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聴いてない 第242回 バーブラ・ストライサンド

女性シンガーシリーズ、キム・ワイルドの次はバーブラ・ストライサンド。
自分のような万年初心者にしては極めて高尚なチョイスですけど。
女優としても有名だが、キャリアは歌手が先でアルバムも60枚以上発表してるそうなので、歌手として採り上げてみました。
バーブラなのかバーバラなのか、はたまたストライザンドなのかサンドなのか、ずうっと適当に覚えてましたけど、バーブラ・ストライサンドでいいそうです。

バーブラ・ストライサンド、聴いてない度は意外にも3。
80年の「Woman in Love」、81年の「Comin' In and Out of Your Life(愛のラストシーン)」の2曲を柏村武昭の案内により録音している。
バリー・ギブとのデュエット「Guilty」も大ヒットしたらしいが、これは聴いていない。
また当然ながら出演映画も全然見ていない。

実は女優でもあることを知ったのはこの2曲を録音した後である。
ロックやポップスというジャンルで長年活躍してきた人ではないとは思うが、録音した当時はFMでもよくかかっており、FMステーションに音楽記事が掲載されたこともあった。
本人の意向は不明だが、当時の日本ではレコード会社や音楽メディアもわりとバーブラ・ストライサンドを抵抗なく若者向けに発信していた気がする。
なので同世代の方であれば、映画は見ていないけど歌は知ってる、という人も多いのではないかと思う。

自分の実績は上記2曲という毎度のことながら頼りない状態である。
女優で歌手、大物、ユダヤ人という超基礎情報しか知らず、アルバムはもちろん聴いてない。
ネットで略歴を調べてみたが、ウィキペディア日本語版はかなり詳しい一方、他に詳しく書いてあるサイトはあまり見つからなかった。
今回はだらだら書かず、箇条書きでまとめてみました。

・本名はバーバラ・ジョアン・ストライサンド
・1942年4月24日ニューヨーク生まれ
・ユダヤ系ロシア人家系に育つ
・10代で歌手デビュー、女優としても活動
・下積み時代に芸名としてバーブラ・ストライサンドを名乗る
・1963年のファーストアルバム「The Barbra Streisand Album」でグラミー賞受賞
・1973年公開の映画「追憶」に出演、主題歌も歌いアカデミー賞受賞
・エミー賞、トニー賞も受賞経験あり
・ヒット曲は以下のとおり
 「People」(1964年)
「Stoney End」(1971年)
「The Way We Were(追憶)」(1974年)
「Love Theme from 'A Star is Born'(Evergreen)(スター誕生 愛のテーマ)」(1977年)
「Woman in Love」(1980年)
・ヒットしたデュエット曲
「You Don't Bring Me Flowers(愛のたそがれ)」 (ニール・ダイアモンドとのデュエット、1978年)
「No More Tears (Enough is Enough)」 (ドナ・サマーとのデュエット、1979年)
「Guilty」 (バリー・ギブとのデュエット、1981年)
・映画監督、プロデューサー、作曲家、脚本家の顔も持つ
・民主党支持者
・日本公演はまだ一度も行われていない

結局箇条書きでもだらだら書いてしまったが、やっぱり歌手・女優として長年活動してきたすごい人であることは間違いない。
しかもこの人の場合ただ活動するだけでなく、輝かしい実績が伴う豊かな活躍である。
1960年代から70年代・80年代・90年代・2000年代・2010年代でそれぞれアルバム全米1位を獲得しており、この記録はバーブラ・ストライサンドだけのものだそうだ。
また1位となったアルバムは10枚もあり、この記録も女性歌手としてトップだそうだ。

ロック・ミュージシャンとの競演や楽曲参加も多く、79年のアルバム「Wet」ではドナ・サマーとのデュエット「No More Tears (Enough is Enough)」を収録し、TOTOのメンバー(ジェフ・ポーカロ、デビッド・ハンゲイト、スティーブ・ルカサー、ボビー・キンボール)、デビッド・フォスターやラリー・カールトンらも参加。
84年の「Emotion」にもジョン・メレンキャンプの作品があり、ドン・フェルダーやスティーブ・ルカサーがギターで参加している。

すでに76歳を超えているが、今なお現役で活動中であり、年内に「Walls」というアルバムも発売予定。
ジョン・レノンの「Imagine」をカバーし、トランプ大統領に向けたメッセージソング「Don't Lie To Me」も収録されているとのこと。

実力は今さら自分みたいな素人が評価する必要もないだろう。
2曲しか聴いてないけど、歌唱力は確かなものだと極東の偏差値の低い学生でもはっきりわかったのだった。
ちなみに「Woman In Love」はバリー&ロビンのギブ兄弟の作品だそうだ。

個人的には顔もわりと好きなほうである。
本国では大きな鼻をイジられることも多いらしいが、実は目元や口元が高校の同級生のすみれちゃんに似ていて、すみれちゃんは顔も性格もすごくよくて好きだったので、つられてバーブラ・ストライサンド(の顔)も気に入ってたのだ。
天下の大女優に対して非常に失礼な話ですけど。

