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聴いてない 第286回 ワン・チャン

すっかり一般に普及して意味も運用も変わってしまった言葉として「テンパってる」「ワンチャン」があります。
どちらも元々は麻雀用語で、「テンパってる」はあと1枚で上がりの状態(=聴牌)なので良いことのはずが、普及したとたんに「余裕のない・切羽詰まってる・相当ヤバい」といった危険な状況を示す言葉に変わってしまいました。
コレ変えたの誰?
15年くらい前に、会社で電話取ったバイトの若い女性から「なんかテンパってる人から電話です」と言われた時は心底驚いたもんです。(遠い目)

一方「ワンチャン」はOne Chanceの略で、終盤で負けが込んできても一発逆転を狙う希望に満ちた言葉だったけど、今は「可能性あり・もしかしたら・案外いける」みたいな幅広い運用が可能なライトな意味合いだそうです。
しかももうナウいヤングな若者の間ではすでに古い言葉らしい・・

そんな郷愁のワンチャンス・・とは全く関係なさそうなバンド、ワン・チャン。
元はハン・チャン(Huang Chung)だったそうだが、やはり半荘とは関係ないようだ。
いずれにしても聴いてません。
86年の「Let's Go!」だけ聴いているので、聴いてない度は2。
そもそもどこの国の何人組バンドなのかも知らない。

そこでワン・チャンについてワンチャン狙いでテンパりながら調査敢行。
だが調べてみたら意外に情報が錯綜していることが発覚。

バンドの源流は77年頃にイギリスで発生。
ニック・フェルドマンはイギリスの音楽雑誌「Melody Maker」にバンドやろうぜ募集の広告を掲載。
それにジェレミー・ライダーが応募し、バド・メリックとポール・ハモンドと共にインテルクタルズというバンドを結成した。

インテルクタルズは1年後に解散したが、ジェレミーとニックは別のメンバー3人と「57Men」を結成。
その後2人が抜けて3人となった時点でバンド名をハン・チャン(Huang Chung=黄忠)とした。

メンバーは以下のみなさんだが、結成当時は全員が芸名を名乗っていた。
・ジャック・ヒューズ(Vo・G・K 本名ジェレミー・ライダー)
・ニック・デスピック(G・K 本名ニック・フェルドマン)
・ダレン・ダーウィン(D 本名ダレン・コスティン)
・ホッグ・ロビンソン(Sax 本名デイヴ・バーナンド 少し遅れて参加)

81年にシングル3曲、82年にアルバム「Huang Chung」、シングル「「Dance Hall Days」を発表したが全然売れず、メンバーは別のプロジェクトでバイトみたいな活動をするなど苦労が続いた。
バンドはこの後レーベルをアリスタからゲフィン・レコードに変更。
デイヴ・バーナンドは売れないバンドあるあるな「音楽的な違い」を理由に脱退した。

バンドに転機が訪れたのは83年である。
まずゲフィン・レコードの提案で、バンド名をワン・チャン (Wang Chung) とした。
イギリス人にはハン・チャンよりも発音しやすいからという理由だそうです。

さらに84年にセカンド・アルバム「Points on the Curve」を発表。
シングル「Don't Let Go」が全米38位、再録した「Dance Hall Days」は全米16位・全英21位まで上昇。
これでゲフィンに認められたワン・チャンは、ロマンティックスやベルリンと共にアメリカでのツアーを行い、カーズの「ハートビート・シティ」ツアーでオープニング・アクトも務めることができた。

しかしツアー後にドラムのダレンが脱退。
通常ここまでメンバー脱退が続くとバンドとしては維持不能で解散・・という展開が大半だが、ワン・チャンのサクセスストーリーはむしろここからであった。

ワン・チャンは85年に映画「To Live and Die in L.A.」のサントラ盤を制作。
このサウンドトラックはそのままワン・チャンの3枚目のアルバムとなり、アメリカのビルボードチャートのサウンドトラック部門でトップ10入りを果たす。

さらに翌年シングル「Everybody Have Fun Tonight」が全米2位、「Let's Go!」は9位 「Hypnotize Me」は36位を記録し、4枚目のアルバム「Mosaic」もバンド最大のヒットとなった。
87年夏のアメリカ公演では、ティナ・ターナーのワールド・ツアーのオープニング・アクトを務めた。

しかしワン・チャンが順調だったのは残念ながらここまで。
89年に5枚目のアルバム「The Warmer Side of Cool」を発表するが、シングル「Praying to a New God」は全米63位止まりで、アルバムも商業的には失敗。
ジャックとニックはそれぞれ他のプロジェクトに参加するようになり、ワン・チャンは90年に事実上の解散をする。

ニック・フェルドマンはカルチャー・クラブのジョン・モスと一緒にプロミセッド・ランドというユニットを結成し、92年にアルバムもリリースしている。
一方ジャック・ヒューズは90年の「ガーディアン」を含む様々な映画のサウンドトラック制作に参加した。
またジャックは95年ジェネシスのトニー・バンクスと組んで「Strictly Inc」という名でセルフタイトル・アルバムを発表している。

