聴いてみた 第142回 ジャパン
もうすでに半月過ぎようとしていますが、みなさま新年明けましておめでとうございます。
2018年最初の聴いてみたシリーズ、自分でも意外なジャパンを選んでみました。
ジャパンの記事を書いたのは驚愕の14年前。
BLOGを始めて間もない頃で、記事書いたら最初のコメントでいきなりお叱りをくらってしまったという当然かつ因縁のバンドでもある。
しかもお叱りを受けていながらやっぱり14年間も放置という救いようのない展開。
他にもそんな扱いのバンドはたくさんありますけど。
しかし2018年のわたしはそんな自堕落な自分と今年こそ決別すべく(棒読み)、日本人なら誰でも知ってる「Gentlemen Take Polaroids(孤独な影)」を渋谷のレコファンにて750円で購入。
14年前に記事書いた時はジャパンの歴史すら全然調べなかったので、今回は少し調べました。(手遅れ)
ジャパンは1974年にロンドンで結成された。
メンバーはリチャード・バルビエリ(K)、ミック・カーン(B)、デビッド・シルビアン(Vo・G)、ロブ・ディーン(G)、スティーブ・ジャンセン(D)。
デビッド・シルビアンとスティーブ・ジャンセンは兄弟。(デビッドが兄)
デビュー当時ロブ以外の4人は結成当時全員10代だった。
なおバンド名の由来に明確な意味はなく、デビッドによれば「なんとなくジャパンという言葉が浮かんだ」からとのこと。
あとミック・カーンは奥さん日本人だそうです。
アルバム「Adolescent Sex」でデビュー。
ブラックやグラムやパンクなどを混ぜた感じの内容で、邦題は「果てしなき反抗」っていかにもなタイトルだけど、本国やアメリカでは全然売れず、一方日本では売上15000枚という実績を残す。
その名のとおり日本から人気に火がついたバンドとなった。
バンドは3枚目のアルバム「Quiet Life」より転換を見せる。
グラムやブラックな要素を大幅に縮小して、シンセサイザー多用やアレンジなど技巧面でのサウンド変化を実行。
さらにデビッドの粘性ボーカルに暗い歌詞といった独特な様式美を確立。
「耽美派」「内省的」といった形容が定着し始め、ようやく本国やアメリカでの人気が追いついていく。
80年代に入り、バンドはアフリカや東洋の音楽を取り入れた「Gentlemen Take Polaroids(孤独な影)」、「Tin Drum(錻力の太鼓)」を発表する。
特に「Tin Drum」には、デビッドの中国に対する興味や関心が、曲やジャケットやプロモビデオにも反映されているそうだ。
シングル「Ghosts」は全英4位を記録するバンド最高のヒットとなった。
しかし「Tin Drum」リリース直前、ギターのロブ・ディーンが脱退。
最後のライブツアーでは一風堂の土屋昌巳がサポートギタリストを務め、日本公演では土屋に加えて坂本龍一、高橋ユキヒロ、矢野顕子も参加した。
この後デビッドとミックの仲がうまくいかなくなり、ジャパンは82年に解散する。
バンドは91年に一時的に復活したが、ジャパンとは名乗らず「レイン・ツリー・クロウ」という名で同名のアルバムもリリース。
2011年ミック・カーンがロンドンで死去し、オリジナルメンバーによるジャパン再結成は永久になくなった。
14年前からジャパンに関する知識は全く向上しておらず、もちろん大半が初めて知る話である。
ただ「孤独な影」「ブリキの太鼓」が日本でも売れていたことはうっすら覚えており、ジャケットも記憶に残っていたので、聴くならこの2枚からだと思って選んでみました。(安直)
今回買った「孤独な影」はデジタルリマスター盤で、曲順も曲数もジャケットもオリジナルとは少し違うようだ。
果たしてあたしは14年間に及ぶ孤独を埋めることができるでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1. Gentlemen Take Polaroids
2. Swing
3. Burning Bridges
4. My New Career
5. Methods Of Dance
6. Ain't That Peculiar
7. Nightporter
8. Taking Islands In Africa
9. The Experience Of Swimming
10. The Width Of A Room
11. Taking Islands In Africa (Steve Nye Remix)
サウンドやボーカルはおおむね想定していたとおりだった。
デビュー当時のジャパンはブラックやパンクやレゲエも採り入れた荒削りな音楽だったそうだが、このアルバムについてはその残り香はどこにも感じなかった。
唯一聴いていた「I Second That Emotion」と路線はだいたい同じである。
