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やってない 第44回 「じゃりン子チエ」を読む

ただでさえやってないことだらけな上にコロナの影響であらゆることにやる気も失せる状況ですが、本日のテーマについては世代間はもとより、地域格差が大きいのでは・・と勝手に予想します。
名作漫画「じゃりン子チエ」ですが、ほとんど読んでません。
関西方面の方々は「そんなヤツおらんやろ」と思われるはずですが、他の地方では「あ、すいません自分も実は・・」とおずおず手を挙げていただける方もおられるのではないでしょうか。

「じゃりン子チエ」は「漫画アクション」にて1978年10月12日号から1997年8月19日号まで約19年間連載された、はるき悦巳の漫画である。
テレビアニメも2期に渡り放送され、第1期はチーフディレクターを高畑勲が務めたことでも有名。
大阪の下町を舞台に、定職につかないゴロツキのテツと、小学生ながらホルモン焼き屋を切り盛りする娘のチエ、親子の周囲の個性的な面々が織りなす人情喜劇漫画。

・・・というウィキペディア掲載の一般教養はなんとなく知っている。
厳密に言えば、1ページも読んだことがないというハード無知ではない。
自分は大学生の頃、新宿の雀荘で深夜アルバイトをしていて、夜中ヒマな時間はバイト仲間で店にあった漫画雑誌を回し読みしていた。
当時人気だったのは「スピリッツ」「モーニング」「ヤングジャンプ」あたりだったが、場所柄「近代麻雀オリジナル」「麻雀ゴラク」なんかもあり、「漫画アクション」もたまには読んだりしていた。
「じゃりン子チエ」も連載中だったので、実はリアルタイムで読んではいたのだ。

しかし。
「じゃりン子チエ」も読んではいたものの、文字通りヒマつぶしで夢中になるようなことは全くなかった。
バイト仲間と感想を言い合うようなこともなかったので、他の連中の感覚はもちろんわからないが、なんとなく同じような熱量だったのではないかと思う。

他の雑誌に連載されていた「めぞん一刻」「軽井沢シンドローム」は後で単行本を買ったし、「課長島耕作」「アクター」「ツヨシしっかりしなさい」「押忍!!空手部」など、毎号結構マジメに読んでた作品もあった。
でも「漫画アクション」は他の雑誌とは少し雰囲気が違い、どの作品もそんなに気合いを入れて読むようなことはなかったのだ。
余っていた「アクション」を読んでいて、バイト仲間が「スピリッツ」を読み終わったらすかさず「スピリッツ」にチェンジ・・みたいな扱いだった。
ちなみにバイト仲間の間でも「哭きの竜」はやはり人気がありました。

「じゃりン子チエ」になじめなかった理由にそれほど確固たるものはないが、今見ても絵があまり好みではないというのはある。
個人の感覚なんで説明のしようもないのだが、他の漫画で絵に対して「いやーこの絵は好みだ・・」とか意識したこともないので、単純にこういう画風が苦手なんだろう。
なおウィキペディアには「つげ義春を深く尊敬し、特に初期の頃につげ義春の画風が顕著に出ている」とあるが、「じゃりン子チエ」の絵の中には、むしろさらに源流である水木しげるの影響を感じるところがある。
・・・などと勝手なことを書いているが、つげ義春や水木しげるの画風には特に苦手なものを感じない。(説得力ゼロ)

さらに弱々しい言い訳にもなるが、セリフが全て関西弁という点もある・・かもしれない。
漫画を読む時、多くの人がセリフを自分のアタマの中で声優ばりに再生してると思うんだけど、関西弁の文字って、やはり関東育ちの自分の中ではネイティブのセリフには変換できないんだよね。
英語の文字列を脳内でクィーンズ・イングリッシュ再生できないのと一緒。(そうかなぁ)

説得力はあまりないが、登場人物の一部が関西弁ならばさほど気にならない・・ような気はする。
(例:「ドカベン」の岩鬼、「アストロ球団」の球四郎など)←例えが古くて恐縮です・・
が、「じゃりン子チエ」のように猫も含む全員が関西弁だと、やはりどっかでシンドさを感じるのかもしれない。
シンから楽しめないとはまさにこのことである。
「関西育ち」という基盤は、この漫画を楽しむ上でかなりのアドバンテージなのではないだろうか。

こういったつまんない理由が、作品の良さを感じる上で障害になっていたと思う。
ホルモン焼き屋で働くたくましい少女チエ、ごんたくれの父親テツ、会話する猫たちといったファンタジーな設定も、申し訳ないが「面白いなぁ」とは思えなかった。
それだけ自分も若かった・・と言いたい気もするが、今ネットで読める範囲で見返しても、感情としては当時とやっぱり変わらない。

漫画でこの有様だったので、アニメはもっと深刻。
一度も見たことがないし、そもそもいつどの時間帯にどの局で放送されてたのか全く知らない。
調べたら第1期が1981年10月3日から1983年3月25日まで、関東ではTBSで土曜17:00~17:30放送。
第2期は1991年10月19日から1992年9月22日まで、同じくTBSで金曜19:00~19:30放送とのこと。
残念ながら家族の誰も見ていなかったし、いずれもどんな裏番組を見ていたのかも全くわからない。
「じゃりン子チエ」を見てたとしても、やはり夢中になるようなことにはならなかったとは思う。

