聴いてない 第226回 ブラインド・メロン
今日のお題は唐突に思い出したブラインド・メロン。
子供の頃はメロンといえばプリンスメロンだったのだが、最近はデパートやスーパーでも全く見かけない。
今の若い人はプリンスメロンなんて知らないだろうなぁ。
表面が網状のやつはマスクメロンと呼ばれ、プリンスメロンよりもずっと高級で入院しないと食べられないという認識だった。
それがどうしたって話ですが・・
そんな記憶も鑑賞も網状のブラインド・メロン。
「No Rain」という曲だけ聴いているので、聴いてない度は2。
これは柏村武昭の指導によるものではない。
92年の曲だがこの頃はもう「サンスイ・ベストリクエスト」は放送時間が変わったため聴いておらず、MTVで映像を見て音声だけテープに録音したものだ。
というか当時「サンスイ・ベストリクエスト」が続いていたかどうかも不明。
柏村チルドレンを卒業し、自立リスナーの道を歩んでいた頃の思い出の1曲である。
「No Rain」のプロモ・ビデオの始まりは以下のような流れ。
みつばちに扮した少女が小さな舞台でタップダンスのような踊りをたどたどしく披露し、踊りが終わったとたんに見ていた男(映像には姿はない)がなぜか大笑い。
少女は笑われた恥ずかしさからか、舞台から逃げるように走り去り、突然場面が草原に切り替わりブラインド・メロンのメンバーが演奏を始める、という妙な構成である。
なおこのみつばち少女は後に女優となったヘザー・デローチという人だそうだ。
この不思議な映像を伴う不思議なサウンドが不思議に売れて全米では最高20位、全英では17位を記録。
「No Rain」はブラインド・メロン最初で最大のヒットとなった。
残念ながら当時まだインターネットは普及しておらず、曲と映像以外の情報は得られなかった。
そしてその後他の曲にふれる機会も一切なし。
あれから25年が経過し、今回初めてバンドの略歴を知った次第。
ブラインド・メロンの結成時期には諸説あるようだが、89年・または90年頃とするサイトが多い。
メンバーはシャノン・フーン(Vo)、クリストファー・ソーン(G)、ロジャース・スティーブンス(G)、グレン・グレアム(D)、ブラッド・スミス(B)。
メンバーの多くはミシシッピ州出身だが、結成はロサンゼルス。
バンド名はコメディ映画「チーチ&チョン」に出てくる「ブラインド・メロン・チトリン」というキャラクターから、という由来らしい。
ブラインド・メロンを検索するとアクセル・ローズの名前がよく出てくる。
ボーカルのシャノンはアクセルの友人(後輩?)で、ガンズの「Don't Cry」という曲にも参加しており、プロモビデオにも出演しているそうだ。
アクセルのバックアップで、92年ブラインド・メロンはアルバム「Blind melon」でデビュー。
シングル「No Rain」が大ヒットし、アルバムも400万枚以上のセールスを記録。
ブラインド・メロンはこの大ヒットを興業的にはあまり利用せず、むしろ逆に内にひきこもるような共同生活を送りながら創作活動を続け、95年に方向性を大幅に転換した2枚目のアルバム「Soup」を発表。
「No Rain」の大ヒットによりフォークやヒッピーっぽいイメージが定着しそうになるのを嫌ったという話だが、残念ながらセールス的には厳しい展開となり、メンバーの間にドラッグが蔓延した。
95年10月、ツアー中のニューオーリンズでシャノン・フーンが死亡。
死因はドラッグの過剰摂取で、ツアーバスの中で倒れているのをアクセル・ローズが発見(他説もあるらしい)。
28歳の若さだった。
96年にシャノン参加の未発表曲を収録したアルバム「NICO」をリリースしたが、新しいボーカルが決まらず、バンドは10年近く停滞。
2006年にインディーズバンド出身のトラヴィス・ウォレンがボーカルとして加入。
2008年にアルバム「For My Friends」を発表した。
しかしこの直後にトラヴィスはメンバーとの意見が合わず脱退する。
全米ツアーではクリス・シンを臨時のボーカルとしたが、やはり後任が見つからず来日公演も中止となる。
現在はトラヴィスが復帰し、バンドとしては活動中のようだ。
何しろ「No Rain」以外に一切の情報を仕入れていなかったので、初代ボーカルがすでに死んでいたことも今回初めて知った。
最初のアルバム大ヒット→2枚目撃沈→ドラッグやりすぎ→ボーカル死亡とは、ロックバンドとしてあまりにも正調な展開。
90年代のバンドだけど70年代っぽい生き方である。
不謹慎な物言いになるが、もし死んだのが27歳だったら、マスコミやオールドなロックファンが食いつき、もう少し有名になっていたはずだ。