なおtatsuromanさんに教えていただいて初めて知ったのだが、その「I Second That Emotion」はカバー曲で、彼らのオリジナルアルバムには収録されていないのだった。
タイトルだけは知っていた「Gentlemen Take Polaroids(孤独な影)」も含め、聴いたことのある曲は全くない。
デビッド・シルビアンのオクラ納豆系ボーカル、どこか曇ったサウンドとはかなげなメロディ、いかにも80年代っぽいアレンジ。
スピード感あふれるロックやノリのいい楽しいポップといった要素はなく、同じ時代に開花した他のニューロマな人たちとはやはり違う。
部分的にデュラン・デュランやABCと似ているところはあるが、デュランにある力強さや神経質さはそれほど感じない。
・・・などと知ったかぶりカマして書いてますが、デュランもABCもちゃんと聴いてませんが・・・(台本どおり)
ジャパンの独創的な世界観はこのアルバムで完成したようだ。
聴いてみて意外だったのはリズムがかなりしっかりしているところだ。
ボーカルが粘性なので曲全体ももっとぐにゃぐにゃしてんのかと思ったが、そうでもない。
「Methods Of Dance」「Ain't That Peculiar」などはドラムの音がけっこうソリッドで、それでいて不思議な調和がある。
ちなみに「Ain't That Peculiar」もスモーキー・ロビンソン&ミラクルズのカバーだそうです。
一方で「Nightporter」は静かなピアノバラード。
あまり美しいとも思えないデビッドの声だが、これも悪くない。
「Taking Islands In Africa」は坂本龍一が参加してるそうだが、YMOもあまり聴いてないので「おお!やはり教授っぽい」などといった感想もなく、デビッドはやはりここでも糸引きボーカルである。
どの曲も全然明るくないし、やはり好みからは距離を感じるのだが、プログレのような置き去り感は思ったよりもない。
デビッドのボーカルも意外なほど拒絶感はなかったので、やや安心。
聴き終えた。
正直当時も今もミーハー(死語)で産業ロックに汚染された自分には難しい音楽だが、一回聴いて「あああダメだこりゃ」といった感情はありがたいことにわかなかった。
ジャパン、細かく聴いていくと「案外いいな」という音がわりと拾えるのだ。
矛盾してるようだが、おそらくリアルタイムで聴いていたら、拒絶反応だったと思う。
当時のチャラい産業ロック上等の自分では、この音はたぶん受け入れることは無理だった気がする。
好みや習熟は別として、中年になってから多少音楽鑑賞の枠を広げるようになったので、わずかではあるが寛容になっているのかもしれないが・・
というわけで、ジャパン「孤独な影」。
思ったより悪くなかったです。
とてもスタンディング・オベーションというレベルにまではいきませんが、もっと過酷な結果を想定していたので、この感想は自分でもホントに意外でした。
次作「ブリキの太鼓」にもチャレンジしてみようと思います。
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。
ジャパンですが、14年前の記事に私はコメントをして
いませんでしたね。
あらためて、名前しか知りません。名前は、多分MTVで
聞いていたのでしょう。今回、記事を拝見して「デュラン・
デュラン系ならいけるかも」とちょっと期待しましたが、
少々異なる音楽性のようですね。
バンド名しか知らないのに、名前を知っているメンバーがいます。
まず、デビッド・シルビアン。この人は、キング・クリムゾンのリーダー
であるロバート・フリップのお気に入りで、共同制作アルバムを何枚か発表し、
「シルビアン&フリップ」として来日公演もしています。
キンクリのメンバーはソロ活動が多いのですが、全く聞く気がありません。
そもそも、本家が大量リリースするために、ソロ活動まで追いかける予算が捻出
できません。ですので、総帥フリップのソロも一度も聴いたことがなく、
当然共同制作アルバムも知りません。
もう一人はスティーブ・ジャンセンです。書いていらっしゃるとおり、高橋ユキヒロ氏
の作品に多数参加しています。こちらはよく聞いています。ドラムも、ヘンなクセは
なかったと思います。
というわけで、私がジャパンを聞く日は、やはり遠そうです(^^;
投稿: モンスリー | 2018.01.15 20:32
モンスリーさん、コメントありがとうございます。
>あらためて、名前しか知りません。
あ、そうでしたか。
14年前もジャパンにはコメントいただいてないので、おそらく趣味ではないのかなと思ってましたが、聴いておられなかったんですね。
>「シルビアン&フリップ」として来日公演もしています。
えええ~?そうなんですか?
