聴いてみた 第158回 デビッド・ボウイ
聴いてみたシリーズ、本日の名盤はデビッド・ボウイ「Ziggy Stardust」。
デビッド・ボウイのアルバムを聴くのは生涯で初めてである。(遅すぎ)
東日本最大級のインチキBLOGを始めて16年半ほど経過してるが、デビッド・ボウイは「聴いてないシリーズ」では14番目という相当早い登場だったものの、その後の学習は全くしてこなかった。
理由は特にないが、ニルヴァーナやリンゴ・スター、スティービー・ワンダーなど同じようにBLOG黎明期に採り上げたくせしやがって全然学習していないアーチストはまだたくさん残っている。(だから何?)
余命があとどんだけあるのかわからないが、これまで「聴いてないシリーズ」で採り上げたアーチストを全部聴くのはもうムリです、ぷく先輩。
そんな敗走する思考の中で渋谷レコファン閉店のニュースを知り、駆けつけて買い求めたのが「Ziggy Stardust」1990年再発盤である。
デビッド・ボウイについては、80年代のイギリスニューウェーブ界でひときわ存在感を放っていた人・・という印象。(とってつけ感)
80年代に人気が開花したデュランやカルチャー・クラブやワム!やABCやスパンダー・バレエやEXITや宮下草薙といった第7世代芸人とは違い、70年代から独自の世界を確立してきた大英帝国芸能界の重鎮の一人である。(適当)
だが自分が聴いた曲は「Let's Dance」「China Girl」「Modern Love」「Blue Jean」など80年代のヒット曲だけ。
「Blue Jean」はリアルタイムでプロモビデオを見ていたが、勘違いからFROCKLを騒然とさせ(誇張)、その10年後にこのBLOGで再会したYAGI節さんによって真相を知るというドラマティックな展開。
あと持ってる情報はクイーンやミック・ジャガーとの競演、バンド・エイドでの声の出演、「戦場のメリークリスマス」「ラビリンス」出演など、当時のナウい若者なら誰でも知ってる話ばかり。
「このままでは何も聴かずに人生が終わります」というぷく先輩からの死の宣告を胸に(使い回し)、急遽渋谷に出向いた次第。
「Ziggy Stardust」は72年発表のボウイ5作目のアルバム。
イギリスではアルバムチャート5位を記録し、プラチナディスクも獲得。
ダサい言葉で表現すればボウイの出世作である。
原題は「The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」という長いタイトル。
発売当時の日本盤には「屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群」といった王様みたいな直訳が書かれていたらしい。
あと5年で地球が滅びるという時に、遠い星からやってきたロックスターのジギー。
帯同するバンドは「スパイダーズフロムマーズ」という、ナゾの設定が施されたコンセプトアルバム。
宇宙開発、宇宙人の存在、同性愛問題など、当時ボウイが考えていた世界の課題みたいなテーマがいろいろ含まれているそうだ。
そんな不思議な設定を当時の日本の純朴な若者がホントに理解できていたかはよく知らないけど・・
当たり前だが、自分の知ってる80年代のスーツ姿の多かったダンディズム全開のボウイとは全然違うはずである。
果たしてタイトルどおり星屑のようなきらびやかな音楽なのでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1. Five Years(5年間)
ピアノとドラムで静かな幕開け。
徐々に盛り上がって壮大なオペラチック展開。
5年後に地球が滅ぶという設定の中、人々の日常や街の風景を描写している不思議な世界。
2. Soul Love(魂の愛)
この曲も最初は静かに始まり、徐々に盛り上がる構成。
サックスとギターが効果的に使われている。
3. Moonage Daydream(月世界の白昼夢)
重く響くギターとベースが印象的なサウンド。
明確にはわからないが、いろいろな楽器が使われており、調和のとれた組み立て。
後のクイーンはこのあたりに影響を受けているような気がする。
「オレはワニだ、オマエのパパにもママにもなるぞ、オレはインベーダーだ、ロックンロールするビッチになるぜ」といったナゾの歌詞。
4. Starman
この曲はどこかで聴いたことがある。
アルバムよりも先行してシングル発売された曲とのこと。
アコースティックギター中心のフォークっぽい音だが、エレキギターもあちこちで登場。
5. It Ain't Easy
この曲だけがカバーで、ロン・デイビスという人の作品。
なんとなくインドや中東を思わせる音がする。
「そんなにラクな話じゃない」という意味らしいが、このあたりでスーパースターであるジギーの風向きが変わってくることを予感させる。(知ったかぶり)
6. Lady Stardust
LPではここからB面。
