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2022年の終わりに

首都圏最大級の素人音楽BLOGを始めてとうとう丸19年が過ぎてしまった。
今さらだがふつう19年間も同じ事を続けていれば、職人の世界ではベテランの領域である。
しかしながら一向に初心者マインドは消えないままだ。
そもそも「聴いてない音楽を公表して聴いてる人からずうずうしくアドバイスを受ける」というセコいBLOGなので、聴いてなかった音楽を聴けば目的は達成されて本来は終了である。

しかし聴いてない音楽は全然減らず、次々にわいてきて気づけば295組も採り上げてしまった。
残りの余生で295組全てを鑑賞することも不可能だと思う。
というわけで今年もド素人として年の瀬を迎えることとなりました。

今年の聴いてないシリーズは以下のとおり。

聴いてない 第280回 リトル・フィート
聴いてない 第281回 フー・ファイターズ
聴いてない 第282回 ウォーターボーイズ
聴いてない 第283回 ガース・ブルックス
聴いてない 第284回 ザ・レンブランツ
聴いてない 第285回 ダム・ヤンキース
聴いてない 第286回 ワン・チャン
聴いてない 第287回 スライ&ザ・ファミリー・ストーン
聴いてない 第288回 スウィート
聴いてない 第289回 ラッシュ
聴いてない 第290回 ラット
聴いてない 第291回 W.A.S.P.
聴いてない 第292回 ファルコ
聴いてない 第293回 G・ラヴ&スペシャル・ソース
聴いてない 第294回 ブルーノ・マーズ
聴いてない 第295回 ブラック・クロウズ

恐ろしいことに16本も書いている。
昨年より4本も多い。
しかも19年目なのにフー・ファイターズやガース・ブルックスやブルーノ・マーズといった現役の超大物芸人がまだ登場している。

逆に聴いてみたシリーズは昨年よりも少なく、以下の5本。

聴いてみた 第170回 リンゴ・スター
聴いてみた 第171回 ビートルズ その2
聴いてみた 第172回 ブラインド・ガーディアン
聴いてみた 第173回 フリートウッド・マック その2
聴いてみた 第174回 スティクス その2

昨年から続く元ビートルズ4人のソロ鑑賞だが、今年はリンゴを1枚聴いただけに終わった。
しかもビートルズの「With the Beatles」を今年初めて聴いたという、中高年なのに中学生みたいな手の施しようのないシロウトっぷりである。
ストーンズやクラプトン学習も全く手つかずの状態。
最後にストーンズの記事を書いたのはもう5年以上も前だ。
他の聴いてない名盤を全部聴くには、やはりあと200年くらいかかりそうである。

さて結局年末恒例となってしまったが、今年訃報に接したミュージシャンは以下のとおり。
ミート・ローフ(聴いてない 第87回 ミート・ローフ
イアン・マクドナルド(聴いてみた 第4回 キング・クリムゾンその2
ゲイリー・ブルッカー(聴いてない 第88回 プロコル・ハルム
バリー・ベイリー(聴いてない 第225回 アトランタ・リズム・セクション
テイラー・ホーキンス(聴いてない 第281回 フー・ファイターズ
アンドリュー・ウールフォーク(聴いてない 第24回 アース・ウィンド&ファイアー
アンディ・フレッチャー(聴いてない 第239回 デペッシュ・モード
アレック・ジョン・サッチ(聴いてない 第57回 ボン・ジョビ
アラン・ホワイト(聴いてみた 第6回 イエス
オリビア・ニュートンジョン(聴いてない 第66回 オリビア・ニュートンジョン
ジョン・ハートマン(聴いてみた 第152回 ドゥービー・ブラザーズ その2
ギャリー・ロバーツ(聴いてない 第68回 ブームタウン・ラッツ
キース・レヴィン(聴いてない 第79回 クラッシュ
クリスティン・マクヴィー(聴いてみた 第173回 フリートウッド・マック その2
テリー・ホール(聴いてない 第127回 スペシャルズ
マーティン・ダフィー(聴いてみた 第76回 プライマル・スクリーム

中には今回訃報によって初めて名前を知った人もいるのだが、なんか年を追うごとに訃報が増えてる気がして切ない。
やはりダメージが大きかったのはクリスティン・マクヴィーだ。
聴いてないくせにダメージとか言うのもおこがましいとは思うが、マック学習に多少意欲が出てきていたところだったので、やはり残念である。

