聴いてない 第271回 パティ・スマイス
今日の主役はパティ・スマイス。
日本人なら誰でも知ってる・・という人ではないだろうし、作品の数もそんなに多くはないアーチストだが、調べてみたら出てくるエピソードが興味深いものばかりだったので、採り上げることにしました。
なおウィキペディア日本語版にはわざわざ「パティ・スミス」とは異なりますと書いてあるので、混同してる人がたくさんいると思われる。
一応自分は区別はついている・・というか、パティ・スミスさんのほうは全く知りません。
パティ・スマイス、聴いていたのはスキャンダル名義の「The Warrior」、ドン・ヘンリーとのデュエット「Sometimes Love Just Ain't Enough」、ソロシングル「No Mistakes」の3曲。
「The Warrior」は一流音楽番組「サンスイ・ベストリクエスト」で録音。
「Sometimes Love Just Ain't Enough」「No Mistakes」はMTVの音声をテープに録音しており、いちおう3曲ともリアルタイムで聴いている。
アルバムは聴いてないので、聴いてない度は3。
ニューヨーク出身であること以外に知ってる情報はない。
スキャンダルのメンバーも全く名前を知らないし、そもそも何人組なのかもわからない。
正式名称は「Scandal Featuring Patty Smyth」とのことだけど、フィーチャリングってのがいまいちなじみのない英語で意味もよくわからず、テープのインデックスには勝手に「パティ・スマイス&スキャンダル」と書いていた。
まあパティ・スマイスが主役のバンドってことでいいと思いますが。
報告は以上ですが、これだけだと話にならないので、パティの経歴について調べてみた。
当時のナウいヤングにとっては常識だったかもしれないが、自分には驚きの連続である。
パティ・スマイス、本名パトリシア・スマイスは、1957年6月26日ニューヨーク生まれ。
彼女の名を一躍有名にしたのはスキャンダルに参加して大ヒットした「The Warrior」。
ギタリストのザック・スミスを中心に結成されたビッグ・アップルというバンドがスキャンダルの源流。
ザックは女性ボーカルが必要と考え、オーディションを開始。
100人近い応募者の中で選ばれたのがパティ・スマイスだった。
歌唱力はもちろんだが、ザック的には顔で選んだんだろうなとも思う。
めでたくパティ採用が決まり、同時にバンド名もスキャンダルに変更。
82年に5曲入りのEP「Scandal」でデビューする。
この中の「Love's Got A Line On You」のプロモ・ビデオでは、まだ無名のジョン・ボン・ジョビがギターを弾いている。
映像はまだお金がなかったと見えてなんの演出もなく、今の日本のご当地アイドルよりも安い造り。
続くシングル「The Warrior」が全米7位の大ヒット。
ニック・ギルダーとホーリー・ナイトという人の共作だが、ニックは78年に「Hot Child In The City」という全米1位のヒット曲を歌った人。
一方のホーリーはハート「Never」やパット・ベネターの「Love Is A Battlefield」を作った人。
「The Warrior」もヒットメーカーコンビの作品だったんスね。
マイク・チャップマンのプロデュースでアルバム「Warrior(誘惑の美戦士)」もリリースされ、全米17位を記録した。
このアルバムには後にジャーニーの曲として発表される「Only The Young」が収録されている。
しかしデビューが好調過ぎたせいか、バンドは早くも内紛が勃発。
ザック・スミスはバンド活動より他のアーチストのプロデュース業がやりたいという理由で脱退し、売れたばかりなのにバンドはアルバム1枚でもう解散。早い・・・
スキャンダルの構成はブロンディやプリテンダーズやハートと同じ「美しき女性ボーカルと存在感のない野郎ども」だが、野郎どもにこらえ性がなさ過ぎてすぐ解散というのが、パティにとっても不幸な展開だったと思われる。
パティはリチャード・ヘルというパンクロッカーと結婚し、芸能界からいったん引退する。
これだけの力量と実績を持つパティ・スマイス、周りが引退なんか許すはずもなく、友人であったエドワード・ヴァン・ヘイレンがデイヴの後任ボーカリストとしてパティを誘う。
だがパティは当時妊娠中で、またニューヨーカーだったためロサンゼルスなんか住みたくないわという理由で、エドからのお誘いを断ったとのこと。
ヴァン・ヘイレンで誰がデイヴの後任になるのか?という話は、当時日本のラジオ番組でも話題にはなっていた。
名前が挙がっていたのはヒューイ・ルイス、スティーブ・ペリー、サミー・ヘイガーだったが、まさかパティ・スマイスまで候補になっていたとは知らなかった。
ただパティはヴァン・ヘイレンの連中がいつも酔っぱらってケンカばかりしてるのもイヤだったらしいので、妊娠してなくても加入はたぶんなかったんでしょうね。
パティは出産後に音楽活動を再開。
84年にドン・ヘンリーのソロアルバム「Building the Perfect Beast」の4曲にボーカルで参加。
86年にフーターズの「Where Do the Children Go」にもボーカルとして参加する。
翌87年にはフーターズのメンバーも協力したソロアルバム「Never enough」を発表。
このアルバムには、後にロッド・スチュワートやエブリシング・バット・ザ・ガールもカバーしたトム・ウェイツの「Downtown Train」が収録されている。
これYou Tubeで聴いてみたが、ロッドのバージョンに比べてアップテンポでロックな曲調である。
89年にはドン・ヘンリーのアルバム「The End of the Innocence」にも1曲バック・ボーカルで参加した。
92年に自身の名を冠したアルバム「Patty Smyth」をリリース。
プロデューサーはEストリートバンドのロイ・ビタン。
シングル「No Mistakes」「Sometimes Love Just Ain't Enough(愛をこえて)」が収録され、「愛をこえて」はドン・ヘンリーとのデュエットで、全米2位を達成。
この曲、作ったのはパティとグレン・バートニックという人。
グレンさんて誰?と思ったら、トミー・ショウのいない間にスティクスにベースとして参加してた人だそうです。
94年にアーノルド・シュワルツェネッガーの主演映画「ジュニア」のサウンドトラックに「Look What Love Has Done」という曲を提供。
映画は不評だったそうだが、曲はグラミー賞とアカデミー賞にノミネートされた。
そして97年、あのテニスの悪童ジョン・マッケンローと再婚。
この話も全然知らなかった・・・マッケンローってテータム・オニールと結婚してたんじゃなかったの?
