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聴いてみた 第176回 ジャーニー その2

当BLOGの基本運営理念である聴いてみたシリーズ
万年課題のジョン・レノンや緊急課題のジェフ・ベックを差し置いて、今回はなぜかジャーニーを聴いてみました。
・・・お察しのとおり、先日WBCがあったからです。

TBSではなぜか以前からWBCのテーマ曲としてジャーニーの「Separate Ways」を使ってきた。
歌詞の中身は男女の別れを歌ってるのに、なぜ野球大会のテーマ曲なのか?
局内の会議で「かっこいいから」という理由で決定し、以来誰も変えようとしてこなかったとのこと。
「TBSの英語ボケ」などと批判した評論家もいたが、選んだ人たちはボケじゃなくて本当に歌詞の意味をわかってなかったんでしょうね。

で、大谷や村上やヌートバーとともに繰り返し流れる「Separate Ways」でふと気づいたのだが、ジャーニーも結構未聴盤が残っている。
というか、聴いたのは全アルバムのうち半分もないのだ。

Journey (1975)
Departure (1980)
Dream, After Dream (1980)
Escape (1981)
Frontiers (1983)
Raised on Radio (1986)
Greatest Hits(1989)

上記が鑑賞履歴の全てである。
デビューアルバム「Journey」とサントラ盤「Dream, After Dream(夢・夢のあと)」は後追いなので、リアルタイムで聴いたのは80年代の4枚である。
自分にしては聴いてるほうで、また70年代のヒット曲はFM番組やベスト盤で聴いたりしたので、あまり切迫感もないまま過ごしてきた。
だが70年代の、特にスティーブ・ペリー在籍時代の「Infinity」「Evolution」を聴いていないのは大きな文化的損失と言える。
というわけで、WBCを契機にスティーブ加入後の最初のアルバム「Infinity」を聴くことにしました。(デタラメな動機)

Infinity

「Infinity」は78年発表の4作目のスタジオアルバムで、邦題は「無限との遭遇」。
映画「未知との遭遇」に完全に乗っかったレコード会社の命名だと思うが、あまり浸透しなかったようです。

メンバーは以下のみなさんである。
・スティーブ・ペリー(Vo)
・ニール・ショーン(G)
・グレッグ・ローリー(K・Vo)
・ロス・ヴァロリー(B)
・エインズレー・ダンバー(D)

それまでのいまいち中途半端な技巧派プログレバンドから脱したかったジャーニーは、レコード会社からの圧力もあり、ボーカルの強化を検討し始める。
目指したのはフォリナーやボストンのような存在感のあるボーカルを擁するバンド。
そこでロバート・フライシュマンという人が加入し、数曲をレコーディング。
しかしロバートさんは音楽性の違いやマネージメント契約でのモメ事などの理由からバンドを脱退。
直後にスティーブ・ペリーが加入し、バンド内に産業革命をもたらすことになる。
なのでスティーブを「ジャーニー2代目ボーカル」と紹介するサイトも多いが、厳密には3代目のボーカル担当ということになる。

ジャーニーのマネージャー、ハービー・ハーバートは、イギリス人プロデューサーのロイ・トーマス・ベイカーに新盤「Infinity」のプロデュースを依頼した。
ロイはクイーンでの実績を生かし、層の厚いサウンドとコーラスを作り上げる。
これがその後もジャーニーのサウンドのトレードマークとなった。

こうして新しいリードシンガーと新しいプロデューサーにより、アルバム「Infinity」は全米チャートで21位を獲得。
バンドはこのアルバムを引っ提げ、ヴァン・ヘイレンやモントローズとともにツアーを開始した。

バンドの大きな転換となった「Infinity」。
果たしてスティーブ・ペリーとロイ・トーマス・ベイカーはジャーニーにどのような変革をもたらしたのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1.Lights
この曲はベスト盤で聴いていた。
スタートからスティーブ・ペリーが本領発揮の展開。
目の前にサンフランシスコの夜景が見えるようなサウンドと、その後多用されるコーラスワークも見事な構成である。
サンフランシスコ行ったことないけど。

