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2021年の終わりに

音楽史上最強の素人BLOGを始めてとうとう丸18年が過ぎてしまった。
毎年恒例のセリフだが、もう何年経とうが万年初心者は永久に解消しないことはわかりきっているので、今年もド素人として年の瀬を迎えることとなりましたよ。(開き直り)

昨年から続くコロナ禍により、三流会社員の自分も在宅勤務中心となった。
毎朝満員電車で通勤をしなくなったのはありがたい話だが、それにより音楽を聴く機会も激減してしまった。
長いサラリーマン生活で通勤時間がいかにムダだったかはよくわかったが、実はそのムダな通勤の電車内こそが、自分専用のオーディオルームだったのだ。
これはこれで悲しい話。

しかも今年は正月早々入院なんかしてしまい、秋頃まで通院で治療もしていたので、一般的には音楽どころじゃなかった・・という状況ではあった。
ただし、入院や治療中の苦痛を少しでもやわらげる手段として、音楽が有効だったことも事実である。
ということで、今年の記事や鑑賞を振り返ってみた。

聴いてないシリーズで採り上げたアーチストは以下のみなさんである。

聴いてない 第268回 ジョン・パー
聴いてない 第269回 シュガー・レイ
聴いてない 第270回 カジャグーグー
聴いてない 第271回 パティ・スマイス
聴いてない 第272回 クォーターフラッシュ
聴いてない 第273回 Eve6
聴いてない 第274回 レオ・セイヤー
聴いてない 第275回 M
聴いてない 第276回 アイアン・バタフライ
聴いてない 第277回 レイ・パーカー・ジュニア
聴いてない 第278回 バックストリート・ボーイズ
聴いてない 第279回 レーナード・スキナード

相変わらず脈絡は全くないが、12本も記事が書けた。
18年目でもアイアン・バタフライやレーナード・スキナードといった大物芸人が登場。
一方でカジャグーグーやMといった日本では一発屋扱いの方々や、シュガー・レイやEve6などの90年代芸人も採り上げてみた。
採り上げただけで鑑賞に至った事例は今年もなし。
我ながら骨の髄までの素人っぷりである。(意味不明)

当BLOGの基幹産業である聴いてみたシリーズ、今年の成果は以下のとおり。

聴いてみた 第161回 ブルース・スプリングスティーン その2
聴いてみた 第162回 デビッド・ボウイ その2
聴いてみた 第163回 ポール・マッカートニー&ウィングス その3
聴いてみた 第164回 ポール・マッカートニー&ウィングス その4
聴いてみた 第165回 ハロウィン
聴いてみた 第166回 ジョン・レノン
聴いてみた 第167回 ジョン・レノン その2
聴いてみた 第168回 ポール・マッカートニー その5
聴いてみた 第169回 ジョージ・ハリスン その2

今年は元ビートルズの3人を中心とした鑑賞に特化した年でもあった。
18年もBLOGをやっていながらまだこんな所にいる。
しかも元ビートルズ4人に限っても、まだ誰のソロ作品も全盤制覇していない。
リンゴ・スターは全く手つかずである。
ストーンズやクラプトン学習も未だ中途半端なままだ。
こんな調子では他の聴いてない名盤を全部聴くには、あと180年くらいかかりそうである。

恒例にするつもりもなかったが、今年もこのくくりを使うことになった。
これまで記事を書いた中で、今年この世を去ったミュージシャンは以下の方々である。

マイク・ネスミス(聴いてない 第221回 モンキーズ
チャーリー・ワッツ(聴いてみた 第140回 ローリング・ストーンズ その17
ダスティ・ヒル(聴いてない 第54回 ZZ TOP
ジェフ・ラバー(聴いてない 第204回 シンデレラ
ティム・ボガート(聴いてみた 第34回 ベック・ボガート&アピス
ロン・ブッシー(聴いてない 第276回 アイアン・バタフライ
レスリー・マッコーエン(聴いてない 第59回 ベイ・シティ・ローラーズ

全員を詳しく知っていたわけではもちろんないが、訃報を知ってなお、やはりどのバンドも鑑賞に発展していない。
ローラーズでは昨年のイアン・ミッチェルに続いてレスリーも故人となってしまった。
この中ではやはりチャーリー・ワッツが最も世界中に衝撃を与えたと思われる。
まだ追悼本を目にしたことはないが、そのうち文藝別冊シリーズで出そうな気がする。

