« 聴いてみた 第166回 ジョン・レノン | トップページ | 聴いてみた 第167回 ジョン・レノン その2 »

聴いてない 第275回 M

タイプミスではありません。
今日のお題は懐かしのM。
70年代末期に「Pop Muzik」を大ヒットさせたあのMです。

聴いたのはその「Pop Muzik」と、80年のシングル「Official Secrets」だけ。
いずれも柏村武昭の紹介により地味にエアチェック。
本名や国籍や家族構成や貯蓄額などは一切知らない。
聴いてない度は3。

「Pop Muzik」が大ヒットしていた当時、Mにハマった友人がいて、アルバム「New York-London-Paris-Munich」の輸入盤を入手していた。
そいつはよほどうれしかったのか、買った輸入盤をわざわざ学校に持ってきて自慢していたのだが、当時の輸入盤レコードは独特の黄色っぽいニオイがして、自分はどうにもあの香りになじめず、友人からの「貸してやる」のお誘いも丁重にお断り。
結局アルバムは聴かずじまい。
そんなわけで自分にとってMといえば楽曲とともにあの強烈なニオイが強く印象に残っている。

「Pop Muzik」は聴いたものの、世界中を席巻していたテクノポップにも実はそれほど興味はわかなかった。
日本でもYMOをはじめヒカシューやランドセルやPモデルやプラスチックスといったテクノな人たちが続々登場したが、どれもまともに聴いたことはない。

大ヒット40周年を記念してMについて今夜調べてみました。(適当)

本名はロビン・エドモンド・スコット。
とりあえずイニシャルMではないようです。
1947年イギリスのサリー州クロイドン生まれ。
ロビン少年はクロイドンで育ち、地元の美術大学に通う。

60年代後半にセックス・ピストルズのマネージャーとして知られるマルコム・マクラーレンと、マルコムのパートナーでありファッションデザイナーのヴィヴィアン・ウェストウッドに出会う。
ロビンはマクラーレンとウェストウッドから、彼らが立ち上げたチェルシーのブティック「SEX」に参加しないかというお誘いを断り、音楽でのキャリアを築くことを選ぶ。
あのマクラーレンとウェストウッドに出会った・誘われたという経歴はジョン・ライドンと同じだが、その後の展開は全く違ったようだ。
そのまま二人の誘いに乗っかってたら、パンクで有名になっていたかもしれない。

ロビン・スコットは大学在学中からラジオやテレビ用に曲を書く仕事を始め、1969年にアルバム「Woman From The Warm Glass」でデビューする。
中身はアシッド・フォーク・ロックで、マイティ・ベイビーというバンドのメンバーが参加。

その後はブルースバンドに参加したり、デビッド・ボウイキャメルなど様々なミュージシャンと交流し曲を作ったりしたが、メジャーリリースには至らず。
他にもミュージカル用の曲を書いたり、プロデュース業をやってみたりと地味に音楽活動を継続。

78年頃、ルーガレーターというR&Bバンドのデビューアルバムをプロデュースするため、「Do It Records」という名のレーベルを知人とともに設立。
このレーベルから初期のアダム&ジ・アンツの作品をリリースしたり、ロビン自身も「Comic Romance」という名義でシングル「Cry Myself to Sleep」を発表している。

そしてロビンが当時「M」と呼んでいたセッションミュージシャンのグループとともに、名曲「Pop Muzik」、アルバム「New York-London-Paris-Munich」をプロデュースして録音する。
参加した他のミュージシャンには、ロビンの弟であるジュリアン・スコット、キーボード奏者ワリー・バダロウ、ジョン・ルイス、ブリジット・ノヴィク、後にレベル42に加入するフィリップ・グールドがいた。
録音はスイスのモントルーで行われ、当時モントルーに住んでいたデビッド・ボウイも手拍子で参加している。
え、手拍子だけ?
せっかくボウイさん来てくれはったならワンフレーズでもいいから歌も録音したらよかったのに・・

