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聴いてみた 第154回 フェイセズ その3

令和2年最初の聴いてみたシリーズ、今回はフェイセズの「Ooh La La」を聴いてみました。

「Ooh La La」は73年の作品。
フェイセズとしては4枚目で最後のスタジオ盤であり、全英では1位を獲得。(全米21位)
主にA面の曲をロッド・スチュワート、B面曲はロニー・レーンが作っているが、クレジット上はロッドが一人で作った曲はなく、ロニーやロン・ウッド、イアン・マクレガンとの共作である。
プロデューサーはグリン・ジョンズ。

Ooh-la-la

そもそもフェイセズは発生時点から全員が他のバンドで活躍していた実績を持つ役者揃いのグループだが、このアルバムを最後に解散してそれぞれが別の場所でまた活躍していく。
書き並べてみるとよくわかるが、解散後はロッド・スチュワートはソロ、ロン・ウッドはストーンズに加入、イアン・マクレガンはストーンズのサポート、ケニー・ジョーンズはザ・フーに加入する・・という、なんだか山田が西武、里中がロッテ、岩鬼がダイエー・・みたいな明訓高校っぽいドラマチックな展開なのである。
そんなフェイセズ高校の歴史的な転換期に位置する「Ooh La La」。
果たしてフェイ高最後のアルバムはどんな盛り上がりなのだろうか。

・・・・・聴いてみた。

1. Silicone Grown
オープニングは軽快なリズムで始まるロック。
ノリまくるピアノがフリージャズっぽくもある。

2. Cindy Incidentally(いとしのシンディ)
少しテンポを落としたリズムで、ロッドがキー高めに歌う安心の一曲。
左のギター、右のピアノ、奥のドラムといったシンプルな音の振り分けが臨場感を生んでてよい。

3. Flags And Banners
この曲はロニー・レーンがボーカル。
バンジョーのような音やオルガンも聞こえてくる楽曲は悪くない。
悪くはないんだが、やはりロッドを聴いたすぐ後だと、ロニーの歌は若干頼りない印象。

4. My Fault(俺のせいだ)
これもいかにもロッドのための課題曲といった調子で、終始叫びがちに甲高く歌うロッド。
エンディングが意外にはかなげでいい。

5. Borstal Boys
A面ラストはやや粗暴な歌と演奏。
イントロで繰り返し鳴るサイレンのような警告音で緊張が高まる。
ピアノよりはギザギザなギターがメインで、ドラムもかなりヤケクソに主張してくる。

6. Fly In The Ointment
B面の最初がインストという不思議な構成。
この曲はロッド以外の4人の共作で、各パートの持ち味が調和していていい感じ。

7. If I'm On The Late Side
どこかフォークやカントリーの香りのするバラードだが、テンポは思ったより早く、あまり湿っぽい雰囲気はない。

8. Glad and Sorry
ようやく本格的なバラード登場。
これもいい曲である。
レイドバックしたけだるいボーカルはロニーだが、ほぼ全編コーラスなので線の細さはあまり気にならない。
ロッドの声は聞こえない。
ロニーのボーカルに声を合わせているのはイアンだそうだ。
エンディングで少しだけ不協和音が混じる。

9. Just Another Honky
引き続きバラードで、今度はロッドが歌う。
これも演奏がまとまっていて非常によく、時々聞こえるころがるようなドラムが印象的。

10. Ooh La La
ラストはカントリーっぽいアコースティックなアルバムタイトルナンバー。
女に関する爺さんから孫への教訓?を歌った、どこか切ない内容。
やや投げやりに歌っているのはロン・ウッド。
ロンの歌声を意識して聴くのは初めてだが、思ったよりうまく(失礼)、曲調に合っていると思う。
ロニーとロンの共作だが、ロニーは当然ロッドが歌うもんだと思って作っていたらしい。
なんでロン・ウッドが歌うことになったんだろう?
ここまで歌える人ならストーンズでもたまにはボーカルを任されてもよかったんじゃないかと思うが、あっちのバンドではそうはならなかったみたいスね。

聴き終えたが、このアルバムも聴いてて目立った不満はほとんどない。
むしろここまで聴いたフェイセズの3枚のアルバムの中で、一番まとまりがある気がする。
大まかに言うとA面がブルース基調のロック、B面はカントリーやフォークで味付けしたバラード中心、といった構成。
これはバランスがとれてて非常にいいと思う。
さらにインストやロン・ウッドのボーカルなど、意外に聴きどころは多い。

自分がフェイセズに感じる「不安」はロニー・レーンのボーカルだけなのだが、このアルバムでは(聴き慣れてきたせいもあるが)それほど気にならなかった。
「Flags And Banners」だけがロニーほぼ一人のボーカルだが、もしロッドかイアンがバックでコーラスを当てていたら、全く問題なかっただろうと思う。

