聴いてない 第229回 ハノイ・ロックス
北欧フィンランドからムーミンとともにやってきた元祖ビジュアル系?バンド、ハノイ・ロックス。
全然聴いておらず、フィンランド出身というのも実は今回調べて初めて知った。
ハノイなんて地名が付いてるので、アジア系アメリカ人がいるのかと勝手に思っていたが、バンド名はクスリの愛称に由来するそうです。
別の候補としてこれもクスリの名前で「チャイニーズ・ロックス」というのもあったらしい。
そんな北欧薬学部バンド、ハノイ・ロックス。
82年の「Motorvatin'(炎のドライビン)」だけ柏村武昭の紹介で聴いており、聴いてない度は2。
以降「サンスイ・ベストリクエスト」でハノイ・ロックスをエアチェックできたことはなく、おそらく柏村武昭の趣味ではなかったと思われる。
エアチェックより前からミュージックライフには時々登場していたので、バンドとマイケル・モンローの名は知ってはいた。
「炎のドライビン」はハードロックではあるが金属的なサウンドではなく、キッスをもっと若い感じにしたガヤ系のノリの曲である。
悪くはないが特に好みというわけでもなく、前後に別の曲を合わせて録音したため消さずにいたという扱い。
ハノイ・ロックスを語る上で必ず登場するのがモトリー・クルーのヴィンス・ニールだ。
モトリーを採り上げた時に調べたので、彼らの因縁については少し知っている。
あらためてその因縁も含めたハノイ・ロックスの歴史をひもといてみよう。
バンドは1980年フィンランドの首都ヘルシンキで結成。
マイケル・モンローとアンディ・マッコイが中心メンバーだが、最初はマイケルとギターのナスティ・スーサイドがスウェーデンで5人組バンドを結成し、少しあとでアンディが加入してハノイ・ロックスとなったそうだ。
1981年にシングル「I Want You」でデビュー。
アルバムはなぜか「Bangkok Shocks, Saigon Shakes」というタイトルで、邦題は「白夜のバイオレンス」。
地元フィンランドやスウェーデンでヒットし人気はイギリスまで拡張。
1982年アルバム「Oriental Beat」がフィンランドで1位を記録する。
自分が聴いた「炎のドライビン」はこのアルバムに収録されており、日本での人気に火が着き始めた頃のようだ。
イギリスでの人気に連動するように日本でも評価が上昇し、83年に初来日を果たす。
翌84年にも来日し、東京・大阪・福岡でライブを行った。
しかしこの年にバンド最大の悲劇と危機が発生。
ライブの最中にステージ上で高いところから飛び降りたマイケル・モンローが、アンディと衝突。
マイケルは足を骨折し、その後もムリしてツアーを続けたためケガは悪化。
ツアーは終盤だったが、残り5公演をキャンセルして中止になった。
このアクシデントが結果的にさらなる悲劇につながっていく。
バンドはツアー中止を受けて休養とプロモーション活動に切り替える。
この期間にメンバーはモトリー・クルーの面々と出会い意気投合。
マイケル以外のメンバーは、モトリー・クルーのトミー・リーの家でパーティーに参加。
パーティーの途中ヴィンス・ニールは当時ハノイ・ロックスのドラマーだったラズルを誘い、酒を買いに車(パンテーラ)で出かける。
しかし泥酔状態のヴィンスが運転するパンテーラは暴走し、車線をはみ出し対向車と正面衝突。
対向車の運転手とラズルが死亡、その他の車も巻き添えになり運転手が重傷という大事故を引き起こした。
ヴィンス自身はほぼ無傷だったそうだ。
ラズル死亡により年内に予定されていたハノイのライブは全て中止となり、翌年正月のライブは追悼公演となった。
