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聴いてない 第272回 クォーターフラッシュ

前回に続いて80年代女性ボーカルと野郎どもバンドを採り上げます。
クォーターフラッシュ、みなさんは覚えておられますでしょうか?

クォーターフラッシュは80年にアメリカで結成されたバンド。
特徴はその女性リードシンガーがサックスも演奏することである。
自分が聴いたのは以下の各曲。

・Harden My Heart(ミスティ・ハート)
・Night Sift
・Take Me To Heart
・Caught In The Rain(恋は雨模様)

意外なことに4曲も聴いている。
3曲目までは当時の流行最先端音楽番組「サンスイ・ベストリクエスト」、4曲目は「クロスオーバー・イレブン」で録音している。
アルバムは聴いてないので、聴いてない度は3。
4曲目には「恋は雨模様」なんて邦題がついてるけど、調べても日本でシングルカットされた形跡はない。
この邦題、誰が付けたの?

女性ボーカルがサックスも演奏するという情報は、当時のテレビ音楽番組や雑誌で知った。
聴けばどれも確かにサックスを効果的に吹いてる曲であり、またロックバンドでこの構成は珍しかったのではないかと思う。
ただし曲は悪くはなかったものの、他に聴きたい音楽を日々サルのように集めていたので、クォーターフラッシュにはそれほど興味もわかず、録音できたので消さなかったという失礼な扱い。

そこであらためてクォーターフラッシュについて調べてみた。
クォーターフラッシュは、1980年にオレゴン州ポートランドで結成された。
メンバーは以下のみなさんである。
・リンディ・ロス(リードボーカル・サックス)
・マーヴ・ロス(ギター)
・ジャック・チャールズ(ギター)
・リック・ディジャロナルド(キーボード・シンセサイザー)
・リッチ・グーチ(エレクトリックベース)
・ブライアン・デビッドウィリス(ドラム・パーカッション)

リンディとマーヴは夫婦で元教師という経歴を持ち、79年にオレゴン州でシーフード・ママというグループで音楽活動を開始。
そこにパイロットというバンドの4名が合流し、80年にクォーターフラッシュと改称。
バンド名はオーストラリア移民の「4分の1は閃き、残りの4分の3はバカ」というスラングに由来していから来ているとのこと。
あまり上品な名前ではなさそうですけど。

81年にゲフィン・レコードと契約し、ボストンやリトル・リバー・バンドなどを手がけた実績のあるジョン・ボイランのプロデュースで、バンド名と同じタイトルのアルバムでデビュー。
アルバムは全米8位を記録し、シングル「Harden My Heart」も最高3位、「Find Another Fool」も16位まで上昇。
当時「Harden My Heart」が他のどんな曲とチャートで争っていたかというと、J.ガイルズ・バンドの「堕ちた天使」やジャーニー「Open Arms」、オリビアの「Physical」やフォリナー「Waiting For a Girl Like You」などといった後世に残る名曲だらけ。
この強豪に囲まれたデビュー曲が全米3位の成績というのはものすごいことだったんだろうね。
日本盤でも湯川れい子がライナーノーツに文章を書くなど、プロモーションに気合いが入っていたようだ。

デビュー直後にいきなり人気が出たクォーターフラッシュは、82年のショーン・ペンやフィービー・ケイツ出演の映画「初体験/リッジモント・ハイ」のサントラ盤に、「Don't Be Lonely」という曲で参加。
このサントラがまたかなり豪華で、ジャクソン・ブラウンの全米7位のヒット曲「誰かが彼女をみつめてる」が収録されている。
他にもイーグルスの面々やゴーゴーズ、サミー・ヘイガー、ドナ・サマー、スティービー・ニックスなどが参加しており、発売当時は2枚組LPだったそうだ。

83年にはジョー・ウォルシュ、ティモシー・B・シュミットらが参加した2枚目のアルバム「Take Another Picture」をリリース。
しかしさすがに前作ほどには売れず、シングル「Take Me to Heart」は14位と健闘したが、アルバムは全米34位に終わる。
この後ジャック・チャールズ、リック・ディジャロナルドは脱退。

4人組となったバンドは、カルチャー・クラブなどを手がけたスティーヴ・リヴァインのプロデュースで85年に「BackInto Blue」を発表。
残念ながら成績は振るわず全米150位にしか届かなかった。
完全に失速したクォーターフラッシュは、ゲフィンとの契約も切れていったん解散する。
以降、現在までクォーターフラッシュのアルバムはチャートには登場していない。

