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聴いてない 第268回 ジョン・パー

年の初めに入院なんかしてしまったので、2021年最初の音楽記事を2月半ばになってやっと書いているSYUNJIといいます。
2021年のトップを飾るにふさわしいアーチストをムリヤリ見つけてきました。
80年代に洋楽を聴いていた方なら覚えておられるであろう、ジョン・パー。

もちろん聴いてないのだが、大ヒット曲「St. Elmo's Fire」の他に「Two Hearts」を聴いているので、自分にしては健闘してるほうだと思う。(エラくない)
聴いてない度は3。

ぼんやりとしか認識してなかったが、上記2曲はいずれも映画のテーマ曲である。
曲と同名の映画「セント・エルモス・ファイアー」は85年の作品で、エミリオ・エステベス、デミ・ムーア、ロブ・ロウ、アンドリュー・マッカーシーらが出演する青春ドラマ。
一方「Two Hearts」は映画「愛と栄光の旅立ち/アメリカン・デュエット(原題:American Anthem)」のテーマ曲に使われた。
ただしこの映画は日本では公開されていない。
プロレスラー馳浩の入場テーマ曲でもあるそうだ。
そうだっけ?
まあイントロから勇ましいファンファーレみたいな音で始まるので、レスラー入場曲としてもマッチはしてると思いますが・・

ジョン・パーについては名前とこの2曲しか知らず、当時の雑誌やテレビ・ラジオでジョン・パーの情報を得たこともないので、略歴・国籍・賞罰・顔立ち・資産形成など一切不明。
そこであらためてジョン・パーの愛と栄光の経歴を調査開始してみたが、ウィキペディア日本語版はがっかりするほど淡泊で、プロフィールなんかたった1行しかない。
そこでウィキペディア英語版や音楽関連BLOGからなんとかかき集めた情報が以下である。

ジョン・パーの本名はジョン・スティーブン・パー。
1952年にイギリス中西部にあるワークソップという街に生まれる。
音楽活動を始めたのは少年時代。
12歳で早くも同級生とともにサイレンスという名のバンドを結成。
15歳くらいでバンドはプロになり、ヨーロッパをツアーし始める。
背景はよくわからんけど、日本じゃ中学生くらいの年齢でプロになってツアーとは・・Foorin並みのすごい早熟さである。
ツアーメイトにダイアー・ストレイツがいたらしいが、詳細はよくわからない。

その後いくつかのバンドメンバーを経て、イギリスでクラブシンガーとして活動。
しかし歌手としてはなかなか売れず、仕方なく音楽関連会社でサラリーマンもしていたところ、1983年にミート・ローフがジョン・パーにアルバムのための曲を書くよう依頼。
さらにミート・ローフやザ・フーのツアーマネージャーであったジョン・ウルフと出会う。
この出会いがジョン・パーの運命を大きく変えていくことになる。

ジョン・ウルフは、停滞しつつあったザ・フーに代わる新しいスターの発掘に悩んでいた。
ジョン・パーを気に入ったウルフはソロデビューの話を持ちかけ、アメリカのレコード会社との契約が成立。
84年にファーストアルバム「John Parr」をリリースし、シングル「Naughty Naughty」が全米チャート23位を記録した。
ちなみに英語版ウィキペディアをGoogle翻訳して調べてるんですけど、「Naughty Naughty」は「いたずらいたずら」と翻訳されてます・・

その「いたずらいたずら」のヒットの結果、大物プロデューサーのデビッド・フォスターがジョン・パーに注目。
ジョン・パーは映画「セント・エルモス・ファイアー」の主題歌をデビッド・フォスターと共同で作ることになるのだが、映画ありきの曲作りではなく、カナダの車椅子マラソンのアスリート、リック・ハンセンのために曲を書いたとのこと。
・・・どういうこと?

