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聴いてみた 第166回 ジョン・レノン

70年代ポール・マッカートニーをなんとか制覇してやれやれ一安心の聴いてみたシリーズ。
だが没後40年半、また東洋一の珍奇BLOG開設以降17年半もの間力一杯放置していたのが、ポールと並ぶ大英帝国音楽界の双璧・巨大なる音楽山脈・ひとり民族大移動ことジョン・レノンである。(適当)
まあジョージリンゴも放置してることに変わりはないが、ポールだけ聴いてジョンの作品を一切聴いてないというのは相当深刻な状況だ。(今さら)

ただし。
相手は一筋縄ではいかないジョン・レノン。
時系列にそって正しく鑑賞・・と行きたいところだが、さすがに前衛芸術家ヨーコと組んで発表した69年までの3作品からではハードルが高すぎであろう。(聴いてないけど)
なので一応ビートルズ解散後のソロキャリアとして最初の作品である「ジョンの魂」を聴くことにしました。
なお今回聞いたのは2000年発売のリマスター盤である。

John-lennon_20210821094001

原題は「John Lennon/Plastic Ono Band」。
ジョンとヨーコ、フィル・スペクターによる共同プロデュースで、ヨーコ名義の「Yoko Ono/Plastic Ono Band」という前衛的な曲を集めたアルバムと対になっているそうだ。
申し訳ないけど、ヨーコ名義の音楽は全く興味はわかない。

取り急ぎ制作の経緯をネットで調べてみた。
ビートルズ解散騒動の影響は4人それぞれにあっただろうが、ソロアルバムをポールは一人で作ったのに、ジョンにはリンゴ・スターやクラウス・フォアマン、ビリー・プレストンが協力している。
またジョンが30歳の誕生日である10月9日に「Remember」を録音していると、ジョージ・ハリスンがお祝いのためスタジオを訪れ、リンゴと3人でしばしご歓談したという話もある。
なので図式としてはやはり解散前後はポールだけが孤立し、ジョン・ジョージ・リンゴと対立関係にあったのは間違いないようだ。

ビートルズ解散後、ジョンの精神的ダメージやLSDの影響を心配したヨーコは、ジョンとともにアメリカのアーサー・ヤノフ博士が提唱した精神療法である「プライマル・スクリーム(原初の叫び)療法」を受けることにした。
治療はまずロンドンで4週間行われ、その後はロサンゼルスで4ヶ月間続けられた。
ヤノフ博士の治療は、抑圧された子供時代のトラウマを感情的に吐き出すことを主眼としていたとされる。

しかし、ビザ期限切れを理由にアメリカ移民局からジョンに国外退去命令が出たため、イギリスに戻らねばならず、治療は中断してしまったそうだ。
ヤノフ博士は、ジョンのトラウマはかなりの重症であり、治療は最低1年は必要と判断していたので、治療が途中で終わってしまったことを心配していた。

ジョン自身は、途中で終わってしまったものの治療については肯定的で、感情を価値のある自己啓発的な作品に昇華することができたと表明している。
結果として「ジョンの魂」は、この原初療法の経験が強く反映され、シンプルではあるが強烈な内面感情の発信となって完成されたことになる。

レコーディング中もジョンはかなり不安定で、「録音の途中で急に泣き出したり、叫び始めたりしたこともあった」と後にリンゴは語っている。
そもそも「オレはもうビートルズをやめてヨーコと生きていくんや」と先に脱退表明したのはジョンなのに、いざ解散となったら混乱ぶりはポール以上に深刻で、たぶんリンゴはジョンのことが心配でレコーディングに協力したんじゃないかとも思う。
長い付き合いの中で、リンゴはジョンのことを「常にそばに誰かがいないとダメなヤツ」だとわかっていたんじゃないだろうか。
いずれにしてもリンゴがいてよかったなぁ、ジョン。

こうして泣いたり叫んだりヨーコや友人に支えられたりで混乱しながらも完成した、文字通り魂の叫びとしてのジョン・レノンの「ジョンの魂」。
果たしてジョンの叫びは自分にはどう聞こえるのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1. Mother(母)
部分的に聴いたことはあるが、全編まともに聴くのは初めてである。
重い鐘の音が4回鳴ったあと、唐突に曲が始まる。
ラストの2行は一部リズムが急いでいる。
歌詞も原初療法の成果なのだろうか。
解釈はいろいろあるようだが、個人的には「世界中の子供たちに自分と同じような思いをしてほしくない」というメッセージである説を支持したい気がする。