ピアノ主体の奥行きあるバラードで、マーク・ボランに捧げられた曲とのこと。
「Lady Stardust」に扮装したジギーがステージに立ち観客の前で歌い、それを絶賛するという内容。
7. Star
なんとなくジョン・レノンを思わせるようなアップテンポのロック。
タイトルはロックスターのことで、ジギーは「オレならロックスターとして変革を起こせるぜ」と自信満々。
ロックスターとして眠り、ロックスターとして恋に落ちる、というどこか青臭い決意を歌っている。
8. Hang On To Yourself(君の意志のままに)
さらにスピードアップしたロック。
この曲もクイーンのようなサウンドと構成だ。
9. Ziggy Stardust(屈折する星くず)
タイトルチューンがここで登場。
ブルースのような鳴り渡るギターが非常にいい。
ギターの名手でもあったジギー、バンドを組んでスターにはなったが、自分を救世主だと思い込み、最後はファンの子供たちに殺されてバンドは解散・・という悲惨な物語を、バンドメンバーの視点から語る。
ジギーという名はイギー・ポップから、左利きのギター名手という設定はジミ・ヘンドリックスから作られたそうだ。
今さらだが、邦題がもう少しなんとかならなかったのだろうか・・
10. Suffragette City
パンクのような騒々しい曲。
タイトルは直訳すると「女性参政権運動家の街」。
「Suffragette」はウィングスの「Jet」にも出てくるが、あっちの曲ではあまり深い意味はないらしい。
この曲も訳詞を読んでも意味はさっぱりわからないが、バイセクシャルの男が、その日は女と会うために男を追い払う様子を表している・・とのこと。
11. Rock 'N' Roll Suicide(ロックン・ロールの自殺者)
LPの最後は静かなアコギのバラード。
滅亡寸前の人類は、結局救世主ではなかったジギーに失望し、逆襲しようとする。
追い詰められたジギーはステージでこの曲を歌い最後は自殺(殺される前に死を悟る・・?)という設定らしい。
ただ歌詞については今も様々な解釈があり、訳詞を読むと、むしろ滅亡を前にした地球人を救おうと必死になっている自称救世主・・のように思える。
この後はボーナストラック。
12. John, I'm Only Dancing
13. Velvet Goldmine
14. Sweet Head
15. Ziggy Stardust(Original Demo)
16. Lady Stardust (Original Demo)
このボーナストラックの中では最後の2曲が非常によく、個人的には本編バージョンよりもこのデモ版のほうがむしろ味わいがある気がする。
特に「Ziggy Stardust」のデモ版はアコギだけで歌うボウイが、やはりジョン・レノンを思わせる。
聴き終えた。
一言で言うと非常に聴きやすい音がする。
衣装や化粧や異星人から受ける勝手なイメージから、もっと電子的でハジけたパリピなサウンドを想像していたのだが、意外にシンプルでキャッチーな音楽だ。
特にギターサウンドはアコースティックも含めてかなり実直でマジメな造りをしていて、しつこいリフやムダなアレンジや唐突な変拍子といった小細工が全くない。
ボウイのボーカルもさすがに声は若いが、絶叫や火吹きや血吐きなどの演出はなく(誰?)、さらにコーラスもあまり凝った感じでもなく、極めて誠実に歌っている印象。
コンセプトアルバムとしては、乱暴に言うとLPのA面でジギー登場からスターダムへの過程を描き、B面ではジギーの凋落と破滅、そして死という展開を表しているようだ。
ネットでそういう解説を読んでもあまり理解はできないけど。
ボウイはこのアルバムで何を言いたかったのだろうか・・・
2度ほど聴いて確信したが、もし80年代に聴いていたら、もし姉がLPを持っていたら、おそらくかなりの確率で愛聴盤になっていたと思う。
歌詞やコンセプトはさらなる学習が必要だが、楽曲や音楽は難解な点や拒絶感はあまりない。
こんなアルバムだったのか・・・
惜しいことをしたなぁ。(こんなんばっか)
ジャケットはロンドンのへドン・ストリートという場所で撮影された写真。
ジギーに扮したボウイがギターを下げて足をかけて立つ姿という、思ったよりも地味な感じのアート。
遠い星からやって来たロックスターなんだけど、宇宙空間を飛び交う火の玉や山の岩肌に掘られた顔面といった演出をせず、あえて背景は都会の日常の場所が選ばれていて、異星人ジギーの存在感を際立たせている。
現在この場所の壁面には「ZIGGY STARDUST 1972」と刻まれたパネルが設置されており、2016年にボウイが亡くなった時には、世界中からボウイのファンが献花に訪れたそうだ。
というわけで、「Ziggy Stardust」。
コンセプトや歌詞は半分も理解できてませんが、楽曲としては聴きやすくてよかったです。
ただこれでボウイ学習意欲に火がついた・・というところまではまだ至っておりません。
