聴いてみた 第145回 デュラン・デュラン
今日聴いてみたのは驚愕のデュラン・デュラン。
92年発表の「Duran Duran」、通称「ザ・ウェディング・アルバム」を聴いてみました。
その昔デュランはカルチャー・クラブ、ワム!とともに3大英国バンドとして日本のナウい若者を狂喜させていた・・と勝手に思う。
勝手に思ってるだけなので「バカモノオマエ3大英国バンドと言ったらなぁ」というご意見は当然あろうが、柏村チルドレンであるあたしは当時も今もこう思ってます。
その3大バンドで自分がよく聴いていたのはカルチャー・クラブだけだが、デュランの曲もFMで簡単にエアチェックできたので、知ってるヒット曲はそれなりにある。
アルバム「Rio」「Seven And The Ragged Tiger」は貸しレコード屋でLPを借りたが、思ったほど定着せず録音したテープは残っていない。
90年以降アルバムは聴いておらず、シングルも「Ordinary World」しか知らない。
自分のデュランに対する扱いはおおむねこんな程度だった。
1985年にバンドは分裂し、パワー・ステーションとアーケィデイアそれぞれで活動。
その後デュランとして再始動するがメンバーは3人となった。
アルバム「Notorious」は大ヒットするが、88年の「Big Thing」、90年「Liberty」で段階的に人気が下降。
3年ほどの停滞期間を経て発表されたのがこの「ウェディング・アルバム」である。
メンバーはニック、サイモン、ジョンに加え、ウォーレン・ククルロ。
ただしジョン・テイラーは2曲だけの参加。
ククルロさんのことはよく知らなかったので少し調べました。
元はフランク・ザッパ・バンドのメンバーで、脱退後はテリー・ボジオ夫妻らとともにミッシング・パーソンズを結成。
解散後86年頃デュランにサポートとして参加し、ツアーにも同行するようになる。
アルバム「Liberty」では正式なメンバーとなり、2001年までバンドに在籍した。
ザッパ・バンド出身ミュージシャンは変な人ばっかだそうだが、ククルロさんもギターテクは鋭いけどやっぱ変人らしい。
ということでレコード会社も当初発売には難色を示したと言われるデュラン復活の名盤「ウェディング・アルバム」。
果たしてどんな音がするのでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
Too Much Information
Ordinary World
Love Voodoo
Drowning Man
Shotgun
Come Undone
Breath After Breath
UMF
Femme Fatale
None of the Above
Shelter
To Whom It May Concern
Sin of the City
ボーナストラック
Time for Temptation
Stop Dead
うーん・・・
80年代の軽薄と神経質が同居するあのデュランとは少し違う。
このアルバムでは軽薄も神経質もやや抑えられた印象。
全体的には落ち着きをたたえ、神経質は幽寂に姿を変えた・・ような感じ。
オープニングの「Too Much Information」はノリのいいロックだが、かつてのヒット曲のようなキャッチーさはない。
かっこいいサウンドではあるが、思ったほど印象に残らないのはなぜだろうか。
大ヒットとなった「Ordinary World」「Come Undone」だが、どちらも確かに名曲だと思う。
特に「Ordinary World」はオープニングの乾いたギターの音、曇ったモノクロなメロディ、広がりのわりにはかなげなボーカルという不思議な聴き所が随所にある。
歌詞を見ながら聴くとわかるが、詞のセンテンスとメロディの小節が微妙に合っておらず、けっこう凝った造りだ。
全然覚えてないが、ソニーのMDウォークマンとトヨタのレジアスのCMにも使われていたそうです。
「Come Undone」は「Ordinary World」と同じく物悲しいバラードだが、もう少しリズミカルで女性ボーカルと掛け合いがあるなど、わりとオールドでシンプルな構成。
ほぼウォーレン・ククルロの作品とのこと。