サウンドはかなり幅広いようで、ファンク・ハードロック・カントリー・ジャズ・ブルースといったジャンルをまたぐ様々な曲を生み出しているそうだ。
オルタナというカテゴリーにくくられることが多いが、退廃的なグランジとは違うらしい。
歌う内容も酒とダンスとお姉ちゃんといったチャラいものはあまりなく、そこは90年代らしく不安で不満で切なく物悲しい詞が多いとのこと。
突出して個性的というわけではないが、似たようなバンドも見つからない唯一無二の存在、というのがおおむね共通した評価のようだ。
「No Rain」はフォークっぽい感じもするが、青臭さはあまりなくのん気なサウンドにゆるいボーカルが乗る不思議な曲だ。
イントロのぽよーんというギターから気が抜けた感じで、悲壮感漂うバラードではなく、サビも盛り上がりはなく終始同じような調子。
当時の我が家の音響品質のせいかアレンジなのかは不明だが、なんとなく昔のオープンリールみたいな曇った音に聞こえる。
歌詞もやはり決して明るくはなく、なんとなく不満な気持ちを簡易な言葉だけで表している。
好みかと言われると微妙ではあるが、この曲は悪くない。
多くのファンが書いているように、「No Rain」だけではブラインド・メロンは語れないようだ。(当然だけど)
華やかな活動期間は短かったが、バラエティに富んだ楽曲や才能を持っていた多面的なバンドのようである。
1枚目「Blind melon」と2枚目「Soup」は必修科目でしょうが、みなさまの鑑賞履歴はいかがでしょうか?
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コメント
なんといっても2ndのアルバム「Soup」ですねこのバンドの魅力は。これこそがBlind Melonの真骨頂で、はっきり言ってこれ一枚あれば後は何もいらないと言っても過言ではないですよ。ただ音楽性自体は、400万枚売れた1stと大幅に変化しているわけではなく、あくまで1stの延長線上にある感じです。
というのも、彼らは一貫して、70年代の古典的ハードロックを土台に、ブルースやファンクやカントリーやジャズをごちゃ混ぜにした唯一無二のサウンドにシャノン・フーンの繊細で表現力豊かなボーカルが乗っかるというスタイルを取っていて、それが完璧なケミストリーを起こしたのがこの「Soup」なんですよ。これは質の高い90年代ロック名盤たちの中でも、群を抜いてイカした名盤です。
だからこそ、この「Soup」がたいして売れなかったのが悔しいし、納得いかなかったんですよね私は。音楽性は前作の延長線上にある、すなわち、雑な言い方をしてしまえば「似たような」感じなのになぜだと…。「似たような」1stは400万枚も売れて、あれだけ大衆は評価してくれたのに、なぜたかだか3年後の発表ってだけでこっちは買ってくれないんだ!おまけにこっちの方が圧倒的に出来が良いのに!!と。
まあそうは言っても、答えは分かり切っていて、そっちに目を向けたくなかっただけなんですけどね笑
というのも、1stアルバム「Blind Melon」が発表されたのは1992年でした。この頃のアメリカのロックシーンでは、グランジ勢やミクスチャーロック勢といったオルタナティヴォ・ロックが大流行していましたが、それと同時にアメリカのルーツ音楽を基軸としたルーツ系ロックも結構頑張ってましてね。The Allman Brothers Bandの如く70年代のサザン・ロックを現代に復活させたThe Black Crowesや、カントリーやフォーク、ブルースを基盤としたキャッチーでメロディアスなロックを奏でるCounting Crowsがその代表格で、両者ともに莫大なセールスを上げていました。
さて、ここで、Blind Melonの音楽性に再び目を向けてみましょう。そう彼らのは音楽は、「古典的ハードックとブルースやファンク、カントリーやジャズの融合」でございます。すなわち、彼らはこのルーツ系ロックムーブメントの恩恵を大いに受けて、アルバムを売りに売りまくったというわけです。音楽性を考慮すると、恐ろしいほど完璧な時期にデビューしたバンドということが身に染みて理解できると思います。
加えて、グランジ勢においても、Nirvanaと人気を二分していたPearl Jamは70年代の古き良きハードロックを基軸に、フォークやカントリーの要素も取り入れていたサウンドをしていました。まあつまるところ、この時期のアメリカの音楽シーン自体が、「ルーツ音楽大歓迎!」だったということです。
しかし時は流れて、94年すなわちあの年ですね…。一気にシーンは一変します。カート・コバーンの死によって、グランジは死に絶え、オルタナティヴ・ロックやルーツ系ロックは人気に陰りが見え始めます。同時に、新しい世代が台頭してきます。それがGreen DayやThe Offspringを筆頭としたポップパンク/メロコア勢とKornやLimp Bizkitといったニューメタル勢です。90年代半ば~後半にかけてのアメリカのロックシーンの代名詞とも言えます。
