聴いてない 第305回 スレイヤー
アンスラックスを採り上げた時にこっそり告白していた聴いてないバンド、スレイヤー。
全く聴いてません。
1曲も知らず、アルバムジャケットも全く見覚えがない。
メンバーの名前や顔も知らず、そもそも何人組なのかもわからない。
スラッシュメタル四天王の中で、アンスラックスもスレイヤーも1曲も聴いていない。
聴いてない度は無双の1。
四天王のうちメタリカとメガデスはアルバム1枚だけ聴いてみたが、定着は全くしていない。
アンスラックスは調べてみたものの聴く意欲も野心もわかないので、スレイヤーもそうなる可能性は高い。
やはりメタルは自分にとってはボルダリング並にそびえ立つ高き壁である。
それでも聴けそうな要素が少しでも見つかるなら・・というすがる思いで、スレイヤー調査開始。
スレイヤーは1981年にケリー・キング(G)、ジェフ・ハンネマン(G)、デイブ・ロンバード(D)、トム・アラヤ(Vo・B)によってロサンゼルス郊外のハンティントン・パークで結成された。
結成当初はドラゴンスレイヤーという名前で南カリフォルニアのクラブでアイアン・メイデン、ブラック・サバス、ジューダス・プリーストなどのカバー曲を演奏していた。
ドラゴンスレイヤーという名前の由来は、81年公開の映画のタイトルという噂があったが、ケリーは否定している。
またデイブによればスレイヤーに落ち着く前は「ウィングス・オブ・ファイヤー」を名乗るはずだったとのこと。
スレイヤーの特徴として、歌詞やアルバムジャケットアートで殺人犯・拷問・虐殺・組織犯罪・秘密結社・オカルティズム・テロ・反宗教・ファシズム・人種差別・戦争などのダークでヤバめなテーマを扱っている点が挙げられる。
このため曲やアルバムの発売禁止・延期、訴訟や宗教団体からの批判を度々引き起こしてきた。
しかしその音楽は非常に影響力があり、多くのバンドが音楽的にも視覚的にも影響を受けたと語っている。
なおバンドの象徴的なロゴをデザインしたのはデイブ・ロンバード。
殺人犯の視点でナイフでロゴをどのように彫り出すかを考えて作成したそうだが、デイブは左利きだったため、ロゴが右に傾いてしまったそうだ。
83年にスレイヤーはカリフォルニア州アナハイムのクラブで他のバンドの前座として演奏していたところ、メタル系レコード会社「メタル・ブレイド・レコーズ」を設立したばかりの音楽ジャーナリストのブライアン・スレーゲルの目に止まり、ブライアン氏はメタル・ブレイド・レコーズ企画アルバム用にオリジナル曲をレコーディングするよう依頼。
スレイヤーは快諾し、メタル・ブレイド・レコーズによるコンピレーションアルバム「METAL MASSACRE 3」に「Aggressive Perfector」という曲を提供。
「Aggressive Perfector」はリリースされるとすぐに話題となり、バンドはメタル・ブレイド・レコーズと契約した。
だが。
契約はしたものの無名のスレイヤーには予算がなかったため、デビューアルバム制作費用を自前で調達しなければならなかった。
呼吸療法士として働いていて稼ぎが比較的よかったトム・アラヤの貯金と、ケリーが父親から借りたお金をなんとか合わせ、83年末にデビューアルバム「Show No Mercy」がリリースされた。
バンドはアルバムのプロモーションのためカリフォルニアのクラブを回るツアーを開始。
しかしやはりカネのないスレイヤー、ツアーでもトムが持っていたカマロで借りたトレーラーを引きながら移動していたそうだ。
この苦労が実り、「Show No Mercy」の売り上げは最終的にアメリカ国内外で合計4万枚以上を達成した。
85年には、地獄とサタンをテーマに前作をさらにダークにしたアルバム「Hell Awaits」を発表。
非常にプログレッシブでより長く複雑な曲構成が特徴で、特にドイツで人気が高く、チャートで41位を記録した。
この後バンドは主にヒップホップをベースとしたレーベルであるデフ・ジャム・レコードとレコーディング契約し、サウンド面でも大きな転換を行う。
前作「Hell Awaits」の複雑なアレンジと長い曲のプログレ路線をやめ、ハードコア・パンクの影響を受けたクリアで短く速い楽曲を集めたアルバム「Reign in Blood」を作り上げた。
しかし曲の多くは死・反宗教・狂気・殺人・ナチスやホロコーストを扱った歌詞になっていた。
特にホロコーストの強制収容所とナチスの人体実験について書かれた「Angel of Death」があまりにも過激すぎるという理由で、コロンビアレコードはリリースを拒否。
結局アルバムは86年10月にゲフィン・レコードから発売された。
しかしゲフィンも炎上を危惧してか、リリース・スケジュールへの掲載は見送られ、またラジオでもほとんどオンエアされなかった。
これがかえって話題となり、アルバムは初めて全米チャートで94位を記録した。
94位という数字だけ見れば大したことないやんけに思えるが、当時スラッシュメタルという分野の音楽が100位以内にランクインすること自体スゴい話だったようだ。
この実績によりスレイヤーは様々なバンドとの共演やツアーが実現する。
しかしW.A.S.P.のアメリカ・ツアーに同行中、ドラマーのデイブ・ロンバートが「ギャラが安すぎる。家賃と光熱費を払ってほしい」という直球で切実な理由で脱退する。
バンドは臨時で他のドラマーを起用してツアーを続行。
その後デイブは奥さんに説得されて87年に復帰している。
88年7月、「Reign in Blood」のスピード感とは対照的にあえてテンポを落とし、よりメロディアスな歌を取り入れた4枚目のアルバム「South of Heaven」をリリースする。
ファンやメディアの評価は様々で、「不穏で力強い」「純粋に攻撃的な悪魔の戯言」などいろいろ言われたりもしたが、ビルボード200で初登場57位を記録し、ゴールドディスク認定を受けるなど、商業的には成功したアルバムとなった。
90年10月には5枚目のアルバム「Seasons in the Abyss」を発表。
ビルボード200で初登場44位、92年にはゴールドディスク認定と、前作を上回る実績を残した。
なおタイトル曲のためにエジプトのギザのピラミッドの前で撮影したバンド初のミュージック・ビデオが制作された。
・・・90年で初のビデオ制作って、遅くないスか?
