
ELOは結成当時「ビートルズがエリナー・リグビーでやり残したこと(管弦楽の採り入れ)を達成する」というコンセプトを持っていたそうだ。
ロイ・ウッドはこの目標実現に向けて様々な管弦楽器を駆使してロックとクラシックの融合を試みた。
これに呼応したジェフ・リンが多数作曲を手がけ、試行錯誤を続けながらアルバムを完成させた。

ここから華麗で輝かしいELOの栄光の物語が始まる・・・というはずなのだが、ロイ・ウッドは次のアルバムを作ってる間に他のメンバーを連れて脱退した。
脱退理由は「マネージャーのドン・アーデンの働きがいまいち気に入らなかった」とされているが、その後ロイが作ったウィザードというバンドのマネージャーをドン・アーデンさんが務めているので、どうもウソっぽい。
たぶんジェフ・リンのことが気に入らなかったんだと思う。

目的意識高い系の若者たちで結成・制作された「The Electric Light Orchestra」。
果たしてロックとクラシックの融合とはどんな音がするのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1.10538 Overture(10538序曲)
この曲だけベスト盤で聴いていた。
イントロのぶびんびんぶびんびんぶびん・・と響く特徴的なギター、効果的に鳴るチェロやホルン。
出だしからELO(ジェフ・リン)のクラシックとビートルズ趣味が満載。
決して明るくもなく楽しそうでもない不思議なメロディだが、何度聴いても飽きない。
10538とは脱獄囚に付けられた番号を意味しているとのこと。
全英チャートで9位の実績を残している。

2.Look at Me Now
ロイの作品でボーカルもロイ。
ELO版「エリナー・リグビー」という評価があるようだが、わかる気がする。
チェロ主体の美しいサウンドだが、どこか詰めすぎで騒々しい印象。

3.Nellie Takes Her Bow
ジェフの歌うバラード。
前半はおだやかに進行するが、中盤の間奏はあまり調和がとれておらず、どの楽器も勝手な印象。
後半はやや力のこもったボーカルで、ラストは静かに終了。

4.The Battle of Marston Moor (July 2nd 1644)
なんとなくインドや中近東を思わせる音が続く歌劇調の曲。
メロディやサウンドに転換が多くプログレ色が強いので少し聴きづらい。
エンディングも散漫な印象。
パーカッション担当のベヴが演奏を嫌がったため、全楽器をロイが演奏しているそうだ。

5.First Movement (Jumping Biz)
LPではここからB面。
ロイ作のインストで、ロックのリズムにフラメンコ風ギターとストリングスという不思議な組み合わせ。
アルバム全体がそうだが、実験的でいろいろやってみようぜ感はある・・・のだが、聴いていて心地よいかというとそうでもない。

6.Mr. Radio
ジェフ・リンのビートルズ趣味全開の曲で、シングルカットもされた。
ジョン・レノンが歌ってもおかしくないようなメロディで、転換や逆回転など、あちこちにビートルズをなぞるサウンドが置かれている。
その後のELOの方向性が見えるような曲だと思う。
歌詞は妻に逃げられた男が一人ラジオに語りかけるという寂しい内容。

7.Manhattan Rumble (49th Street Massacre)
今度はジェフ作のプログレなインスト。
行進調のリズムが基盤だが、サウンドは楽しくなく各楽器はやはり好き勝手で、あまり調和はなく散らかった感じ。

8.Queen of the Hours
「Look at Me Now」に似た感じの曲だが、これはジェフの作品。
これも弦楽器主導の美しいサウンドなのだが、暗く重い曲調で不協和音も多く聴きにくい。

9.Whisper in the Night
ラストはロイが歌う壮大なバラード。
わりとシンプルなサウンドだが、ボーカルが少し遠くに聞こえるので弱い。
もっと前に出て歌ったらいいのに・・と思う。
間奏もやはり調和があまりとれておらず、残念な印象。