今年の読んでみたシリーズは、その文藝別冊「ヴァン・ヘイレン」だけである。(実は入院中に読んだ)
以前も書いたことだが、我々中高年の文化として、古き良き洋楽の文献をあさって楽しむ・共有するということは続けていきたいと考えている。
音楽産業も出版界も見通しはどうしようもなく暗いが、今後も良質なテキストに巡り合えることを期待したい。

というわけで、コメントくださったみなさま、18年間ありがとうございました。
果たしていつまで続けられるのかわかりませんが、今後ともよろしくお願いいたします。
みなさまよいお年を。

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聴いてみた 第169回 ジョージ・ハリスン その2

ビートルズのドキュメンタリー「Get Back」が配信開始となり、ネットでもプロアマ問わずレビューをあちこちで見かけるようになった。
ただし自分はまだ「Get Back」を見ていない。
ディズニーどころか映画全般を見ないのに、「Get Back」のためだけにディズニープラスに入会するのもなぁ・・と躊躇している次第。(貧乏人)
それでも予告編など断片的に映像を見てるうちに、再びジョンとポールのソロ作品学習の義務感が高まりつつある。(高まってるだけ)

しかし。
よく考えたら(考えなくても)、ジョージ・ハリスンについては16年前に「All Things Must Pass」を聴いて以来、全く学習は進んでいない。
しかも「次回は「Cloud Nine」を試してみようと思います」などとほざいておきながら、例によって誰も見に来ないのをいいことに16年放置。
急遽我に返ったわたくしは予定していたジョン・レノン学習をキャンセルし(虚言)、ジョージ・ハリスン鑑賞任務を忠実に遂行することにしました。

Cloud9

「Cloud Nine」は1987年の作品で、前作「Gone Troppo」から5年ぶりのリリース。
全米8位・全英10位を記録し、ジョージのキャリアでは最大のヒットアルバムである。
ジェフ・リンとの共同プロデュースで、この共同制作がトラベリング・ウィルベリーズ結成、ビートルズ・アンソロジー活動へとつながっていくことになる。

ジョージは前作「Gone Troppo」発表後、年々チャラい方向に変化していく音楽産業に不満を感じ、80年代初頭にはとうとう曲作りやレコーディングをやめてしまう。
レコーディングの代わりにジョージが没頭したのは、別荘暮らしや庭いじりや映画製作といった趣味っぽい作業だった。
たまにサウンドトラックやチャリティーソングなども手がけたが、偉大な元ビートルズは音楽的には5年ほど沈黙の状態にあった。
ホントの理由は本人に聞いてみないとわからないが、ジョン・レノンの死も少なからず沈黙に影響したものと勝手に思っている。

だが86年頃からなぜかジョージ・ハリスンの創作意欲が復活する。
ここで登場するのが、ELOの活動を停止したばかりのジェフ・リン。
ELOやめてヒマでお金も欲しそうなジェフ・リンに、ジョージは新しいアルバムを共同制作するよう依頼。
ジョージのやる気復活を聞いて、リンゴ・スターエリック・クラプトンエルトン・ジョンなど大物芸人も参加し、ゴージャスなアルバム「Cloud Nine」が完成した。

ジョージのやる気は営業方面にも発揮される。
前作では全然やらなかったプロモーション活動も積極的に行い、メディア嫌いだったはずが新聞雑誌のインタビューにもどんどん答えた。
効果は絶大で、英米のマスコミはこぞってアルバムを絶賛。
アルバムは全米8位、先行シングル「Got My Mind Set on You」は全米1位を記録する。
現時点で元ビートルズが記録した全米1位は、この曲を最後に出ていないそうだ。

そんな大ヒットアルバム「Cloud Nine」だが、聴いてない理由は特にない。
「Got My Mind Set on You」はリアルタイムで聴いたし、ジェフ・リンの音なので避ける理由は何もないはずだが、たまたま小岩の友&愛に在庫がなかったとか持ち合わせが足りなかったなど、つまらない事情でレコードを借りなかったと思われる。
大衆的なサウンド展開がどういう評価を受けてたのかはよくわからないが、おそらくド素人の自分の耳には一番合う音だと思うので、安心して聴いてみることにした。

