« 聴いてみた 第162回 デビッド・ボウイ その2 | トップページ | 聴いてない 第273回 Eve6 »

聴いてない 第272回 クォーターフラッシュ

前回に続いて80年代女性ボーカルと野郎どもバンドを採り上げます。
クォーターフラッシュ、みなさんは覚えておられますでしょうか?

クォーターフラッシュは80年にアメリカで結成されたバンド。
特徴はその女性リードシンガーがサックスも演奏することである。
自分が聴いたのは以下の各曲。

・Harden My Heart(ミスティ・ハート)
・Night Sift
・Take Me To Heart
・Caught In The Rain(恋は雨模様)

意外なことに4曲も聴いている。
3曲目までは当時の流行最先端音楽番組「サンスイ・ベストリクエスト」、4曲目は「クロスオーバー・イレブン」で録音している。
アルバムは聴いてないので、聴いてない度は3。
4曲目には「恋は雨模様」なんて邦題がついてるけど、調べても日本でシングルカットされた形跡はない。
この邦題、誰が付けたの?

女性ボーカルがサックスも演奏するという情報は、当時のテレビ音楽番組や雑誌で知った。
聴けばどれも確かにサックスを効果的に吹いてる曲であり、またロックバンドでこの構成は珍しかったのではないかと思う。
ただし曲は悪くはなかったものの、他に聴きたい音楽を日々サルのように集めていたので、クォーターフラッシュにはそれほど興味もわかず、録音できたので消さなかったという失礼な扱い。

そこであらためてクォーターフラッシュについて調べてみた。
クォーターフラッシュは、1980年にオレゴン州ポートランドで結成された。
メンバーは以下のみなさんである。
・リンディ・ロス(リードボーカル・サックス)
・マーヴ・ロス(ギター)
・ジャック・チャールズ(ギター)
・リック・ディジャロナルド(キーボード・シンセサイザー)
・リッチ・グーチ(エレクトリックベース)
・ブライアン・デビッドウィリス(ドラム・パーカッション)

リンディとマーヴは夫婦で元教師という経歴を持ち、79年にオレゴン州でシーフード・ママというグループで音楽活動を開始。
そこにパイロットというバンドの4名が合流し、80年にクォーターフラッシュと改称。
バンド名はオーストラリア移民の「4分の1は閃き、残りの4分の3はバカ」というスラングに由来しているとのこと。
あまり上品な名前ではなさそうですけど。

81年にゲフィン・レコードと契約し、ボストンやリトル・リバー・バンドなどを手がけた実績のあるジョン・ボイランのプロデュースで、バンド名と同じタイトルのアルバムでデビュー。
アルバムは全米8位を記録し、シングル「Harden My Heart」も最高3位、「Find Another Fool」も16位まで上昇。
当時「Harden My Heart」が他のどんな曲とチャートで争っていたかというと、J.ガイルズ・バンドの「堕ちた天使」やジャーニー「Open Arms」、オリビアの「Physical」やフォリナー「Waiting For a Girl Like You」などといった後世に残る名曲だらけ。
この強豪に囲まれたデビュー曲が全米3位の成績というのはものすごいことだったんだろうね。
日本盤でも湯川れい子がライナーノーツに文章を書くなど、プロモーションに気合いが入っていたようだ。

デビュー直後にいきなり人気が出たクォーターフラッシュは、82年のショーン・ペンやフィービー・ケイツ出演の映画「初体験/リッジモント・ハイ」のサントラ盤に、「Don't Be Lonely」という曲で参加。
このサントラがまたかなり豪華で、ジャクソン・ブラウンの全米7位のヒット曲「誰かが彼女をみつめてる」が収録されている。
他にもイーグルスの面々やゴーゴーズ、サミー・ヘイガー、ドナ・サマー、スティービー・ニックスなどが参加しており、発売当時は2枚組LPだったそうだ。