今年の読んでみたシリーズは、炎 Vol.3「エドワード・ヴァン・ヘイレン特集」だけである。
CDもそうだが、音楽関連書籍も雑誌も週刊ポストも夕刊フジもみんなもう我々中高年の趣味文化としてしか成立してない同じ枠になっている。
だから我々があきらめていてはダメなのだ。(何の決起?)
古き良き洋楽の文献をあさって楽しむ・共有するということは中高年の矜持として続けていきたいと考えている。(意味不明)
毎年同じセリフで恐縮だが、音楽産業も出版界も見通しは果てしなく暗いが、今後も良質なテキストに巡り合えることを期待したい。

というわけで、コメントくださったみなさま、19年間ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
みなさまよいお年を。

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聴いてみた 第174回 スティクス その2

渋谷のレコファンが場所を変えて再オープンのニュースに驚愕したSYUNJIといいます。
渋谷レコファンと言えばあのぷく先輩との初対面の日にお連れした都内屈指の中古CDの名店である。
中古CD店なんて閉店はあっても開店はもう永久にないんじゃないかと思ってましたが、意外に早く渋谷レコファンは復活したようです。

というわけで今日聴いてみたのは渋谷レコファンではない店で購入したスティクス「Pieces of Eight」。
毎回どうでもいいマクラですいません・・

Pieces-of-eight

「Pieces of Eight」は78年9月1日にリリースされたスティクス8枚目のアルバム。
参加メンバーは前作同様以下のみなさんである。
・デニス・デ・ヤング
・ジェイムズ・ヤング
・チャック・パノッツォ
・ジョン・パノッツォ
・トミー・ショウ

トミー・ショウが加入して産業ロック(褒め言葉)転換後の3作目になる。
タイトルは「八角形のコイン」という意味で、邦題は「古代への追想」。
テーマとして「永遠の若さ・美しさは金では買えない」「お金や物質的な所有物を追求するために夢をあきらめない」という格言のようなことを表現している。
全米年間チャート7位を記録し、300万枚を売り上げた70年代スティクスの名盤である。

・・・などと毎度のことながら受け売りを並べているが、実はこのアルバムも聴いたかどうかよくわからないのだ。
ジャケットにも見覚えはあるし、80年代になってから貸しレコード屋で借りたような気もするんだが、テープは残っていないし曲名もあまり覚えていない。
イーグルス同様「聴いた気になっていた」記憶錯誤の問題作である可能性も高い・・・ということで、真相を確かめるべく鑑賞に赴いた次第。

ライブ盤やベスト盤で聴いている曲もあるので、それほど緊張は感じていない。
果たして自分はこのアルバムを聴いていたのだろうか。

・・・・・聴いてみた。

1. Great White Hope
オープニングは歓声とアナウンスに続いて始まる、ジェイムズが歌うノリのいいロック。
実際のライブ音源ではなく、「Sgt. Pepper's」のように臨場感を出すための演出と思われる。

2. I'm O.K.
デニスお得意の壮大でドラマチックな曲。
日本でのみシングルカットされたそうだが、聴いたことはなかった。
キーボードもギターもいかにもスティクスな音がする。
中盤のパイプオルガンもコーラスもやや大げさでオーバーな気もするが、このサウンド・世界観は好きである。
このパイプオルガンはシカゴ最古のセント・ジェームズ大聖堂で録音されたものだそうだ。

3. Sing for the Day(この一瞬のために)
トミーの作品。
歌詞にあるハンナという女性の名はトミーの娘ハンナにちなんで付けられたと思われていたが、トミーがこの曲を書いた時にはまだハンナは生まれておらず、ファンが勝手に誤解していたようだ。
これもイントロに流れるキーボードからしてがっつりスティクスの音。
トミーとデニスのコーラスでタイトルコールを繰り返し、メインはトミーが歌う。
やはりトミー・ショウはこういう明るい曲のほうがいい。

4. The Message
1分ほどの謎めいたインスト。
この後の曲とほぼつながっている。

5. Lords of the Ring(指輪物語)
再びデニスによる壮大で荘厳な楽曲。
タイトルの通り、J・R・R・トールキンによる小説「指輪物語」をモチーフにした曲。
映画になる前からスティクスはこんな曲を作ってたのね。
デニスが好きそうなメロディだが、メインボーカルはなぜかジェイムズ。
この曲ならデニスの声のほうがいいと思うが・・・