路線としては他のアルバム同様、とにかく楽しくやろうぜ的ガヤ系サウンドである。(特にA面)
尖っていない分、平凡なロックになってる可能性はあるが、どこから聴いても問題ない。
3枚聴いてわかってきたが、フェイセズは自分にとって安心できる信頼と実績のバンドなのだ。
聴いてみたシリーズをここまで続けてきた中で自分なりに分析すると、聴く前の緊張感期待感に対し、聴いた後の充足感満足感の比率が極めて高いのがフェイセズ、ということになる。

制作当時、バンド内の状況はあんまし良くなく(いつも?)、俺様ロッドはメンバーをバックバンドとして下に見ていたり、自分が歌う時だけしかレコーディングに参加しないなど、ロッドと他のメンバーとの間に様々な摩擦が生じていたようだ。
まあ同じ頃作ったロッドのソロでは実際にメンバーがバックバンドを務めてたんで、ロッドがそう考えるのも仕方ないとは思うけど。

で、「Ooh La La」発売直後にはロッドが「最悪なアルバム」などと発言し、その発言にキレたロニーは「こんな会社やめてやる!」と叫んで雪の札幌をさまよいバンドを脱退。(ボケ使い回し)
後任ベーシストとして日本人の山内テツが加入したが、ライブアルバムだけ出してバンドは解散してしまう・・という因縁の作品になってしまった。
後にロッドは「最悪」発言を訂正したそうだけど、たぶん作品じゃなくて人間関係が当時最悪だったんでしょうね。
ロックバンドを調べていていつも不思議に思うんだが、パープルイーグルスにおいて特に顕著な通り、音楽作品の質と人間関係の状態は必ずしも相関しない、というのがこのフェイセズの「Ooh La La」にも当てはまるようだ。

結局ロッド・ロニー・ロンの3Rは二度と同じバンドで共に活動することはなく、フェイセズとしても最後のスタジオ盤となった。
喧嘩別れした形の3人だが、その後ロニーが難病にかかった際にロッドとロンが治療費を出してあげた・・というイイ話もあるようだ。

ジャケットはエットーレ・ペトロリニというイタリアのコメディアンが演じたガストーネというキャラクターで、LPでは目や口が動く仕掛けになっていたとのこと。
70年代末のミュージックライフにアルバムレビューが掲載されていて、レビューの中身は忘れたがジャケットとタイトルは覚えていた。
気に入っていたわけではもちろんないが、印象に残るアートではある。
短い歴史のフェイセズだが、アルバムジャケットに関しては統一性は一切なかったようだ。

というわけで、「Ooh La La」。
今回も非常に良かったです。
今さらだけど、ここまでのクオリティで作品を世に出しながらも、これを最後に解散してしまった・・というのはやっぱり残念ですね。
これでフェイセズの未聴盤は「First Step」だけになりましたので、こちらも早いうちに聴こうと思います。

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コメント

こんばんは、JTです。

>狙いうち

ウララ、ウララ、ウラウララ。
気が付かなかったなぁ(笑)。時期は同じくらい?
阿久悠?

>そんなフェイセズ高校

クロマティ高校みたいな(笑)。

>ここまで歌える人ならストーンズでもたまにはボーカルを任されてもよかったんじゃないかと思うが、あっちのバンドではそうはならなかったみたいスね。

やっぱ、自分は外様だとわきまえているのかも。
ソロアルバムも出しているし、そっちでいいと思っているのかな。

>今回も非常に良かったです。

あら、意外な評価ですね。

>これを最後に解散してしまった

ロッドがフェイセズにもっと力を入れていたら続いたかもしれませんが、そのなるとバンドの方向性も結局ロッドのソロよりになったかもしれませんね。


投稿: JT | 2020.02.17 23:38

再び、JTです。

https://www.barks.jp/news/?id=1000178900

こんな記事がありました。偶然?

投稿: JT | 2020.02.19 20:32

JTさん、コメントありがとうございます。

>気が付かなかったなぁ(笑)。時期は同じくらい?
>阿久悠?

よくぞこんな寒いボケを拾っていただきました・・
調べてみたらご推察のとおりどちらも73年で同じ年の発売。
意外にも「狙いうち」のほうが1ヶ月先でしたけど。

>やっぱ、自分は外様だとわきまえているのかも。

ということなんですかね。
ロン・ウッドって正式にストーンズのメンバーになったのはかなり後で、しばらくは契約社員みたいな身分だったそうですが・・

>ロッドがフェイセズにもっと力を入れていたら続いたかもしれませんが

その後のロッドの活動を見ると、やはりこの人はバンド向きではなかったんでしょうね。
「俺様が歌えば演奏は誰でもいい」ってところでしょうか。

>こんな記事がありました。偶然?

いや、これは知りませんでした。
BARKSはわりとマメに見てるんですけど、これ今日の記事ですね。
いいタイミングで教えていただいてありがとうございます。
イアンとロニーは亡くなっているので、再結成でも3人なんですね。

投稿: SYUNJI | 2020.02.19 21:54

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