聴いてみた 第171回 ビートルズ その2
洋楽を聴くようになったきっかけはビートルズ、という中高年は非常に多いと思うが、自分もそうである。
以来40年以上にわたってシングルからアルバムから再結成やら企画盤やら書籍雑誌から懐かしの映像まで様々鑑賞してきた。
もうええかげん聴いてない曲も公式アルバムもないやろとふんぞりかえっていたが、先日曲目をながめていて、どうも脳内再生できない曲が多い・・と寒気を感じたアルバムがあることが発覚した。
「With the Beatles」である。
「聴いてないアルバムなどない」と思い上がっていた自分だが、実はビートルズのLPレコードを買ったことは一度もない。(ダメだろ)
FMで全曲録音した・友人にレコードを借りて録音した・・という極貧鑑賞ばかりである。
公式アルバムの鑑賞履歴を記すと以下のようになる。
・Please Please Me 友人に借りた
・With The Beatles 聴いてない
・A Hard Day's Night 友人に借りた
・Beatles For Sale FMで全曲録音
・Help! 中古CD購入
・Rubber Soul FMで全曲録音
・Revolver 友人に借りた
・Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band FMで全曲録音 その後CD購入
・Magical Mystery Tour 友人に借りた
・The Beatles FMで全曲録音
・Yellow Submarine 友人に借りた
・Abbey Road FMで全曲録音 その後中古CD購入
・Let It Be 友人に借りた その後中古CD購入
「Help!」だけは長いこと聴いてない自覚があって、10年ほど前に中古CDを購入した。(遅い・・)
だが「With The Beatles」は聴いてないことすらきちんと認識していなかった。
アルバムとしてまるごと正しく鑑賞していない・・ことはうっすらわかっていたが、収録曲は「全部どこかでバラバラに聴いてきたはず」と勘違いしていたのだ。
「With The Beatles」の曲目を見ていて「まあ1曲2曲は知らないかも・・」と初めは余裕だったのが、「あれ?これも知らない・・」というのが次々と出てくる。
イヤな汗が出てくるのを感じながら、やはりまともに聴いてないことを自覚。
予定ではジョンかリンゴのソロでも鑑賞するかなと思ってたところを(本当か?)、急遽緊急事態としてディスクユニオンで「With The Beatles」を購入した。
鑑賞前に概要を斜めに学習。
「With The Beatles」は、デビュー作「Please Please Me」発表からわずか8ヶ月後の1963年11月22日にパーロフォンから発売された。
8曲のオリジナル曲(レノン=マッカートニー作7曲とジョージ作1曲)と、ロックンロールとモータウンR&Bのヒット曲カバー6曲が収録されている。
レコーディングは前作よりも時間をかけて行われ、7月から10月までの3ヶ月間にわたって録音された。
全14曲のうち、イギリスでシングルとして発売されたものはない。
・・・そうなの?知らなかった・・・
当時のLPレコードにはよくあった話だが、本国以外ではタイトルや収録曲が微妙に異なり、アメリカでは「Meet The Beatles!」と「The Beatles’ Second Album」に分割して収録されてリリースされている。
また日本では曲順の違う「ステレオ! これがビートルズ Vol.2」というタイトルのレコードとして66年に販売された。
なので日本ではたやすく聴ける状況になかった・・というわけでもない。
現にその他のアルバムは友人たちが日本盤や輸入盤を入手しており、たまたま自分は聴く機会がなかっただけだ。
若い時に聴けなかったのは残念だが、今気づいてよかったと思う。
手遅れだけど・・
果たして本当に聴いてない曲はいくつあるのだろうか。
・・・・・聴いてみた。
1.It Won't Be Long
2.All I've Got To Do
3.All My Loving
4.Don't Bother Me
5.Little Child
6.Till There Was You
7.Please Mister Postman
8.Roll Over Beethoven
9.Hold Me Tight
10.You Really Gotta Hold On Me
11.I Wanna Be Your Man
12.Devil In Her Heart
13.Not A Second Time
14.Money(That's What I Want)
結論から言うと、1・5・9・12はやはり初めて聴く曲だった。
どこかで聴いたことがある、曲の一部分だけ知っていた、メロディと曲名がやっと一致した・・というレベルではなく、いずれも全く聴いたことがなかった状態。
14曲中4曲も知らなかった・・・(悪寒)
このトシになってまだビートルズの「新曲」を聴けるとは思わなかった。(勝手新曲だけど)
しかも1・5・9はカバーではなく、レノン&マッカートニーのオリジナルである。
FMでエアチェックしたこともなかったので、日本ではオンエアされる機会も少なかったのだろうか?