90年にロス夫妻以外のメンバーを入れ替え、ベースはサンディン・ウィルソン、ドラマーのグレッグ・ウィリアムズ、ギタリストのダグ・フレイザーで、クォーターフラッシュは再スタート。
今度はエピック・レコードからアルバム「Girl in the Wind」をリリースしたが、再スタート自体に注目もされず、アルバムは全然売れなかった。
結局クォーターフラッシュはここで再度解散。

その後ロス夫妻はオレゴン州で芸能プロダクション「ロス・プロダクションズ」を設立。
91年にはザ・トレイル・バンドというカントリーミュージック主体のプロジェクトに参加し、今もCD発表やツアーを行っているそうだ。

97年にはクォーターフラッシュのベスト盤が発表される。
その後のスタジオ盤はいずれも「Marv & Rindy Ross/ Quarterflash」としてリリースしており、ロス夫妻名義ではあるがクォーターフラッシュの名も書かれている。
権利関係はよくわからないけど、ロス夫妻がクォーターフラッシュを併記してもいいことにはなっているようだ。
その併記名義で2018年に「Goodbye Uncle Buzz」、2013年「Love Is a Road」、2020年「A better World」というアルバムをリリースしている。

今回も隅々まで知らない話だらけであった。
イーグルスのメンバーとかなり関わりがあったことも、今回初めて知った。
今も活動中で、ヒットはしていないものの昨年もアルバムを出してるのは驚きである。

聴いた4曲のうち「恋は雨模様」以外はどれも憂いに満ちたメロディで、リンディの切ないボーカルに切ないサックスが加わり、アダルトな雰囲気を作り上げている。
繰り返しになるが、どの曲も悪くはなかったが、その良さがわかるほどオトナでもなかったので、そのまま通り過ぎたという状態。
じゃあ中高年の今なら聴けるのかと言われると全然自信はないが・・
感覚的にサックスの音に思ったほど惹かれないという点もあるかもしれない。
リンディの声はパット・ベネターに似ているという意見があちこちのサイトに見られるが、個人的にはそう言われればそうかも・・くらいの感覚である。

ということでクォーターフラッシュ。
日本でどのアルバムまで入手できるのかわからないが、聴くとしたら当然デビューアルバムははずせないでしょうね。
実は「初体験/リッジモント・ハイ」のサントラ盤のほうにも興味はわいております。
みなさまの鑑賞履歴はいかがでしょうか?

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聴いてみた 第162回 デビッド・ボウイ その2

まん延防止等重点措置といういまいち伝わらない施策の最中、引きこもり中高年の私はデビッド・ボウイを聴くことにしました。
前回ボウイを聴いて「よおし次はLet's Danceにしよう!」と固く決意し(適当)、閉店間近の渋谷レコファンに最後の入店。
しかしこんな時に限って「Let's Dance」が見当たらない。
遅い時間だったので、もう他の店を探す根性もなく、その場でさんざん迷った末に購入したのが「Tonight」である。(決意粉砕)

Tonight

「Tonight」は84年発表のボウイ15枚目のアルバム。
前作「Let's Dance」の路線を継承した作品で、期待どおり全英1位・全米11位を記録。
・・・なのだが、評論家やファンの評価はそれほど高くもないらしい。
「Let's Dance」が良すぎたという背景もありそうだが、「Tonight」こそボウイの最高傑作と推すファンはほとんどいないとのこと。
本当?
少し気になったので、聴く前に制作の背景を調べてみました。

リスナーの評価には本来あまり関係ないことだが、この頃のボウイはひたすら多忙で準備不足だったという点は、結果的にやはりマイナスに作用してるらしい。
「Let's Dance」の発表&大成功の後、ツアーやら映画撮影やらでマヂカルラブリー並みの忙しさとなったボウイに、レコード会社や事務所からは「次のアルバムはよ出さんと」と無茶ぶりの要請。
誠実なボウイはすぐに次作アルバムの制作にとりかかる。
スターもラクじゃないよなぁ。

ボウイ自身は次のアルバムをR&Bやファンクやレゲエを採り入れた、「さらに進化した音楽の追求」としたいと考えていた。
さらにボウイは「ヒットメーカー」なしでもヒットが出せることを証明したいと考え、「Let's Dance」のプロデューサーを務めたナイル・ロジャースには声をかけなかったそうだ。
ナイル・ロジャースはてっきり次もボウイと仕事ができるものと思っていたので、かなり驚いたらしい。

