聴いてみた 第144回 エアプレイ
今日聴いてみたのは奇跡のAORユニット、エアプレイ。
唯一のアルバム「Airplay」、モンスリー師匠の指導に従って聴いてみました。
邦題はCCBみたいな「ロマンティック」・・
実はエアプレイ、1曲も知らない。
デビッド・フォスターが作ったAORな西海岸ユニットで、アルバムにはTOTOのメンバーが参加したという基礎情報はなんとなく知っていたが、曲は全く聴いたことがない。
理由は不明。
80年の作品なんだから少しくらい柏村武昭が教えてくれてもよさそうなもんだが、なぜか「サンスイ・ベストリクエスト」では録音する機会はなかったし、オンエアしてた記憶もない。
実は紹介してたのを聴きのがした可能性もあるが・・
このアルバムジャケットも見覚えはあまりなく、エアプレイの記事がミュージックライフにも載ってたかどうかも全然覚えていない。
自分にとって80年代洋楽三大講師とは柏村武昭・東郷かおる子・小林克也だが、誰からもエアプレイの一般教養を教えてもらえなかった。
仕方なくエアプレイについて38年も経ってから自主的に学習。
中心メンバーはデビッド・フォスターとジェイ・グレイドン。
もともと二人ともミュージシャンだが、様々なアーチストのプロデュースやサポートで売ってきた人たちである。
デビッドの主な実績はEW&F、ホール&オーツ、マイケル・ジャクソンなどのアルバムのプロデュース。
そしてジェイはマンハッタン・トランスファーのアルバム・プロデューサーや、スティーリー・ダンの「aja」でギターを担当するなどの輝かしい経歴を持つ。
LAで出会い意気投合した二人はジェイの家で曲作りを開始。
初めはホール&オーツに提供するつもりでデモテープを作ったが、ホール&オーツのマネージャーの助言でデビッド&ジェイ二人の作品として発表することにした。
二人の広すぎる顔で様々なミュージシャンが参加。
ボーカルは後にボストンに参加するトミー・ファンダーバーグ、後にシカゴに参加するビル・チャンプリン。
さらにTOTOからはジェフ・ポーカロ、デビッド・ハンゲイト、スティーブ・ルカサー、スティーブ・ポーカロ。
他にジェリー・ヘイ、レイ・パーカーJr.という面々が参加し、アルバム「Airplay」は完成した。
こうしてエアプレイは名実ともにビッグ・バンドとして80年代の輝かしい音楽シーンを牽引し、全米で多くのファンを魅了・・でもなかったみたいです。
本国アメリカではそれほどヒットもせず、ユニットとしての作品はこのアルバム1枚のみという伝説手前の実績が残っているとのこと。
そうなった理由はいろいろありそうだが、ともかく内容を調べてみよう。
果たしてどんな音楽なのでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1. Stranded
2. Cryin' All Night
3. It Will Be Alright
4. Nothin' You Can Do about It (貴方には何も出来ない)
5. Should We Carry on
6. Leave Me Alone
7. Sweet Body
8. Bix
9. She Waits for Me (彼女はウェイト・フォー・ミー)
10. After the Love Is Gone
いわゆる日本で言うところのAORそのもので、交通安全協会発行のAOR教本みたいな音楽である。(意味不明)
サウンドはどこまでも明るく透明感に満ちており、ハイトーンなボーカルが鈴木英人のイラストのように広がる。(意味不明)
青すぎる空と高いヤシの並木道、オープンカーに乗った白いスーツの男、なんて光景が浮かぶ音がする。
・・・書いててダサすぎてイヤになるが、まあそういう音楽だと感じる。
TOTOのメンバーが4人もいるからサウンドもやはりTOTOの香りはする。
またところどころスティクスやREOスピードワゴンを思わせる音もあり、聴きやすいことは確かである。
「変な曲」「怪しい音」「奇妙な楽曲」といった形容が一切登場しない、信頼と実績が誇る安心の80年代サウンド。