2.Feeling That Way
静かなイントロで歌うのはグレッグ・ローリー。
その後スティーブとボーカルを分け合い、コーラスを当てつつメインがスティーブに移る。

3.Anytime
これも前の曲と似たサウンドで、グレッグが歌う。
中盤でスティーブが登場し、ニールのうねるギターをはさんで二人で歌う。
このサウンドとコーラスが新生ジャーニーの特徴であることを強調する意味で、当時のラジオではよくこの曲と「Wheel in the Sky」が連続してオンエアされたそうだ。

4.La Do Da
この曲もベスト盤で聴いている。
メタルっぽく刻まれたギターとドラムでややヘビーな印象。
タイトルはどういう意味だろう?

5.Patiently
一転おだやかに始まるバラード。
スティーブ・ペリーとニール・ショーンが初めて一緒に書いた曲だそうだ。
(作詞をスティーブ、作曲をニールが担当)
中盤から急に重厚なギターとドラムが加わって盛り上がり、エンディングは再度静かに終わる。
彼らの得意な攻撃パターンと言える。

6.Wheel in the Sky
ジャーニー初の全米チャート100位以内に達した曲。(75位)
当時FM番組でジャーニー特集が組まれるとよくオンエアされていた。
哀愁が充満したスティーブの演歌っぽいボーカルとコーラス、ニールのやけくそギター、どすどす響くエインズレー・ダンバーのドラム。
80年代に隆盛を極める彼らのサウンドの完成されたフォーマットが詰まった名曲。
タイトルの「空に浮かぶ車輪」とは太陽のことで、「回り続ける太陽=時の経過」を示しているとのこと。
この歌詞はロス・ヴァロリーの妻であるダイアン・ヴァロリーが書いた「Wheels In My Mind」という詩が原案で、またクレジットには脱退したロバート・フライシュマンの名前もある。

7.Somethin' to Hide
わりと大人しめの曲だが、キーがかなり高く、珍しく?スティーブがファルセットを多用。
基本ハイトーンボイスが売りな人なので、ムリに裏声を使わず、むしろキーをスティーブの声に合わせて設定したほうがよかったのでは・・・

8.Winds of March
これもスティーブの物悲しい演歌調の声が響き渡るバラード。
想定どおり各楽器が重苦しくからみ、静かにエンディング。
この曲もロバート・フライシュマンが作曲に参加している。

9.Can Do
「La Do Da」に似た重厚長大な楽曲。
ギターソロもかなり大げさで、タイトルをコーラスで連呼し、終了直前にボーカルを残して楽器だけ急に止まる。
これも80年代に時々使われた彼らの得意技。

10.Open the Door
ラストはどこかプログレの香りが残る、静寂と重厚が奏効するメリハリの利いた壮大な曲。
スティーブのボーカルならではの構成だが、シングルにはあまり向かない感じ。

聴き終えた。
評判どおりの産業ロック革命盤である。
やはり「Lights」「Wheel in the Sky」の存在感が強いが、「Feeling That Way」「Patiently」もいいと思う。
使いまわされた言い方になるが、このアルバムには捨て曲がない。

スティーブ・ペリーのボーカルはその後のジャーニーの方向性を決定する重要な要素であったことは間違いない。
以前も書いたが、この人の声はキーが高いがツヤがそれほどなく、ハスキーな枯れ声である。
だがこのヘタリのない安定した枯れ声にやはり特徴があり、唯一無二の存在となっている。
また歌だけでなく曲作りの面でもほとんどの曲に参加しており、功績は非常に大きかったはずだ。
それまでの技巧派プログレとは全く違うバンドになっており、たどった道としてはスティクスにも共通するものがあると思う。

今回調べて初めて知ったが、ロイ・トーマス・ベイカーのプロデュースという点も大きいと感じた。
聴いていてクイーンのようなサウンドとコーラスが目立つなと感じていたが、ロイのプロデュースと聞いて納得である。(知ったかぶり)
次のアルバム「Evolution」もロイさんがプロデュースしてるそうなので、おそらく問題なく聴けると思われる。