CDにはこの後ボーナストラックとして「The Battle of Marston Moor (July 2nd 1644)」と「10538 Overture」のテイク1が収録されている。
テイク1なので音が軽く粗い感じで、特に「10538 Overture」はボーカルも荒っぽい。
本番ではあちこち修正したんだなと感じる。

全体を通して感じるのは、曲調が少し暗いこと。
その後のELOにあるゴージャスでロマン輝くメロディやサウンドは、まだこのアルバムにはそれほど感じない。
安い表現だがやや粗削りな印象はある。
また各楽器やボーカルとコーラスの調和も、思ったほどとれていない気がする。
おそらくこのあたりはロイ・ウッドの志向が反映されているのだろう。
ロイと別れたジェフ・リンは、ロイの残した「ビートルズのやり残したこと」「ロックとクラシックの融合」とともに「さらに売れる音」を追求し、大ヒット曲とアルバムを量産していったと思われる。

ジャケットは洋館の部屋の中に置かれた電球の写真。
バンド名やタイトルをそのまま表したアートで、ヒプノシスによるデザインだそうだ。
発売当時はイケてたのかもしれないが、その後の物語調やSF映画風のジャケットに比べるとさすがに少し地味な印象。

というわけで、「The Electric Light Orchestra」。
後年の各名盤につながる音は感じましたが、やはりデビュー当時はまだ実験的で調和も盛りもやや弱かったことはわかりました。
70年代の未聴盤はあと4枚も残ってますが、次回は名盤とされる「Eldorado」「Out of the Blue」を選んでみようと思います。

 

 

 

| |

« 聴いてない 第308回 エイス・ワンダー | トップページ | 2023年の終わりに »

コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
1曲目「10538 Overture(10538序曲)」だけ聞いています。ただし、
ライブバージョンです。
この曲はプログレ風味があるので好きです。が、SYUNJIさんの記事によると、
プログレ志向はないですね。もちろん、1st以降の展開にも、プログレは
ないと思います。やはり、ELOはリンのポップセンスが反映された
バンドなんだと思います。

>>管弦楽器を駆使してロックとクラシックの融合

これですが、ELOのだいご味は弦楽器という評を読んだことがあります。
アルバム「Time」など弦楽器が登場しないサウンドはELOらしさ
がないとも。

ところで、私のように後追いでアルバムを聴く者にとって、1stアルバムは
評価が辛くなります。といいますのも、最初に評価が固まっている名盤や
傑作を聞いてしまっているからです。
私が1stから傑作または名盤だと思うのは、
ボストン、シンディ・ローパー、クリムゾン、TOTO、ツェッペリンです。
逆に、ドゥービーやスプリングスティーンでも1stはほとんど聞きません。

投稿: モンスリー | 2023.12.18 21:26

モンスリーさん、コメントありがとうございます。

>この曲はプログレ風味があるので好きです。が、SYUNJIさんの記事によると、プログレ志向はないですね。

自分みたいな産業ロックまみれからすればじゅうぶんプログレ寄りではあるんですが、難解でとっつきにくい感覚はなかったです。
ここはご指摘のとおりジェフ・リンのセンスだと思います。

>ELOのだいご味は弦楽器という評を読んだことがあります。
>アルバム「Time」など弦楽器が登場しないサウンドはELOらしさがないとも。

デビュー当時からリアルタイムで追ってきたファンからすれば、そういう評価になるんでしょうね。
自分は「Time」から入ったクチなので、ストリングスのないサウンドも気になりませんでした。

>私が1stから傑作または名盤だと思うのは、ボストン、シンディ・ローパー、クリムゾン、TOTO、ツェッペリンです。

これはおおむね同感です。
シンディやクリムゾンはそれほど枚数を聴いてませんけど・・
自分の場合、ポリスが該当します。
後追いでもビリー・ジョエルやイーグルスやディープ・パープルなんかもファーストはいいアルバムだと思いますね。

投稿: SYUNJI | 2023.12.19 20:55

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 聴いてない 第308回 エイス・ワンダー | トップページ | 2023年の終わりに »