聴いてない 第269回 シュガー・レイ
聴いてないアーチストは売るほどあっても、ネットで検索すれば経歴から人相から実績から賞罰までだいたいわかり、なんなら曲やプロモ・ビデオまでスマホで鑑賞できる世の中。
こんな便利な状況がますます聴いてないことの緊迫感を削いでいるが、それでもネットで得られた情報に驚愕することはまだ多い。
今日採り上げるシュガー・レイも、結構驚きのバンドである。
シュガー・レイ、「Every Morning」しか聴いておらず、聴いてない度は2。
メンバーの人数も名前も知らない。
「Every Morning」もたまたま聴いたNOW系オムニバスCDに入っていただけで、その後バンド情報を調べることも他の曲を聴くこともなく今に至る。
毎回アーチスト情報を調べて驚くことを繰り返しているが、シュガー・レイ検索で一番驚いたのが「初期はメタルバンド」「もともとは重いニューメタルスタイルの音楽を演奏していた」という点。
唯一聴いてる「Every Morning」は、サウンドだけならわりと乾いた軽い感じの曲であり、とてもメタル出身の人々が出す音とは思えない。
驚愕レベルで言えば、「テイラー・スウィフトがカントリーの人」と同じくらいである。(あまり伝わらない)
驚いたからと言ってメタルなシュガー・レイを聴きたくなったわけでもないが、変遷に若干の興味がわいたので、本日採り上げる次第。
ということでいつもの通りウィキペディアを最初に頼ってみたが、英語版と日本語版では文章量が相当違う。
もちろん英語版のほうが圧倒的に詳しい。
なのでまずは英語版をムリヤリ翻訳して調査開始。
シュガー・レイは1986年(ウィキペディア日本語版だと1992年)にカリフォルニア州ニューポートビーチで結成されたアメリカのロックバンド。
結成時のメンバーは、カリフォルニア州南部のオレンジ・カウンティで育った以下の4人。
・マーク・マッグラス(Vo・G)
・ロドニー・シェパード(G)
・マーフィー・カージス(B)
・スタン・フラッツァー(D)
源流はロドニー・シェパードとスタン・フラッツァーが組んでいたトーリーズというバンド。
その後、マーフィー・カージス、マーク・マッグラスが加わり、バンド名をシュリンキー・ディンクスに変更。
バンドはアトランティック・レコードと契約した後、名前をシュガー・レイに変えて95年「Lemonade and Brownies」でレコードデビュー。
これがメタル時代の作品ということになるが、いわゆる80年代の重金属厚底ブーツ鎖鎌系なメタルとは違い、ラウドロック・オルタナティブ・ラップなどの要素が織り込まれた「ニューメタル」とのこと。
あまりよくわかりませんけど・・
その後バンドに帯同していたクレイグ"DJホミサイド"ブロックが正式加入。
97年のシングル「Fly」はアメリカやカナダのラジオで盛んにオンエアされた。
これがバンド最初のヒットとなったが、CDシングルがアメリカで発売されなかったため、ビルボードのエアプレイチャートの1位を4週連続で保持。
同時にミクスチャー・ロック路線アルバム「Floored」を発表。
邦題が「シュガー・レイのアメリカン・ドリーム'97~爆走街道まっしぐら、俺らに勝る敵はナシ!」って、本当?
