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聴いてみた 第138回 プリファブ・スプラウト

連休終了で日本中のサラリーマンが憂鬱になっている本日、聴いてみたのはプリファブ・スプラウトのセカンドアルバム「Steve McQueen」。
全英で2位を記録した大ヒットアルバムである。
・・・のだが、プリファブ・スプラウト、実は名前しか知らない。
そもそもなぜ名前だけ知っているのか不明だが、このトシになるまで一度も聴いたことがなかった。
東郷かおる子が当時推してたのかもわからないが、少なくとも柏村武昭が曲紹介をした記憶は一切ない。
アズテック・カメラもそうだが、どんなジャンルなのかもメンバーが何人いるのかも知らない。
今回はネオアコというキーワードを頼りにモンスリー師匠の指導のもと聴くことになったのだ。

Steve_mcqueen_2

プリファブ・スプラウトは1982年にデビューしたイギリスのバンドである。
「Steve McQueen」は85年発表なので、自分にとってはリアルタイムで聴いていて当然の時代のはず。
82年と言えばカルチャー・クラブやエイジアが登場し、85年はa-haダイアー・ストレイツがチャートをにぎわせていた頃だ。
「We Are The World」も85年だし、ハニー・ドリッパーズが流行ったのも同じ年である。
毎晩サルのようにエアチェックに没頭していたのに、なぜプリファブ・スプラウトは聴いてないのか明確には説明できないが、おそらくはデュランやカルチャー・クラブやa-haに比べてFMオンエア頻度や雑誌などの掲載量が少なかったものと思われる。

メンバーは以下のみなさんである。
パディ・マクアルーン(Vo・G)
マーティン・マクアルーン(B)=パディの実弟
ウェンディ・スミス(Vo・G・K)
マイケル・サーモン(D)

のちにドラムはマイケル・サーモンからニール・コンティに変わり、今回の「Steve McQueen」ではニールが叩いているそうだ。

パディ&マーティンのマクアルーン兄弟を中心に77年頃に結成。
構成としてはウェンディだけが女性なのだが、プリテンダーズブロンディとは違い、女性ボーカルが男どもを牽引というスタイルではない。

前述のとおり82年にデビューし、84年に最初のアルバム「Swoon」を発表。
パンクロックが下火になりつつあった中で、80年代特有の大衆迎合的なチャラい音楽とは異なり、さらにはプログレやネオアコなどとも一線を画すという複雑な音楽性を持っていたそうだ。
・・・よくわからないけどネオアコというくくりにはまっただけの存在ではない、ということで合ってますかね?
で、ネオアコという言葉で検索すると同じようによく登場するのがアズテック・カメラだが、プリファブ・スプラウトとは接点や交流はほとんどないらしい。
仲悪かったんスかね?

85年にトーマス・ドルビーをプロデューサーに起用し「Steve McQueen」を発表。
・・・実はトーマス・ドルビーも名前しか知らない。
トーマスさんについても少し調べたので後述します。

バンドにとっては2枚目のアルバムだが、前作とは雰囲気が相当違うそうだ。
このあたりはトーマス・ドルビーのもたらした効果も大きいらしい。
日本ではこれがデビュー作で、このアルバムからプリファブ・スプラウトを知った日本の少年少女も多いと思われる。
タイトルの語源はもちろん俳優スティーブ・マックイーンだが、ジャケットもマックイーン主演映画の「大脱走」をイメージしている。

このアルバムからは「When Love Breaks Down」を含む4枚のシングルが生まれており、いずれもヒットしたそうだ。
・・・本当か?そんな状況の中、柏村武昭は何をしていたのだろうか?
ちなみに当時アルバムの日本語表記は「プレファブ・スプラウト」だったとのこと。
日本語読み風に「プレハブ・スプラウト」としなくてよかったと思う。

88年には「From Langley Park To Memphis」(邦題:ラングレー・パークからの挨拶状)をリリース。
このアルバムにはスティービー・ワンダーピート・タウンゼンドも参加。
シングル「The King of Rock 'N' Roll」が全英7位を記録するヒットとなる。

ここからプリファブ・スプラウトは全盛期を迎え、89年に「Protest Songs」、90年「Jordan: The Comeback」と3年間毎年アルバム発表という多忙な日々を送る。
いずれのアルバムでもトーマス・ドルビーがプロデューサーとして活躍しており、パディは全面的にトーマスを信頼していたようだ。