ボウイはファンクバンド「ヒートウェイヴ」のデレク・ブランブルに声をかけ、プロデュースを依頼。
デモ録音の場所はスイス・モントルーのマウンテンスタジオが選ばれた。
しかしデレクさんはプロデュース業経験がまだ浅く、なんでボウイから依頼が来たのかもよくわからずにスタジオ入り。

そんなんで大丈夫なの?
・・・と思ったら、現場でもやっぱり不安に思ってた人はいたようです。
このままだとマズイ・・と思ったエンジニアのボブ・クリアマウンテンは、XTCポリスのプロデュース実績のあるヒュー・パジャムにも声をかけるようボウイに提案。
ボウイはボブの提案を受け入れてヒュー・パジャムもスイスに呼び、マウンテンスタジオでデモ録音を開始した。
ボウイの狙いどおりレゲエ色を強調し、現地のミュージシャンも加わってのファンキーな演奏でデモは成功したかに見えた。

しかし。
やはりプロデューサー経験不足のデレク・ブランブル、本番ではどうも働きがいまいちでボウイとの意志もかみ合わず、ボウイも納得がいかないまま繰り返しレコーディングさせられたりして、不満がたまり制作は一時中断。
一方でヒュー・パジャムもプロデュースのため来たつもりが、デレクの下でエンジニアとして働くよう言われたことに不満を覚えていた。
当時すでに売れっ子プロデューサーだったヒュー・パジャムは、ボウイに言われてポリスとの仕事を大急ぎで終わらせてスイス入りしていたのだ。
ヒュー・パジャムにしてみれば、「ワシも急いで駆けつけたのになんでこんな素人の下でエンジニアやらなあかんねん」と思うのも無理はないだろう。

しかもボウイがこのアルバム用に書いてきた新曲は「Loving The Alien」「Blue Jean」の2曲のみ。
ツアーや映画撮影で曲を書く時間もなく、ネタ不足のままスタジオ入りしてしまい、人選も人間関係も良くない状況のままレコーディングは再開されたが、結局デレク・ブランブルは戻ってこなかった。

このピンチを救ったのはイギー・ポップだった。
旧知の仲であるイギー・ポップは、悩めるボウイのために長い時間を共にスタジオで過ごし、二人はビールを飲みながらスタジオ内で激論を戦わせたこともあったそうだ。
ボウイにとって何でも互いに遠慮なく言い合える盟友、それがイギー・ポップだった。

めでたくイギーの様々なアイディアが作品に反映され、最終的にプロデュースを引き継いだヒュー・パジャムがアルバムを完成させた。
ヒュー・パジャムは「正味の話こんなん始めっからワシにやらしてもうたらもっとエエもんになっとったはずや」とこぼしたそうだ。
まあ気持ちはわかりますけど。
というわけで「Tonight」制作は5週間ほどかかって完成。
アルバム発表のプレスインタビューもほとんど行わず、新曲も少ないのでツアーもやらなかったとのこと。
なるほど・・・意外に複雑な事情の中で作られたアルバムではあったのね。

今回買ったCDは95年の再発輸入盤で、ボーナストラック3曲が収録されている。
自分にとって頼みの綱は、一番聴いたシングル「Blue Jean」が収録されていることだけだ。
初心者のくせに難しいアルバムを選択してしまった感は否めないが、渋谷レコファンは閉店してしまったので返すこともできない。(返しませんけど)
果たしてどんな音楽なのだろうか。

・・・・・聴いてみた。

1.Loving the Alien
ボウイ作の新曲でスタート。
シングルカットもされたそうだが、これは初めて聴く。
80年代の物憂げなメロディとサウンドで、どこかデュランジャパンの音にも似ている。

2.Don't Look Down
イギー・ポップ、ジェームス・ウィリアムソンの共作。
けだるいレゲエのリズムにジャズっぽい音が乗る。
スティングが歌っても違和感のない曲。

3.God Only Knows(神のみぞ知る)
ビーチ・ボーイズのカバー。
と言っても元曲を覚えてないので比較のしようがないが、ボウイは意外に力強く歌う。

4.Tonight
タイトルナンバーはティナ・ターナーとのデュエット。
ボウイとイギー・ポップの共作で、ティナ・ターナーは1日でレコーディングを終えたそうだ。
全く聴いたことがないと思っていたが、南国調のゆったりしたリズムとメロディがかすかに記憶に残っている・・ような気がする。
せっかくティナ・ターナーを呼んだのだから、もっと激しいボーカルのぶつけ合いのロックな曲のほうがよかったのでは・・と思うが。

