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聴いてみた 第149回 キッス

前回ポール・マッカートニー「Ram」を聴いてみたが、実は同時に購入したのがキッスである。
我ながら毎度脈絡のないズサンな購入と鑑賞にめまいがするが、ポールつながりでなんとなく気が向いたので買ってみました。(適当)
買ったのは2004年発売の「The Very Best Of KISS」。
来日記念ベスト盤である。

Kiss_2

キッスは「聴いてない」シリーズでかなり早めに採り上げているが、その時書いたとおり「能動的に聴いたことはないが相当数聴かされた」バンドだ。
おそらく姉のコレクションが最も多く鑑賞期間も長かったのがキッスだと思う。
デビュー当時から5年ほどは日々強制鑑賞が行われたため、記憶に残っている曲も多い。
あれから40年(!)ほど経過し、自分もようやく自主的にキッスを聴いてみることになったのだ。
ただしさほど強固な決意でもなく、目に止まって安かったから買っちゃったんですけど。
しかもベスト盤。

邦題は「地獄の宝石」という彦摩呂っぽいタイトル。
ジャケットは結成当時メンバー4人の顔写真で、集合写真ではなく、構図としてはビートルズ「Let It Be」形式。
途中参加のエリック・カーやヴィニー・ヴィンセントの顔はない。

ベスト盤なので知っている曲の確認作業が主眼となりそうだ。
果たしてどれだけ知っている曲があるのだろうか。

・・・・・聴いてみた。

1. Strutter
2. Deuce
3. Got To Choose
4. Hotter Than Hell
5. C'Mon And Love Me(激しい愛を)
6. Rock And Roll All Nite (live)
7. Detroit Rock City
8. Shout It Out Loud(狂気の叫び)
9. Beth
10. I Want You(いかすぜあの娘)
11. Calling Dr. Love(悪魔のドクター・ラヴ)
12. Hard Luck Woman
13. I Stole Your Love(愛の謀略)
14. Christine Sixteen
15. Love Gun
16. New York Groove
17. I Was Made For Loving You(ラヴィン・ユー・ベイビー)
18. I Love It Loud(勇士の叫び)
19. Lick It Up
20. Forever
21. God Gave Rock 'N' Roll To You II

各アルバムからの収録曲内訳は以下のとおり。
・Kiss(キッス・ファースト 地獄からの使者):2曲
・Hotter Than Hell(地獄のさけび):2曲
・Dressed to Kill(地獄への接吻):1曲
・Alive!(地獄の狂獣 キッス・ライヴ):1曲
・Destroyer(地獄の軍団):3曲
・Rock and Roll Over(地獄のロックファイアー):3曲
・Love Gun:3曲
・Dynasty(地獄からの脱出):1曲
・Creatures of the Night(暗黒の神話):1曲
・Lick It Up(地獄の回想):1曲
・Hot in the Shade:1曲
・Revenge:1曲
曲は年代順になっており、彼らのヒット曲が一通り押さえられている。

思ったよりも知らない曲が多い。
「Rock And Roll All Nite」「Detroit Rock City」「狂気の叫び」「いかすぜあの娘」「悪魔のドクター・ラヴ」「Hard Luck Woman」などはもちろん覚えていたが、初期の名曲とされる「Deuce」「Got To Choose」「Hotter Than Hell」「Beth」はメロディに全く記憶がない。
かなり意外な展開。
悩む必要は全然ないが、少し考え込んでしまった。
もう少し聴いてた(聴かされてた)と思っていたが・・

「Beth」はタイトルだけは知ってたが、こんなバラードだったとは知らなかった。
この曲はピーター・クリスのボーカルだが、クリスとボブ・エズリン、スタン・ペンリッジという人の共作だそうだ。
ピーターが歌う曲はいずれもバラードだが、個人的には「うまいボーカル」ではなく、「味わい深い歌声」だと思う。

「New York Groove」という曲だけ少し違った印象だが、これはエースのソロヒット曲とのこと。
83年の「Lick It Up」はメイクをせず素顔で登場したキッスの最初のヒット曲で、これはよく覚えている。
「Forever」はポールとマイケル・ボルトンの共作で、全米8位の大ヒットを記録している。

一通り聴いた中ではやはり「Detroit Rock City」「狂気の叫び」「Beth」「いかすぜあの娘」「Hard Luck Woman」「Lick It Up」あたりが好みだ。
(邦題はダサいのが多いが・・)

知っていた曲も、子供の頃に聴いた印象とは少し違うものが多い。
もっとギトギトでドスの効いた重低音なサウンドだったと思ったら、あらためて聴いてみるとそうでもない。
加齢により耳が退化したのかもしれないが、メイクやステージスタイルから受ける地獄の恐怖イメージに、幼い感性は支配されていたのだろう。
世の中にはもっと粗暴で野蛮な音楽がたくさんあることを、40年かけて学習してきたしね。