手拍子の甲斐もあって「Pop Muzik」は各国の週間チャートで軒並み上位を記録し、全米1位・全英2位、オーストラリアやカナダや西ドイツでも1位を獲得する大ヒットとなった。

今回調べてみて初めて知ったのだが、Mとは公式にはロビン・スコットの個人ユニットではあるが、そもそもはロビンも含めたセッションミュージシャングループのことだった。
大ヒットした後、ギャラや印税の配分でモメたりしなかったのだろうか。
ボウイは手拍子だけでいくらもらえたのだろうか。(発想が貧乏人)
なおMという名前は、当時パリでジャケットのデザインを考えていたロビンが、地下鉄(メトロ)のでかいMの字看板を見て思いついたとのこと。

Mは80年シングル「Official Secrets」「Keep It to Yourself」とアルバム「The Official Secrets Act」をリリース。
イギリスとアイルランドで録音され、レベル42からフィル・グールドとマーク・キングも参加。
「Pop Muzik」の国際的大ヒットの勢いそのままに、事務所もレコード会社も期待を込めての発表だったが、なんと結果は惨敗。
「Official Secrets」は全英64位どまり、アルバムも全米全英はおろかどこの国でも200位にも入らず。
この落差は今見ても驚くほど厳しい。
イギリスの芸能界も怖いスね。
日本じゃ一発屋の称号が似合うMだが、そう言われても仕方がない実績である。
なお惨敗をよそにロビン・スコットは、坂本龍一に誘われて81年のアルバム「左うでの夢」を共同プロデュースしている。

懲りないロビン・スコット、82年にはMとしての3枚目のアルバム「Famous Last Words」を発表。
再びレベル42からはフィル・グールドとマーク・キングが参加。
また高橋幸宏やトーマス・ドルビーも協力した話題性がっちりの作品だったが、セールスとしてはまたも失敗で、本国イギリスでは発売もされず、他国のチャートをにぎわすようなこともなかった。

これでレコード会社MCAとの対立も決定的なものとなり、以降二度とMCAから作品をリリースすることはなかった。
ロビンは新たな方向性としてアフリカ民族音楽に傾倒するようになる。
83年から84年にかけて多くのアフリカのミュージシャンたちと共演。
南アフリカの女性ボーカルトリオ、シキシャとの共作アルバムも発表した。

その後はしばらく表舞台に立つこともなく、当然ヒット曲もロケ弁もギャラも出ない状態が続く。
ただアルバム「New York-London-Paris-Munich」は歴史的名盤として評価は高く、97年再発時にはボーナストラックが13曲も追加された。
また2002年にもボートラ5曲を含む全13曲収録で再発売されている。

2007年8月頃オーストラリアで開催されたコンサートに出演し、初めて「Pop Muzik」をライブ演奏した。
現時点での最新作は2017年リリースの「Emotional DNA」。

・・・今回も全っ然知らない話だらけ。
失礼ながら今も現役で活動中というのも知らなかったし、マクラーレンとウェストウッドに誘われたという経歴も初めて知った。

聴いた2曲はどちらもテクノサウンド満載で、当時の音楽情勢を雄弁に語る楽曲である。
「Official Secrets」のほうがやや英国エレポップの神経質な要素を取り込んでいる気がする。
「Pop Muzik」はイントロは印象的だが、リズムやメロディは思ったよりも単調に思える。
どちらも好みの音かと言われるとやはり微妙で、当時流行っていて録音できたから消さずに聴いていただけ。

でも「Pop Muzik」はU2がツアーでこの曲をリミックスして使ったり、カバーした人たちも複数おり、イギリスではテクノブーム時代を象徴する名曲ではあるらしい。
本国ではMことロビン・スコットは一発屋扱いではないのだろうか?