アルバムごとに音楽性や特徴が異なるのがボウイだそうなので、次にボウイを聴くとしたら、多少はなじみのある「Let's Dance」「Tonight」あたりにしようかとぼんやり考えています。
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コメント
SYUNJIさん、こんにちは。
有名なのにあまり聴いたことがないボウイ・・・
多分、私もSYUNJIさんと似たような音楽体験だと思います。
>だが自分が聴いた曲は「Let's Dance」「China Girl」「Modern Love」「Blue Jean」など80年代のヒット曲だけ。
私もボウイは「Modern Love」「Blue Jean」等のMTVで流れていた80年代が一番印象深いです。クイーンとのコラボ「Underpresser」とか。
このアルバムも40歳過ぎて購入しました。
思ったのがこんなにもボウイって聴きやすいのか!という驚き(笑)
一枚だけ持っていた「OUTSIDE」というアルバムはノイジーでテクノポップな作品で、とっつきにくい・・・
このアルバム全体的にはバランスいいと思います。
特に好きなのが「Lady Stardust」のピアノの入り方とかすごくかっこいい。
>「戦場のメリークリスマス」「ラビリンス」出演など、当時のナウい若者なら誰でも知ってる話ばかり。
「戦場のメリークリスマス」は素晴らしいです。
あと「最後の誘惑」のピラト総監役がよかったです。
>ジャケットはロンドンのへドン・ストリートという場所で撮影された写真。
写真なんですね!! ずっとジャケットアート(イラスト)だと思ってました。
>多少はなじみのある「Let's Dance」「Tonight」あたりにしようかとぼんやり考えています。
2枚とも持ってますがじっくり聴いたことがないので
私にはお勧めする資格すらありません(笑)
投稿: bolero | 2020.08.11 12:58
気軽に名前を使われて怒っているぷく先輩と申します。(意外に嬉しいらしい)ボウイは全部持っていましたが、聴き込んでいるという漢字はあまりありません。
ただ「ステーション・トゥ・ステーション」という曲は傑作だと思いますので、ご一聴を。
投稿: ぷくちゃん | 2020.08.12 05:57
boleroさん、コメントありがとうございます。
>有名なのにあまり聴いたことがないボウイ・・・
>多分、私もSYUNJIさんと似たような音楽体験だと思います。
えーそうなんですか??
でもコメントを最後まで読んだら、やはりアルバム4枚もお持ちなんですね。
このトシで初めて聴いてるようなヤツは関東でも自分だけでしょう・・
>思ったのがこんなにもボウイって聴きやすいのか!という驚き(笑)
>このアルバム全体的にはバランスいいと思います。
>特に好きなのが「Lady Stardust」のピアノの入り方とかすごくかっこいい。
これは全部同感です。
もっと難解な音楽を想定してましたが、ストレートでシンプルなサウンドが意外でした。
>「戦場のメリークリスマス」は素晴らしいです。
そうスか・・実は全編まともに見てないんです・・
これは見たほうがいいですよね。
>写真なんですね!! ずっとジャケットアート(イラスト)だと思ってました。
撮影後の加工があるかはわかりませんが、ロンドンに実在する場所だそうです。
投稿: SYUNJI | 2020.08.12 20:55
ぷく先輩、コメントありがとうございます。
さらっと「ボウイは全部持っている」と言えるところがセレブでナイスです、先輩。
やっぱみんな聴いてるんだなぁ。(今さら)
>ただ「ステーション・トゥ・ステーション」という曲は傑作だと思いますので、ご一聴を。
先輩のご指示であれば迅速に対処いたします。(生返事)
ジギーより少し後の作品ですね。
渋谷レコファンが閉店する前に探してみます・・
投稿: SYUNJI | 2020.08.12 21:12
こんにちは、「Ziggy Stardust」のジャケットのパズルを飾っているYAGI節です。
気に入ったんですね♪
そうですよね、名盤ですよね。
ロック好きで、あれを悪く言う人はなかなかいないですよね。
悪く言っちゃいけない風格さえ漂っている……。
>コンセプトや歌詞は半分も理解できてません
私もです(汗)。
>多少はなじみのある「Let's Dance」「Tonight」あたりにしようかと
>ぼんやり考えています。
「Blue Jean」は大好きですが、アルバム「Tonight」を勧めるボウイ・ファンは極めて少数派だと思います。
多分、一般的なボウイ・ファンは「Heroes」あたりをすすめると思います。
「Ziggy Stardust」が気に入ったのであれば、次作の「Aladdin Sane」もいいと思います。
ぷくちゃんさんオススメの「ステーション・トゥ・ステーション」を聴いてると一目置かれるかもしれません。
が!!