もう少し詳しく調査。
車椅子アスリートのリック・ハンセンは85年から2年間をかけて、日本を含む世界一周を車椅子で行っている。
その旅に付けられた名前が、曲の副題でもある「Man in Motion」ツアーである。
リック・ハンセンの行動に感動したデビッド・フォスターは、リックのニュース映像をジョン・パーに何度も見せたそうだ。
ジョン・パーもリックの熱い想いを歌詞にすることでリックの支援を決意。
ジョンが詞を書き、デビッドが作曲。
さらに演奏にはデビッド・ペイチ、スティーブ・ポーカロ、スティーブ・ルカサーらTOTOのメンバーも参加して名曲「St. Elmo's Fire」が誕生した。

じゃあその「St. Elmo's Fire(セント・エルモの火)」ってのはそもそも何かというと、船のマストなどの先端で発生する静電気の発光現象のこと。
「セント・エルモ」は、船乗りの守護聖人エラスムスの名前で、エラスムスが祈ると船が落雷から守られたという言い伝えがある。
昔の船乗りのように嵐の中で行く先を示してくれる「セント・エルモの火」に願いを込める心境を、リック・ハンセンの行動に沿って歌詞にしている、ということのようだ。

では映画「セント・エルモス・ファイアー」はリック・ハンセンのドキュメンタリーなのかというとそうではなく、前述のとおりエミリオ・エステベスやデミ・ムーアらが演じる大学の同級生たちが、卒業後社会に出て苦労したり挫折したりみんなで突然集まって励ましあったり・・という青春映画。
劇中に出てくる店の名が「セント・エルモス・バー」で、また「セント・エルモの火」の例えで友人を励ますセリフもあるそうで、それがタイトルにもなっている。
なのでジョン・パーが作った歌詞の内容は、映画のストーリーとは関係ないそうです。
かなりわかりにくかったけど、そういうことだったのね。

ジョン・パーは「St. Elmo's Fire」の大ヒット後も、ティナ・ターナーのツアーに参加したり、ロジャー・ダルトリーとステージで競演したり、マリリン・マーティンとデュエットしたり曲を提供するなど、充実の80年代を過ごしていたようだ。

しかし90年以降は残念ながら実績は大幅に下降。
90年代にはアルバム4枚とシングル7枚を発表するが、いずれもチャートには登場していない。
97年以降はシングルも出ず、10年ほどの沈黙期間となる。

2006年にようやく活動再開。
「St. Elmo's Fire」を再度レコーディングし、81位ではあったが全英チャートにも登場した。
翌2007年にはブライアン・アダムスのツアーに参加。
またイングランドのサッカーチーム「ドンカスター・ローバーズ」のために特別に「Walking Out of the Darkness」という曲を作成。
この曲は試合開始時にチームがピッチに入る時に会場で流れるそうだ。
その後もブライアン・アダムスやジャーニーリチャード・マークスのツアーにゲストで参加する。

2011年6月1日に「Letter to America」という2枚組ライブ盤をオフィシャルサイト限定でリリース。
その後アメリカをツアーした。
2014年にはザ・フー、ジェフ・ベック、ミック・ハックネル、ケニー・ジョーンズらとともに、前立腺がんの調査や啓発活動を行っている団体が主催するチャリティ・イベント「ロック&ホースパワーコンサート」に参加。
2015年にはボニー・タイラーやケニー・ジョーンズ、コックニー・レベルと英国内外のステージで競演している。
2018年にはスタジオに戻り、通算7枚目のアルバム制作を開始したとある。

・・・やはり果てしなく知らない話だらけだった。
日本での知名度や人気はかなり低いようで、前述のとおりウィキペディア日本語版はスカスカだし、曲や馳浩は知っていても、ジョン・パーを覚えている人はかなり少ないと思われる。
実際に一発屋として紹介しているサイトもあった。
正直自分も失礼ながら一発屋風なミュージシャンかと思っていたが、実は多くのビッグネームとの交流や活動実績があり、本国では今も現役の歌手のようだ。

聴いた2曲に限っては、勇壮で力強く決して悪くない。
またリズムやサウンドに釣り合った歌唱力だと思う。
ジョン・パーの声質はそれほど透明度はないが、個人的にはロビン・ザンダーの声に似ていると感じる。

というわけで、ジョン・パー。
必修科目は「St. Elmo's Fire」ではあるもののこれはサントラ盤なので、ジョン・パー個人の作品としてはデビューアルバム「John Parr」や、「Two Hearts」収録の「Running the Endless Mile」を聴けばよいと思いますが、みなさまの鑑賞履歴はいかがでしょうか?