2. Hold On(しっかりジョン)
ゆったりしたリズム、リンゴのころがるドラム。
これにジョンのボーカルが二重で乗る安心のサウンドだが、短い。

3. I Found Out(悟り)
ジョンならではの辛口なブルージーメロディとサウンド。
どの楽器も主張しており、意外にバンド感がある。

4. Working Class Hero(労働階級の英雄)
アコースティックギターの弾き語り。
どの評論にも書いてあるが、「ボブ・ディランを思わせる」フォーク調の曲。
まあ確かにメロディも歌い方もディラン風ではあるが、ジョンのボーカルなので安心して聴ける。
この後「God」で「ディランを信じない」と言ってしまうんだけど。
歌詞の和訳をあちこちのサイトで見てみたが、解釈がかなり難しい。
そもそもイギリスの階級自体が日本人に正確に理解できるんかと言われたら、これも微妙だ。
繰り返される「A working class hero is something to be」は「労働者階級の英雄になれるならそりゃカッコいいよ、大したもんだよ」といった意味だろうが、単純に労働者階級の人々を鼓舞してがんばろうぜと呼びかけているわけではない。
「英雄になれたらいいけど、そんなに簡単じゃないぜ、気をつけなよ」といったニュアンスだろうか。

5. Isolation(孤独)
今度はピアノの弾き語り。
前半はなんとなく後の「Imagine」につながるような旋律。
中盤はピアノもボーカルもたたきつけるようなブルース調に変わる。
・・と思ったら突然終わる。

6. Remember(思い出すんだ)
少しテンポを上げたピアノ基調の曲だが、ハーモニーやリズムをあまり気にしていない展開で、複雑な構成。
リンゴのドラムがいい。
爆発音が鳴り、この曲も唐突に終わる。

7. Love(愛)
この曲だけベスト盤で聴いていた。
他の曲とは違い、歌詞もメロディも構成も非常に誠実で、皮肉や裏をかくような切り返しが一切ない。
やはり後世に残る名曲である。

8. Well Well Well
一転重苦しいブルース。
どこか「Yer Blues」や「Come Together」を思わせる。
中盤以降はボーカルもかなりクスリっぽいヤケクソなシャウトが混じる。

9. Look At Me(ぼくを見て)
「OK?」という掛け声で始まる、アコースティックギター。
これもどの評論にも書いてあるが、リズムもメロディも「Julia」に似ている。
確かにそのままホワイトアルバムに入っていても違和感のない曲である。
実際この曲の原型を作ったのはホワイトアルバム制作の頃らしい。

10. God(神)
この曲もまともに聴くのは初めてである。
ビリー・プレストンがピアノで参加。
サウンドは美しいが、歌詞は読んでのとおり、世の中の何もかも信じない、真実としてあるのは自分とヨーコだけ、夢は終わった・・という強烈な決別宣言である。
「僕はビートルズを信じない」という衝撃の一節があるが、ここは「The Beatles」とは言っていないので、ジョンが信じないと言ったのは「バンドとしてのビートルズ」ではなく、「ビートルズをとりまく一連の騒動や現象を指している」という解釈があるそうだ。
ファンとしての切実な想いも込めた解釈のようだが、当時の状況からしてもジョンはやはり「ザ・ビートルズ(=ほぼポール)」も信じられなかったのではないだろうか。
今なら炎上必至の歌詞だけど、そういうことをついストレートに歌ってしまうのがジョン・レノンという人なんだと思う。
なお歌詞にある「Zimmerman」はボブ・ディランの本名とのこと。

