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聴いてない 第282回 ウォーターボーイズ

今日紹介するのはザ・ウォーターボーイズ。
リーダーのマイク・スコットは日本とは何かと縁の深い人のようだが、では我が国での人気や知名度はどんなもんなのか、やはり全くわかっていない。

自分が聴いたのは代表曲と言われる85年の「The Whole Of The Moon」だけ。
ヒット中のリアルタイム鑑賞ではなく、90年代に入ってからNOW系オムニバスCDを図書館で借りたら、たまたま収録されていたという状態。
あと88年の「Fisherman's Blues」もどこかで聴いたことがあるかも・・程度。
実質聴いてない度は2である。

1曲だけ聴いてそれほど感動もせずそれっきり・・というアーチストは山ほどいるが、実は「The Whole Of The Moon」はかなり好きな曲である。
マイク・スコットのボーカルはやや独特で、ミック・ジャガーを若干薄めにしてボブ・ゲルドフを混ぜたような感じ。
あまりうまいとも思わないし好みではないが、それを上回る曲の良さがあるのだ。
曲調やサウンドは非常にいいと思う。
聴きどころとしてたぶんズレてはいるが、一番好きなのは後半に聞こえる女性のバックボーカルである。
歌詞を歌わず「らーらーららーららーらー」を繰り返すだけなのだが、これがなんというかとても素朴で奥行きのあるいい声なのだ。

そこまで感動しながら他の曲を聴こうという意欲はなぜかわかず、30年以上放置したまま現在に至る。(いつものパターン)
仕方なくウォーターボーイズを水面下で調査開始。

だがふつうにカタカナで「ウォーターボーイズ」と検索すると映画やドラマの話しか出てこない。
やはり我が国での認知度はかなり厳しい状況の予感。
一方でウィキペディア英語版はむやみに長い。
これをムリヤリ翻訳したりあちこちのサイトをさまよって得た情報は以下のとおり。

ザ・ウォーターボーイズは、1983年にスコットランドのエディンバラで結成されたフォークロックバンド。
ただし時期により音楽性は様々で、単ジャンルで簡単にくくれる団体でもないらしい。
リーダーのマイク・スコットは、唯一の不変のメンバー。
バンド名はルー・リードの「The Kids」という曲の歌詞から名付けられた。

続いてウォーターボーイズのメンバーをご紹介・・と思ったら、今までにバンドに関わった人数は100人近くになるそうだ。
コアなメンバーとして長期間マイク・スコットを支えてバンドに貢献してきた人もいる一方、ツアーやアルバムに一度参加しただけの人もいるとのこと。
それだけ登場人物が多いと、人間関係からギャラの支払いからロケ弁当の手配まで、関係者の苦労が絶えない気もするが・・
とりあえずウィキペディア英語版にはメンバーのタイムラインはなかったが、熱狂的なファンがどこかに作っているかもしれない。

マイク以外に貢献度の高い重要な人物は以下のみなさんである。
・スティーブ・ウィッカム(エレクトリック・フィドル、マンドリン)
・アンソニー・シスルスウェイト(サックス、ベース)
・ケヴィン・ウィルキンソン(ドラム)
・カール・ウォリンガー(キーボード)
・ロディ・ロリマー(トランペット)

スティーブ・ウィッカムはU2の「Sunday Bloody Sunday」でバイオリンを弾いている人。
そうなの?初めて知った・・・

バンドの歴史は大きく3つの期に分けられる。
・第一期:ビッグ・ミュージック期(80年代前半)
・第二期:フォーク・ミュージック期(80年代後半から92年頃まで)
・第三期:ロックとフォークとフェアリー・ミュージックのミックス期(2000年以降)

「ビッグ・ミュージック期」ってのは何かというと、最初のシングル曲「The Big Music」から来ている名称で、主にデビューから3作目のアルバム「This Is the Sea」までを指す。
豊かでドラマチックなサウンドと評され、初期のU2のようなパンクっぽいロックンロールサウンドに、トランペットやジャズサックスやキーボードを組み合わせたスタイル。
自分が聴いた「The Whole Of The Moon」も第一期のヒット曲(全英26位)。