「Breath After Breath」はイントロは壮大で感動的だが、本編はジェネシスがフラメンコを歌ってるような妙な雰囲気。
「Femme Fatale」は「宿命の女」という邦題がついているようだが、シングルとしてはフランスでのみ発売されたそうだ。
この曲のメロディはどこかジョン・レノンの「Imagine」に似ている。
「UMF」「None of the Above」はどちらも80年代っぽいサウンド。
かすかに聴き覚えがある気がするが、「None of the Above」はホンダのインテグラのCMに使われたそうなので、たぶんそれが記憶の隅に残っていたものと思われる。
なお「None of the Above」は日本でのみシングル発売されている。
「To Whom It May Concern」はイントロでプッシュホン(という呼び方が当時のイギリスでも通用したかは知らないけど)のボタン音や呼び出し音が、また「Sin of the City」では都会の喧騒やパトカーのサイレンが効果として使われているが、どちらもさすがに21世紀の今聴くと古臭い。
90年代でもデュランはまだこういうアレンジをしてたのか・・・
曲調もお得意の神経質エレポで、このあたりはやはり(しかも自分は苦手な)デュランである。
聴き終えた。
テクノやダンスなどあちこちに80年代の音の破片やリズムの残り香はあるが、チャラいイメージや尖った雰囲気はやや薄まり、どこかプログレっぽく難しい雰囲気だと思う。
「オルタナにシフトした」という評価があるようだが、オルタナ自体よく知らないので、あまりこの評価はわからない。
少なくともミラーボールやレーザービームが飛び交うダンスフロアやフルーツ盛り合わせや席取られてるといったオールドなディスコイメージはもうない。(当たり前)
「Ordinary World」「Come Undone」の大ヒット曲は、評判どおりの高品質な作品である。
このヒットで新しいファン層を獲得したそうだが、わかる気はする。
逆に言うとこの2曲が突出して素晴らしく、他の曲とは明らかに色が違うのだ。
全曲この路線で行ってほしかった気もするが、それだとたぶんデュランじゃなくなるのかもしれない。
ジャケットはメンバーの両親の結婚写真とのこと。
どの写真が誰の両親なのか不明だけど、絵としてはもちろん幸せそうで悪くない。
ただなぜこのアルバムはウェディングなのかもよくわからない。
シングルカットされた曲はいずれも結婚とはあんまし関係なさそうだと思いますが・・
デュランのアルバム鑑賞はこれで3枚目なのだが、いずれも曲ごとの好みや評価が大きく分かれてしまい、アルバムとしてのお買い得感はやはり得られなかった。
結局失礼な話になるが、自分にとってデュラン・デュランはやはりベスト盤で満足してしまうバンドなのだ。
ということで、デュラン・デュラン「ウェディング・アルバム」。
「Ordinary World」「Come Undone」が名曲であることは理解できましたが、アルバム全体では好みから遠く難しく厳しい感覚が残りました。
無意味な判定ですが、リアルタイムで聴いていても感想はおそらく同じだったように思います。
残念ながらもう学習意欲はほとんどありませんので、デュランのアルバム鑑賞はこれで終わりになる可能性が高いです。
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コメント
お久しぶりでございます。
このアルバムを聴いていただけたことは、個人的にとても嬉しいです。
念のため書いておきますが、「宿命の女」はカバー曲です。
オリジナルも良いですが、私はデュランヴァージョンが好きです。
このアルバム、初めはおっさんくさい印象を受けました。
それは若かりし頃のイメージがこびりついていたからだと思いますが、今は断然これ以後のアルバムが好きです。
ほぼウォーレン・ククルロの作品とは知りませんでした。ぶっちゃけウォーレンがいたころの作品が突出しているので、私は要するにウォーレンの曲が好きなのですね。
一応ニックファンだったんですけど(笑)
投稿: ゆか | 2018.06.03 12:59
ゆかさん、コメントありがとうございます。
>念のため書いておきますが、「宿命の女」はカバー曲です。
えっそうなんですか?