・・・・・聴いてみた。

1.Cloud 9
メロディは物悲しいが、サウンドはトップからいきなりジェフ・リンの音。
これはありがたい。
愚かな感想だけど、ELOのボーカルだけジョージに変わったような曲。
クラプトンとの日本公演でも演奏した曲なのでCDで聴いてるはずだが、あまり印象には残っていない。

2.That's What It Takes
ジョージとジェフとゲイリー・ライトの共作。
ゆるやかなリズム、ばすばす鳴るドラムはそのままウィルベリーズへの流れである。
終盤はギターとコーラスが効果的に響く。

3.Fish on the Sand
少しテンポアップした軽快なリズム。
バックに流れるエレクトリックな音がますますELOである。
ジョージのややか細く頼りないボーカルも、意外にこのサウンドには合っている。

4.Just for Today
ジョージの作品としては意外な気がするが、ゆったりとしたピアノバラード。
ピアノはゲイリー・ライトが弾いている。
雰囲気は「Isn't It a Pity」に似ている。

5.This Is Love
再びアップテンポなELO調。
ジョージとジェフの共作で、シングルカットされており(全英55位)、プロモ・ビデオも作られている。

6.When We Was Fab
これもジェフとの共作だが、Fabとはビートルズの人気絶頂の頃の愛称「Fab Four」から来ている。
また文法的には「We Were」としないといけないところを、単数形wasでビートルズは唯一無二の集団でワンチームであったことを強調している、との説がある。
ジョージがビートルズ時代を思い出して歌詞を書き、ジェフと二人で様々なサンプリングを行ってサウンドを作ったそうだが、確かに「I Am The Walrus」を感じさせる音がする。
プロモ・ビデオにはリンゴやエルトン・ジョン、さらにセイウチの着ぐるみをかぶった左利きのベーシストが登場している。
このベーシストが本当にポールなのかが当時話題になり、ジョージもポール出演を匂わせる発言をしていたそうだが、どうやらポールはスケジュールが合わず参加はしていなかったらしい。

7.Devil's Radio
LPではここからB面。
これも日本公演で披露しているが、やはりあまり印象に残っていない・・
ただこの曲でもジョージは楽しそうで、ボーカルに合いの手を入れるようなギターはクラプトン。
ピアノでエルトン・ジョンも参加している。

8.Someplace Else
やや暗めのスローバラード。
ジョージのバラードはそれほど得意ではないが、基盤はジェフ・リンの音なので安心して聴ける。
この曲ではジョージがスライドギターを多用。

9.Wreck of the Hesperus(金星の崩壊)
この曲だけ邦題が付いている。
珍しく?ジョージがパワフルに歌う。
ここでもギターはクラプトン。

10.Breath Away from Heaven
中国風のメロディにジョージのゆったりボーカル。
こんな曲があったとは・・面白いサウンドだ。

11.Got My Mind Set on You
全米1位の大ヒットナンバーが最後に登場。
この曲だけはリアルタイムで聴いていた。
日本のFM番組でも盛んに流され、簡単に録音できたのだ。
渋谷陽一は曲紹介で「ジョージ・ハリスン、久々のシングルですが、とても元気です!」と、倉持アナウンサーが天龍を紹介するみたいにテンションが上がっていた。(←伝わらない例え)
なおジョージが1位を獲ったのは1973年の「Give Me Love」以来とのこと。
オリジナルはラディ・クラークという人の作品で、1962年にジェイムズ・レイという黒人歌手が歌ったが、あまりヒットもしなかったそうだ。
カバーだとは知っていたが、そんなに古い作品だったとは知らなかった。
ジョージの物静かなイメージからはずいぶんと離れた、はじけるリズムとサウンド。(←ダサい表現)
たぶんジョージはもともとこういった楽しいロックも好きで、それをジェフ・リンがうまいこと誘導したんじゃないかと思う。

