聴いてみた 第159回 メタリカ
今回聴いてみたのは緊張のメタリカ。
バンドと同じ名前のアルバム「Metallica」、通称「ブラック・アルバム」を聴いてみました。
閉店セールにわく渋谷レコファンで衝動的に500円くらいで購入。
メタリカを聴いてないことを世界中に白状してから14年も経過している。
個人的にはやたらとある聴いてない音楽のひとつとして採り上げたつもりだったが、いただいたコメントが意外にもかなりストレートなご意見ばかりで、安いBLOGの歴史の中でも結構揺れた緊張の回として印象に残っている。
印象には残ったけど、聴く意欲はあまり湧かず、結局14年間全く手つかずのままだった。
決してメタリカだけ避けたわけではなく、ボブ・ディランもサバスもバリー・マニロウも全然聴いてこなかった点では特に変わらない。(必死の言い訳)
ちなみに14年前に「メタル+アメリカだからメタリカ」などと適当なことを書いてたが、今ネットで調べてもそんな説は見つからない。
どうやらガセだったようです。
自分もどこで仕入れたのか覚えていない。
メタリカという単語自体がラテン語で金属を表すそうで、これがバンド名の由来とのこと。
重ね重ねすいません・・
「ブラック・アルバム」は1991年発表で、メタリカ5作目のアルバム。
メンバーは以下の方々である。
・ジェームス・ヘットフィールド(G・Vo)
・カーク・ハメット (G)
・ジェイソン・ニューステッド (B)
・ラーズ・ウルリッヒ (D)
実績は今さら説明する必要もないが、全米だけで1600万枚超、世界では3100万枚を売り上げており、バンド史上はもとより世界史上でもランキング20位には入るという鬼レコードである。
全米・全英チャートは当然、カナダ・オーストラリア・スイス・ニュージーランド・ドイツでも1位を獲得というすさまじい成績を残している。
簡単に言うと当時のアメリカ国民のお宅を勝手に次々と訪問したらどの家にも必ずあったアルバム、という感じだろうか。
少なくともアメリカではあのビートルズの「Beatles 1」よりも売れたアルバムなのだ。
ちなみに14年前にも白状しているが、自分は奇跡的にこのアルバムの収録曲「Nothing Else Matters」をリアルタイムで聴いている。
逆に言えばこの曲だけがかすかな頼り。
たとえて言えば友達が誰もいない高校の入学式で「確か幼稚園がいっしょだったヤツ」を見つけて少しだけ安心してる・・・ような心境。(伝わらない)
「Nothing Else Matters」も決して好みに合うとも言えないのだが、とにかくこの曲を軸にメタリカの世界観を味わってみることにした。
・・・・・聴いてみた。
1.Enter Sandman
2.Sad But True
3.Holier Than Thou
4.The Unforgiven
5.Wherever I May Roam
6.Don't Tread on Me
7.Through the Never
8.Nothing Else Matters
9.Of Wolf and Man
10.The God That Failed
11.My Friend of Misery
12.The Struggle Within
サウンドは大枠ではメタルのイメージどおりでほぼ想定内の音だ。
構成や進行はメガデスと同様に激しいリズムと技巧的ギターが中心。
カタカナで書くと安い響きだが、ヘビメタそのものの楽曲がぎっしり並んでいる。
思ったほど金属臭は強くはなく、また早弾きや絶叫やスピード競争といった演出もさほどない、誠実と信頼のアルバム。
最大のヒット曲である「Enter Sandman」やパワープレイの「Holier Than Thou」などはストレートでいいと思う。
また「The Unforgiven」「Nothing Else Matters」は美しく悲しき壮大なバラード。
このあたり緩急硬軟動静のバランスがほどよく取れており、曲順や構成に相当緻密な計算がはたらいていると思われる。
強く感じるのは暗さである。