11. My Mummy's Dead(母の死)
ジョンがカセットテープに録音したという短い曲。
元曲はイギリス民謡の「Three Blind Mice(三匹の盲目のネズミ)」だそうだ。

以下はボーナストラック。

12. Power to the People
この曲もベスト盤で聴いていた。
タイトルどおりの力強い歌と演奏。
ジョンにとってはどうでもいい話だが、あの内田裕也が政見放送でこの曲を歌っていたのをリアルタイムで見たことがある。

13. Do the Oz
ビル・エリオット&エラスティック・オズ・バンドというグループのシングル「God Save Us」のB面に収録された曲で、歌っているのはジョン。
曲はジョンが作ったもので、イギリスの雑誌「Oz」が猥褻の罪で裁判にかけられた際、雑誌を救う募金活動を行うのに合わせて作られたそうだ。
ビル・エリオットとは何者?と思って調べたら、ハーフ・ブリードというバンドで活動していた歌手で、ビートルズのロードマネージャーだったマル・エヴァンスによってスカウトされた人、とのこと。
ただしサウンドは前衛的で歌詞もタイトルの繰り返し、ジョンのボーカルもヤケクソで聴きどころは全然ない。
これで募金は目標どおり集まったの?
なんでこれをボーナストラックとして採用したんだろうか?

聴き終えた。
「よかった」「そうでもなかった」という感想の前に、やはり「難しい」という感覚はある。
「難しい」の定義すら難しいのだが、プログレやパンクを聴いた時の難しさとは当然違う。
楽しくなったり高揚するような曲はひとつもなく、かと言って受け入れがたいような変わった音でもない。
もう少し反復が必要なことは言うまでもないが、第一印象としては思ったより難しかった、というのが正直なところ。

好みかどうかは別として、ポールの「McCartney」よりも印象に残るアルバムではある。
「ジョンの魂」も音楽として楽曲や歌声や演奏だけを純粋に鑑賞するのではなく、当時の状況や背景をふまえ、ジョンの心情や決意、ポールやリンゴとの関係などをくみ取りながら聴くのが正しい姿勢であろう。
「McCartney」同様そうした情報も含めての鑑賞だったが、やはりジョンの魂の叫びのほうがインパクトは大きいものがある。

歌詞はどれもシンプルでストレートがゆえに、日本のリスナーでも様々な解釈がなされている。
特に「God」の「ビートルズもディランも信じない」とは当時の本心なのか、皮肉なのか、はたまたジョン特有のジョークなのか、判断は難しい。
ホントのところはジョンに聞いてみないともちろんわからないが、当時は本気でそう思っていて歌詞にも直球で書いちゃったけど、その後やっぱ少しマズかったかな?と後悔していた・・というあたりではないだろうか。

というわけで、「ジョンの魂」。
名盤であることはなんとか理解できたものの、まだ学習は全然足りておらず、繰り返し鑑賞が必要と感じました。
次作の名盤「Imagine」にも挑戦しようと思います。

 

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聴いてみた 第165回 ハロウィン

中高年メタル緊急事態再履修シリーズ、今回はハロウィンの「Keeper Of The Seven Keys Part 1(守護神伝 第一章)」を聴いてみました。
CDは昨年渋谷レコファンが閉店する直前に買っておいたのだが、特にハロウィンについて主体的に購入しに行ったわけでもなく、閉店直前でザワつく店内で、目の前にあったから手に取っただけ。(失礼)
入院やボウイ学習やウィングス鑑賞のためすっかり放置しており、半年以上経ってようやく聴くことになった。

Keeper-of-the-seven-keys-part-1

「守護神伝 第一章」は87年5月にリリースされた、ハロウィン2枚目のアルバム。
メンバーは以下のみなさんである。
 マイケル・キスク(Vo)
 カイ・ハンセン(G、Vo)
 マーカス・グロスコフ(B)
 マイケル・ヴァイカート(G)
 インゴ・シュヴィヒテンバーグ(D)

アルバム最大のポイントは新ボーカリストとしてマイケル・キスクが登場したことだ。
前作ではカイ・ハンセンが曲作って歌って弾いてというえらくカイ一人に負荷のかかる作業配分だったが、カイ本人も自身のボーカルがあんましうまいとも思っていなかったらしく、ああしんどいもう誰かに歌わせたろとボーカリスト探しを始めたところに、当時18歳の若きマイケル・キスクが加入。
キスクがこれまたメタルのボーカルとして最適なハイトーンボイスの持ち主で、バンドのパワーバランスとクオリティは劇的に向上し、完成したのが「守護神伝 第一章」である。