ワン・チャン再結成は意外に早く、97年に新曲「Space Junk」も収録されたベスト盤発表を機に復活。
ただし2000年代はスポット的に他のバンドとツアーに参加する程度の活動だった。
ワン・チャンはABCやベルリン、カッティング・クルー、ミッシング・パーソンズといった懐かしの面々と共に2009年6月から行われた「リジェネレーション'80sツアー」に参加している。

2010年にワン・チャンは過去のヒット曲の再録音4曲と新曲4曲を収録したダブルEPをリリースし、プロモーションのためアメリカツアーも行った。
また同じ年にはビートルズの「Rain」をウクレレでアレンジして発表する。

2012年12月には23年ぶりのスタジオアルバム「Tazer Up!」をリリース。
2013年にはダレン・コスティンも参加して一回限りのパフォーマンスを行った。

2016年にジャック・ヒューズが脱退し、カッティング・クルーのガレス・モールトンをボーカルに迎えてライブを開始するが、ジャックは翌年復帰。
なんかワン・チャンて解散や脱退からの復帰が早いスね。
2019年にはプラハ・フィルハーモニー管弦楽団と共に「Orchesography」と題したベストアルバムをリリースしている。

ワン・チャンの来歴は以上だが、毎度のことながら全然知らない話ばかりだった。
最大のヒット曲「Everybody Have Fun Tonight」のPVをYou Tubeで見たが、やはり聴いたことはない曲だった。
ただサウンドは80年代そのものであり、「Let's Go!」と雰囲気は近いと感じる。

さてワン・チャンを調べている間に、バンド以上に(失礼)興味を持ったのがプロデューサー情報の錯綜であった。
84年頃にドラムのダレンが脱退するが、プロデューサーであるピーター・ウルフを新しいドラマーとして採用し、ワン・チャンは新曲の録音を続けた・・とある。
ただしピーターはバンドの公式メンバーとはならなかったそうだが。
このピーターさんに関する情報が、書いてあるサイトによって異なるのだ。

1 スターシップの「We Built This City」を手掛けた辣腕プロデューサー
2 J.ガイルズ・バンドのボーカル

ピーター・ウルフと言えば大半の洋楽ファンは2を思い浮かべるだろう。
自分も「あのピーター・ウルフがワン・チャンのプロデュースを?」「そもそもスターシップの大ヒット曲もピーター・ウルフがプロデューサーだったの?」と非常に驚いた。

だが。
よく調べてみたら、1と2のピーター・ウルフは別人であることが判明。
正しくは、ワン・チャンのプロデューサーは1のピーター・ウルフである。
サイトによっては「J.ガイルズ・バンドのボーカル、ピーター・ウルフをプロデューサーに起用し・・」などと書ききっており、別人情報を混同してしまっている。
まあワン・チャン活躍当時はネットも普及してなかったし、きっと日本の雑誌にもそんな誤情報が堂々と書かれていたんだろう。
自分も深掘りしていなければそのままこの記事に誤情報を引き写して炎上していたはずである。(炎上はしないよ)

ということで、ワン・チャン。
日本での人気や知名度もさっぱりわかりませんし、CDが入手できるかどうかも不明ですが、聴くなら当然最大のヒット作「Mosaic」ですよね?
これも含め、おすすめのアルバムや深掘り情報があれば教えていただければと思います。

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コメント

SYUNJIさん、またお邪魔します。

ワン・チャン、懐かしいです。
SYUNJIさんとは逆で「Everybody Have Fun Tonight」しか知らないです。この曲はわりと好きでした。
ただ、昔エアチェックした曲目を調べてみたら、もう1曲「Let's Go!」もありました。でも、こちらは記憶に無く、今回コメントするにあたって聴いてみたものの全く覚えが無かったです。

ワン・チャンの思い出は楽曲では無く、ヒット当時、地元の音楽番組で司会者が「ヒットしとるけど、ワン・チャンて間違いなく1発屋やろうねぇ。すぐに消えるっちゃない?」と、現在では炎上間違いなし?の発言を、普通に笑いながらしていた事です。(苦笑)

ワン・チャンが、解散・復活しながら、今も活動していると知って驚きです。

投稿: まったり男 | 2022.05.25 13:37

まったりさん、コメントありがとうございます。

>SYUNJIさんとは逆で「Everybody Have Fun Tonight」しか知らないです。

おっとそうでしたか。
じゃあ日本ではこれと「Let's Go!」くらいしか流行らなかったんですかね?

>地元の音楽番組で司会者が「ヒットしとるけど、ワン・チャンて間違いなく1発屋やろうねぇ。すぐに消えるっちゃない?」と、現在では炎上間違いなし?の発言を、普通に笑いながらしていた事です。(苦笑)

鋭い司会者だなぁ・・(笑)
まあ発言は半分当たってた感じですね。
FM東京だとやはりレコード会社やスポンサーの圧力で、そんな威勢のいいトークは封じられていたのかも・・

>ワン・チャンが、解散・復活しながら、今も活動していると知って驚きです。

そうですね、自分も調べて初めて知りましたが・・
聴いてないけどやはり驚きました。
復活と言っても、再びチャートを賑わせたり大会場を満員にしたり・・ということでもないようですけど・・

投稿: SYUNJI | 2022.05.25 20:57

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