メロコアやニューメタルの特徴としては、「派手さ」、「分かりやすさ」、「過激さ」といった良くも悪くもキッズ向けなものが上げられます。80年代のグラムメタルの再現と言えなくもないですねこれらは。ただ歌詞は結構暗いし、演者側もなかなかのトラウマを抱えていて、80年代みたいな能天気一筋とは一線を画してはいましたが。
ただまあこうなってくると、元々対象年齢高めなルーツ系ロックの出る幕はなくなってくるというわけでして。キッズ的にはもっと自分たちにとって最適なものがいるわけだから、わざわざそんな「古臭いもの」を選んで聞く必要がないということですね。
話を戻して、2ndアルバム「Soup」に目を向けます。発表年は…1995年、すなわちそういうことなんですよね。95年と言えばもうメロコア全盛期かつニューメタルの人気急上昇の頃ですから、既に発表した時点では完全に時代遅れも甚だしい音になっていたというわけです。デビューアルバムは完璧な時期でしたが、こちらは真逆でまさに最悪の時期の発表だったというわけです。そりゃあ売れないわなぁと。
惜しむらくは、もう2年前に「Soup」が発表されていればばなぁと…。どれだけ少なく見積もっても、300万枚は下らなかったんじゃないかな?とにもかくにも、90年代のロックシーンにイマイチ共感できないというオールディーズファンにこそ、おすすめしたいバンドだしアルバムですね。余談ですが、これとThe Black Crowesの2ndアルバム「The Southern Harmony and Musical Companion」、そしてCounting Crowsのデビューアルバム「August and Everything After」は90年代ルーツ系ロックの必聴アルバムだと思います。
とここまで、「Soup」ばっかり贔屓してきましたが、デビュー作の「Blind Melon」も結構良質なアルバムですし、代表曲というか唯一のヒット曲「No Rain」も収録されているので、こちらから聴いてみるのも入門編としては大いにありかなと。知ってる曲があるのとないのとでは、印象が違ってきますからね。まあそうは言っても、最終的には個人の好き嫌いなんですけどね笑
おススメとしては、2ndアルバム「Soup」を聴いてみて、気に入ったら1stの「Blind Melon」も購入してみるといったところでしょうか。お気に召されるかどうかは、分かりませんが笑
投稿: Viva 90’s Rock!! | 2020.02.20 18:17
コメントありがとうございます。
この記事を書いたのは3年近く前ですが、コメントがついたのも初めてです。
実は書いたこともすっかり忘れておりました。
>なんといっても2ndのアルバム「Soup」ですねこのバンドの魅力は。
>ただ音楽性自体は、400万枚売れた1stと大幅に変化しているわけではなく、あくまで1stの延長線上にある感じです。
「Soup」のほうが高い評価ですね。
1枚目と似たような感じなんでしょうか?
「方向性を大幅に変更」と評したサイトもあったんですが、やはりこれは聴き比べないとわからないでしょうね。
>95年と言えばもうメロコア全盛期かつニューメタルの人気急上昇の頃ですから、既に発表した時点では完全に時代遅れも甚だしい音になっていたというわけです。
なるほど、そういう背景があったんですね。
彼らの音楽性はむしろそれほど変わらなかったのに、時代のほうがそれを追い越して変わっていったような状況だった、と・・
ちょっと運が悪かったですね。
>90年代のロックシーンにイマイチ共感できないというオールディーズファンにこそ、おすすめしたいバンドだしアルバムですね。
そうでしたか。
自分は確かに90年代以降の音楽には疎いですが、これは心強いご意見ですね。
>代表曲というか唯一のヒット曲「No Rain」も収録されているので、こちらから聴いてみるのも入門編としては大いにありかなと。
これはご指摘のとおりですね。
やはり1曲でも知っている曲があれば入りやすいですので、もし聴くとしたら発表順に聴いていくのが自分の場合はいいかもしれません。
とても詳しい解説ありがとうございました。
いつになるかわかりませんが、聴いたらまた報告いたします。
聴いてない音楽を延々15年以上も垂れ流している愚かなBLOGですが、ブラインド・メロン以外にもお好きなアーチストがあればご指導いただけたらと思います。
投稿: SYUNJI | 2020.02.21 22:08