なので当時は姉への反発もあって「クソやかましい音楽」だと思っていた部分もあったが、今聴くと全体的には非常にキャッチーでよくできた造りの曲ばかりだと感じる。
凝ったアレンジや怪しいサウンドや変な構成楽曲はなく、その後の80年代アメリカ音楽の源流のような音がたくさんある。
メイクとパフォーマンスのイメージが先行するが、やってる音楽はわりとマジメでタイトなサウンドが多い。
キッスの成功の理由もここにあったと思われる。

ネット上ではファンの「この曲がない・あの曲がない」といった収録への不満がいくつか見つかる。
まあ他のアーチストでも企画盤についてはたいていこの現象は起こるもので、キッスみたいな人気バンドであればファンの好みも割れてくるはずだ。
いわゆる隠れた名曲といったナンバーは、このベスト盤には入っていないのだろう。
大して聴いてない自分でも、似たような感覚は不思議とあり、個人的には80年代のヒット曲「Shandi」「エルダーの戦士」も入れといてほしかったなぁ・・と感じた。
単にこの2曲がリアルタイムでエアチェックできたから、というだけですけど。

キッスは現在最後のツアー中で、メンバーはポールとジーン、トミー・セイヤー、エリック・シンガー。
ポール・スタンレーはツアー終了後引退することを表明している。
脱退組のエースとピーターは残念なことにツアー不参加とのことだが、ここに来てジーンとエースの仲が今さらだけどかなり悪いというナイスな情報もある。
元々ポール&ジーンとピーター&エースで年中対立してて、結局それが発展して脱退になったという話ですけど。
相変わらず楽しそうな人たち。

というわけで、キッス「地獄の宝石」。
小学校時代の教科書を実家で発見したような感覚でしたが、単純に良かったです。
このベスト盤を聴くまでは、オリジナルアルバム学習の意欲は全然ありませんでしたが、機会があれば聴いてみてもいいかなと思い始めております。

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
以前にコメントしたときは「デトロイト・ロック・シティ」だけ知って
いました。この曲はいいですね~! グランド・ファンク・レイルロードの
「We're American Band」と並んで、アメリカンロックのアンセム的な曲だと
思います。
その後、調子にのってこの曲が収録されているアルバム「デストロヤー」を
聞きました……が、いい曲が多かったと思うのですがハードロック苦手意識が災いし、
全部を好きになることができませんでした。
ですので、「ベス」もなんとなく覚えている程度、です。

紹介されたベスト盤収録曲では、「I Was Made For Loving You」を知っています。
これもいい曲ですね。

SYUNJIさんの記事を拝見して思ったのは、
>>非常にキャッチーでよくできた造りの曲ばかり

ハードロック苦手者としては、背伸びしてオリジナル作品に手を出すのではなく、
まずはベスト盤にすべきだったかと思います。
機会があればレンタルで再挑戦してみます。

>>メイクやステージスタイルから受ける地獄の恐怖イメージ

これと、正統派ハードロックのギャップがおもしろいバンドですよね!
私もキッスといえば、「地獄」です。当時の洋楽の営業担当者のイメージ
戦略はよかったなあ、いい時代だったのかも、と思います。

投稿: モンスリー | 2019.03.11 22:22

モンスリーさん、こんばんは。

>その後、調子にのってこの曲が収録されているアルバム「デストロヤー」を聞きました……

「地獄からの脱出」ですね。
ジャケットに見覚えがありますので、姉が持っていたはずです。
でも曲名まで知ってるのはベスト盤にある3曲だけですね。

>紹介されたベスト盤収録曲では、「I Was Made For Loving You」を知っています。
これもいい曲ですね。

それまでのヒット曲とは少し違って、どこかディスコ調でノリのいい曲ですね。
自分は当時中学生でしたが、リアルタイムで聴いており、友人の間でも人気があったことを覚えています。
ただジーン・シモンズは自分の歌うパートが「婆さんみたい」という理由で、この曲が嫌いだそうですが・・

>ハードロック苦手者としては、背伸びしてオリジナル作品に手を出すのではなく、まずはベスト盤にすべきだったかと思います。

うーん・・まあたまたま「Destroyer」があまりモンスリーさんの好みに合わなかっただけかもしれないですが、確かにこのベスト盤は悪くないです。
少なくともこのベスト盤には「なんじゃこれは?」というような曲はありませんでした。

>当時の洋楽の営業担当者のイメージ戦略はよかったなあ、いい時代だったのかも、と思います。

ああー同感ですね。
キッスなんてすごくわかりやすいバンドだったでしょうし、当時のレコード会社の担当者はきっとみんな楽しかったでしょうね。
今では洋楽というジャンルも邦題というオプションも消滅しつつありますけど・・

投稿: SYUNJI | 2019.03.13 22:06

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