聴いてない 第243回 クリス・デ・バー
長くこんな珍奇BLOGをやってると、時々発覚するのが「本国(主に英米)と日本での人気に差があり過ぎる人」である。
今日採り上げるクリス・デ・バーもおそらくはそんな人ではないかと思われる。
クリス・デ・バー、聴いてない度は2。
1986年の「The Lady in Red」が唯一聴いている曲である。
この曲は全英1位・全米3位を記録し、映画「ワーキング・ガール」や日本のテレビドラマ「HOTEL」などに使われたそうだが、その話は全然知らなかった。
というかクリス・デ・バーについてはこの曲以外の情報は一切ない。
クリス・レアとの区別も全く自信がない状態である。
「The Lady in Red」は「サンスイ・ベストリクエスト」ではなく、たぶん「クロスオーバー・イレブン」で録音したと思う。
アルバムは聴いておらず、雑誌で記事を見かけたこともないため、顔もよく知らない。
自分にとっての洋楽三大講師である柏村武昭・小林克也・東郷かおる子のいずれからも、クリス・デ・バーに関する情報を一切教えてもらえなかった。
自分の場合、80年代当時にこの三講師から情報が得られていないと、結局今に至るまで情報量はほぼゼロなのである。
生涯初のクリス・デ・バー検索で得られた情報アジェンダをレジュメにしてお配りします。
・・・ところが出だしから衝撃の情報に遭遇。
調査のため真っ先にウィキペディア日本語版を見たら、「ジャンル:プログレッシブ・ロック アート・ロック ソフトロック ポップ・ロック」とあるけど、本当?
今までプログレについて様々な情報にふれてきたが、クリス・デ・バーがプログレの人だと書いている文章には出会ったことがない・・
あとプログレの他にアートやソフトやポップといったジャンル横断してるみたいですけど、そうなの?
謎は深まる一方の中、血を吐きながら続ける悲しいマラソン検索を進める。
クリス・デ・バーはアイルランドの人気歌手だが、国籍はイギリス。
税金はどっちに納めてるんですかね?
1948年アルゼンチン生まれ(ブラジル生まれと書いてあるサイトもあり)、本名はクリストファー・ジョン・デイヴィソン。
外交官の父の仕事により幼少期をマルタ・ザイール・ナイジェリアなどで過ごす。
アイルランドの首都ダブリンにあるトリニティ大学で学位を取得。
卒業後はイギリスに渡り、ミュージシャンとしての活動を開始。
「デ・バー」は英国王室の家系である母方の姓で、これを芸名に使用。
デビューは74年頃で、スーパートランプのツアーにサポート参加などもしたが、個人としてはなかなかヒット曲が出ず、長く下積み生活を送る。
82年のアルバム「The Getaway」でようやく全英30位を記録し、続く84年「Man on the Line」で全英11位を獲得した。
なお「The Getaway」は日本で初めて発売されたクリス・デ・バーのアルバムでもある。
86年シングル「The Lady in Red」が英米で大ヒット(イギリスで1位、アメリカ3位)し、アルバム「Into the Light」も全英2位を記録。
「The Lady in Red」は「ワーキング・ガール」の他、「ドッジボール」「ベイビーママ」という映画にも使われた。
このアルバムの9曲目「For Rosanna」で歌われた長女ロザンナは、後の2003年ミス・ワールドで優勝するという親孝行娘である。
88年にアルバム「Flying Colours」を発表。
しかし前作ほどの成績は残せず、結果的にここからセールスとしては下降に向かう。
89年には初めてにして今のところ唯一の日本公演が渋谷公会堂で行われた。
90年に初のライブアルバムを発表。
音源は地元ダブリンのコンサートで、日本公演の音は使われていない。
この後アルバムはベスト盤やライブやコンピレーションといった企画ものが増えていく。
全英トップ100位入りシングルは、今のところ99年の「When I Think Of You」が最後で、以降は出ていない。
94年のアルバム「This Way Up」にはアルバート・ハモンドが作曲した2曲が収録された。
2000年以降もコンスタントにアルバムをリリースしており、活動は継続中。
今年の夏もハイデルベルクやドルトムントなどドイツの各都市を巡るツアーが行われている。
例によってことごとく知らない話だった。
イギリス国籍でアイルランド中心に活動というのも初めて知りました。
なんか勝手にイタリアとかスペインとか南欧系の人なのかと思ってましたけど、違うようです。
日本公演は一度きりで、日本盤アルバムもほとんど廃盤らしいので、レコード会社も事務所も日本をマーケットとすることに関しては全然チカラが入らなかったと思われる。
なんでだろう?
