聴いてみた 第140回 ローリング・ストーンズ その17
今日聴いたのはローリング・ストーンズの「Between the Buttons」。
先日聴いたフェイセズとともにユニオンでお安く購入。
買う前からうっすらとわかってはいたが、このアルバムもイギリス盤とアメリカ盤で中身が異なる。
「Out of Our Heads」ほどではないが、全12曲中9曲が共通という状態。
店にはどちらも置いてあったが、特にこだわりもなかったので安いほうをつかんだらアメリカ盤だった。
ただしジャケットの写真は英米同じである。
いずれの収録曲も全てジャガー&リチャードのオリジナル。
シングル曲は同時発売のアルバムには収録しない、というイギリスのレコード制作上の慣例があり、シングル曲「Let's Spend The Night Together(夜をぶっとばせ)/Ruby Tuesday」はアルバムには収録されなかったとのこと。
こうしてイギリスでは67年1月、アメリカでは2月に、異なる内容で発表された。
セールスとしてはアメリカ盤のほうが売れて評判も高かったようだ。
売上とあまり関係はないが、発売直後にミックとキースとブライアンが相次いで大麻所持により逮捕されている。(キースだけ後に無罪)
「Between the Buttons」とは直訳すれば「ボタンの間」で、日本では邦題として「ボタンの間に」とも書かれていたそうだが、意味としては「まだ決めていない」ということになるらしい。
マネージャーのアンドリュー・オールダムがチャーリー・ワッツからタイトルをどうするのか聞かれ「まだ決めてない」と答えたらそれがそのままタイトルになった、という話。
ホントにそんな雑な経緯だったんだろうか?
なおミック・ジャガーはこのアルバム(イギリス盤)を評価しておらず、唯一好きなのは「Back Street Girl」だったそうだ。
今回アメリカ盤買ったんで収録されてないんですけど。
アンドリューの意向で「Back Street Girl」はアメリカ盤からは削除され、それがもとでミックとアンドリューの仲が悪くなった・・というわくわく話もあるらしい。
俄然聴く気になってきましたが、果たしてアメリカ盤はどんなアルバムなのでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1.Let's Spend The Night Together(夜をぶっとばせ)
疾走感あふれるリズム、思ったより明るいメロディでスタート。
ミックは結構シャウトしてるが、楽曲の明るさでそれほど粗野な感じがしない。
時々聞こえるドラムの連打がいい。
「ぶっとばせ」ってのはいかにも60年代の邦題だが・・
2.Yesterday's Papers
これもノリは1曲目と同じでスピーディーな展開。
ボーカルはやや控えめ。
ところどころ意外な音がする。
3.Ruby Tuesday
有名な曲だと思うが、初めて聴いた。
ほのぼのコーラスが多用された、ストーンズらしくない美しい曲。
ちょっとバーズっぽい感じがする。
ミックのボーカルはどこか頼りないが、いい曲だと思う。
4.Connection
引き続きコーラス中心の不思議な雰囲気の曲。
主にキースが作った曲だそうで、ベースもキースが弾いている。
5.She Smiled Sweetly(甘いほほえみ)
ワルツのようなリズムにキーボードを乗せ、ミックがぼそりと歌うバラード。
このキーボードはキースが弾いているらしい。
ミックのバラードは決してうまくなく、低音部分ではむしろ痛いくらいなのだが、慣れたせいもあるが味わい深いとも思う。
これもストーンズらしくない、フォークソングのようなステキな一曲だ。
6.Cool, Calm And Collected
軽快な部分とスローな部分が交互にやってくる、コミックソングみたいな曲。
シタールのような妙な楽器の音が左から聞こえる。
バンジョーはブライアンが担当。
最後はどんどんスピードアップして終わる。
なんとなくビートルズっぽい音だ。
7.All Sold Out
LPではここからB面。
それぞれの楽器と歌がいまいち合っていない気がするが、意図されたものなんだろう。
8.My Obsession
それほどハデではないが、ようやくミックらしい投げやりなボーカル。
右で鳴り続けるドラムとシンバルがポイント。
ラストはわりと唐突に終わる。
9.Who's Been Sleeping Here?(眠りの少女)
あちこちのサイトに「ディラン風ストーンズ」と書いてあったが、まあその通りだ。
この頃のミックはこんな歌い方もしていたんだね。
後の「サタニック・マジェスティ」にあるようなサイケなニオイも少し感じる。
10.Complicated
リズムはおもしろいが、楽器もボーカルもコーラスも今一つかみ合わない。
好みは置いておくとして、このズサンさがストーンズの持ち味でもある。
11.Miss Amanda Jones
この曲が一番ストーンズらしく聞こえる。
太く響くギターやベースがいい。
12.Something Happened To Me Yesterday(昨日の出来事)
ラストはにぎやかなバラエティソング。
キース中心に作られた曲とのこと。
エンディングが少し雑にフェードアウトするけど、これはイギリス盤でも同じなのかな?