第二期はフォークを基盤に古いイギリス民謡やアイルランド音楽やカントリーやゴスペルの影響を受けたサウンドで、アルバム制作よりもツアーに重点を置き、バンドメンバーも多かった時期で、92年頃に解散するまでの期間。
この時期の代表曲「Fisherman’s Blues」はハリウッド映画「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のサウンドトラックに収録された。
解散の原因はアンソニー・シスルスウェイトの脱退。
なお解散後の95年にマイクだけ来日し、渋谷クアトロでライブを行っている。

第三期は2000年の再結成以降現在まで。
二つの期での実績と経験を生かし、信頼のロックと安心のフォークを行き来しつつ、ツアーとスタジオアルバムのリリースを続けている。
2003年の「Universal Hall」よりスティーブ・ウィッカムが復帰。
2011年にはアイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツの詩に曲を付けたコンセプトアルバム「An Appointment with Mr. Yeats」を発表。
2014年にウォーターボーイズとしてフジロックに参戦。
翌年も渋谷クアトロで単独ライブを行い、「The Whole of the Moon」「This Is the Sea」「The Pan Within」など8曲を披露した。

スタジオアルバムは第一期に3枚、第二期は5枚、第三期は8枚発表している。
最新版は2020年の「Good Luck, Seeker」。

やはり知ってた話は全くなし。
意外に多作で日本でのライブも何度もあったそうだが、雑誌でもネットでも話題を目にした記憶はない。
第二期終盤くらいまでなら毎晩必死にエアチェックしてた時期と重なるはずだが、録音はおろか聴けたことも一度もない。
日本のFMではあまりオンエアされなかったのだろうか?

なお「The Whole of the Moon」は、マイク・スコットがアズテック・カメラのロディ・フレイムへの憧れや賞賛を表している曲とのこと。
訳詞を見てもそのあたりは全然わかりませんけど。
プリンスがカバーしたり、U2がツアーの導入歌として使用したこともあるそうです。

マイク・スコットは大学で文学と哲学を学んだ経歴を持ち、多くの曲の中に英文学や詩を採り入れている。
また歌詞に擬人化・隠喩・比喩・対比などの詩的な技法を用いることも多いとのこと。
そのため歌詞が高く評価され、「現代のボブ・ディラン」「スコットランドの吟遊詩人」などと評されるそうだ。
うーん・・・
「現代のボブ・ディラン」ってのは褒め言葉なんだろうけど、ディランだって現役でノーベル文学賞までもらってるんだから、過去の人のように扱うのは失礼じゃないの?
「吟遊詩人」という表現も、ノーベル賞の時にディランにくっつけたマスコミが評論家たちからさんざん叩かれてたと思いますけど・・

で、冒頭に述べたとおり、マイク・スコットは日本とは何かと縁の深い人である。
2016年には日本人女性と結婚している。
お相手は日本でも話題になった芸術家のろくでなし子(本名:五十嵐恵)。
当然だが日本での知名度は奥様のほうが上だろう。
裁判で闘うろくでなし子を支援するうちに交際に発展し、そのまま結婚。
何度も日本に通ううちにすっかりなじんでしまい、スコットランド出身・アイルランド在住だが「日本は第三の故郷」とまで発言している。
アイルランドでも日本のテレビ番組チャンネルを契約しており、子供とともに「アンパンマン」「おかあさんといっしょ」なんかを見てるらしい。

さらにウォーターボーイズの2019年のアルバム「Where The Action Is」日本盤CDには、ボーナス・トラックとして「In Yoyogi Park(代々木公園にて)」と「Shimokita Ga Suki Desu(下北が好きです)」の2曲が収録されている。
「In Yoyogi Park」では代々木公園で録音したカラスの声を使い、「Shimokita Ga Suki Desu」には日本語の歌詞もあるそうだ。

というわけで、結局なんにもわかっていないウォーターボーイズ。
せっかくマイク・スコットのほうからいろいろと日本に寄り添っていただきながら、全然鑑賞できていない非国民状態ですが、聴くとしたらやはり「The Whole of the Moon」収録のアルバム「This Is the Sea」からでしょうか。
みなさんはどれくらい聴いておられますか?

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