「The Lady in Red」はおだやかで美しい曲だけど、当時のナウいジャパンのヤングが好んで聴いてたチャラい洋楽とは雰囲気がだいぶ異なるし、その後のクリスの曲がグランジ台頭にも合致したとも思えないので、戦略としては正解だったのかもしれないが。
アルバムはコンピ盤も含めると20枚以上あるようだが、この中のどれがプログレなんだろうか?
それでも「The Lady in Red」は名曲ではあると思う。
ゆるやかな旋律に愛情あふれる歌詞は、妻のダイアナが赤い服を着ていたのを見て作ったという話。
この曲はやはり夜が似合う。
もちろんクリス・デ・バーは全部こんな感じの曲だということではなく、ハードなロック・ナンバーからAORまでいろいろあるようだ。
アップテンポでシャウトする曲はあんまし評判よくないみたいですけど。
というわけで、クリス・デ・バー。
相変わらず失礼な問いかけで申し訳ないですが、聴いてた人っています?
アルバムを全部聴いてるよなんていう人は相当深いファンではないかと思いますが・・
日本盤は大半が廃盤らしいので、中古も含めてCDが店頭で売ってるのかもわかりませんけど、おすすめのアルバムがあれば教えていただけたらと思います。
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。
私は、プログレ解説本や雑誌記事は、おおよそ中級編くらいまで
読みました(中級編で挫折しますが)。
こういう記事には、「隠れた名盤100選」という企画が必ず
あります。実際には、隠れた名盤=
ロック史に影響を与えもしなければ、無理して聞く必要のない作品、
ということなんですが(^^;
で、クリス・デ・バーですが、今初めて名前を知りました。
「おお、B級プログレ100選に掲載されていたのかも、
抜かっていた!」と大あわてしました。さらに、バー氏は
南米生まれ=南米の人はプログレ大好き!
早速ユーチューブで検索し、上位にたくさんヒットした
「The Lady in Red」を聞きました。個人的に、新たなプログレ祭りに
なることと期待しつつ・・・
・・・え、これって日本人が大好きなAORですよね。
1.日本人=プログレ大好き
2.日本人=AOR大好き
という等式が成り立つならば、
3.プログレ=AOR
という等式もまた成り立つのか!?
と、数学的に考えてみましたが、無理がありますね(^^;;
>>洋楽三大講師である柏村武昭・小林克也・東郷かおる子
そのトライアングルの中心が、
もちろん我らが渋谷陽一様ということでファイナルアンサー。
投稿: モンスリー | 2018.11.04 17:30
モンスリーさん、コメントありがとうございます。
>で、クリス・デ・バーですが、今初めて名前を知りました。
うーん、ご存じなかったですか。
やはり欧米と日本での知名度に大きな差があるようですねぇ。
まあ自分も1曲しか知りませんでしたが・・
>・・・え、これって日本人が大好きなAORですよね。
そうとらえていいと思います。
少なくともこの曲はプログレではないです。
>プログレ=AOR
日本ではこのジャンルってファンはかぶってるんですかね?
両方好きな人もいるでしょうけど、共通点や親和性はあまりないような・・
>そのトライアングルの中心が、もちろん我らが渋谷陽一様ということで
違ーう!!(スマホを投げる)
陽一やピーター・バラカンは残念ながら自分の講師ではありません。(結論)
もう一人加えるなら、伊藤政則氏ですかね・・
地味に石田豊氏という講師もいらっしゃいましたが・・
投稿: SYUNJI | 2018.11.04 21:07