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
ジョン・パーですが、「セント・エルモス・ファイヤー」だけ
知っています。この曲はとても好きでした。先ほどユーチューブで
見ました。今聞いてもハイセンスな産業ロックで、今回の記事でデビッド・
フォスター関連+TOTOということを知り、センスのよさも納得です。

映画「セント・エルモス・ファイヤー」は見たことがありません。
アマゾンのレビューを見ると、私の年代らしき人々から絶賛の嵐
でした。「木根さんの1人でキネマ」で取り上げてもらったら、
見ようと思います。

ところで、今まで「ジョン・パーは記憶喪失者だ」と思っていました。
「セント…」がヒットした当時の私の情報源は「週間FM」しか
ありませんので、これの記事に書いてあったはずです。
しかし、ウィキペディアを見ても、何も書いてありません。
単なる私の勘違い+記憶違いだったのか???

投稿: モンスリー | 2021.02.16 22:21

モンスリーさん、コメントありがとうございます。

>今回の記事でデビッド・フォスター関連+TOTOということを知り、センスのよさも納得です。

自分もデビッド・フォスターやTOTOが関わっていたことは今回初めて知りました。
やはり売れる音になっていたんですね。

>映画「セント・エルモス・ファイヤー」は見たことがありません。

自分も見ていませんが、青春ドラマであることはなんとなく知っていました。
日本でヒットしたのかよくわかりませんが・・
その後の日本のトレンディドラマに影響を与えた、と書いてるサイトがあちこちにありました。

>「ジョン・パーは記憶喪失者だ」と思っていました。

この話も、確かにあちこちのサイトに書いてありました。
どうやら「記憶喪失になった経験はあったが、治らないまま全米No.1になったわけではない」というのが真相のようです。
http://new-thatsdan80.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/post-e05a.html

投稿: SYUNJI | 2021.02.17 18:01

SYUNJIさんお久しぶりです。

ジョン・パーは名前は知っていてもどんな人かはしりませんでした。
記事で「セント・エルモス・ファイヤー」を観たことがないSYUNJI様、モンスリー様。それは幸運です。
なぜならあの名作映画を新鮮な気持ちで観れるからです(笑)

80年代のわちゃわちゃした若者群像劇が数多く制作された時代に
あんなに脚本が考えられていて完璧な流れをもつ映画作品は珍しいです。
個性的な登場人物に自分自身を投影できる、共感性がもてる作りになっているのが
この作品を忘れがたい映画にしていると思います。

機会があればぜひ鑑賞されて下さい。


投稿: bolero | 2021.02.17 23:34

boleroさん、コメントありがとうございます。

>ジョン・パーは名前は知っていてもどんな人かはしりませんでした。

boleroさんは映画のほうをよくご存じだったんですね。
日本ではジョン・パーは「セント・エルモス・ファイアー」を歌ってた人と認識されてると思ってましたが・・

>80年代のわちゃわちゃした若者群像劇が数多く制作された時代にあんなに脚本が考えられていて完璧な流れをもつ映画作品は珍しいです。

おお、かなりの高評価ですね。
DVDでも動画配信サイトでも見られるようなので、今でも人気なんでしょうか。
レビューでもboleroさんご指摘の「個性的な登場人物に自分自身を投影できる、共感性がもてる作り」を挙げてる人が多いようですね。
少し興味がわいてきました。

投稿: SYUNJI | 2021.02.18 21:19

はじめまして

ジョン・パーは映画好きにはシュワルツネッガー主演の「バトルランナー」のエンディングテーマ「Restless Heart」でお馴染みです。
歌詞・メロディともに力強く燃える作りで自分は大好きです。
ディストピア社会からの脱出を唄った歌詞は映画の内容にぴったりでした。
映画音楽作曲家ハロルド・フォルターマイヤーとパーの共作だそうです。

投稿: センチネル | 2021.12.19 04:46

センチネルさん、初めまして。
コメントありがとうございます。

>ジョン・パーは映画好きにはシュワルツネッガー主演の「バトルランナー」のエンディングテーマ「Restless Heart」でお馴染みです。

これは初めて知りました。
ジョン・パーを調べていても見つけられなかった情報でした。
ありがとうございます。
この映画は見ておりませんが・・

改めて調べたら、「Restless Heart」はジョン・パーの92年のアルバム「Man with a Vision」にも収録されているそうですね。
たまたまなのかもしれないですが、映画がらみでのヒット曲や名曲が多い人だと感じました。

投稿: SYUNJI | 2021.12.23 20:54

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