聴いてみた 第141回 XTC その3
聴いてない音楽を世界中に公表しアドバイスをいただいては生返事というろくでなしBLOGを13年半も続けているが、結局ちっとも定着せず放置してるアーチストを量産するはめになった。(愚)
図らずもその放置バンド代表格となったのがXTCである。
「White Music」で粉々になり、「Nonsuch」で多少回復したものの、以降8年以上他のアルバムにトライしていないという、ダメOLのダイエットみたいな続かなさ。
そこで今回は生まれ変わったわたくしを見ていただくため、ボストンの新作並みに時間を空けて三度XTCに挑戦することを決意しました。(誰も視線を合わさない)
聴いたのはあのトッド・ラングレンがプロデュースした名盤「Skylarking」である。
あ、トッドも同じくらい長期間放置しています・・・すいません・・・
「Skylarking」は1986年の作品で、バンド8枚目のアルバム。
全英最高90位・全米では最高70位を記録。
世界中で大ヒットというわけではないが、トッド登場で話題性は充分にあったと思われる。
タイトルはひばりではなく「バカ騒ぎ」の意味だそうだ。
86年といえば自分は日々産業ロックに汚染され続け、FMステーションを買ってラテカセの前で息を殺して待機したり11PM秘湯の旅に出てくるうさぎちゃんを凝視していた頃だ。
XTCの存在は知っていたような気もするが、エアチェックの機会もなくアルバムジャケットも一切記憶に残っていない。
XTCの卓越した音楽センスと宅録職人トッドの微妙絶妙な融合に生まれた傑作「Skylarking」。(全部受け売り)
バンドのキャリア上の頂点と評価するファンも多いらしい。
正直そう言われても不安はぬぐえないが、果たしてどんな音楽なのだろうか。
・・・・・聴いてみた。
1.Summer's Cauldron
2.Grass
3.The Meeting Place
4.That's Really Super, Supergirl
5.Ballet for a Rainy Day
6.1000 Umbrellas
7.Season Cycle
8.Earn Enough for Us
9.Big Day
10.Another Satellite
11.Mermaid Smiled
12.The Man Who Sailed Around His Soul
13.Dying
14.Sacrificial Bonfire
「Season Cycle」や「Earn Enough for Us」は楽しそうでよい。
「Another Satellite」はどこか曇っためまい系サウンドだが、エコーやアレンジで80年代っぽい広がりになっており、これも意外にいい感じだ。
このアルバムもやはりあちこちポール・マッカートニー色が濃い。
特に1曲目から8曲目までは頻繁にポール。
メロディやリズムもそうだが、アンディ・パートリッジのボーカルはキーも声質も発声のしかたもポールに似ていると思う。
一方コリン・モールディングの曲や歌はアンディほどポール色は濃くはない。
声もやや濁りがあるし、サウンドも少しひねったものが多い気がする。
後半は曲ごとの雰囲気の違いが目立ち、なんとなく散漫な印象。
終盤「Man Who Sailed Around His Soul」「Dying」「Sacrificial Bonfire」など抑えた曲が続き、少し重い。
なお今回聴いた盤は「Dear God」という曲は未収録だった。
この曲はシングルのみのリリースだったが、思いがけずヒットし、後からアルバムに追加されたそうだ。
「ビートルズを思わせる」と多くのサイトには書いてあるが、個人的にはやはりポール寄りであって、ジョン・レノンを思わせる音は少ないように思う。
なのでむしろ「ウィングスを思わせる」というほうが自分としてはしっくりくる。
ただしウィングス(のヒット曲)ほどのゴージャスさは見当たらない。
86年の音楽にしてはシンプルで、産業ロック的な分厚いサウンド重ねやチャラいアレンジといった要素もない。
これがアンディの意向なのかトッドの趣味なのかはよくわからない。
「Nonsuch」のほうがもう少し大衆的な音だったように思う。
まず「White Music」のような拒絶感・絶望感はない。
どの曲も比較的おだやかで、ムダに絶叫したり不協和音の連続だったり両者リングアウトだったりといった不快感も置き去り感も特にない。
一方でどの曲も音の厚みはあまりなく、ハーモニーや一体感もそれほど重視されていない。