奥さんに説得されてバンドに戻ったデイブ・ロンバートだったが、92年にまた脱退。
表向きの理由は「初めての子育て中でツアーには出たくない」というメタルっぽくないものだったが、脱退後にグリップ・インクという自分のバンドを結成してるので、スレイヤー内では人間関係でモメ事が発生していたと思われる。
スレイヤーは新ドラマーとしてポール・ボスタフを加入させた。
94年にポール加入後の最初のアルバム「Divine Intervention」をリリース。
このアルバムでもやっぱりトム・アラヤの殺人犯への興味が歌詞に力一杯反映され、ナチス高官のラインハルト・ハイドリヒや、アメリカの連続殺人犯で性犯罪者のジェフリー・ダーマーを歌っている。
95年にはバイオハザードとマシン・ヘッドを前座に迎えてワールドツアーを行い、モンスターズ・オブ・ロック・フェスティバルにも出演。
しかしこの頃にはすでにグランジの台頭でメタルの人気や売り上げが各地で脅かされる時代に突入していた。
あせったスレイヤーは96年にはパンクのカバーアルバム「Undisputed Attitude」を発表。
14曲中11曲を他のパンクバンドのカバーが占めるという構成だったが、ビルボード200で最高34位と健闘はしたもののファンの評価は今ひとつだった。
スレイヤーの苦悩は続く。
「Diabolus in Musica」(ラテン語で「音楽の中の悪魔」の意)は98年にリリースされ、ビルボード200で初登場31位、初週で46,000枚以上を売り上げた。
実績としてはまあまあではあったが、評論家の評価は厳しく、「チューニングダウンしたギター、濁ったコード構成、かき鳴らすビートなど、ニューメタルのダサい特徴を取り入れている」「多くの曲が同じような灰色のキーで、リズムのアイデアも疲れるほど同じ」などと酷評された。
次のアルバム「God Hates Us All」は偶然だが因縁めいた2001年9月11日にリリースされた。
その9月11日のアメリカ同時多発テロにより、参加する予定だったヨーロッパ・ツアー開催が危ぶまれた。
結局開催はしたもののイギリスでの日程は飛行機のフライト制限のために大幅に延期され、スレイヤーとクレイドル・オブ・フィルス以外の参加予定バンドがほとんど撤退してしまった。
さらにドラマーのポール・ボスタフが慢性的な肘の怪我のためプレイに支障をきたすようになり、2001年末にバンドを脱退。
ヨーロッパ・ツアーはその時点で継続中だったため、マネージャーはオリジナルのドラマーであるデイブ・ロンバードに連絡を取り、残りのツアーに参加を要請した。
次のスタジオアルバム「Christ Illusion」は当初2006年6月6日にリリースされる予定だった。
この6月6日はホラー映画「オーメン」でも使われたように、西洋各国ではヨハネの黙示録の「野獣の数」を連想させる恐ろしい日付とされている。
で、メタル業界ではこの日に照準を合わせて発表や告知を行うことが一種の宣伝効果としてよく使われていた手法であり、この年も同じアイデアを持っていたバンドがスレイヤー以外にも多数いたため、スレイヤーはリリース延期を決定。
アルバムは結局8月8日にリリースしたものの、やっぱり「6年目の6月6日」を記念して666枚限定でTシャツを発売するなど、なんか軸のブレた商売を展開。
「Christ Illusion」はビルボード200で初登場5位を記録し、初週で62,000枚以上を売り上げたので、日付はあんまし関係なかったようだ。
好成績の理由として、ファンクラブ会員向けに発売前に曲を試聴できるようにしていた点もあるらしい。
なお10月にはメタル・フェス「LOUD PARK 06」出演のため来日もしている。
しかし2008年頃からトム・アラヤはバンドの将来について不安を覚えるようになり、「先行きは不確かで、年を取ったらバンドを続けることは考えられない」などと定年前のサラリーマンみたいな発言をしている。
まあそうだろうなぁ。
じいさんになってもメタル続けるのもしんどいだろうし・・・
でもケリー・キングは「まだあと2枚くらいはアルバム出せるんじゃね?」と楽観的だったそうだ。
ケリーの前向き宣言どおり2009年には11枚目のアルバム「World Painted Blood(血塗ラレタ世界)」をリリース。
10月には再び来日して「LOUD PARK 09」に登場し単独公演を行った。
この頃からいわゆるBig4の興行や交流が始まる。