当初は2枚組アルバムとしてリリースする予定だったが、レコード会社の指示で1枚ずつリリースすることになったそうだ。
なので第一章と第二章を両方聴かないと正しい鑑賞とは言えないらしい。
でも買ってきたのは第一章だけなので、とりあえず第一章で入門することにした。
ハロウィンのアルバムを聴くのが初めてなので、カイ・ハンセンとマイケル・キスクのボーカルを比較することもできないが、入門編としては申し分ないだろう。

・・・・・聴いてみた。

1.Initiation
オープニングはどこかELPを思わせる重く壮大なインスト。

2.I'm Alive
1曲目からそのまま疾走感あふれるロックに突入。
いわゆるメロスピの基本王道路線であり、キャッチーで聴きやすいが、行き急ぐギターやドラムがやややりすぎ感もある。

3.A Little Time
重厚なリズムとギターサウンドを重ねた楽曲。
中盤部分の構成はツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」を思わせる。

4.Twilight of the Gods
カイ・ハンセンの作品だが、歌うのはキスク。
速度は他の曲と同様に急いでいるが、メロディや曲調は意外に明るく、どこかコミカルでSFアニメのテーマソングのような雰囲気。
ヤケクソなギターソロが割といい感じだし、コーラスやエコーなどのアレンジが壮大なイメージを作り上げている。

5.A Tale That Wasn't Right
一転哀愁に満ちたバラード。
ギターのマイケル・ヴァイカートの作品。
サビではマイケル・キスクが高音で叫びつつ歌う。

6.Future World
これも保守本流なメタルの構成とサウンド。
シングルカットされた曲で、ライブでもよく歌われ、終盤は観客とともに大合唱となるそうだ。

7.Halloween
13分間に及ぶ長大な曲。
バンド名「Helloween」と同じタイトルだ・・と思ったら、曲のほうはハロウィンの正しいスペルだった。
中盤までは通常のメタルサウンド。
やがて左右のギターソロかき鳴らしが加わり、アコギを響かせて鎮めた後、再びギターソロの応酬、ボーカルに対してワイルドな合いの手など、このあたりは結構複雑な構成。
ただ基盤となるのはやはり速度超過気味のメタリックな金属加工進行である。
長さを感じさせない・・という評価が多いが、やはり初心者にはやや長い。
エンディングは唐突に切れる。

8.Follow the Sign
ラストは奥行きのあるサウンドに、重い響きをひっかけたギターが乗る短い曲。
ささやくような声は入っているが、ほぼインストである。

聴き終えた。

率直な感想として、やはりマイケル・キスクのボーカルに安定感があると感じる。
聴いていて考え込むような感覚は全くなく、個人的にはデイヴ・ムステインジェームズ・ヘットフィールドよりは好きな声だ。
この喜助ボーカルと、楽曲と演奏のバランスがとれていて聴きやすい。
「守護神伝」は第二章を高く評価する人が多いようだが、同じ頃に作られた路線であれば、おそらく第二章もさほど抵抗なく聴ける気がする。

「守護神伝」が作られた時期をバンドの黄金期と呼ぶそうだ。
カイ・ハンセンとマイケル・ヴァイカートのツインリードに、超絶高音ボーカルのマイケル・キスク。
この3人が創作と演奏の主軸であり、三頭体制とも呼ばれる・・などと以前の記事で勝手に書いてたけど、ハロウィンの場合あまりそういう言われ方はしてないみたいです。
すいません・・・

しかし、バンドとしては第二章をめでたく発表した後、カイ・ハンセン脱退、レーベル変更や裁判沙汰、キスクとインゴ・シュヴィヒテンバーグの脱退・・と絵に描いたようなトラブル続きで内紛崩壊していく。
それが作品にどう影響したかは聴いてみないとわからないが、ハロウィン鑑賞においてはバンド黄金期の「守護神伝」はやはり必修科目であることは間違いなさそうだ。

というわけで、ハロウィン「守護神伝 第一章」。
これは良かったです。
このトシで今さらメタル聴き始めてどうするつもりやというお叱りはあろうかと思いますが、せっかくなので第二章も聴いてみようと思います。

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