6. Blue Collar Man
この曲はベスト盤やライブ盤で聴いていた。
トミーの作品で全米チャートでは21位を記録している。
イントロの濁ったキーボードが印象的で、ライブでもこの音が流れると大歓声というお約束の曲。
でも歌詞の内容は当時の世相を反映した、無職の男の悲しい叫びという社会派な曲である。
ちなみにTOTOのスティーブ・ルカサーは、スティクスで一番好きな曲が「Blue Collar Man」だと発言している。

7. Queen of Spades(スペードの女王)
静かに始まりやがて激しく進むロック。
終盤にメタルっぽいギターソロもある。
「Blue Collar Man」のノリにも似ているが、デニスの作品。

8. Renegade(逃亡者)
これもベスト盤で聴いており、全米16位のヒット曲。
歌詞もメロディも明るくはないがトミーの自信作のようで、アメリカではフットボールチームのプロモーション映像などにも使用される人気の曲とのこと。

9. Pieces of Eight
静かに歌う部分と壮大な合唱が交互に繰り返される、モロにスティクスなタイトル曲。
盛り過ぎ感はあるが、これぞスティクスな名曲である。

10. Aku-Aku
ラストは3分弱のピアノ中心のおだやかなインスト。
タイトルはイースター島にまつわる伝説から来ているそうだ。


聴き終えた。
やはりこのアルバムは聴いていなかったようだ。
ただどの曲も自分が知っていたスティクスの音であり、想定通り楽しめた。
他のアルバムで時々現れるトミーの暗い曲も、このアルバムにはそれほどない。
前回聴いた「The Grand Illusion」よりもいいと感じた。
聴いていた「Blue Collar Man」「Renegade」よりも、初めて聴いた「I'm O.K.」「Sing for the Day」「Pieces of Eight」のほうが全然いい。
若い頃に聴いていたら、「Cornerstone」「Paradise Theater」と並んで愛聴盤になっていたはずである。

当時のスティクスを「ハード・プログレ」などと評する人が多いが、個人的にはこのアルバムにはあまりプログレの香りは感じなかった。
自分がプログレをよくわかっていないだけかもしれないが、少なくともサウンドはポップだし、変拍子や冗長組曲といった高嶋政宏好みのプログレな展開はない。
ハード・プログレってそういうのとは違うの?
この頃のスティクスはもう来たるべきチャラくてゴージャスな80年代に向けて大衆路線にシフトし始めていたのだと思う。
その経営戦略は「Cornerstone」「Paradise Theater」「Kilroy Was Here」で見事に成功を果たすことになるのだ。

スティクスは2010年に「The Grand Illusion」と「Pieces of Eight」を全曲収録順に忠実に演奏するというライブツアーを行い、この音源で2012年にライブアルバムも発表している。
なのでバンドとしても気に入っているアルバムなのだろう。

売り上げ実績は「Cornerstone」「Paradise Theater」の方が上だが、この2枚はデニス色が強すぎるあまり現メンバーは敬遠している・・ような気もする。
ジェイムズ&トミーとデニスは絶縁状態にあるからだ。
ローレンス・ガーワンが加入し、デニスがジェイムズ&トミーと決別してもう20年以上経っており、裁判でデニス側がスティクスを名乗れないことも確定したため、スティクスにデニスが復帰することももうないと思われる。

ジャケットはヒプノシスによるモアイ像のピアスを付けた中年の女性の顔。
加齢により変化する人間と、長い時間不変のモアイという対比で、アルバムのテーマを表現してるそうだが、どこか化粧品のポスターっぽくもあり、あまりよくわからない。
ただ初期のプログレやってました期のジャケットよりも、この頃のほうがアートとして高い水準にはあると思う。
なおデニスはリリース当時このジャケットは気に入らなかったらしいが、歳を重ねるごとに好きになっていったそうだ。

というわけで、「Pieces of Eight」。
かなりよかったです。
もっと早く聴いていれば・・と後悔させるに十分なアルバムでした。
次回は「Crystal Ball」を聴いてみようと思います。

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