83年にはジョー・ウォルシュ、ティモシー・B・シュミットらが参加した2枚目のアルバム「Take Another Picture」をリリース。
しかしさすがに前作ほどには売れず、シングル「Take Me to Heart」は14位と健闘したが、アルバムは全米34位に終わる。
この後ジャック・チャールズ、リック・ディジャロナルドは脱退。

4人組となったバンドは、カルチャー・クラブなどを手がけたスティーヴ・リヴァインのプロデュースで85年に「BackInto Blue」を発表。
残念ながら成績は振るわず全米150位にしか届かなかった。
完全に失速したクォーターフラッシュは、ゲフィンとの契約も切れていったん解散する。
以降、現在までクォーターフラッシュのアルバムはチャートには登場していない。

90年にロス夫妻以外のメンバーを入れ替え、ベースはサンディン・ウィルソン、ドラマーのグレッグ・ウィリアムズ、ギタリストのダグ・フレイザーで、クォーターフラッシュは再スタート。
今度はエピック・レコードからアルバム「Girl in the Wind」をリリースしたが、再スタート自体に注目もされず、アルバムは全然売れなかった。
結局クォーターフラッシュはここで再度解散。

その後ロス夫妻はオレゴン州で芸能プロダクション「ロス・プロダクションズ」を設立。
91年にはザ・トレイル・バンドというカントリーミュージック主体のプロジェクトに参加し、今もCD発表やツアーを行っているそうだ。

97年にはクォーターフラッシュのベスト盤が発表される。
その後のスタジオ盤はいずれも「Marv & Rindy Ross/ Quarterflash」としてリリースしており、ロス夫妻名義ではあるがクォーターフラッシュの名も書かれている。
権利関係はよくわからないけど、ロス夫妻がクォーターフラッシュを併記してもいいことにはなっているようだ。
その併記名義で2018年に「Goodbye Uncle Buzz」、2013年「Love Is a Road」、2020年「A better World」というアルバムをリリースしている。

今回も隅々まで知らない話だらけであった。
イーグルスのメンバーとかなり関わりがあったことも、今回初めて知った。
今も活動中で、ヒットはしていないものの昨年もアルバムを出してるのは驚きである。

聴いた4曲のうち「恋は雨模様」以外はどれも憂いに満ちたメロディで、リンディの切ないボーカルに切ないサックスが加わり、アダルトな雰囲気を作り上げている。
繰り返しになるが、どの曲も悪くはなかったが、その良さがわかるほどオトナでもなかったので、そのまま通り過ぎたという状態。
じゃあ中高年の今なら聴けるのかと言われると全然自信はないが・・
感覚的にサックスの音に思ったほど惹かれないという点もあるかもしれない。
リンディの声はパット・ベネターに似ているという意見があちこちのサイトに見られるが、個人的にはそう言われればそうかも・・くらいの感覚である。

ということでクォーターフラッシュ。
日本でどのアルバムまで入手できるのかわからないが、聴くとしたら当然デビューアルバムははずせないでしょうね。
実は「初体験/リッジモント・ハイ」のサントラ盤のほうにも興味はわいております。
みなさまの鑑賞履歴はいかがでしょうか?

| |

« 聴いてみた 第162回 デビッド・ボウイ その2 | トップページ | 聴いてない 第273回 Eve6 »

コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
たった今、はじめて名前を知りました、クォーターフラッシュ。
私が洋楽を聞き始めたのが、「デビュー直後にいきなり人気が出た」
頃ですので、タイミングが悪かったようです。

ところで、
>>「初体験/リッジモント・ハイ」

これをウィキペディアで調べましたら、脚本がキャメロン・クロウ
でした。ロックのジャーナリストとして有名らしくて、私が見た
ロック映画「あの頃、ペニーレインと」でも監督と脚本をしています。
このため、「初体験/リッジモント・ハイ」のサントラもやたら豪華なのかも
しれません。
手持ちの音源にサントラ収録曲が何曲かありました。

「Somebody's Baby」 ジャクソン・ブラウン
「Speeding"」 ゴーゴーズ
「Never Surrender ドン・フェルダー
「Sleeping Angel」 スティービー・ニックス