たぶん80年代後半だったと思うが、深夜のテレビでバーブラ・ストライサンドが出ていた映画を見た記憶がある。
全編通して見ていなかったので映画のタイトルもストーリーも不明だが、バーブラは確かストリッパーとかダンサーみたいな役で、シェリー・カーリーみたいな下着姿で、部屋で男と話し込むシーンだった。
この時もテレビ画面に映るバーブラの顔を見て「かわいいな」と感じたことを覚えている。(場内騒然)

なおネットで検索してて引っかかった情報だが、バラの品種に「バーブラ・ストライサンド」というのがあるらしい。
「多彩な才能で活躍したオスカー女優の名をもつ香り高く美しい魅力種」なんてアオリが書いてあります。

というわけで、バーブラ・ストライサンド。
やはり「Guilty」はアルバム・シングルとも聴いておかねばならない名盤なんでしょうね。
無難にベスト盤という選択肢もあるとは思いますが、TOTOの4人が参加してる「Wet」や、新作「Walls」も少し気になるところです。
日本での人気がどうなのか全然見当もつきませんが、おすすめのアルバムがあれば教えていただけたらと思います。

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読んでみた 第54回 文藝別冊 ジェフ・ベック

三大ギタリストの中で、その人物像について一番情報量の少ないのがジェフ・ベックである。
作品はクラプトンよりは聴いてるはずだが、どんな人なのか、誰と仲良しなのか、誰と競演NGなのか、お金をいくら持っているのか、実はよく知らない。
そんなベック情弱を解消するため、今回読んでみたのが「文藝別冊 ジェフ・ベック」。
ジェフ・ベック個人について書かれた本を読むのは初めてということになる。

Jeff_beck

副題は「超人的ギタリストの伝説」、版元は河出書房新社、A5判224ページ、本体1,300円。
発売日は2017年11月28日。
版元のサイトでは「デビュー50年を過ぎて第一線で活躍する生ける伝説的ギタリストの軌跡と魅力をさぐる」とある。
この表現だとクラプトンでも当てはまりそうな気はするので、もう少しベックならではのアオリを工夫すべきでは・・と偉そうなことを感じました。

文藝別冊シリーズでベックなので、それほど尖った内容やヒネた編集ではないと予測したが、果たしてどんな本なのだろうか。

・・・・・読んでみた。

目次はこんな感じ。

■対談
佐藤晃彦×大鷹俊一 ギターを弾くために生まれてきた男
■インタビュー
是方博邦 音楽と人生を学ばせてもらった人
野村義男 革命児ではなく唯一無二
Rei また新しい彼に出会ったという嬉しさ
■ジェフ・ベック入門
突っ走ってきた孤高のギタリスト 立川芳雄
ジェフ・ベック/ヒストリー 船曳将仁
ストラトキャスターを最も弾きこなしたギタリスト 佐藤晃彦 
■ディスコグラフィ
セッション・ワークス50選
JAPAN TOUR 1973-2017 ジェフが残した日本の足跡 佐藤晃彦
 
・音色戦慄と変調の平面 江川隆男
・ジェフ・ベックは誰の影響を受けたのか 大鷹俊一
・超人ベックはロックンローラー 川﨑大助
・ジェフ・ベックとギターヒーローの文化史、あるいはギターというメディア 長澤唯史
・保守と革新のフュージョン 或いはそのどりらからも自由なギタリスト 松井巧
・ギターの肉声 後藤幸浩
・若さが生む艶やかなギターサウンド 林浩平
・まだヘヴィ・メタルが嫌いなのか 武田砂鉄

これまで読んできた文藝別冊シリーズで最も正調音楽教本だと感じる。
ギタリストなんで当然だが、ほぼ全てがベックとギターで起こした文章や対談である。
当然音楽やギターに精通する人たちによる対談や寄稿ばかりなので、章によってはほとんど理解できないのもあった。

特にギターそのもの(メーカーやモデルなど)の解析やテクニック論を基盤として語る文章は、自分のようなド素人には全然わからない。
まあこれまでの文藝別冊シリーズでもおおむねそうだったので、ある程度は想定していたが、やはりジェフ・ベックというスーパー・ギタリストが素材の場合、書き手は当然として、読者側の教養ステージもそれなりのレベルが要求されるのである。

逆に言うとベックの私生活やオフステージや幼少期を採り上げた文章は皆無。
もちろん他のミュージシャンとのいさかいやお金や女にまつわるゴシップなんてのもナシ。
この出版不況のさなか、ベックに関する音楽以外の話題はやはり企画として通らないようだ。
そもそもベック本にそんな話を期待するほうが間違っている。
「ベックは本当に夜道でペイジを殴って逃げたのか?」なんて特集があっても、たぶんAmazonレビューが大荒れするだけで売り上げには全くつながらないだろう。

タイトルの通りジェフ・ベック入門としての「突っ走ってきた孤高のギタリスト」は、ベックの経歴をハードロック期・クロスオーヴァー時代・試行錯誤の時代・再充実期に分けて解説しているので、入門テキストとして非常にわかりやすく構成されている。