・・と思ったら94年には離婚したそうです。
98年には映画「アルマゲドン」のサントラ盤にパティの「Wish I Were You」が収録された。
「アルマゲドン」と言えばエアロスミスのメインテーマ曲が有名だけど、パティ・スマイスの曲も収録されてたのね。
この映画もヒットはしたもののストーリー展開が雑で、評論家には不評だったようですけど。
同年スキャンダル時代を含むベスト盤「Greatest Hits」も発表。
その後しばらくパティ・スマイスの芸能活動は停滞していたが、2004年にアメリカのケーブルテレビ「VH1」の企画でスキャンダルの再結成が実現する。
95年に亡くなったイワン・エリアスを除くメンバーが集結し、翌2005年まで東海岸でのコンサートツアーも行われ、CDもリリースした。
その後も2009年まで毎年新メンバーも参加しての再結成のライブが行われ、新曲も発表。
2015年にクリスマス盤「Come on December」とシングル「Broken」をリリース。
2018年にはカリフォルニアでスキャンダルとしてライブを行い、「The Warrior」「Sometimes Love Just Ain't Enough」「No Mistakes」などを演奏し、アンコールでは「Downtown Train」も披露。
昨年7月にはその「Downtown Train」を再録したアルバム「It's About Time」を発表。
映像を見るとさすがにお年を召して横に大きくはなっているが、歌唱力はそのまま変わっていない。
ということで毎度のことながら知らなかった話ばかり。
特に周辺情報として登場する人物が、ジョン・ボン・ジョビやエドワード・ヴァン・ヘイレンやジョン・マッケンローなどビッグネームだらけで驚いた。
聴いてる3曲はどれもわりと好きである。
雰囲気はそれぞれ全く違い、「The Warrior」は若さはじけるロック(表現が昭和)、「No Mistakes」はやや物憂げなU2を思わせるサウンド。
「Sometimes Love Just Ain't Enough(愛をこえて)」はドン・ヘンリーとの掛け合いが見事なバラードである。
さてパティ・スマイス、聴くとしたらスキャンダルのデビューアルバムと、ソロ「Never enough」「Patty Smyth」は当然必修でしょうね。
作品数も多くないので順番に全て聴くことも可能だが、これはもう正直ベスト盤でも十分ではないかと考えているのですが、みなさまの鑑賞履歴はいかがでしょうか?
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コメント
SYUNJIさん、こんにちは。
パティ・スマイスですが、私としては「Scandal Featuring Patty Smyth」
の名義になじみがあります。
しかし、知っているのは「ウォーリアー」だけです。ですので、SYUNJIさん
に書いてあることは全部はじめて知りました。
私は「ウォーリアー」ヒット当時に、FMで来日公演のライブが放送されて
これを録音しました。しかし、「ウォーリアー」以外に好きな曲がなかった
ので、それっきりです。
>>ドン・ヘンリーのソロアルバム「Building the Perfect Beast」の4曲にボーカル
手持ちのCDで確認しました。重要曲に参加しています。人気もさること
ながら、やはり実力があったのでしょう。ちなみにこのアルバムは
ゲストがものすごく豪華で、当時の西海岸~アメリカのロック事情がもれなく
わかる、スグレモノです。私も気に入っています。
>>この映画もヒットはしたもののストーリー展開が雑で、
この映画は石油掘削員をたった12日間で宇宙飛行士にする、「隕石の
不思議パワー」映画と呼ばれています(by「木根さんの1人でキネマ)。
投稿: モンスリー | 2021.05.09 17:33
モンスリーさん、コメントありがとうございます。
>パティ・スマイスですが、私としては「Scandal Featuring Patty Smyth」の名義になじみがあります。
当時からFMでも雑誌でもわりとマジメに正式名称で案内してましたね。
この長い名前はテープのインデックスに書けないので困りました。
Featuringとwithの違いも未だによくわかりませんが・・
>私は「ウォーリアー」ヒット当時に、FMで来日公演のライブが放送されてこれを録音しました。
え、そうなんですか?
それは今となっては貴重な音源なのでは?
>ちなみにこのアルバムはゲストがものすごく豪華で、当時の西海岸~アメリカのロック事情がもれなくわかる、スグレモノです。
そのようですね。
マイク・キャンベル、スティーヴ・ポーカロ、デビッド・ペイチ、リンジー・バッキンガム、ベリンダ・カーライル、J.D.サウザーなど、自分が知ってる名前だけでも数多くのアーチストが参加してますね。
このメンバーに加わることができたパティ・スマイスも、ドン・ヘンリーの信頼がそれだけ厚かったんでしょうね。
>この映画は石油掘削員をたった12日間で宇宙飛行士にする、「隕石の不思議パワー」映画と呼ばれています(by「木根さんの1人でキネマ)。
やはりそうですか。
この映画は自分もいちおうテレビで見ましたけど、確かに展開が激しすぎてあまり入り込めませんでした。
大ヒットの評判を聞いて期待して見てたんですけど・・見終わってがっかりしたことを覚えています。
投稿: SYUNJI | 2021.05.10 17:59