というわけで、「じゃりン子チエ」。
昨年末から「じゃりン子チエ COMPLETE DVD BOOK」という月刊DVDが発売されているようで、学習条件は揃ってはいる。
漫画に限らず芸術作品の全ては個人の感性に依存するので、画風の好みはともかく関西弁は言い訳にしかなりませんが、もし自分と同じように感じている方がおられましたら、ぜひ教えてください。
あ、もちろん作品の魅力についても、ぜひ教えていただけたらと思います。

 

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
親戚が大ファンで、コミックスを借りて約10年間リアルタイムで読みました。
アニメも毎週見ていました。
当時小中学生の私ですが、周りでは原作マンガよりテレビアニメを見ていた
と思います。「なんでやろ」と思ったら、掲載紙が成人向けコミック雑誌だった
のですね。今さら納得です。

確かにおもしろかったのですが、途中から借りなくなりました。ですので、最後が
どうなったのかわかりません。
また、気に入った作品は大人になってからも古本で読み直したりしますが、
この作品は最初に読んだきりです。ですので、「一体どこがおもしろかったのか」
全く思い出せないのです。

一つ、当時はやっていた少年サンデー系アニメ絵柄ではない=つまり私の苦手な
絵柄です。それにも関わらず読んだということは、この作品に何か
勢いがあったとしか思えません。
ちなみみ美少女も一人も出ません。唯一、チエのお母さんだけが美人でした。なぜ
このお母さんが、チエの父親と結婚したのかが不思議でした。

ところで、
>>「近代麻雀オリジナル」「麻雀ゴラク」なんかもあり、「漫画アクション」

この手のタイトルの漫画雑誌は、成人系ハード●ロ、絵柄は劇画チックと
相場が決まっていると勝手に思い込んでいて、今に至るまで一度も読んだことが
ありません(^^;;;

投稿: モンスリー | 2020.07.27 20:51

モンスリーさん、こんばんは。

>親戚が大ファンで、コミックスを借りて約10年間リアルタイムで読みました。
>アニメも毎週見ていました。

やはりそうでしたか。
読んでない・見てないという人間は少数派なんでしょうかね。

>「なんでやろ」と思ったら、掲載紙が成人向けコミック雑誌だったのですね。今さら納得です。

アニメを見てないので原作にどれほど忠実なのかわかりませんが、図式は「ルパン三世」と同じですね。
放送当時小中学生であれば、アニメでしか知らないという人もいるでしょうね。

>「一体どこがおもしろかったのか」全く思い出せないのです。
>それにも関わらず読んだということは、この作品に何か勢いがあったとしか思えません。

自分の勝手な解釈ですけど、この点がやはり関西少年のアドバンテージではないですかね?
セリフに違和感なく読み進められるというのは、結構でかいファクターなんじゃないかと・・

>この手のタイトルの漫画雑誌は、成人系ハード●ロ、絵柄は劇画チックと相場が決まっていると勝手に思い込んでいて、今に至るまで一度も読んだことがありません(^^;;;

あー・・そこは大いなる誤解ではあります。
少なくとも「近オリ」「麻雀ゴラク」はハードエロ漫画雑誌ではないですね。
が、まあ当時はどの雑誌もそんなに上品ではなかったことは確かです。
記事中に挙げた「哭きの竜」や、かわぐちかいじの「プロ」といった名作もありましたけど、大半はムリヤリな設定にいまいち上手じゃない絵の安っぽい漫画ばかりでした。
本題の「じゃりン子チエ」も、絵も話も少年サンデー系ではないですよね。
漫画アクションに連載されてる点では違和感はなかったと思います。

投稿: SYUNJI | 2020.07.28 21:17

こんにちは、JTです。

兄がよく「漫画アクション」を買ってきていたのですが、「じゃりン子チエ」はほとんど読んでいませんでした。セリフが多くて読みにくい印象がありました。絵もアクが強いし。

まあ「アクション」の漫画は大御所を揃えている「ビック・コミック」や「ビック・オリジナル」と比べるとクセの強い、通向きの漫画が多かったですね。「博多っ子純情」とか。

今気が付きましたが、ほとんど読んでなかったのか「アクション」の漫画(笑)。読んでいたのは、いしいひさいち、とか植田まさし ぐらいか。

>つげ義春や水木しげるの画風

言われてみれば、影響が伺えますね。
今なら読めるかな。

投稿: JT | 2020.08.01 09:05

JTさん、コメントありがとうございます。

>セリフが多くて読みにくい印象がありました。

あーなるほど・・言われてみれば「セリフが多い」のはあの漫画の特徴ですね。
なんとなく新喜劇とか舞台コントのノリを漫画でやってるような・・

>通向きの漫画が多かったですね。「博多っ子純情」とか。

そうか、「博多っ子純情」もアクションだったんですね。
バイトしていた当時はもう連載は終わってたようなので、後から単行本で全部読んだ記憶があります。

>言われてみれば、影響が伺えますね。

「じゃりン子チエ」を見ると、フキダシの外の声や擬音の書き方に水木しげるの影響は感じますね。
自分の場合、今なら読めるかどうか自信はあまりありませんが・・


投稿: SYUNJI | 2020.08.01 10:30

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