この不思議なタイトルのアルバムが、「Fly」の大ヒットにも牽引されて全米ウィークリーチャートで最高12位を記録する。
ただし「Fly」はゆるいレゲエ調の曲で、アルバム全体の雰囲気とは異なっており、バンドは「Fly」のヒットに活路を見出す。
スタイルをよりラジオ向きな優しいポップサウンドにシフトさせることを選択する。
方向転換については、メンバーやスタッフにはプレッシャーも迷いもなかったそうだ。
まずは「Every Morning」をシングルとして先にラジオでどんどん流し、1ヶ月後にアルバム「14:59」をリリース。
「Every Morning」の他にも「Live & Direct」「Someday」などアコースティックギターを使った曲を増やし、スティーブ・ミラー・バンドのカバー「Abracadabra」も収録。
バンドの狙いどおり「Every Morning」「Someday」は大ヒットし、アルバムも全米17位・300万枚の売り上げを記録した。
ということでバンド最大のヒットは偶発的なものではなく、戦略的に練られたものの結果だったようだ。
2001年のセルフタイトルアルバム「Sugar Ray」からは、シングル「When It's Over」が全米13位と健闘。
他にも「Answer the Phone」「Under the Sun」「Words to Me」も人気を博した。
2003年にはアルバム「In the Pursuit of Leisure(邦題:レジャーでGO! )」を発表。
シングル「Mr.Bartender(It's So Easy)」は、スウィートのヒット曲「Love Is Like Oxygen」と、ミッドナイト・スターのヒット曲「NoParking(On the DanceFloor)」のサンプリングを含む曲で、ビルボードのアダルトトップ40の20位に到達。
またジョー・ジャクソンの「Is She Really Going Out with Him?」をカバーするなど意欲的な作品だったが、残念ながらアルバムは135,000枚しか売れず、前作よりも実績は大幅にダウン。
この商業的失敗はバンドの活動や人間関係にも大きく影響し、次のアルバムのリリースまで6年かかるという事態になった。
2005年にベスト盤を発表したが、マーク・マッグラスはテレビ番組の仕事に専念し、バンド活動は停滞。
レコード会社からも契約を切られてしまう。
2009年にようやくインディーズレーベルからアルバム「Music for Cougars(邦題:復活の常夏番長)」がリリースされた。
レゲエやアコギなどメロディアスなサウンドを基調としたロックだが、没個性が進み、過去の作品ほどの実績を残せず、ビルボードチャートでも80位止まりで、復活とは言いがたく名前負けした結果に終わってしまう。
このアルバムを最後に、マーフィー・カージス、スタン・フラッツァー、クレイグ"DJホミサイド"ブロックはバンドを去る。
残ったマークとロドニーはサポートメンバーを募集してツアーにも出るなど、なんとかバンド活動は続けたものの、やはり脱退したメンバーとは訴訟沙汰でモメるという、ロックバンドあるあるな展開に。
2016年にはベーシストのクリスチャン・アタードとドラマーのディーン・バターワースが正式加入する。
シュガー・レイとして新作アルバムが発表されたのは前作から10年後の2019年。
マーク・マッグラスが出演するテレビ番組プロモーション用のセッションがきっかけで、新たに大手レコード会社と契約。
7月に新作「Little Yachty」を発表した。
ポップ、レゲエ、カリプソ、ソフトロックなど、ジャケットのイメージそのままの夏を思わせるさわやかなサウンドだそうだが、どれだけ売れたのかはよくわからない。
・・・毎度のことながらすみずみまで知らない話ばかり。
唯一聴いた「Every Morning」は、バンドの代表曲であることは間違いなさそうだが、初期はメタルで途中からレゲエやオルタナやラップやポップも採り入れるなど、想像以上に多角経営な音楽のようだ。
「Every Morning」は確かにゆるいリズムに乾いたサウンドが乗るお気楽な曲で、悪くない。
ボーカルもサビの部分にはしっかりバックコーラスを当てるなど、聴きやすい工夫がされていると感じる。