どれもいい曲ばかり!(フェルダーのボーカルはいただけませんが…)
ティモシー・B・シュミットの「So Much in Love」も名曲ですね。
このサントラは実によさそうです。
それで、映画を見たくなってきました。ウィキペディアの紹介には
刺激的なことが書いてありますし(笑)

投稿: モンスリー | 2021.05.31 21:20

モンスリーさん、コメントありがとうございます。
クォーターフラッシュ、ご存じなかったですか。

>脚本がキャメロン・クロウでした。
>ロックのジャーナリストとして有名らしくて、私が見たロック映画「あの頃、ペニーレインと」でも監督と脚本をしています。

あ、そうなんですか?
「あの頃、ペニーレインと」は見たいとは思ってたんですが、実はまだ見てません・・
調べたらこの人はパール・ジャムのドキュメンタリー映画でも監督を務めてるんですね。

>手持ちの音源にサントラ収録曲が何曲かありました。

収録曲で知ってる曲はジャクソン・ブラウンしかないのですが、メンバーが豪華なのはわかります。
個人的にはサミー・ヘイガーの曲を聴いてみたいです。

>ウィキペディアの紹介には刺激的なことが書いてありますし(笑)

確かに「フィービー・ケイツが水着を外してトップレスになる」って書いてありますね。
じゃあ(何が?)きっとぷく先輩がDVD持ってますから、貸してもらいましょう(笑)
フィービー・ケイツ、最近あまり名前を聞かない気はしますけど・・

投稿: SYUNJI | 2021.06.02 17:56

4回目のコメントです。

クォーターフラッシュの“ミスティ・ハート”は私の中で“永遠のベスト1000”(←多すぎ?)に入る名曲です。黙ってはいられません。

他の曲はちょいといい曲もありますが、基本的には聴かなくても何の問題もない平凡なレベルですからご安心下さい。その後、成功を収めなかったのもむべなるかな。

ディスっているわけではなく、“ミスティ・ハート”はこのバンドで異常に突出している曲なのです。人妻の色気ムンムンのリンディ・ロスの歌声とサックスの音色…当時うぶな少年だった私には、ほぼ同時期にヒットしたオリヴィア・ニュートン=ジョンの無理矢理なセクシー路線の“フィジカル”よりも刺激が強いものでした。そもそもデビュー曲で人妻ってありえないし!

なお、「初体験/リッジモント・ハイ」におけるフィービー・ケイツの水着の件については、語ると長くなりますのでコメントを控えさせていただきます。あしからず。

投稿: F丸 | 2021.10.15 00:12

F丸さん、こちらにもコメントありがとうございます。

>クォーターフラッシュの“ミスティ・ハート”は私の中で“永遠のベスト1000”(←多すぎ?)に入る名曲です。

多いです。(笑)
自分の場合、生涯で記憶に残ってる曲を全部集めても1000曲に至らないと思います。

>ディスっているわけではなく、“ミスティ・ハート”はこのバンドで異常に突出している曲なのです。

やはりそうですか。
自分が聴いてる範囲でも、この曲はどこか少し雰囲気が違う気がしていました。

>当時うぶな少年だった私には、ほぼ同時期にヒットしたオリヴィア・ニュートン=ジョンの無理矢理なセクシー路線の“フィジカル”よりも刺激が強いものでした。

あーそうですねぇ・・
クォーターフラッシュにそこまでの色気は感じてませんでしたが、自分は「Physical」のプロモビデオにもそれほど興奮しませんでしたね。
なんかあまりに露骨な演出でコメディ映画みたいに思えてしまい・・

>なお、「初体験/リッジモント・ハイ」におけるフィービー・ケイツの水着の件については、語ると長くなりますのでコメントを控えさせていただきます。

残念ですね。(笑)
むしろそっちの情報を詳しくお聞かせいただきたかったのですが・・

投稿: SYUNJI | 2021.10.16 17:20

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 聴いてみた 第162回 デビッド・ボウイ その2 | トップページ | 聴いてない 第273回 Eve6 »