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聴いてみた 第151回 ブルース・スプリングスティーン

「いい歳してあれほどの名盤を実は聴いてないんです」を白状しつつ聴く機会を恵んでもらう、という志の低いコンセプトがウチのBLOGの根幹ですけど、今回はまさにその決定版。
今さら誰にも言えないブルース・スプリングスティーンの「明日なき暴走」を聴いてみました。(遅い)

ブルース・スプリングスティーンは全然聴いてこなかったわけでもないのだが、70年代の名盤学習は完全に怠っている。
セールス的にはNo.1の「Born In The U.S.A.」と、「Human Touch」「The Ghost of Tom Joad」を中途半端に聴き、その後ベスト盤を買ってしまったのでそれで満足してしまい、今に至る。
好きな曲ももちろんあるが、こんなBLOGを続けていながらなぜかストーンズイーグルスのように学習意欲は盛り上がらず、焦燥感も劣等感もさほどないまま惰性加齢。
業を煮やした?モンスリー師匠から直々に行政指導処分を受け、今回の鑑賞となった次第。(長い言い訳)

Born-to-run

「明日なき暴走」は75年の作品。
アルバムとしては3作目で、全米3位・全英17位を記録。
日本では52位が最高となっているが、それもなんとなく意外。
もっと上位に食い込んでたのかと思っていたが・・・

このアルバムを作るにあたってボスは、後世に残る非常に有名な「ディランのような詩を書き、フィル・スペクターのようなサウンドを作り、デュアン・エディのようなギターを弾き、そして何よりもロイ・オービソンのように歌いたかった」という発言を残している。
そんな想いで完成したアルバムだが、果たして本当にロイ・オービソンのように歌えたのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1.Thunder Road(涙のサンダー・ロード)
この曲はベスト盤やライブ音源で聴いている。
あらためて聴くとかなりいろいろな楽器の音がしており、コーラスワークも仕込まれてけっこう複雑な構成。
スタジオ盤でもライブみたいに聞こえるのが不思議だ。

2.Tenth Avenue Freeze-Out(凍てついた十番街)
前の曲に比べてシンプルなサウンド。
どこかジャズっぽい感じだと思ったら、参加しているミュージシャンもジャズの人たちとのこと。
80年代の邦楽にもこんな雰囲気の曲があったような・・と思わせるような曲。

3.Night(夜に叫ぶ)
「Thunder Road」をややスピードアップさせたような曲。
いい感じ・・と思って聴いていると終わってしまい、かなり短い。

4.Backstreets(裏通り)
イントロは壮大なピアノで始まる。
低めのキーで歌い、サビはシャウト。
この叫びと演奏は若干騒々しい印象。

5.Born To Run(明日なき暴走)
この名曲もベスト盤で何度も聴いている。
イントロが勇壮で冒険映画のオープニングのようだ。
聴きどころの多い曲だが、楽器で言えば主役でないキーボードが効果的に使われていると思う。
力強いけど決して満たされてもいない、傷ついて擦り減ってはいるけど希望は捨てていないといった歌詞はボスの世界観そのものである。(知ったかぶり)
なので邦題は内容にちょっと合っていない、という指摘があちこちのサイトに書いてあったが、まあそうですね。
明日もないほど暴走してんのかというと、そこまでヤケクソでもないような・・

6.She's The One(彼女でなけりゃ)
この曲は初めて聴いた。
だん・だん・だん・だんだんという少し変わったリズム、時々入るボスの「ハッ!」という掛け声?が独特。
でも中盤以降は叫んだりサックスが響いたりという定番の味付け。

7.Meeting Across The River
ピアノを基調としたシンプルな演奏。
遠くにトランペットが聞こえ、ボスがゆるやかに歌う。
あまり盛り上がることなく、叫ぶこともなく静かに終わる。

8.Jungleland
ラストは9分半の大作。
「Thunder Road」や「Born To Run」をもっと大げさにしたような楽曲で、3分過ぎあたりのギターが意外だけど感動的。
この後少しテンポを落としサックスがうなる間奏が続く。
6分あたりでいったんピアノを残して全員引き上げ、沈静。
ストリングスをバックに詩を朗読するようにボスが歌い、最後に雄叫び。
感動巨編映画をダイジェストで見るような、秀逸な構成である。

聴き終えた。
知っていた曲もいくつかあり、どのサウンドもおおむね想定範囲内でイメージどおりの展開である。
ただし曲ごとのメリハリや曲の中での強弱は思ったよりもはっきりしている。
すんごく暗いとかムダに重いといった曲はなく、変な評価だが安心して聴ける。

バックはEストリート・バンドが務めているが、楽器の音はかなり重厚だと思う。
なんとなく「演奏はシンプルで、ボーカルのパワーで引っ張るシンガー」というのが勝手なイメージだったのだが、70年代からすでに多彩なサウンドと個性的なボーカルを組み合わせていたようだ。
ただ冒頭に挙げた名言のように「ロイ・オービソンのように歌えた」のかはわからない。