92年にベスト盤「A Life Of Surprises」を発表。
これまたイギリスでは大ヒットで全英3位を記録するが、その後ニール・コンティが脱退。
2001年にはウェンディ・スミスも出産を機に脱退する。

バンドとしてはほぼパディのソロユニットっぽくなってはいるがその後も継続しており、2013年の「Crimson/Red」が最新作である。
なおこの作品、発表前に曲順の異なるデモ音源がネット上に流出するという事件で話題を呼んだとのこと。
流出は関係者によるものかファンの仕業か明らかにはなっていないらしい。
パディは目や耳の難病を患い、苦労も多いがミュージシャンをやめてはいないそうだ。

毎回台本どおりの展開に辟易するが、終始全部一貫して知らない話であった。
事前学習に少し時間を取られたが、とにかく聴いてみることにした。

・・・・・聴いてみた。

1. Faron Young
2. Bonny
3. Appetite
4. When Love Breaks Down
5. Goodbye Lucille
6. Hallelujah
7. Moving The River
8. Horsin' Around
9. Desire As
10. Blueberry Pies
11. When The Angels

うーん・・・
うーん・・・・
うーん・・・・・

長いこと腐れ音楽BLOGを続けてきたが、文字で感想を表すのにここまで苦労した音楽はあまりない気がする。
ネガティブな感想は特にわいてこないし、聴きづらいとか難しいといった形容も当てはまらない。
似ているバンドも思いつかないが、突出して個性的な音が向正面からやって来るわけでもない。

ネオアコというキーワードについては、このアルバムにはあまり関係ないようだ。
少なくともアコースティックなナンバーはないし、比較的全編ポップなサウンドである。
しかしながら産業ロックのレシピに従った音の重ねやコーラスやアレンジといった技も希薄だ。
多少霧っぽい曇ったサウンドの造りを感じるが、当時全盛だったアンチ渋谷な音楽とは次元が違うところで勝負している気がする。

なのでどの曲にも「なんじゃこの音は?」「げぇー変な音楽」という疑問や不快感は一切ない。
・・・のだが、どの曲にも「おお」とか「へぇ」とか「いいね!」といったSNSっぽい感性の盛り上がりも全く感じない。
拒絶感はないけど、おそらく好みの音ではないのだろう。
この感覚はイーグルスを聴いた時のものに近い。
3回ほど聴いてみたが、まだ定着の予感は全然ない。
駅を降りて遠くにある新緑が美しい山を目指してしばらく歩いたが、いっこうに登山口に近づく感じがしない、というところだろうか。(伝わらない)

モンスリー師匠からの情報では、「Amazanのリスナーレビューの評価がすごく高い」とのことであったが、聴いたあと見てみたら確かに絶賛レビューが多い。
まあ総じてAmazanのレビューはどんなアーチストでも熱い評価が多いとは思うが、大半の人が星5つを付けているのはやはり驚きである。
あと「聴き込むほどに良さがわかる」といった意見も多いので、自分みたいに3回くらいでうなっているようではまだ学習が足りないのだろう。

ちなみに名前しか知らなかったトーマス・ドルビーだが、今回調べてみたら驚きの経歴が続出。
いえ、驚いてるのは自分だけでこんな話はどれも鉄板なんでしょうけど。
もともとトーマスさんはキーボード・プレイヤーで、あのブルース・ウーリー・アンド・ザ・カメラ・クラブにも在籍したことがあり、フォリナーの「Urgent」「Waiting for a Girl like You」のシンセサイザーもトーマスの演奏とのこと。
そうなんだ・・・全然知らなかった・・・

交流はデビッド・ボウイジョニ・ミッチェルデフ・レパードやロジャー・ウォーターズから坂本龍一まで非常に顔の幅広い人物である。
日本では「She Blinded Me With Science(彼女はサイエンス)」という妙な邦題の曲が有名らしい。(当然聴いてない)
92年の「Close But No Cigar(シガーにご用心)」というこれまた妙な邦題の曲ではエドワード・ヴァン・ヘイレンがギターで参加。
こういう情報だけだと産業ロック側のヒトという判定をされてもおかしくはない気もする。
渋谷陽一はトーマス・ドルビーをどう評価しているのだろうか?(どうでもいい話だが。)