ベックを表す有名な言葉として「ギタリストは二種類しかいない。ジェフ・ベックか、ジェフ・ベック以外だ」というのがあるが、これはポール・ロジャース(またはジョン・ポール・ジョーンズ)の発言とされている。
ところが書き手の立川芳雄という人は「少し調べてみたが、二人ともそんなことは言っていない」と明かしている。
どうやら日本のメディアが作った伝説みたいなもののようだ。
あっそう・・なんかネタばらしされたみたいで少しがっかりだけど、この件については他の文章中にも「真偽は不明」とか書いてあるので、やっぱ日本発の創作なんでしょうね。
まあロックに関する伝説なんてプロレスと似たようなもんで、「全身の血を入れ替えた」とか「ジャック・ダニエルで入れ歯を洗っている」とか「ステージ上で生きたコウモリを食い散らかした」とか「グラハム・ボネットのリーゼントアタマをギターでかち割った」とか、どこまでホントの話なのかわかりませんよね・・

ちなみに日本では知ってて当然の「三大ギタリスト」というくくりも、そうとらえているのは日本のマスコミとファンで、本国イギリスでは全然そういう認識はされていないらしい。
(最近は逆輸入的に本国のメディアでも時折見られるとか・・)
日本人は「三大○○」とか「○○四天王」とか「三頭体制」とか大好きなので、70年代では音楽メディアが作るこうした楽しいセッティングや伝説に、ナウいヤングは相当引きずられたと思われる。

あと同じ立川芳雄の文章の中には、「ニール・ヤングの自伝の3分の1は鉄道模型の話」というのもあって笑ってしまった。
プラモデルや模型など男の子が夢中になる文化とロックの親和性を説く文だったのだが、ニール・ヤングにそんな趣味があったんスね・・という点につい食いついてしまった。

ベック本なので同業者であるギタリストを呼んで対談、という当然な企画がいくつかあるが、登場するのはヨッチャンこと野村義男。
Amazonレビューには「野村義男のインタビューはいらない。ほかにギタリストはいるだろうに」というキツイ意見もあったが、まあ気持ちはなんとなくわかる。
それこそ高中正義とかチャーとか布袋寅泰とかローリーとか、日本を代表するようなギタリストに語らせたらどうだ、ということだろう。
で、当のヨッチャンはベックを心底崇拝してるという感じではなく、他の誰とも違う謎のギタリストととらえているようだ。
ベックの出す音がどういうテクニックによるものなのか、プロのヨッチャンでもわからないらしい。
ライブも見に行ったけど、「『そうやって弾いてるんだ!』という衝撃がなかった。『全然わからないや!』でした。」とのこと。

もう一人のギタリスト対談は、93年生まれの女性ギタリスト、rei。
この人はもちろんベック後追い世代で、作品をどんどんさかのぼって聴いて吸収しているという至極まっとうな展開。
最近ベックが自身と同世代の若いミュージシャンと組んでアルバム作ったりステージに立ったりしてることはやはり気になるようで、「ジェフ・ベックのバンドに入ることは、夢のひとつ」という勇ましい発言もあった。

ただし。
reiさん、一番好きなアルバムを問われると「フラッシュ」と答えていたのには少々驚いた。
自分もあのアルバムは嫌いではないが、決して評判がいいと言えないことはもちろん知っているし、ベック自身も気にいっておらず「レコード会社が作ったアルバム」とまで言ってることもわかっている。
古参のファンからはド素人扱いされかねない大胆な意見だが、そういう人もいるんですね。
個人的には少しうれしいです。

三大ギタリストの中で現役感がもっとも強いのはベックである、という点についてはファン全員満場一致全会一致で可決するところだろう。
この本でも複数の書き手がベックの「若さ」について高く評価している。
林浩平は北京五輪閉会式に登場したペイジを「うわあ、すっかりお婆ちゃんだ(笑)」、クラプトンの近影については「ダンディ」としながらも「老けたなあ」、ベックに対しては「七十歳前後にはまるで見えない」という万人共感の感想を記している。
ベックがギタリストとして現役なのはもちろん事実だが、体つきが締まっていて腕の筋肉が落ちていない、それを誇示するかのようにノースリーブで演奏する、髪の毛が多いわりに白髪が少ない、若いミュージシャンとも積極的に競演しているなど、現役でいることを裏打ちする「若さ」がビジュアル的にわかりやすいのもベックの特徴である。
ファンにとってはステージや映像で力強く演奏するベックの若さも大きな魅力なのだろう。
ちなみにこの本の表紙も、まさにノースリーブで力強く演奏するベックの姿です。

というわけで、「文藝別冊 ジェフ・ベック」。
大半の話を理解できないくせに言うのもナンですけど、読んでみてよかったです。
まあどこかに少しでもベックのギター話じゃない人間くさいエピソードがあればなおよかったですけど・・
しばらくベック学習から遠ざかってましたが、これを機に未聴盤である「Blow by Blow」「There & Back」を聴いてみようかと思います。

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