メタリカの楽曲全般がそうなのかもしれないが、少なくともこのアルバムには明るく楽しいメロディや爽快なリズムはなかった。
「重い・暗い・遅い」はサバスを表す形容詞だったはずだが、メタリカの「ブラック・アルバム」にも部分的にはかなり当てはまると感じた。
プロデューサーのボブ・ロックは、モトリー・クルーやボン・ジョビやラヴァーボーイのサウンド制作エンジニア経験のある人。
メタリカのメンバーはこれらのバンドが好きだったわけではなく、ボブ・ロックのサウンド制作手法、特にモトリー・クルーの「Dr.Feelgood」に興味があったので起用したとのこと。
これらの情報をつなぎあわせると、メタリカはこのアルバムを作る上で、グランジ・オルタナ・ハードロック・バラードというメタルとも少し違うテイストも意欲的に取り込んでいった・・ということになる。
特に当時全米を覆い始めたグランジ・オルタナの雰囲気を機敏に取り入れた結果、全米1位で1600万枚となったので事務所的には仕掛けは大成功ということになる。
歌詞も含めてそれまでのメタリカの表現とは明らかに異なるのが「ブラック・アルバム」のようだ。
制作中にカーク・ハメット、ジェイソン・ニューステッド、ラーズ・ウルリッヒの3人が離婚してしまったという、まさに私生活も犠牲にし身を削って作った血のにじむ渾身の作品。
しかし。
その輝かしい栄光の実績と高い芸術性を共感できるところまでは至っていない。
聴いてみたシリーズの傾向として、プログレやパンクよりはハードロックが自分には合うことはわかってきたので、メタリカも「聴けばわかる・やればできる」という高岸的な考えで聴いてみたのだが、やはりメタリカ、そんなに甘いバンドではない。
これまでに聴いてみたサバスやガンズ、ウィンガーやドッケンよりも手ごわい相手だと感じる。
「これなら売れたのもわかる」ではなく「こういう音でもそんなに売れたのか・・」という驚きのほうが強い。
楽曲やパートごとの音に拒絶感はそれほどない。
ムダに冗長だったり唐突に曲調やリズムを変えたりといった変化球的な音があまりないせいだろう。
また各楽器の奥行きをあまり感じず、特にドラムは結構前に出てきているような気がする。
的外れかもしれないが、どの楽器もずんずん前に出てこようとしてる点で、編成としてはクリームに似ていると思う。
抵抗を覚えるのはやっぱりボーカルだ。
ジェームス・ヘットフィールドの声は想像以上に野太く濁ってて野蛮な印象。
これも金属的というよりは木製バットに30本ほど釘を刺し、それでコールタールをかき回してるような感じ。(例えが貧困)
コーラスワークや楽器との調和にもそれほどこだわりを感じない。
もちろんこれがメタリカの特徴のはずだが、個人的にはまだ聴き慣れていないせいかそれほどなじめない。
「Don't Tread on Me」「Through the Never」など重低音に濁りボーカルで押してくる曲はやや苦手だ。
なので「The Unforgiven」「Nothing Else Matters」などバラードを聴くと少しほっとする。
メタリカの聴き方としては間違っているとは思うが・・
でもジェームスさんもそれまでのメタリカにはなかった曲調の「Nothing Else Matters」が本当に売れるのか相当心配してたそうなので、よかったんじゃないでしょうか。
ジャケットは通称の示すとおり真っ黒な闇。
ずっとK100だけかと思っていたが、よーく見ると蛇がいる。
変わったアートではあるが、内容に負けていない点ではいいと思う。
というわけで、メタリカ「ブラック・アルバム」。
これまでの戦績からするとそこそこいけるんじゃないかと甘い気持ちで臨んだものの、かなりあちこち殴られたり関節を取られたりでダメージ深く減点だらけで判定負けした状態。
負けたのに判定に納得してないビッグマウスな格闘家みたいな心境ですが、全面降伏したつもりはない(まだ言う)ので、もう少し繰り返し聴いてみます。
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