若い頃の体験って大事ですね。(何言ってんだか)
アルバムを通して聴くと、カバー曲のほうがいいと感じる。
「Till There Was You」「Please Mister Postman」「Roll Over Beethoven」「Money」など、名曲ぞろいだ。
もちろんオリジナル曲「All My Loving」「I Wanna Be Your Man」「Not a Second Time」も名作であることに異論はない。
初めて聴いた曲の中では「It Won't Be Long」がジョンが元気でいいと思う。
やはり初期のビートルズはジョンが牽引していたのは明白である。
「Rubber Soul」までのビートルズでは、ジョンが作って歌いポールとジョージがコーラス、というパターンが、やはり完成度が高くて好きである。
それ以外の「Little Child」「Hold Me Tight」「Devil In Her Heart」はどれもそれほど印象に残らない。
ただ若い時に聴いていれば、評価は全く違っていただろう。
「Little Child」はジョンとポールが時間がなくて急いで作った曲で、初めはリンゴが歌う予定だったらしい。
ジャケットもこれまた有名なハーフシャドウのモノクロ写真。
もちろん見覚えもあるしタイトルとともによく知っている。(聴いてなかったけど)
ロバート・フリーマンという写真家が、ホテルの廊下に椅子を並べて1時間あまりで撮影したもので、4人の誰も笑っていない。
当時のアイドルバンドのレコードジャケットとしては異様だったせいか、EMIはこの写真をジャケットに使用することに難色を示し、ブライアン・エプスタインとジョージ・マーティンが説得してようやく採用されたそうだ。
それにしても。
今さらだが極貧の自分でもよくここまでビートルズを聴いてきたもんだと思う。
FMで全曲オンエアされていたのも貴重ではあったが、やはりでかいのは友人の存在だ。
「Please Please Me」「A Hard Day's Night」「Magical Mystery Tour」「Yellow Submarine」を貸してくれたのは中学の同級生M君。
厳密にはMの所有してたレコードではなく、近所に住んでいたMの親戚のお兄さんのものだった。
当時Mは、お兄さんのアパートに勝手に入って置いてあるレコードを好きに聴いていい、という恵まれた環境にあった。
お兄さんは大学に行っててほとんどアパートにおらず、Mは上記の各アルバムを自分にもどんどん録音させてくれた。
お兄さんのコレクションには公式盤以外の「Beatles No.5!」「Something New」「Yesterday And Today」などもあり、これも全部録音させてもらった。
たまたまその中には「With The Beatles」がなかったのだ。
まあ全部タダで聴かせてくれたMとお兄さんには感謝しかない。
その後Mとはポールの日本公演にいっしょに行く予定だったが、ポール逮捕により公演はマボロシとなり、Mはブツブツ文句を言いながらチケット払い戻しもしてきてくれた。
Mとは別の高校に進学したので、すっかり疎遠になってしまい、今何をしてるのかすらわからない。
もしMに会うことがあったら、「オレ最近やっと「With The Beatles」聴いたんだよ」とバカな報告をすることにしよう・・・
というわけで、「With The Beatles」。
当たり前ですけど、聴いてよかったです。
中身に感動・・よりも、無事聴けたことに対する安堵、というのが正直な心境。
こんな恥ずべき事態をわざわざ世界中に発信してるという、東アジア最大級のスカ記事になりましたが、すでにBLOG全体が18年間同じような調子なんで、どうでもいい話ですけど。
これで本国公式盤は全て制覇した・・ことにしたいと思います。
今後も引き続き4人のソロ作品鑑賞研究に精進いたします。
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