「壮大」「疾走感」「調和」というキーワードを想起させる曲がないのだ。
従って好みかと言われるとまたしても非常に微妙。
「Nonsuch」もそうだが、サウンドや雰囲気は悪くないとは感じたものの、繰り返し聴きたくなるという感情の煮立ちがまだない。
音楽性は全然違うが、感覚的にはイーグルスを聴いた時の状況に似ている。
86年当時リアルタイムで聴いていたら、もう少し違った展開になっていたとは思うが・・
ビートルズのフォロワーは世界中にたくさんいるが、おそらく自分はそういう中でももっとあからさまでダサいオアシスみたいなサウンドのほうが好きなのだろう。
さて。
トッド・ラングレンがプロデューサーを務めた経緯には諸説あるようだが、まずギターのデイブがトッドのファンだった、というのがあったらしい。
当時トッドも自身のバンドであるユートピアの活動は停止中で、意外にヒマだったとかお金がちょっと必要だったとかの背景もあったようだ。
ただ所属レコード会社ヴァージンはこの頃カルチャー・クラブのような稼げるチャラいバンドに注力していて、アンディの意向も深く確認しないままトッド起用を決めてしまったそうだ。
さらにデモテープを聴いたトッドが、曲の選択から曲順まで決めて仕切ろうとしてきたとのこと。
それだとやはりメンバーとしてはトッドを「ウザい教師」みたいに感じてあんましおもしろくはなかったんじゃないかなぁ。
XTCの作った原音に対して、それなりに時間をかけてトッドが調整を施したのに、メンバーは音の仕上がりにもいろいろ不満だったようだ。
発表直後にはアンディとトッドがメディアで互いを非難し合うという楽しい状況にもなったそうだが、まあ今風に言えば多少「釣り」「炎上商法」みたいなものだったのかもしれないスね。
なのでトッドがいなければこのサウンドはなかっただろうけど、XTCの長いキャリアの中で、結局トッドのプロデュースはこの「Skylarking」だけとなっている。
リスナー側にも様々な意見はあるようだが、ネットでいろいろ見てみた範囲ではトッドのプロデュースについてはわりと評価する人が多いように感じた。
というわけで、久しぶりにトライしてみたXTC。
やはりそう甘くはなかったというのが正直な感想です。
ただアルバムごとに作風が大きく違うのがXTCだそうなので、もう少し他のアルバムも学習してみようかと思います。
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コメント
おほっ、兄さん。こんばんは。御無沙汰しております。
そうすかそうすか、「86年といえば11PM秘湯の旅に出てくるうさぎちゃんを凝視していた頃」(ニヤリ)うくくくく。
まあそれはそれとして(笑)、XTCのこの盤はほらトッドが…。いや、私はそれほど嫌いではないですが私の周りでは「トッドがプロデュースしちゃうとさあ」という方が多くどうなることかと思ったら案の定アンディ×トッドの間が面白い…いや、大変な事に。いや、私はこのアルバムはかなり聴きました。もしかしたら一番聴いたXTCのアルバムかもしれません。ついでに言うとXTCとの出会いは『White Music』でした。
「Ballet For A Rainy Day」が好きです。
投稿: 祥 | 2017.08.27 00:10
祥お嬢、コメント感謝です。
うさぎちゃんは毎回凝視していたものの、好みの女の子がちっとも出てこなくて時間も短くてすぐに藤本義一と松居一代に変わってしまい、ストレスのたまるコーナーでした。(うるさいよ)
>案の定アンディ×トッドの間が面白い…いや、大変な事に。
最初にXTC聴いた時にお嬢から「「Skylarking」はトッドとアンディの人間関係を想像しながら聴く」とアドバイスいただきましたが、やはりその通りになりました。
やはりこういう付加情報もあったほうが面白いスね。
>このアルバムはかなり聴きました。もしかしたら一番聴いたXTCのアルバムかもしれません。
そうですか・・
今のところ自分も繰り返し聴いても拒絶感はないですね。
聴きやすいことは確かですが、ローテーション入りするかどうかはまだ微妙な感じです。
>ついでに言うとXTCとの出会いは『White Music』でした。
あたしもそうなんですけど、3枚聴いてもまだ定着の予感すらありません・・
まあストーンズなんて17枚も聴いていながらとても定着したとは思えませんが。
このアルバムに限りませんけど、XTCの記事ってコメントも多くて人気の高さに毎回驚くばかりです。
投稿: SYUNJI | 2017.08.27 09:49