ところでこのアルバムを最後に脱退したドラマーのエインズレー・ダンバーだが、これも調べて初めて知ったのだが、ものすごい経歴の持ち主だった。
ジャーニー加入前はジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズやジェフ・ベック・グループに参加しており、その後もザッパやジョン・レノン、デビッド・ボウイルー・リードのアルバムにも参加経験がある。
ジャーニー脱退後はジェファーソン・スターシップに加入したり、ホワイトスネイク「白蛇の紋章-サーペンス・アルバス」でもドラムを担当。
2000年以降もUFOやマイケル・シェンカー、キース・エマーソンのアルバムに参加している。
全然知らなかった・・・
実績と稼働年数はコージー・パウエル以上のものがある。
元々ブルース志向の人で、スティーブ・ペリー加入後の産業ロック化したジャーニーが合わなかったらしい。

というわけで、「Infinity」。
予想以上によかったです。
個人的には「Departure」よりも華やかでいいと感じました。
毎度の言い訳になりますけど、若い頃に聴いていたら、「Escape」「Frontiers」と並んで愛聴盤になっていたはずです。(後悔)
次回は「Evolution」を聴いてみようと思います。

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。

ジャーニーのオリジナルアルバムは、10代の頃に友人が持っていたので、以下の3枚だけ聞いた記憶がありますが、自分では持っていないです。
Journey
Escape
Frontiers

ただ「Separate Ways」のイントロはめっちゃ好きなので、ずいぶん前にベスト盤だけ購入し、それで満足しております。TBSのプロデューサーと同レベルです。

ですので、全くジャーニーについて語る資格なしです。スイマセン。

しかし、当該プロデューサーと違うところが一点あります。

それは、「Separate Ways」が別れの曲だと知っていたこと。
#しょうもない


僕の記憶が正しければ、WBCの1回目と2回目は「Separate Ways」を使っていなかったと思います。

3回目のWBCで、この曲が使われたとき、「おいおい、優勝が遠のいていっても知らないぞ」と思っていたら、案の定優勝を逃してしまいました。

ですので、今回もメンバー的には心配していなかったのですが、「Separate Ways」の呪いが影を落とすのでは、と心配しておりました。

結果的には、呪いよりも大谷のリアル茂野吾郎の力が勝り、見事優勝を勝ち取りましたね。

次のWBCに大谷が出るのであれば、TBSはNHKに了解を取り、ロードオブメジャーの「さらば碧き面影」をテーマ曲にすれば盛り上がるのに、と一人考えている今日この頃です。

投稿: getsmart0086 | 2023.04.09 20:56

ゲッツさん、コメントありがとうございます。

>ただ「Separate Ways」のイントロはめっちゃ好きなので、ずいぶん前にベスト盤だけ購入し、それで満足しております。

あ、そうだったんですね。
あのイントロは確かに印象的でテレビの効果音には向いてますね。
「サンデージャポン」では芸能人の別れ話を採り上げる際にBGMに使ってますけど、同じTBSでもあっちは話題と歌詞の中身を合わせてるようです。(どうでもいい)
おそらく、ですがWBC用にあの曲をチョイスしたTBSの偉いプロデューサーは同世代ですね。

>僕の記憶が正しければ、WBCの1回目と2回目は「Separate Ways」を使っていなかったと思います。

調べたら第2回から使用されているようです。
第1回はクール・アンド・ザ・ギャングの「Celebration」だそうですが、全然覚えてない・・

>結果的には、呪いよりも大谷のリアル茂野吾郎の力が勝り、見事優勝を勝ち取りましたね。

いやー興奮しましたね。
優勝したんで、正直テーマソングが男女の別れ話だったことなんてどうでもよくなりましたけど。
使われたジャーニーも気の毒でしたが・・

>次のWBCに大谷が出るのであれば、TBSはNHKに了解を取り、ロードオブメジャーの「さらば碧き面影」をテーマ曲にすれば盛り上がるのに、と一人考えている今日この頃です。

そうですねぇ、次のWBCまでにTBSの幹部も世代交代するんであれば、もっと野球にふさわしい曲が使われるのではないかと思いますね。

投稿: SYUNJI | 2023.04.12 20:48

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