結局ラズルが死んだ時点でハノイのバンドとしての歴史はほぼ終わったものとなる。
ベースのサミ・ヤッファは追悼公演直後に脱退し、アンディとナスティはクスリや酒におぼれ、マイケル・モンローも脱退を告げ、バンドは解散した。
その後マイケルはアクセル・ローズと交流し、それぞれお互いのライブに出たりと比較的なごやかに音楽活動を続ける。
しかし。
この後マイケル・モンローはさらにつらい思いをすることになる。
ここで登場するのが元ビリー・アイドル・バンドのギタリスト、スティーブ・スティーブンス。
昔猪木と戦った空手家みたいな名前だが、そのウィリー・・じゃなかったスティーブとマイケル・モンローはエルサレム・スリムというバンドを結成。
だが意見の相違からか公式アルバムを出す前に二人は決裂しバンドは破綻。
直後にスティーブはマイケルにとっては因縁のクソ野郎であるヴィンス・ニールのソロアルバムに参加してしまう。
ヴィンス・ニールによって盟友ラズルを死に追いやられ、さらにはスティーブという得難い名ギタリストまで引き抜かれる・・という、マイケルにとってはありえへん展開。
スティーブを引き抜いたヴィンスには他意や悪意はなかったらしいが、マイケル自身もハノイのファンも、ヴィンス・ニールのことは今でも良く思っていないそうだ。
そりゃそうだろうなぁ。
ラズルの件についてはモトリー・クルーを聴いた時に調べて知ったのだが、さらにスティーブを巡る因縁まであったとは・・・
どこまでも気の毒なマイケル・モンロー。
ただしいずれにしても作品に罪はない。
ヴィンス・ニールの「Can't Change Me」をリアルタイムで聴いているが、ここで素晴らしいギターを弾いているのがスティーブ・スティーブンスだったんスね。
この曲を作ったのはダム・ヤンキーズのジャック・ブレイズとトミー・ショウ。
なおヴィンス・ニールは例の事故の服役後はモトリーのメンバーとも和解して、バンドとしては最近までわりとマジメに活動はしていた一方、やっぱり暴行や飲酒運転で逮捕歴を順調に積み重ねてきたり、ニコラス・ケイジと殴り合ったり、相変わらずなクソぶりで世間をにぎわせているようです。
で、主役のマイケル・モンローだが、まだ悲劇は続く。
2001年に最初の妻と死別。
2002年にはハノイ・ロックスを再結成するが、この頃マイケルはバセドウ氏病にかかっていたと言われている。
新生ハノイ・ロックスは2007年までに3枚アルバムを発表し、ラウドパーク07出演のため来日もするが、2009年には解散を表明。
解散後はソロとして、また自身のバンド「マイケル・モンロー・バンド」を率いて活動している。
なんか苦労の多い人だ。
特に自ら転落していったということではなく、他人によってつらい目に合わされた、というところが泣かせる。
半生が映画化されたりしないだろうか。
というわけで、ハノイ・ロックス。
悲劇的な歴史ばかりについ注目してしまうが、音楽作品としては第1期・2期(と呼んでいいのか不明だけど)で分けて評価するのが一般的のようだ。
ビジュアルの印象から毒っぽいサウンドをイメージしそうだが、根底にはR&Bを保持しながら多様な音楽性も持ち合わせるという、思ったよりも深いバンドのようです。
聴くとしたらやはりまずは第1期作品からだろう。
個人的には「炎のドライビン」収録の「Oriental Beat」か、または1期最後の作品「Two Steps From The Move」に興味がややあるところですが、皆様の鑑賞履歴はいかがでしょうか?