以下はボーナストラック。

12.Shanghai Surprise(上海サプライズ)
ジョージが86年に製作した、マドンナとショーン・ペン主演映画の主題歌。
映画をジョージが作ったのは知っていたが、曲は初めて聴いた。
あまり明るくない中華風メロディで、不思議な雰囲気。
一緒に歌っている女性はジョージの幼なじみのビッキー・ブラウンという歌手。

13.Zig Zag
これも映画のためのジェフとの共作で、シングル「When We Was Fab」のB面に収録された曲だそうだ。
どこか古い感じのメロディで、歌詞はほぼタイトルの繰り返し。

14.Got My Mind Set on You (Extended Version)
11の別バージョンが収録されている。
文字通り少し長く、またイントロや間奏の音が違う。
大幅に違うわけではないが、シングルバージョンのほうがいいと思う。
ちなみにカバーに至った経緯は、セッション中の偶然の会話から始まったとのこと。
ジム・ケルトナーとゲイリー・ライトがこの曲のリズムについて話しているのを聞いたジョージが「えっ!おまいらその曲知ってたんか?」と反応。
ジョージはデビュー前にアメリカでジェイムズ・レイのアルバムを買っていたのでもちろん知っていたが、それまでこの曲を知っている人なんか会ったことがなかったそうだ。
3人ともお互いにコアな曲を知っていたということで盛り上がり、じゃあ収録しようぜという展開に。
偶然からノリで始まったカバーが全米1位の大ヒットという、漫画みたいないい話である。

聴き終えた。
簡単に言うと想定どおりのジェフ・リンの音で、これがむやみに聴きやすい。
ELOは当然、またトラベリング・ウィルベリーズやトム・ペティの作品にも共通する、あの音だ。
ジョージ・マーティンやグリン・ジョンズだったら、全く違う音になっていたはずである。
リアルタイムで聴いていれば、間違いなく愛聴盤になっていたと断言できる。

渋谷陽一の言った通り、このアルバムではとにかくジョージが元気である。
沈黙も復活も理由はよくわからないが、地味に売れない曲ばかり作るよりも、友達と楽しく歌って稼げたほうがやっぱりいいよな、という心境に変わったのだろうか。
このテンションのままウィルベリーズや来日公演やアンソロジーといった活動的なジョージを見ることができて、ファンのみなさんとしてもよかったのではないかと思う。

92年のクラプトンとの日本公演でも、このアルバムから「Cloud 9」「Fish on the Sand」「Devil's Radio」「Got My Mind Set on You」の4曲を演奏している。
(「Fish on the Sand」だけCDには未収録)
なのでジョージもこのアルバムは気に入っていたのだろう。

すでに語り尽くされている感はあるが、やはりジェフ・リンの功績は果てしなく大きい。
ジョージというクセがすごいミュージシャンから、インドやプログレではない「ビートルズの音と香り」を最大限に引き出し、さらに自分の音を混ぜながら芸術的にも興行的にもジョージを成功に導いている。
このジェフ音(モンスリー師匠風に言うと「リン化」)をどう受け取るかによって、評価は分かれる気がする。
おそらくビートルズ時代からのコアなジョージのファンの中には「あれはジョージの音じゃない!」と拒絶してる人もいるんじゃないだろうか。
自分はもちろん大歓迎ですけど・・

ジャケットはサングラス姿の笑うジョージ。
手にしているのはビートルズ結成前にリバプールで購入したグレッチ6128という黒いギター。
ただジョージの手元にずっとあったわけではなく、長年友人であるクラウス・フォアマンに預けられていたもので、ジョージは返してもらったギターを修復してジャケットに使用したとのこと。
背景は雲や海だが、下から光が当たってギラギラした、どこかハワイアン音楽レコードのようなジャケットだ。
あまりジョージっぽくない写真だが、中身同様楽しそうでいいと思う。

というわけで、「Cloud Nine」。
これは予想通りよかったです。
時系列的には最後のスタジオ盤から聴いてしまいましたが、これがジョージ初心者の自分には正解でした。
ビートルズ時代からジョージの独特な音や世界観は今ひとつなじめなかった自分ですが、このアルバムにはそうしたとっつきにくさは全くなく、楽しい音楽だと感じました。(安い感想)
一筋縄ではいかないアーチストだとは思いますが、これを機にジョージの作品も学習していきたいと考えております。

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