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聴いてない 第259回 ジュエル

グランジ・オルタナの台頭とエアチェック文化終焉という失われた暗黒の時代、ひとり歌の才能で芸能界を行き抜き世界を感動させた実力派、ジュエル。
・・・勝手に安っぽいキャッチを盛りつけてみましたけど、聴いてません。
唯一聴いたのは名曲「Hands」のみ。
当時流行のNOW系オムニバスCDに収録されていたもので、アルバムは当然聴いておらず、聴いてない度は2。
この頃に仕入れたミュージシャンは、結局オムニバスCDの1曲だけ聴いているパターンが割と多い。

なおジュエル(Jewell)という名のR&B歌手や、3人組ダンサーチームが存在するそうだが、今日のお題は90年代に登場したアメリカの女性シンガーであるジュエルさんのほうです。
そのジュエルさん情報をネットで収集してみました。

ジュエルは本名である。
ジャラジャラいいそうなキラキラネームのような印象だが、ジュエル・キルヒャー(Jewel Kilcher)が本名。
なおサイトによってキルチャーやケルヒャーなど表記に揺らぎあり。
なお映画女優のクオリアンカ・キルヒャーはいとこだそうです。
すいません、どなたか存じ上げませんが・・

ジュエルは1974年5月23日、ユタ州ペイソンに生まれる。
アラスカ生まれと書いてるサイトもあったが、生まれはユタ州のようだ。
アラスカ州ホーマーで育ち、上院議員の祖父やミュージシャンの父親に歌とヨーデルを習う。
母親は教師だったが、8歳の頃に両親は離婚。
15歳でミシガン州にあるインターローシェン・アーツアカデミーという芸術学校で奨学金を受け、オペラや声楽を学んだ。
卒業後は母親の暮らすサンディエゴで生活を始め、クラブや喫茶店で歌うようになる。

要約すると才能ある少女ジュエルがサンディエゴで歌手活動開始というサクセスストーリーの序章のようだが、実態はそんなに美しい展開ではなかったようだ。
両親の離婚原因は父親がアルコール依存症で妻や子供に暴力をふるうようになったからで、サンディエゴでの活動の前後でもしばらく車に住んでアメリカ国内を移動したあげく車も盗まれて、ホームレスになった時期もあったとのこと。

その後しばらくは歌手活動をしながら喫茶店や倉庫の電話オペレーターなどの仕事をしていた。
ジュエルの歌や活動は徐々に評判を呼び、93年頃に音楽プロダクションやレコード会社の偉い人の目に止まり、94年にアルバム「Pieces of You(心のかけら)」でデビュー。
中身は基本ギターで弾き語りのフォークで、これが大ヒットして全米で1200万枚を売り上げ、最高4位まで上昇した。

97年には初めて日本でライブを開催。
98年にアルバム「Spirit」をリリース。
この中に唯一聴いた「Hands」が収録されており、この曲は全米6位・カナダでは1位を記録。
そんなすごいヒット曲だったのか・・
まあNOWに収録されてたくらいだからヒットはしてたんでしょうけど、そこまでとは知らなかった・・
他にもシングル「Jupiter(Swallow the Moon)」「What's Simple Is True」「Life Uncommon」も続き、アルバムは370万枚も売れた。
その後も99年「Joy:A Holiday Collection」(全米32位)、2001年「This Way」(全米9位)とヒットアルバムを出し続ける。

翌99年には「Ride With The Devil」という映画に出演。
南北戦争を描いた内容で、役どころはスー・リー・シェリーという名の未亡人。
邦題は「シビル・ガン 楽園をください」とあるが、原題とは全然違う気がするけど・・
またこの年と2002年には日本公演も行われた。

2003年「0304」というアルバムから音楽性に変化が起こる。
ワーナーのサイトには「ダンス、ロック、ポップのビートを大胆に取り入れ、そのセクシーなヴィジュアルと共に、華麗なる変化と成長を遂げ、その多彩な内容に世界は驚かされた」などと書いてある。
発売直後の2か月で32万枚を売り上げ、評判は悪くなかったが、セレブ系の方向転換に戸惑うファンも多かったらしい。
まあそうだろうなぁ。
フォークでデビューしたのに、10年経ってダンスやセクシー路線に行かれても・・と思うファンが多くてもおかしくはない。
ジュエル本人は「より明るいサウンドでレコードを作ることを考えた」とコメントしている。

2006年にはアルバム「Goodbye Alice in Wonderland」を発表。
ジュエルによれば「私の人生の物語であり、最も自伝的なアルバム」とのこと。

だが。
この頃からカントリーにシフトを希望するジュエルとレコード会社との間で意見の相違が起こり、ジュエルは契約を更新せず別のレーベルに移籍する。
移籍後は希望どおりカントリーアルバム「Perfectly Clear」を2008年6月に発表。
シングル曲もカントリー専門のラジオで集中的にオンエアするなど、戦略を完全にカントリーに向けていく。
ということは、やはりダンスやビートを大胆に取り入れたセクシー路線は本人の希望ではなかったんスかね。

その後もジュエルの活動は意欲的である。
2009年には子守歌のコレクションアルバム「Lullaby」をiTunesでリリース。
本業のカントリーでも2010年にアルバム「Sweet and Wild」、副業?としても映画のサントラ用に曲を作っていく。
さらに2012年には映画「リング・オブ・ファイア」にも出演。
劇中でも歌い、主役を務めた。

現在も活動中だが、比重は女優のほうが多いようだ。
2011年以降は毎年映画作品に出演。
音楽の最新作は2015年のアルバム「Picking Up the Pieces」。
自身の会社「Jewel Inc.」を設立し、音楽・テレビ・映画・執筆などをこなし、マルチタレントとして活動中。