スレイヤーは2010年6月にメタリカとメガデスとアンスラックスとともに初めて公演(ポーランド・ブルガリア)を行った。
その後スレイヤーとメガデスは手を組み、アンスラックスとテスタメントをオープニング・アクトに迎えてアメリカツアーを行ったり、四天王がカリフォルニアでそろって演奏するなど楽しい興行が続いた。
しかし2011年初めにアクシデントが発生。
ジェフ・ハンネマンが右腕をクモに噛まれて壊死性筋膜炎を発症したため、一時ツアーを離脱。
4月にはなんとかツアーに戻り、カリフォルニアで行われたBig4のライブで、ジェフは「South of Heaven」と「Angel of Death」の2曲を演奏した。
だがこれがジェフのスレイヤーでの最後のライブパフォーマンスとなった。
2013年5月、ジェフは肝不全のため亡くなってしまう。
ジェフの後任としてゲイリー・ホルトが正式メンバーとなる。
またジェフの死去と前後してデイブ・ロンバートがツアー不参加を表明し、バンドはデイブを解雇。
5月にはポール・ボスタフが復帰する。
2015年9月、アルバム「Repentless」をリリース。
結果的にスレイヤー最後のアルバムとなったが、全米4位というバンド史上最高の成績を残した。
10月に「LOUD PARK 15」のヘッドライナーとして来日。
その後も「LOUD PARK」では常連となる。
2018年1月22日、スレイヤーはファイナルワールドツアーを行うと発表した。
バンドとしては引退する理由を公に表明したことはないが、背景にはトム・アラヤの健康上の問題や家族と過ごす時間を増やしたいと望んだことがあるようだ。
ツアーは5月から北米で始まり、11月から12月にかけてはヨーロッパを回ったツアーが続いた。
しかし年末にゲイリー・ホルトが病床の父親と一緒にいるため一時ツアーを離脱。
ヴァイオレンスと元マシーン・ヘッドのギタリスト、フィル・デンメルが彼の代役を務めた。
翌年もツアーは続き、南米やオーストラリアを巡り、2019年3月に幕張で開催された「DOWNLOAD JAPAN 2019」にも出演している。
結果的にスレイヤーとしてこれが最後の来日公演となった。
「ラスト・キャンペーン」と名付けられた北米ツアーの最終公演は2019年11月30日ロサンゼルス郊外のイングルウッドで行われ、スレイヤーは宣言どおり活動を停止した。
スレイヤーが宣言したのは解散・引退・活動停止のどれなのかニュアンスは微妙だが、律儀に停止したことはロックバンドとしては珍しいケースかもしれない。
プロレスラーの引退とロックバンドの解散は、紳士服販売店の閉店宣言と同じくらい撤回されてるのが実情だけど、今のところスレイヤーは停止したままである。
スレイヤーのメンバーも再結成についてはそれぞれが複雑で消極的な発言をしている。
ゲイリー・ホルトは、「もし再結成が実現するとしても、それは僕とは関係ない。もう終わったことだ」と述べている。
一方ケリー・キングはマシーン・ヘッドの結成30周年を祝福した際、「30年というのはかなりの偉業で、そこまで到達したバンドは多くない。俺たちスレイヤーはそうだったし、辞めるのが早すぎた」と悔やんだそうだ。
ケリーはその後のインタビューではBig4ライブの可能性は否定しなかったが、スレイヤーの再結成実現には疑問を示している。
各メンバーとも「他の連中がやりたいと言えばやらんでもない」とは言うものの、自らが再結成に向けて声かけをするつもりはない、という点では共通しているようだ。
まあおカネとかパワーバランスとかでなんかあったんでしょうね。
今回スレイヤーの曲をいくつかYou Tubeで聴いてみたが、音も見た目もメタルのイメージそのものだった。
ボーカルはがなり系でほとんど音程を取らず、楽器はどれもムダに早く太く重くキツい音を立てている。
たまたま聴いてみた曲がそうだっただけかもしれないが、申し訳ないけどどれも同じような曲に聞こえた。
ハーモニー重視のパワーバラードなんてあったりするんでしょうか?
パンクやったりグランジに対抗したりといろいろ試みてるそうですが、メタル香のやや薄いアルバムもあったりするんだろうか?
というわけで、スレイヤー。
正直感触としてはほぼ絶望的で、定着どころかアルバム1枚も通して聴ける気がしませんが、「まあそう言わずに初心者はコレから始めてみろや」という難易度の比較的低いアルバムがあるようでしたら、参考までに教えてください。
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