・・と思って調べたら、ルー・リードの作品でオリジナルはヴェルヴェット・アンダーグラウンドだそうですね。
もちろんオリジナルも聴いてませんが・・
>このアルバム、初めはおっさんくさい印象を受けました。
なるほど・・そういう評価もあるような気はしますね。
当然メンバーもそれなりに歳はとりましたし、若い頃に比べて華やかさ鋭さは弱くなった感じはしました。
>ぶっちゃけウォーレンがいたころの作品が突出しているので、私は要するにウォーレンの曲が好きなのですね。
自分にはあまりよくわかりませんが、ウォーレン・ククルロはバンドに新しい雰囲気をもたらしたギタリストとして評価はかなり高いみたいですね。
投稿: SYUNJI | 2018.06.03 22:10
SYUNJIさん、こんばんは。
このアルバム、確か久しぶり(?)に出たデュランの新作ということで、
ジャケ画を覚えています。週間FMが廃刊になってしまったので、
代わりに購読していたFMfanで見たのでしょう。
しかし、1曲も知りません。ですので、記事で紹介された
「Ordinary World」「Come Undone」をユーチューブで聞いてみました。
・・・80年代のデュランと違う感じがしました。
キャッチーさが影を潜めて、代わりに壮大な曲になっています。
この2曲は大ヒットしたのですね。
私がこの2曲を聴いて、改めて思ったのは、
「特に思い入れのないミュージシャンは、アップテンポの曲
でないと聞きにくい」ということです。
この2曲もよい・悪いではなく、ミドル~スローテンポの
曲は個人的に苦手だった、というところに落ち着きました。
ユーチューブでみると、サイモン・ル・ボンは80年代のビジュアル
と違って、いい感じで年を取っています。変に若作りをするより、
長続きすると思いました。
投稿: モンスリー | 2018.06.04 22:04
モンスリーさん、こんばんは。
たぶんこのアルバムは聴いておられないのではないかと思ってました。
>このアルバム、確か久しぶり(?)に出たデュランの新作ということで、ジャケ画を覚えています。
そうですね、前作から4年くらい経って出たので、我々の世代としては久しぶりと感じたと思います。
>キャッチーさが影を潜めて、代わりに壮大な曲になっています。
その通りですね。
個人的にはこの壮大さは気に入りました。
その後この2曲はバンドのお気に入りにもなり、昨年の日本公演でも演奏されたそうです。
>「特に思い入れのないミュージシャンは、アップテンポの曲でないと聞きにくい」ということです。
なるほど・・
あまり意識したことはありませんが、そういうものかもしれないですね。
自分の場合はたぶんテンポよりメロディ重視なのだと思いますが・・
>サイモン・ル・ボンは80年代のビジュアルと違って、いい感じで年を取っています。変に若作りをするより、長続きすると思いました。
同感ですね。
さすがに最近は顔もかなりたるんできたようですが・・
あとあらためて映像見ると、やっぱりサイモンってデカイ人ですね・・
投稿: SYUNJI | 2018.06.05 21:44
SYUNJIさん、こんばんは。
私もこの作品を聞くことができました。
デュラン・デュランは、80年代にMTVでヒット曲を数曲
見た程度です。ベスト盤すら聞いたことがなく、アルバムを
通して聞くのは今回が初めてでした。
80年代からのファンが聞くと「成長した作品だ」という
ことになると思います。しかし私のようにMTVで見ていた
だけの者ですと、かなり難しいアルバムでした。
2曲目「Ordinary World」はロマンチシズムにあふれて
いて、よいです。
この曲以降は、60年代ブリティッシュロックを下敷にしたような
曲があると思うのですが、音作りに少々過剰な装飾があるようで
すんなりと入ってきませんでした。
それでも、MTVヒット曲しか知らない私が言うのはとても
偉そうですが、「サイモン・ル・ボンとはこんなに多彩な
ボーカルを聞かせるひとだったのか」と思いました。
曲によっては、別人が歌っているようにも聞こえます。
とはいえ、デュランを初めて聞く者には敷居が高いのかも
しれません(^^;
レンタルなどで、ベスト盤あたりに挑戦してみます。
投稿: モンスリー | 2019.11.23 22:32
モンスリーさん、ご感想ありがとうございます。
>80年代からのファンが聞くと「成長した作品だ」ということになると思います。
そうかもしれませんね。
ネットでもそういった意見は見ました。
自分も80年代にそれほど真面目にデュランを聴いていなかったので、成長なのかどうかはわかりませんが、多面的になった気はします。
>2曲目「Ordinary World」はロマンチシズムにあふれていて、よいです。
同感です。
今もたまにこのアルバムを聴きますが、「Ordinary World」だけは耳になじみますね。
>音作りに少々過剰な装飾があるようですんなりと入ってきませんでした。
あー・・確かにそうかもしれないですね。
過剰な装飾は80年代にもあったと思いますが、中高年の今このアルバムを聴くと今ひとつなじめない気がします。
自分の場合は単純に好みの問題でしょうけど。
>「サイモン・ル・ボンとはこんなに多彩なボーカルを聞かせるひとだったのか」と思いました。
これも言われてみればその通りですね。
80年代のサイモンは聴けばサイモンとすぐわかるくらいの声や歌い方でしたが、このアルバムでは表現力は広がっていると思います。
自分ももうちょっと聴きこんだほうがいいのかもしれません。
投稿: SYUNJI | 2019.11.24 18:29