5.Neighborhood Threat
LPではここからB面。
これもボウイとイギーの共作で、アップテンポのロック。
アクションドラマのテーマソングのようだ。

6.Blue Jean
唯一聴いているナンバーで、ボウイの作品。
異なるバージョンのプロモ・ビデオ映像や、12インチシングルバージョンも含め、思い入れのある1曲。
自分にとってボウイと言えばやはりこの曲なのだ。
あらためて聴くと決して明るく楽しいサウンド・・でもなく、サビのボーカルもキレ気味だし、ブルー・ジーンという名の女に夢中になってる少しヤバい感じの男の歌なのだが、聴いていて高揚する不思議な曲である。

7.Tumble and Twirl
ノリのいいリズムにホーンが鳴り響くファンクな曲。

8.I Keep Forgettin'
さらに加速したリズムに80年代の様々な音が散りばめられている。
ボウイのボーカルは意外にワイルド。

9.Dancing with the Big Boys
ラストも80年代特有のきらびやかなサウンド。
ボウイ&イギーの他、カルロス・アロマーという人の名がクレジットにある。

以下はボーナストラック。
10.This Is Not America
ミドルテンポのおだやかな曲。
ボウイは少しムリして歌ってるように聞こえるが、雰囲気は悪くない。
85年公開の、ティモシー・ハットンとショーン・ペン主演のサスペンス映画「コードネームはファルコン」のメインテーマだそうだ。
パット・メセニー・グループとボウイの共演作品。

11.As the World Falls Down(世界が崩れる時)
この曲はどこかで聴いたことがある・・と思ったら、ボウイ出演の映画「ラビリンス」で使われたそうだ。
どのシーンで流れたのかは全く覚えていないけど。
映画のイメージに合ったファンタジックなサウンド。

12.Absolute Beginners
時々出てくる「んーぱっぱっぱうー」というコーラスにはかすかに聴き覚えがある。
これもボウイの映画に使われており、このトラックは8分を超えるFull Length Versionとなっている。
「Blue Jean」もそうだが、この曲もサックスが非常に効果的に使われており、いい曲だ。

聴き終えた。
なじみの「Blue Jean」に牽引される形ではあるが、全体として聴きやすいとまず感じた。
ボウイの戦略どおりR&Bやファンクやレゲエを採り入れてはいるが、サウンドのアレンジなどは80年代の基盤からはずれておらず、「なんだこの音・・」という部分が一切ない。
聴き慣れた80年代サウンドがもたらす安心感。
さすがはヒュー・パジャムである。(知ったかぶり)

ファンの間では「物足りない」と言われているそうだが、おそらくは前作「Let's Dance」に比べての評価とも思われる。
自分のように「Tonight」しか聴いてないという人は多分いないだろうし。
このCDで言えばボーナストラックが多少なりとも物足りなさを解消しているのではないだろうか。
まあ「Let's Dance」を聴いてしまえば、そんな感想も変わってしまう可能性もあるけど。

ボウイ自身、このアルバムの出来には満足していないそうだ。
「コンセプトがなく、ただの曲のコレクションで、ちょっとごちゃごちゃに聞こえてうまくまとめられなかった」とコメントしている。
そう言われればそんな気もするけど、初心者にはバラエティに富んでいて聴きやすいのではないかと思う。
少なくとも自分には「ごちゃごちゃに聞こえる」感覚は全くない。

前回聴いた「Ziggy Stardust」とは時代も音もかなり違うので、どちらがいいとか合うとかの比較もしづらい。
「どちらも聴きやすかったです」というポンコツな感想しか出てこないが、現状はそんなところです。
やはり「Let's Dance」を含む他の作品も聴かねばなりません。(当然)

ジャケットはステンドグラスのような花の背景に青い顔のボウイという絵。
あまり印象に残っていなかったが、アートとしては悪くない。
デザインしたのはミック・ハガティという人で、ボウイの「Let's Dance」「Never Let Me Down」の他、スーパートランプの「Breakfast in America」や、ポリスの「Ghost in the Machine」なども手がけたそうだ。
そう言われても各ジャケットにあまり共通点は見当たりませんけど。

というわけで、「Tonight」。
これもよかったです。
必修科目である「Let's Dance」をすっ飛ばして聴いてしまったので、次回こそは「Let's Dance」に挑戦しようと思います。