80年代好きとしては、
元チャポ部屋の住人としては、
「Let's Dance」じゃないでしょうか!!
昔はあれが好きだというのはミーハーっぽくて憚られたんですが、時の流れとともにミーハー感は薄れ、名作感がアップしてきているのではないかと思う今日この頃です。
投稿: YAGI節 | 2020.08.14 01:18
YAGI節さん、こんばんは。
お待ちしてました。
FROCKLでお世話になってから20年以上経ってますが、やっとボウイ聴いてみました。(遅すぎ)
>ロック好きで、あれを悪く言う人はなかなかいないですよね。
>悪く言っちゃいけない風格さえ漂っている……。
やはりそうですか。
自分は決してボウイだからという忖度?があったわけではなく、単純に音楽として聴きやすいなと感じただけですが・・
>アルバム「Tonight」を勧めるボウイ・ファンは極めて少数派だと思います。
ええ~?
そうなんですか?
あまりよくわからずに挙げてみたんですけど、セルフカバーが多くて純粋な新作というアルバムでもないそうですね。
昔のボウイやイギー・ポップを知ってる人が楽しめる上級編なのかな・・?
>多分、一般的なボウイ・ファンは「Heroes」あたりをすすめると思います。
>「Ziggy Stardust」が気に入ったのであれば、次作の「Aladdin Sane」もいいと思います。
>ぷくちゃんさんオススメの「ステーション・トゥ・ステーション」を聴いてると一目置かれるかもしれません。
さすがボウイともなると聴くべき名盤が多いですね。
音がジギーに近いなら「Aladdin Sane」も自分には合うかもしれないですね。
>80年代好きとしては、
>元チャポ部屋の住人としては、
>「Let's Dance」じゃないでしょうか!!
やはりそうですか!
確かに自分でもボウイに挫折することはなさそうな、信頼と実績?の名盤ですね。
いずれにしても、おすすめの中から選んでみます。
次回がいつになるかわかりませんが、また聴いたらこの場で報告いたします。
投稿: SYUNJI | 2020.08.14 21:30
SYUNJIさん、こんばんは。
デビッド・ボウイはヒット曲すらほとんど知りません。
しかし妻がこの作品の信奉者ですので、借りて1週間聞きました。
さすが、「超」がつく名盤です。とても聞きやすく、かっこいい。
捨て曲がありません。歌詞が分からなくても、優れたコンセプト
アルバムであることがわかります。
エキセントリックなボーカルも、ザクザクとしたアコースティック
ギターの響きと相まって、とてもロック的です。
しかし、私にはどこかこの作品の持つ近寄りがたい雰囲気を払しょく
することができませんでした。聞き込みが甘いからだと思います。
また評論かぶれした頭で聞くと、気品と俗っぽさのみごとな調和
も感じました。どちらかに偏ってもいけない、危ういバランス
です。
拙い耳で聞くと、ここがこのアルバムの魅力かと思いました。
投稿: モンスリー | 2020.08.20 21:44
モンスリーさん、コメントありがとうございます。
>デビッド・ボウイはヒット曲すらほとんど知りません。
>しかし妻がこの作品の信奉者ですので、借りて1週間聞きました。
え、そうだったんですか?
でも奥様はアルバムお持ちだったんですね。
お互いの趣味を補完しあう音楽評論家夫妻のようでいいなぁといつも思います。
>さすが、「超」がつく名盤です。とても聞きやすく、かっこいい。捨て曲がありません。
基本的な評価はみなさん同じようですね。
聴きやすいのは全く同感です。
>気品と俗っぽさのみごとな調和も感じました。
>どちらかに偏ってもいけない、危ういバランス
です。
この点はなんとなくですがわかる気がします。
もっと騒々しかったり電子的な音だったりヤケクソなサウンドだったら、かえっておかしな音楽になってたように思いました。
うまく言えませんけど、異星人ジギーというSF的な現実離れしたテーマを、わりとソリッドで堅めの音や声で表現しているのが魅力なんじゃないかと感じます。
投稿: SYUNJI | 2020.08.22 09:13