ただしやはりTOTOではない。
ジェフ・ポーカロもスティーブ・ルカサーも聴いてすぐ彼らの音だとわかるようなプレイではない気がする。
(実際どの音がジェフやルカサーのものなのかわかんない)
逆説的に言うと、ボーカルも楽器も誰一人他を押しのけて前に出ようとしていない。
突出して聞かせるパートはなく、皆それぞれがきちんと仕事を全うしている、そんなアルバムだと思う。
無意味なたとえだろうが、もしボビー・キンボールやブラッド・デルプが歌っていたら、もしエドワード・ヴァン・ヘイレンがギターで参加していたら、それだけでかなり尖った曲ができてアルバムの印象も違ったはずである。
(その時点でAORじゃなくなりますけど)
良質なAORではあるが、ボズ・スキャッグスやボビー・コールドウェルのような深みもなく、TOTOのようなソリッドさも感じない。
もちろんブルースやパンクよりもはるかに聴きやすく心地よい音楽であることは間違いないが、好みかどうか問われると思ったよりも微妙。
80年当時に貸しレコード屋で借りていれば必ず愛聴盤になっていただろうが、今の自分にはどこか物足りなさが残る。
堅いロックや渋いバラードはなく、バラエティ感は今一つ。
そもそもそういう音楽じゃないだろと言われればその通りなんだけど。
ちなみに「Nothin' You Can Do about It」はマンハッタン・トランスファーに、また「After the Love Is Gone」はアース・ウインド&ファイアーに提供した曲で、エアプレイのアルバムでセルフカバーした形になっている。
曲の印象はどちらもかなり違うそうです。
ネット上には「TOTOに似てはいるがTOTOよりベタでダサい」という評価がかなりあった。
これはなんとなくわかる。
エアプレイはTOTOをもっと大衆的にした感じで、昼間のファミレスで流れていても全く違和感のない音だと思う。
なのでもっと大ヒットしてもよさそうなもんだが、結果はそうでもなかったのはなぜだろうか?
理由としてはシングル出してアルバム売ってライブをやってツアーで全米巡る、という当時のアメリカ音楽界の正調なコースを進まなかった点にあるらしい。
いくつかのサイトやBLOGに書いてあるが、ライブやツアーを行わないと当時のアメリカでは音楽バンドとしては認められなかったそうだ。
エアプレイの二人は音楽の「創作」活動は大好きだったが、エアプレイを「興業」に乗っけることにはそれほど興味がなかったのだろう。
エアプレイのアルバムはこの1枚だけだが、「解散」という意識もあまりなかったんじゃないかと思う。
デビッドとジェイはその後も他のミュージシャンやバンドのプロデュース・サポート活動ばかりで、自らステージの真ん中でスポットライトを浴びるようなことはしていない。
先日書いたJ.D.サウザーもそうだが、どちらかと言えば世話好き裏方志向なプレイヤーなんでしょうね。
厳密にはエアプレイとしての作品はもう少しだけあり、映画「セント・エルモス・ファイアー」のサントラアルバムにある「Stressed Out (Close To The Edge)」という曲はエアプレイの二人の作品だそうだ。
このサントラのプロデュースもデビッド・フォスターが行っているとのこと。
あと93年には「Airplay For The Planet」という思わせぶりなタイトルでジェイ・グレイドンがアルバムをリリース。
デビッドやTOTOのジョセフ・ウイリアムズも少しだけ参加したが、やっぱりエアプレイではなかったので、これは全然売れなかったそうです。
ということで、エアプレイ。
楽曲として好みにがっちりマッチしたわけではありませんが、とりあえず聴きやすかったのでほっとしました。
AORの歴史上非常に重要なユニットであることも少しだけ理解できました。
80年代でも聴いてこなかった音楽はまだたくさんあるはずですので、引き続き掘り起こしてみようと思います。
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