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聴いてない 第271回 パティ・スマイス

今日の主役はパティ・スマイス。
日本人なら誰でも知ってる・・という人ではないだろうし、作品の数もそんなに多くはないアーチストだが、調べてみたら出てくるエピソードが興味深いものばかりだったので、採り上げることにしました。
なおウィキペディア日本語版にはわざわざ「パティ・スミス」とは異なりますと書いてあるので、混同してる人がたくさんいると思われる。
一応自分は区別はついている・・というか、パティ・スミスさんのほうは全く知りません。

パティ・スマイス、聴いていたのはスキャンダル名義の「The Warrior」、ドン・ヘンリーとのデュエット「Sometimes Love Just Ain't Enough」、ソロシングル「No Mistakes」の3曲。
「The Warrior」は一流音楽番組「サンスイ・ベストリクエスト」で録音。
「Sometimes Love Just Ain't Enough」「No Mistakes」はMTVの音声をテープに録音しており、いちおう3曲ともリアルタイムで聴いている。
アルバムは聴いてないので、聴いてない度は3。

ニューヨーク出身であること以外に知ってる情報はない。
スキャンダルのメンバーも全く名前を知らないし、そもそも何人組なのかもわからない。
正式名称は「Scandal Featuring Patty Smyth」とのことだけど、フィーチャリングってのがいまいちなじみのない英語で意味もよくわからず、テープのインデックスには勝手に「パティ・スマイス&スキャンダル」と書いていた。
まあパティ・スマイスが主役のバンドってことでいいと思いますが。

報告は以上ですが、これだけだと話にならないので、パティの経歴について調べてみた。
当時のナウいヤングにとっては常識だったかもしれないが、自分には驚きの連続である。

パティ・スマイス、本名パトリシア・スマイスは、1957年6月26日ニューヨーク生まれ。
彼女の名を一躍有名にしたのはスキャンダルに参加して大ヒットした「The Warrior」。
ギタリストのザック・スミスを中心に結成されたビッグ・アップルというバンドがスキャンダルの源流。
ザックは女性ボーカルが必要と考え、オーディションを開始。
100人近い応募者の中で選ばれたのがパティ・スマイスだった。
歌唱力はもちろんだが、ザック的には顔で選んだんだろうなとも思う。

めでたくパティ採用が決まり、同時にバンド名もスキャンダルに変更。
82年に5曲入りのEP「Scandal」でデビューする。
この中の「Love's Got A Line On You」のプロモ・ビデオでは、まだ無名のジョン・ボン・ジョビがギターを弾いている。
映像はまだお金がなかったと見えてなんの演出もなく、今の日本のご当地アイドルよりも安い造り。

続くシングル「The Warrior」が全米7位の大ヒット。
ニック・ギルダーとホーリー・ナイトという人の共作だが、ニックは78年に「Hot Child In The City」という全米1位のヒット曲を歌った人。
一方のホーリーはハート「Never」やパット・ベネターの「Love Is A Battlefield」を作った人。
「The Warrior」もヒットメーカーコンビの作品だったんスね。
マイク・チャップマンのプロデュースでアルバム「Warrior(誘惑の美戦士)」もリリースされ、全米17位を記録した。
このアルバムには後にジャーニーの曲として発表される「Only The Young」が収録されている。

しかしデビューが好調過ぎたせいか、バンドは早くも内紛が勃発。
ザック・スミスはバンド活動より他のアーチストのプロデュース業がやりたいという理由で脱退し、売れたばかりなのにバンドはアルバム1枚でもう解散。早い・・・

スキャンダルの構成はブロンディプリテンダーズやハートと同じ「美しき女性ボーカルと存在感のない野郎ども」だが、野郎どもにこらえ性がなさ過ぎてすぐ解散というのが、パティにとっても不幸な展開だったと思われる。
パティはリチャード・ヘルというパンクロッカーと結婚し、芸能界からいったん引退する。

これだけの力量と実績を持つパティ・スマイス、周りが引退なんか許すはずもなく、友人であったエドワード・ヴァン・ヘイレンがデイヴの後任ボーカリストとしてパティを誘う。
だがパティは当時妊娠中で、またニューヨーカーだったためロサンゼルスなんか住みたくないわという理由で、エドからのお誘いを断ったとのこと。