・・・毎度のことながら隅から隅まで知らない話であった。
女優もやってた人だったんですね。
総合すると、本来はフォークやカントリーという素朴な分野で才能を発揮するタイプのミュージシャンで、途中事務所やレコード会社の意向であっちこっち方向を振り回された実績もあり、という人だろうか。
ゲッティで彼女の画像をいろいろ見たが、確かに時期によって化粧からスタイルからファッションまで同じ人とは思えないほど変化してるようですけど・・

唯一聴いている「Hands」は明るくはないが、印象に残る音ではある。
歌詞はいろいろ解釈があるようだが、訳詞を読むと、はかないメロディに似合わないような強い意志や決意みたいな内容だ。
今の世界情勢をふまえて聴くとまた違った印象を受ける気がする。
好みかどうかは微妙だが、聴くとしたらやはりこの路線から勉強してみたいと思う。

というわけで、ジュエル。
まずは「Hands」の収録されている「Spirit」、あとはデビューアルバム「Pieces of You(心のかけら)」にわずかではあるが興味がわいております。
作品ごとに雰囲気は相当異なるようですけど、他におすすめのアルバムがあれば教えていただけたらと思います。

 

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
全く知りませんでした、ジュエル。
ついでに私より若いです。私の聞いている洋楽ミュージシャンは
もう60歳代後半の人ばかりです。若いと思っていたシェリル・クロウも
私より上です。

SYUNJIさんの記事を見て、相当売れている人だと思いました。
>>アルバムは370万枚も売れた。

多分この実績だけで、アメリカでライブをすれば食べている人
だと思います。アメリカには過去の大きなヒット曲があれば
やっていけるマーケットがあるようなのです。

>>ダンス、ロック、ポップのビートを大胆に取り入れ(以下、略)

ああ~。
アメリカならカントリー方面の方がいいんですけどねえ。
イーグルスもカントリータッチが今でも人気。シンディ・ローパー
もシェリル・クロウもカントリーを入れるといい仕事に
なるんです。

はっ、またしても1曲も聞いていないのにいろいろ書きました。
反省のためウィキペディアを見ましたら…
おお、美人シンガー。メイヤさんよりジュエルさんの方が
好みです(^^;;

投稿: モンスリー | 2020.04.11 22:23

モンスリーさん、こんな状況の中コメントありがとうございます。
自分は先週から慣れないテレワークとなっております。

>ついでに私より若いです。私の聞いている洋楽ミュージシャンはもう60歳代後半の人ばかりです。

確かにそうですね。
まあ長くこんなBLOGやってますと、ジュエルやヴァネッサ・パラディなど、いよいよ自分より年下のアーチストを紹介せざるを得なくなってきます。

>多分この実績だけで、アメリカでライブをすれば食べている人だと思います。アメリカには過去の大きなヒット曲があればやっていけるマーケットがあるようなのです。

そういうもんなんですかね。
ジュエルは90年代にトップ50に入るアルバムを数枚出してるので、条件としては充分ということでしょうか。

>アメリカならカントリー方面の方がいいんですけどねえ。

なるほど・・やはりアメリカだとカントリー支持層は堅いみたいですね。
ジュエルの「0304」のジャケット写真やレコード会社の宣伝コピー見ると、なんかすごいムリしてる感がにじみ出てます・・
その後はカントリーにシフトしたそうなので、実績はともかく本人は自分の意思を通して満足してるんじゃないでしょうか。

>おお、美人シンガー。メイヤさんよりジュエルさんの方が好みです(^^;;

「Spirit」のジャケット写真はいい表情してますね。
ただ記事にも書きましたが、時代とともに顔も激しく変わってる人のようです・・

投稿: SYUNJI | 2020.04.12 18:25

おひさしぶりです。デュランなどのファンですが、覚えておいででしょうか?
ジュエルは、『心のかけら』だけ持っています。
いったん売って手放したのですが、また聴きたくなってレンタルしてダビングしました。それくらい唯一無二の強い魅力があります。ただ、他のアルバムには興味が湧かなかったのですがね(笑)
記事を読むと近年も映画で主演していると書いてあり驚きました。女優もしているのは知っていましたが、そんなにバリバリやっているとは…!
さて、アルバムの感想ですが、歌詞が尖っているのが印象的でした。マイノリティについてや、植物人間になった友人についてや、父から虐げられる娘についてなど、なかなか重めな内容を扱っていて、思春期のころの自分にはインパクトがあったのだと思います。作曲センスも良く、本当に才能あると思います。
ただ、このアルバムだけでおなかいっぱいなので、彼女の他のアルバムはもういいんですけどね…。


投稿: ゆか | 2020.04.16 15:44

ゆかさん、お久しぶりです。
あれからデュランもたま~に聴いてますが、定着した感覚はあまりないです・・

>いったん売って手放したのですが、また聴きたくなってレンタルしてダビングしました。

それは興味深いですね。
自分には手放したものをまた聴くことはあまりないのですが、やはり魅力ある作品ということでしょうか。

>女優もしているのは知っていましたが、そんなにバリバリやっているとは…!

正直ヒットしたかどうかはわかりませんが、映画は毎年出てるそうなので、比重は女優業のほうにあるようです。

>アルバムの感想ですが、歌詞が尖っているのが印象的でした。

なるほど・・
社会派で重い内容を歌うとのことですが、そういう歌手だったんですね。
歌詞を理解して評価するのはハードルが高いですが、「心のかけら」は良さそうですね。
少しだけ興味がわいてきました。

投稿: SYUNJI | 2020.04.17 21:28

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