聴き終えた。
「Let's Spend The Night Together」と「Ruby Tuesday」は聴きたかった曲だったので、アメリカ盤を買ってよかったと思う。
「イギリス盤聴いてから言えやボケ」というお叱りはあると思いますが・・
以下は当然アメリカ盤を聴いての感想。
ストーンズの60年代のアルバムはどれも意外な発見があるが、今回もその通りとなった。
全体としては結構おだやかで牧歌的なほのぼのストーンズである。
今まで聴いたどのアルバムとも違う。
非常に聴きやすく、難しさは全く感じない。
というか、個人的には「Let It Bleed」「Out of Our Heads(アメリカ盤)」「Aftermath」などにも匹敵する受け入れやすさである。
自分は未だにストーンズ初心者で聴いてきた順番もデタラメなので、こうして初期作品にふれる度に「こんな音楽もやっていたのか・・」という新鮮?な感動がまずある。
野蛮で粗野でワルなイメージどおりのストーンズが好きな人だと、この造りは物足りないのではないだろうか。
この次が問題作「Their Satanic Majesties Request」で、おそらくこの2作品をストーンズの最高傑作と評するファンもあまり多くはないとは思う。
ピーター・バラカンはこの2作品について、発表直後に友人に聴かせてもらい「ビートルズの影響を受けすぎじゃないのか?」と思って買わなかったそうだ。
自分もどっちかっつうと粗野で乱暴なストーンズを好むつもりでいたが、いろいろ聴いてみるとそうでもないようだ。
「Beggars Banquet」のソリッドで野蛮なサウンドは好きだが、それ以降の70年代アルバムはなかなかなじめない。
そんな中、60年代の「Out of Our Heads(アメリカ盤)」「Aftermath」とこの「Between the Buttons(アメリカ盤ですけど)」はどれも意外に楽しいと感じる。
さて「Between the Buttons」は、ロックの歴史を語る人たちが大好きな1967年発表である。
67年と言えば、その前年ビートルズは「Revolver」、ディランは「Blonde on Blonde」、ビーチ・ボーイズが「Pet Sounds」を生み出した、ロックの歴史において非常に重要な時期である。(注:一部に誤記がありましたので訂正しました)
こうしたライバル達の動きをストーンズ(および関係者)は全く無視していた、とも考えにくい。
何らかの影響やプレッシャーはあっただろう。
ただ結果論だが、ライバル達の名盤と比べてストーンズとしては「Between the Buttons」が後世に語り継がれる革命的アルバムにはならなかったようだ。
ストーンズのファンに「ストーンズ史上最も革命的なアルバムは?」と聞けば、おそらくは他のアルバムに票が集まるだろう。
ジャケットは屋外で寒そうなメンバーを写したかすれまくりの写真。
チャーリーが一番目立っているのも珍しいが、ブレのおかげか必要以上にふけて見える。
アートとしては傑作なのかもしれないが、自分にはよくわからない。
メンバー集合写真ジャケットであれば、「Out of Our Heads」のイギリス盤のほうがやはりかっこいいと思う。
というわけで、アメリカ盤「Between the Buttons」。
かなりよかったです。
イギリス盤も聴いてみようという野望はもうありませんけど、未聴の3曲だけどこかで押さえておいてもいいかなと思います。
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コメント
こんばんは、JTです。
>全体としては結構おだやかで牧歌的なほのぼのストーンズである。
シングル曲が入っているかいないかで多少印象は違うかと思いますが、私の所有しているUK盤も牧歌的です。
>ピーター・バラカンはこの2作品について、発表直後に友人に聴かせてもらい「ビートルズの影響を受けすぎじゃないのか?」と思って買わなかったそうだ。
といくことは本作は、時期的には「Revolver」の影響を受けている、ということになりますが、あんまり影響受けているとは感じません。唯一「イエロー・サブマリン」は曲が牧歌的で影響あるかもしれませんが、サウンドはドラッグの影響ありありです。
「Between the Buttons」はあまり「ラリホー」(笑)って感じはしません。US盤収録のシングル曲以外はライブでやってない(多分)し、ちょっと異色なアルバムというか、試行錯誤の一作という感じですね。
>67年と言えば、ビートルズは「Revolver」、ディランは「Blonde on Blonde」、ビーチ・ボーイズが「Pet Sounds」を生み出した、ロックの歴史において非常に重要な時期である。
あれ?、上記3作とも66年発売ですね。
「Between the Buttons」は67年1月なので、
>何らかの影響やプレッシャーはあっただろう
これはあったでしょうね。
投稿: JT | 2017.07.02 22:46
JTさん、こんばんは。
>私の所有しているUK盤も牧歌的です。
やはりそうですか。
ただご指摘のとおり狙ってほのぼのアルバムにした、というわけでもなさそうですね。
>時期的には「Revolver」の影響を受けている、ということになりますが、あんまり影響受けているとは感じません。
そうですね。
バラカン氏が「Between the Buttons」は具体的にビートルズのどこに影響受けすぎだと感じたのかまではわかりませんが、個人的には「Revolver」よりもその前の「Rubber Soul」に近いような気はします。
>あれ?、上記3作とも66年発売ですね。
ああっ!しまった・・よく調べたらその通りです。
すいません、ぷく先輩から苦情が来る前にこっそり訂正しておきます・・
投稿: SYUNJI | 2017.07.03 21:13