ヴァン・ヘイレンで誰がデイヴの後任になるのか?という話は、当時日本のラジオ番組でも話題にはなっていた。
名前が挙がっていたのはヒューイ・ルイス、スティーブ・ペリー、サミー・ヘイガーだったが、まさかパティ・スマイスまで候補になっていたとは知らなかった。
ただパティはヴァン・ヘイレンの連中がいつも酔っぱらってケンカばかりしてるのもイヤだったらしいので、妊娠してなくても加入はたぶんなかったんでしょうね。

パティは出産後に音楽活動を再開。
84年にドン・ヘンリーのソロアルバム「Building the Perfect Beast」の4曲にボーカルで参加。
86年にフーターズの「Where Do the Children Go」にもボーカルとして参加する。
翌87年にはフーターズのメンバーも協力したソロアルバム「Never enough」を発表。
このアルバムには、後にロッド・スチュワートやエブリシング・バット・ザ・ガールもカバーしたトム・ウェイツの「Downtown Train」が収録されている。
これYou Tubeで聴いてみたが、ロッドのバージョンに比べてアップテンポでロックな曲調である。
89年にはドン・ヘンリーのアルバム「The End of the Innocence」にも1曲バック・ボーカルで参加した。

92年に自身の名を冠したアルバム「Patty Smyth」をリリース。
プロデューサーはEストリートバンドのロイ・ビタン。
シングル「No Mistakes」「Sometimes Love Just Ain't Enough(愛をこえて)」が収録され、「愛をこえて」はドン・ヘンリーとのデュエットで、全米2位を達成。
この曲、作ったのはパティとグレン・バートニックという人。
グレンさんて誰?と思ったら、トミー・ショウのいない間にスティクスにベースとして参加してた人だそうです。

94年にアーノルド・シュワルツェネッガーの主演映画「ジュニア」のサウンドトラックに「Look What Love Has Done」という曲を提供。
映画は不評だったそうだが、曲はグラミー賞とアカデミー賞にノミネートされた。

そして97年、あのテニスの悪童ジョン・マッケンローと再婚。
この話も全然知らなかった・・・マッケンローってテータム・オニールと結婚してたんじゃなかったの?
・・と思ったら94年には離婚したそうです。

98年には映画「アルマゲドン」のサントラ盤にパティの「Wish I Were You」が収録された。
「アルマゲドン」と言えばエアロスミスのメインテーマ曲が有名だけど、パティ・スマイスの曲も収録されてたのね。
この映画もヒットはしたもののストーリー展開が雑で、評論家には不評だったようですけど。
同年スキャンダル時代を含むベスト盤「Greatest Hits」も発表。

その後しばらくパティ・スマイスの芸能活動は停滞していたが、2004年にアメリカのケーブルテレビ「VH1」の企画でスキャンダルの再結成が実現する。
95年に亡くなったイワン・エリアスを除くメンバーが集結し、翌2005年まで東海岸でのコンサートツアーも行われ、CDもリリースした。
その後も2009年まで毎年新メンバーも参加しての再結成のライブが行われ、新曲も発表。

2015年にクリスマス盤「Come on December」とシングル「Broken」をリリース。
2018年にはカリフォルニアでスキャンダルとしてライブを行い、「The Warrior」「Sometimes Love Just Ain't Enough」「No Mistakes」などを演奏し、アンコールでは「Downtown Train」も披露。
昨年7月にはその「Downtown Train」を再録したアルバム「It's About Time」を発表。
映像を見るとさすがにお年を召して横に大きくはなっているが、歌唱力はそのまま変わっていない。

ということで毎度のことながら知らなかった話ばかり。
特に周辺情報として登場する人物が、ジョン・ボン・ジョビやエドワード・ヴァン・ヘイレンやジョン・マッケンローなどビッグネームだらけで驚いた。

聴いてる3曲はどれもわりと好きである。
雰囲気はそれぞれ全く違い、「The Warrior」は若さはじけるロック(表現が昭和)、「No Mistakes」はやや物憂げなU2を思わせるサウンド。
「Sometimes Love Just Ain't Enough(愛をこえて)」はドン・ヘンリーとの掛け合いが見事なバラードである。

さてパティ・スマイス、聴くとしたらスキャンダルのデビューアルバムと、ソロ「Never enough」「Patty Smyth」は当然必修でしょうね。
作品数も多くないので順番に全て聴くことも可能だが、これはもう正直ベスト盤でも十分ではないかと考えているのですが、みなさまの鑑賞履歴はいかがでしょうか?

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