その情報は見つけられなかったなぁ・・
あらためてフリップ先生、交友が幅広いスね。
ポリスのアンディ・サマーズとも組んで曲も作ってたことは知ってましたが・・
>高橋ユキヒロ氏の作品に多数参加しています。
なるほど。
自分はデビッドとミックしか知らなかったので、他のメンバーの名前や情報も今回初めて知ったことばかりです。
坂本龍一や土屋昌巳の参加はなんとなく聞いたことがありましたが・・
いずれにしても、ジャパンは思っていたほど悪くなかったです。
投稿: SYUNJI | 2018.01.19 21:09
お邪魔します。
聴いて頂けて嬉です。
>自分でもホントに意外でした。
ホント意外でした(笑)
デヴィッドのオクラ(野菜)ヴォーカルはダメなんじゃ無いかと思ってましたから。
> 「Adolescent Sex」でデビュー。
> 邦題は「果てしなき反抗」
直訳だと「思春期の性」「青い性」ですもんね、どんな思いでつけただろうか?(笑)
> デビッドの中国に対する興味や関心が
これちょっと付け加えさせて下さい。
当時、日本人女性カメラマン(ってかほぼグルーピー?)が行動を共にしていて、この女性の中国かぶれがメンバーに感染したって話です。
> ジャパンとは名乗らず「レイン・ツリー・クロウ」
これは最終的に出来が良かったのでデヴィッドは自分のソロとして発表したかったらしいです。
なので他のメンバーが怒ったらしいです。(笑)
聴いて頂くとわかるかもしれませんが、ジャパンじゃなく
もろデヴィッドのソロの路線なんですよね。
> 曲順も曲数もジャケットもオリジナルとは少し違うようだ。
これSYUNJIさんのがオリジナルの曲順になりますね。
1~4がA面、5~8がB面、9以降がボーナストラック。
このリマスター盤の前のリイシュー盤が何故か間にボートラいれると言う無茶ぶりな曲順だったんですよね。
時々見かけますが、なんで曲順いじるのか意味不明ですよね。
曲順ってアーティストの意向もあるでしょうし。。。
> 「I Second That Emotion」はカバー曲で
もともとアリオラハンザってドイツのレコード会社がティーン向けアイドルバンドを探していてジャパンに白羽の矢?がたってデビュー出来たとか。。。
どーせティーン向けだろ?って事で、特に初期二作はお金と時間がかけてもらえなくメンバー不満だらけで2ndに際しては自分たちで録り直すなど不遇の時代だったようです。
でも売れないので3rd時にテコ入れで、ドイツなのでミュンヘンディスコ路線で行こう!と
Life in Tokyo♪と、3rdの後のI Second~♪
をジョルジオ・モロダーにPro.依頼したみたいです。
で、アリオラからヴァージンへ移籍後”Gentlemen Take Polaroids”作成となります。
> 聴いてみて意外だったのはリズムがかなりしっかりしているところだ。
おっしゃるとおり、スティーヴのドラムがタイトで正確なのでミックのフレットレスベースがメロディに寄せられるし生き生きとしたミックらしい独特のフレーズが”Tin Drum”で炸裂!これがカッコ良いのですよね!
あとパフォーマンス!
蟹歩きとか飛車歩きとか言われる超独特なステージングも魅力的です。
↓3分30秒くらいと4分40秒くらい観てみて下さい。(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=BXjp3xWntq4
で、SYUNJIさんのお好きなお家騒動?(笑)
印税のほとんどがデヴィッドに入る契約だったらしく他のメンバーは常々不満があったらしいです。
(ま、フロントマンでほとんどの作詞作曲しているので仕方ない部分もあるかもしれませんが。。。)
前述の日本人女性カメラマンは当時ミックの彼女だったのですが(その前にスティーヴの彼女だったとの噂もあり。。。)5th”Tin Drum”作成時にデヴィッドに乗り換えたとか。。。
ミックが「昨日まで居た彼女が朝起きたら前の部屋のデヴィッドと一緒に寝ていた」みたいな。。。(これが解散の原因とも言われていて。。。)
それもあってか”Tin Drum”は妙な緊張感あるような。。。
ライヴもデヴィッドは嫌いで他のメンバーは楽しんでいたとか。。。
なので”Tin Drum”発表時には解散が決まっていて、休養を挟んで約一年後に解散ツアー。
最終的にはハマースミスオデオン5日間連続全てソールドアウトだったのでホントに人気のピークで解散なのですよね。
> 「Ghosts」は全英4位
イギリスならではのチャートアクションかもしれません。
普通売れないような。(笑)
あのルックスであの名前だったので最初から人気が出たかもしれませんが、あのルックスであの名前だったから永くまともな評価の対象になり得なかったのだと思います。
長々とすみませんでした。m(_ _)m
投稿: tatsuroman | 2018.01.25 11:03
tatsuromanさん、コメントありがとうございます。
ジャパン、まだなじんだわけではありませんが、思ったより拒絶感はなかったです。
>当時、日本人女性カメラマン(ってかほぼグルーピー?)が行動を共にしていて、この女性の中国かぶれがメンバーに感染したって話です。
そうでしたか。
どこの国でも男って単純だなぁ。
>このリマスター盤の前のリイシュー盤が何故か間にボートラいれると言う無茶ぶりな曲順だったんですよね。
あれ、そうなんですか?