歌詞は相手の女にとって自分が本命ではなく浮気相手という状態の心情を綴るという、サウンドほどお気楽ではない内容。
今回公式サイトで他の曲もいくつか聴いてみた。
初期の「Mean Machine」は、メタルというよりパンクな感じで、かなり騒々しい。
感覚的にはXTCのデビューアルバムを聴いた時の印象に近い。
もしこの曲でシュガー・レイに出会っていたら、おそらくその後も受け付けなかった可能性が高い。
と言っても「Every Morning」で出会ってもこれしか聴いてないので、結果は変わりませんけど・・
「Fly」は気だるいレゲエのリズムにラップや印象的なギターが乗っており、「Mean Machine」とは確かに全然違う。
その後の「Every Morning」にも少し通じるところもあり、「Someday」「When It's Over」も似たような路線にあると感じる。
プロモ・ビデオを見て思ったが、シュガー・レイは映像制作にはあまり凝ってはいないようだ。
海やビーチなど夏をイメージした映像は多いが、基本は演奏歌唱風景であり、物語仕立てやCGや役者を使った演出などはあまりない。
90年代以降のプロモーション映像のトレンドがどんな様子だったのか詳しく知らないが、シュガー・レイの場合は楽曲そのままに気楽に見てくださいということなのだろうか。
調べていて誰もが感じるのが、日本語のタイトルやキャッチが異様にダサい点。
90年代後半以降なので、洋楽の邦題やアオリなんてだいぶ廃れていったはずが、「爆走街道まっしぐら」「レジャーでGO!」「復活の常夏番長」など、イケてたのかスベってたのかももはやわからないレベル。
日本のレコード会社も明らかに狙って付けてみた感がありありである。
これがどれくらい国内の売り上げに貢献したのか知らないけど、ファンの間ではどういう評価だったのだろうか。
というわけで、シュガー・レイ。
初期のメタル情報にも驚きましたけど、思った以上に多面的な楽曲と観念を持ってるバンドのようです。
少なくとも「14:59」は必修科目と思われますが、みなさまの鑑賞履歴はいかがでしょうか?
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。
初めて名前を知りました。記事を拝見して一番強烈だったのは、邦題です。
>>「爆走街道まっしぐら、俺らに勝る敵はナシ!」
>>「復活の常夏番長」
ひょっとすると、日本のレコード会社の担当は、70年代に洋楽をヒットさせた
大物営業だったかも。そのセンスにはKISSの「地獄」シリーズを思わせ
ますし。あるいは、営業的観点からは「これは70年代の洋楽のリバイバルだ、
絶対にヒットする。邦題もその路線で行こう」と思わせる勢いが、シュガー・
レイにあったのかもしれません。
ところで「爆走街道まっしぐら」はいいですね。戦隊シリーズ「激走戦隊カーレンジャー」
に登場した悪役の名前「暴走戦隊ゾクレンジャー」をほうふつさせます。
関係ありませんが、最新の戦隊シリーズには榊原郁恵ちゃんが「ヒロイン」
で登場しています。一度見ようと思います。
>>「レジャーでGO!」
ひょっとしてこれは、「電車でGO!」が流行っていたころでしょうか???
投稿: モンスリー | 2021.03.05 21:20
モンスリーさん、コメントありがとうございます。
シュガー・レイ、ご存じなかったですか。
>記事を拝見して一番強烈だったのは、邦題です。
まあそうですよね。
よくこんな邦題つけたなと思いますけど。
>ひょっとすると、日本のレコード会社の担当は、70年代に洋楽をヒットさせた大物営業だったかも。
これ、たぶん当たりなんじゃないでしょうか?
少なくとも70年代の邦題を体感してる人の仕業ですよね。
マジメなのかシャレなのか、聞いてみたい気はしますが。
ただ音的には70年代を思わせるものはあまり感じませんでした。
>ひょっとしてこれは、「電車でGO!」が流行っていたころでしょうか???
あーなるほど、そういうことですか!
調べたら「電車でGO!」はプレステ版が97年から2004年にかけてシリーズが発売されたようなので、まあそういうことなんでしょうね。
なんか邦題のせいで気が散ってますが、シュガー・レイの音楽は悪くはないので、機会があればアルバム聴いてみようと思います。
投稿: SYUNJI | 2021.03.06 09:11