「Pop Muzik」の歌詞も今回初めて調べてみたが、つぶやきや口語の部分も多いので、紹介してるサイトごとに細かい部分で微妙に言葉やスペルが違う。
少なくとも恋する心情を歌ったり愛の情景を綴ったりといったものではなく、韻を踏んで言葉をつないでみたり、思いつくままフレーズを並べているだけで、日本語に訳すること自体無理があるようだ。

アルバムのタイトルのとおりニューヨーク・ロンドン・パリ・ミュンヘンが出てきたり、「ラジオにビデオ、スーツケースを持ってブギーしよう、ディスコ三昧の生活をしよう」と呼びかけたりしている。
「I can't get jumping jack、I wanna hold get back」という部分は、ストーンズの「Jumpin' Jack Flash」とビートルズの「Get Back」を指しているとのこと。

なんとなく意味がありそうなセンテンスはそれくらいで、他はディズニーアニメ「ミッキーのジャックと豆の木」で巨人が口ずさむ鼻歌部分「Fe, fi, foe, fum(ふんふんふん♪といった感じ?)」を歌詞に入れてみたり、子供が使う古典的な言い回し「Eenie, meenie, mienie, mo(日本語で言うと「どーれーにーしーよーうーかな」)」を採り入れたり、かなり自由で好き勝手な歌詞だ。

さてロビン・スコットから「Pop Muzik」のパクリだと訴えられた、とあちこちのサイトに書いてあるのが以下の2曲だ。
・ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース「I Want A New Drug」
・レイ・パーカー・ジュニア「Ghostbusters」

ただしこれもサイトによって記述はけっこうバラバラ。
結果は「ロビンの勝訴」と書いてあったり、「ほとんど話題にならず」で終わってたり。
さらには訴えられたのはレイ・パーカーだけになってるサイトもあって、真相はよくわからない。
なおヒューイ・ルイスが「Ghostbusters」は「I Want A New Drug」のパクリだとレイ・パーカー・ジュニアを訴えた、というのは各サイトとも共通していた。
とりあえず3曲とも知ってるが、まあ確かにリズムは似てるけど・・これがパクリだったらもっと似てる組み合わせはあるよなという感想。
そういえば「うっせえわ」って、ストーンズの「Neighbours」に似てません?

というわけで、M。
そもそも日本のリスナーからはどんな評価を受けてるのか全くわかりません。
M名義のスタジオ盤は3枚とのことなので、気合いを持って臨めば全盤制覇も不可能ではないとは思うが、当然名盤「New York-London-Paris-Munich」ははずせないでしょうね。
皆さまの鑑賞履歴や評価について教えていただけたらと思います。

 

| |

« 聴いてみた 第166回 ジョン・レノン | トップページ | 聴いてみた 第167回 ジョン・レノン その2 »

コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
Mですが、全く知りまヘん。

>>「Pop Muzik」の国際的大ヒット

先ほどユーチューブで初めて聞きました。うーん、確かにポップですが、
バグルスのような独自の進化を遂げたポップミュージックのようで
とても苦手です。と思ったら、「Pop Muzik」の後に勝手に「ラジオスターの悲劇」
が流れ始めました。これって偶然?

>>ロビン・スコットから「Pop Muzik」のパクリだと訴えられた
>>・ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース「I Want A New Drug」

ルイス&ニュースのファンだからというわけではないですが、さすがに似ていないと
思います(^^;
ただし、引用元が同じという可能性はありますね。
ホール&オーツの「マンイーター」をスティービー・ワンダーが「パートタイム・ラヴァー」
でぱくったと言われています。しかし、「マンイーター」はそもそもモータウン
リズムを大胆に取り入れてますので、結局引用元は同じ、というアレです。

投稿: モンスリー | 2021.09.12 20:42

モンスリーさん、コメント感謝です・・が、

>Mですが、全く知りまヘん。

えええ~??
これに一番驚きました。本当ですか?
まあ日本でもヒットしてたのは一時期だったんで、「リアルタイムで聴いてなければ知らない」一発屋になるんでしょうかね・・
ぷく先輩は絶対LP持ってますよ。(適当な断言)

>「Pop Muzik」の後に勝手に「ラジオスターの悲劇」が流れ始めました。これって偶然?