じゃあ自分が聴いたのはオリジナル曲順+ボートラだったんですね。
>印税のほとんどがデヴィッドに入る契約だったらしく他のメンバーは常々不満があったらしいです。
わかりやすい設定・・
でも確かにデビッドが曲作って歌ってだとそういうことになりますよね。
デビッド的にはバンドにする必要があったのかという気もしますけど。
>あのルックスであの名前だったから永くまともな評価の対象になり得なかったのだと思います。
これは鋭い指摘ですね。
確かに顔や髪の色やバンド名は当時の日本の若い女性が真っ先に食いつきましたので、正面から音楽性を評価する人は少なかったのかもしれないですね。
個人的にはカルチャー・クラブやデュランも似たような状況だった気がします。
投稿: SYUNJI | 2018.01.25 22:16
はじめまして。キャリア数か月の他社ユーザーですがちょくちょく拝見させてもらってます。
もしJAPAN記事の続編の可能性がおありでしたら、初期のアリオラハンザ時代(1~2作目)が良いかと思います。バンドのビジュアルはアレですがデヴィッドはフツーに歌ってるので全然キモくない(笑)ので、B級グラムロックとして聴けるんじゃないでしょうか? 『錻力の太鼓』は不慣れな人が聴くと二日酔いするかも(笑)
投稿: echigo-buta | 2019.03.09 12:21
echigo-butaさん、初めまして。
コメントありがとうございます。
結局ジャパンもこのアルバム以降は全く学習が進んでませんが・・
>もしJAPAN記事の続編の可能性がおありでしたら、初期のアリオラハンザ時代(1~2作目)が良いかと思います。
なるほど、やはり1・2作目は3作目以降とはかなり違うんですね。
「B級グラムロック」が自分に合うのか自信はありませんけど・・
> 『錻力の太鼓』は不慣れな人が聴くと二日酔いするかも(笑)
うわーそうですか・・
次に聴くとしたら「ブリキの太鼓」かなとぼんやり考えてはいましたが、二日酔いと聞くと不安だなぁ・・
事前に少し予習したほうがいいのかもしれないですね。
ジャパン以外にも聴いてない音楽が山ほどありますんで、お好きなアーチストについて今後もアドバイスいただけたらと思います。
投稿: SYUNJI | 2019.03.09 21:13
SYUNJIさん、こんばんは。
私もジャパンを聞くことができました。
SYUNJIさんのおっしゃるとおり、意外やリズミカルでした。
さすがスティーブ・ジャンセン。
リズミカルと陰鬱が同居している不思議な音世界。
暗い音楽はピンク・フロイドやキング・クリムゾンを聞きますので
好きです。ですが、それらプログレ勢とは異なる陰鬱さ。
それから、確かに中期YMO、例えば「BGM」あたりに近いのか
とも思いましたが、やっぱり違います。ロンドンと東京の違いでしょうか。
というわけで、初めて聞くニューウェーブ?系。
プログレとの違いはもう少し聞き込んで自分の言葉で説明してみたい
と思います。
投稿: モンスリー | 2019.10.12 21:15
モンスリーさん、こんばんは。
ジャパンお聴きになりましたか。
あれから自分もたまに聴いています。
とても定着したとは言えませんけど・・
>SYUNJIさんのおっしゃるとおり、意外やリズミカルでした。
>さすがスティーブ・ジャンセン。
ですよね。
なんかイメージよりもリズムはしっかりした音だと思いました。
>リズミカルと陰鬱が同居している不思議な音世界。
>暗い音楽はピンク・フロイドやキング・クリムゾンを聞きますので好きです。ですが、それらプログレ勢とは異なる陰鬱さ。
不思議な音世界、同感です。
プログレ学習も中途半端なんで確かなことは言えませんが、フロイドやクリムゾンにあるハードなロック・ブルースの香りが、このジャパンのアルバムではあまり感じない気がしました。
あまり聴いたことのない音楽ですね。
投稿: SYUNJI | 2019.10.13 18:07