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コメント
SYUNJIさん、こんにちは。
ハノイ・ロックス、マイケル・モンローともに名前を知っています。
多分、MTVでも見ていたと思います。しかし、1曲も覚えて
いません。いろいろとトラブルの多いバンドだったことも
SYUNJIさんの記事で初めて知りました
ただ、今でもネットで名前を見かけますので、ハノイもモンローも
相変わらず日本では人気があるのではないでしょうか。
実は、マイケル・モンローはライブで見ています。
ウドーが開催した1989年12月31日(東京ドーム)のカウントダウンライブに
出演しました。大阪公演は90年の1月5日と6日でしたので、
このどちらかで見たはずです。
大阪の出演者は、出演順に、
ラウドネス(スティーブ・スティーブンスの代役)
マイケル・モンロー
ドン・ヘンリー
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース
でした。
最初から見たのですが、ヘンリーとルイスが本命です。ついでに
ハード/ヘヴィ系は苦手ですので、モンローのステージが
始まってからしばらくして、一緒に行った友人と、
「疲れたから休憩するか」
といって、ロビーへ出たので、これまた全く印象に残って
いません。
ついでに、東京公演はブライアン・アダムスが出ました。私と
友人は、「ライドネスとモンローはいいから、ブライアンを
見たかった」と、さらにひどい話を(^^;;;)
投稿: モンスリー | 2017.10.09 08:51
モンスリーさん、コメントありがとうございます。
>しかし、1曲も覚えていません。
そうでしたか。
今年の12月にマイケルの来日公演があるそうですので、人気はまだ高いんでしょうね。
>実は、マイケル・モンローはライブで見ています。
え、そうだったんですか?!
>ラウドネス(スティーブ・スティーブンスの代役)
>マイケル・モンロー
>ドン・ヘンリー
>ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース
なるほど、そういうイベントだったんですね。
よく見るとすごい組み合わせですね。
それぞれファンがあまりかぶらないというか・・
>「疲れたから休憩するか」といって、ロビーへ出たので、これまた全く印象に残っていません。
そうスか・・まあこういうイベントの場合、誰かが休憩用アーチストになってしまうのも仕方がないかもしれませんね。
あ、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースも来月日本公演があるそうですね。
投稿: SYUNJI | 2017.10.09 21:00
初めまして!(もしかして2回目かも・・)ローリングウエストと申します。新潟県柏崎生れ川崎市在住・横浜勤務の59歳(山好き・旅好き・歴史好き・昭和レトロ好き・洋楽好き)、今年還暦を迎える中年オヤジです。洋楽記事のネット検索の中で目に止まり覗かせて頂きました。小生も主に1970年代ロックの大ファンです!また時たまお邪魔させて頂き、情報交換させて頂ければ幸いです。今は第37巻(180)はザ・フーを掲載しておりますのでよろしければ是非ご来訪下さい!今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: ローリングウエスト | 2017.10.21 10:39
ローリングウエストさん、コメントありがとうございます。
数年前から何度かコメントをいただいておりますよ(笑)。
こちらは何年経っても相変わらず初心者BLOGのままですが・・
ザ・フーの学習も全然進んでおりませんが、ご紹介の「Who's Next」は名盤ですね。
「Baba O'Riley」のイントロは非常に印象深く、今もよく聴いています。
今後ともご指導よろしくお願いいたします。
投稿: SYUNJI | 2017.10.21 18:37
お!ハノイはいいバンドですよ~
見た目はケバいけど、誰よりもロックンロールの本質をしっかりと理解できてるパンキッシュなイカした奴らです
はっきり言ってLAメタルなんかの連中と一緒にしてはいかんバンドですよ笑
おすすめのアルバムですが、まずは1stかオリエンタルビートから聴くのがよろしいんじゃないかと思います
ただ作品としてのクオリティが高いのはTwo Steps From The Moveなんでそれから聴くのも全然アリです
まあ何にせよロックンロールの醍醐味を味わって下さいな笑
投稿: クワガタ | 2017.11.29 04:05
クワガタさん、初めまして。
コメントありがとうございます。
>見た目はケバいけど、誰よりもロックンロールの本質をしっかりと理解できてるパンキッシュなイカした奴らです
そのようですね。
自分も長いこと見た目で誤解してましたが、優れた音楽性を持っているバンドのようですね。
>おすすめのアルバムですが、まずは1stかオリエンタルビートから聴くのがよろしいんじゃないかと思います
ありがとうございます。
なるほど、やはりそうですか。
「Oriental Beat」には唯一聴いた「炎のドライビン」が収録されているので、今さらですけどまずはこれから聴いてみたいと思っています。
投稿: SYUNJI | 2017.11.30 22:08