You Tubeはほっとくと勝手に類似や関連の動画が再生されるので、You Tube側も視聴者側も同じテクノポップくくりと認識してるんでしょうね。
ヒットしたのは「ラジオスターの悲劇」が少し後のはずです。

>ルイス&ニュースのファンだからというわけではないですが、さすがに似ていないと思います(^^;

同感です。
自分もMを調べて初めてそんな訴訟騒動があったことを知りました。
「Ghostbusters」は「I Want A New Drug」に似た雰囲気の曲を作れというオーダーにレイ・パーカーが素直に従ったら似すぎて訴えられた、という話ですけど。(この話は当時の雑誌に載ってました)
ただ、その両方の源流は「Pop Muzik」だった、と言われても・・感覚的にはムリがあるなぁというところです。
確かにリズムは全部同じですけど、だったらご指摘のモータウンリズムなんて全部パクリ!全部訴訟!ということになりますよね。
いろんな意味で英米の芸能界は怖いです。

投稿: SYUNJI | 2021.09.13 18:30

ご無沙汰しております。3回目のコメントです。

Mとあれば黙ってはいられません。全米No.1ヒットとなった“Pop Muzic”にリアルタイムではまり、人生で初めて買ったLPがMの“ニューヨーク・ロンドン・パリ・ミュンヘン”だったのですから。

LPは実家にまだあるはずですがプレーヤーがないので聴けません。“Pop Muzic”はCDの音源が貴重な頃に、探しに探しまくって収録されているオムニバスの輸入盤を執念で見つけ出し、iPodに取り込んでいまだに愛聴している生涯のパートナーです。

歌詞の内容なぞ知りません。Mはスーパースターにはなりませんでした。“Pop Muzic”も歴史的に意義ある曲ではなく、単なる時代にマッチした商業主義の使い捨てのポップソングです。しかし、そんな事はどうでもいいのです!自分の中では燦然と輝き続ける名曲なのですから!

「ポッ、ポッ、ポップ・ミューヂック!」というフレーズは、誰がなんと言おうと(誰もなにも言いませんが)永遠に不滅です!あと、たまに「マンマンマンマーン」というフレーズが頭の中に飛びかって離れません。“ニューヨーク・ロンドン・パリ・ミュンヘン”の2曲目に収録されている“Woman Make Man”のフレーズのはずです。おそるべし、M!

Mを採り上げていただいた事、心より感謝申し上げます。

投稿: えふまる | 2021.10.12 23:08

えふまるさん、コメントありがとうございます。
あれからジャクソン・ブラウンも結局放置したままです・・

>人生で初めて買ったLPがMの“ニューヨーク・ロンドン・パリ・ミュンヘン”だったのですから。

そうだったんですか!
それは忘れられない1枚ですね。
実はアルバムタイトルも今回調べてみて初めて知りました。
「M」ってタイトルじゃなかったんですね・・

>“Pop Muzic”はCDの音源が貴重な頃に、探しに探しまくって収録されているオムニバスの輸入盤を執念で見つけ出し、iPodに取り込んでいまだに愛聴している生涯のパートナーです。

>しかし、そんな事はどうでもいいのです!自分の中では燦然と輝き続ける名曲なのですから!

熱いコメント恐縮です・・
ご指摘のとおり時代を象徴する曲ですよね。
日本でも同世代ならかなりの方が知ってる曲ではないかと思います。

>Mを採り上げていただいた事、心より感謝申し上げます。

いえ、すいません、ただ聴いてないことを白状しただけですが・・(後ずさり)
ご覧のとおりウチのBLOGは基本的に全部このパターンですので、他におすすめのアーチストがあればまたご指導ください。

投稿: SYUNJI | 2021.10.14 20:58

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 聴いてみた 第166回 ジョン・レノン | トップページ | 聴いてみた 第167回 ジョン・レノン その2 »