このアルバムは夜をテーマにしているそうだ。
やり場のない怒り、出口の見えない苦しさなどを夜の闇にたとえ、かすかに見える(かもしれない)光や希望に向かって走り出す若者・・を歌っているとのこと。
このアルバムに限らずボスが作る曲・歌う歌はだいたいこの路線だと思う。
「さあみんなで希望に向かって走り出そうよ」ではなく、「しょうがないだろ!走り出すしかないんだ」という感じ。
この臨場感満載の等身大な呼びかけに、アメリカの若者は共感するのだと思われる。(知ったかぶり)

さて。
ではこの名盤、感想としてはどうなのかというと、まだよくわからない。(バカなの?)
・・・まあ苦手とか好みでないといった感想を述べるには勇気のいる歌手だと思うが、「すごい!感動した!次も聴く!」といった若い情動?がそれほど起こらないのだった。
拒絶感や敗北感は全くないので、もっと繰り返し聴いていけば変わってくるかもしれない。
どの名盤でもそうなんだけど、もっと若いうちに聴いておけばよかったと毎回つくづく思う。

ブルース・スプリングスティーンという人は、曲によってかなり歌い方を変えてくるシンガーだと思っている。
初めて聴いたのは「Hungry Heart」だが、後からいろいろ他の曲を聴いていくとこの曲ではかなり高いキーで歌っていることがわかった。
全編叫びっぱなしな「Born In The U.S.A.」と、終始地味な「Nebraska」では声のトーンが全然違う。
その歌い方にそれほど明確な好みの差はないが、どちらかというと静かな歌声のほうが好きなようだ。
そういう意味では、このアルバムにももう少しおだやかなバラードがあってもよかったかもしれない。

ジャケットはギターを背負い誰かの肩に寄りかかって笑うボスの姿。
寄りかかられた人は誰かというと、サックスを担当したクラレンス・クレモンズ。
ボスの作品の中では好きなジャケットである。
なお「明日なき暴走」は2015年にリマスター盤が再発されており、最近も発売40周年を記念してボスが公式サイトでコメントしているそうなので、本人も気に入っているアルバムなのだろう。

というわけで、「明日なき暴走」。
感想としては非常に中途半端ではありますが、聴けてよかったです。
まだその良さを語れるレベルにありませんが、名盤と呼ばれる理由も少しだけわかったような気がします。
70年代の未聴アルバムはまだありますので、速やかに聴いていこうと思います。

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
酷暑の中、猛暑な「明日なき暴走」の試聴、お疲れさまでした。

>>スタジオ盤でもライブみたいに聞こえるのが不思議だ。

あ~、この言葉でSYUNJIさんは特級スプリングスティーン評論家
に認定です!
スプリングスティーンは録音は一発録りが多いようですが、
取り直しやオーバーダビングももちろんあります。
それでもなお、ライブ感を出せるアルバムを作ることができた
のは、若きスプリングスティーンがライブパフォーマーと一流、
レコーディングは職人という相反する(?)才能をもっていた
証です。ジョン・ランドウというよき理解者をプロデューサー
に迎えたことも大きいと思います。

>>3分過ぎあたりのギターが意外だけど感動的。

スプリングスティーンはギタリストとしてはほとんど評価されません。
しかし、ボーカルと一体となった熱いソロはこの人ならでは。
ギターも素晴らしいです。

>>本人も気に入っているアルバムなのだろう。

表題曲「明日なき暴走」は、88年のツアーでは弾き語りで演奏
されました。本人が「この曲は怪物になってしまった」と
考えた結果だそうです。
その後、99年にEストリートバンドが復活すると、この曲を再評価
して以前と同じような演奏スタイルにもどりました。
スプリングスティーンにとって、様々な意味で思い入れのある
アルバム。ファンにとってはいつも寄り添って、いつも問題提起を
してくれて、いつも熱くなれる、そんなアルバムです。

投稿: モンスリー | 2019.08.04 22:03

モンスリーさん、今回もお世話になりました。

>あ~、この言葉でSYUNJIさんは特級スプリングスティーン評論家に認定です!

そんなもったいない・・(後ずさり)
まあこの曲に限らず、そもそもスタジオ盤でもライブっぽく聞こえる声ですよね。
でもスタジオでの音作りにも妥協しない人だそうですね。

>スプリングスティーンはギタリストとしてはほとんど評価されません。
>しかし、ボーカルと一体となった熱いソロはこの人ならでは。

うーん・・確かにそうですね。
ボーカルがあまりに突出してるので、ギターに注目されないのではないかという気がします。

>表題曲「明日なき暴走」は、88年のツアーでは弾き語りで演奏されました。本人が「この曲は怪物になってしまった」と考えた結果だそうです。

へぇーそんな経緯もあったんですね。
弾き語りの「明日なき暴走」も良さそうだなぁ。
「Born In The U.S.A.」もそうだと思いますけど、どうもボスの曲は本人の想像を超えて怪物化することが多い気がしますが・・

>ファンにとってはいつも寄り添って、いつも問題提起をしてくれて、いつも熱くなれる、そんなアルバムです。

いやー熱い感想ですね。
やはり若い頃に聴いておけばよかったとつくづく思います。(ため息)

投稿: SYUNJI | 2019.08.05 21:30

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