というわけで、プリファブ・スプラウト。
パンクやプログレほどの困難さはなかったものの、残念ながら正直思ったよりも自分の好みからは遠い音楽でした。
もっと若い時に聴いていれば違った評価になっていた可能性も高いですが・・・
前作「Swoon」はかなり作風が異なるそうなので、期会があれば聴き比べてみようかと思います。

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
ご無沙汰しています。

>そもそもなぜ名前だけ知っているのか不明だが
私は全くの逆認識でした(笑)
このアルバムのバンド名がSteve McQueenだと思っていました。

>前述のとおり82年にデビューし
そんな古いキャリアのバンドなんですね、雑誌かネットか忘れましたが
Steve McQueenという名前とバイクで印象が残っていますけど90年代だと思っていました。

つらつらと書きましたが全く聴いたことがありません・・・(笑)

82年っていったら洋楽に目覚めた年です!!。
85年も毎日洋楽に溺れていました・・・
でも印象に無いっていうのは流行んなかったんですね(笑)
なんでしょうね、周りはヘビメタが流行っていた気がします。
ラットとかクワイエット・ライオットなんか・・・

余談ですけど、俳優のSteve McQueenは大好きです(笑)


投稿: bolero | 2017.05.07 22:04

boleroさん、こんばんは。
プリファブ・スプラウト、聴いてませんでしたか、そうですよねぇ。(連帯)

>このアルバムのバンド名がSteve McQueenだと思っていました。

まあ確かにそっちのほうが覚えやすいですね。
ただ有名俳優の名前のまんまバンド名ってのはたぶんムリだろうなぁ・・
J-POPバンドでも「高倉健」とか「石原裕次郎」とか名乗ったらやっぱり怒られそうですよね。
このアルバムも発売当初は「Two Wheels Good」というタイトルだったそうですけど。

>85年も毎日洋楽に溺れていました・・・

あー自分も同じような感じでしたね。
ただヘビメタはあまり周囲で流行ってはいなかったですが。
ラットも1曲も聴いてません・・

>余談ですけど、俳優のSteve McQueenは大好きです(笑)

自分は映画も観てないのでほとんど知りませんが、父親はスティーブ・マックイーンが好きでした。

投稿: SYUNJI | 2017.05.09 22:02

SYUNJIさん、こんばんは。
早速ですが、最近、こんな本が出ました。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784907583972

単独で本が出版されるほど、プリファブ・スプラウトは音楽シーンに
絶大な影響を与えたのでしょうか。ドゥービー・ブラザーズですら
単独本はないというのに???

さて、「スティーブ・マックイーン」はレコード・コレクターズ誌
「80年代ベスト100」企画でトップ10に入るほどの高評価でした。
バンド名も作品も、これを読んで初めて知りました。で、CDを買いました。

あれから10年ほど経ちます。これほどの高評価アルバムなのに、
そのよさが全くわかりません。私の感性が鈍っているからか?
で、必ず年に1回は聞き直します。「今日こそ、突然
よくなっているのかも」と思うからです。しかし、その時は来ません。
そんなこんなで、わかりもしないのに中古で売りに出すこともできません。

話は変わりますが、「ライ麦畑でつかまえて」という青春小説の傑作が
あります。この作品は、多感な10代に読まないと意味がないと思いました。
といいますのも、私は会社に入って、濁ったオトナ社会/サラリーマン
社会につかって、身も心も汚れきってから読んだのです。これでは、
この小説のよさはわかりません。村上春樹氏による新訳も
出版されていますが、読む気になれません。

「スティーブ・マックイーン」も、ひょっとするとそんな音楽なのかも
しれません。

投稿: モンスリー | 2017.05.10 21:52

モンスリーさん、今回もお世話になりました。
またしてもふがいない結果で申し訳ありません・・

>単独で本が出版されるほど、プリファブ・スプラウトは音楽シーンに絶大な影響を与えたのでしょうか。

こんな本が出てたんですね。
思っていたよりもずっと偉大な存在だったのかも・・

>「80年代ベスト100」企画でトップ10に入るほどの高評価でした。

そうですか・・まあレココレの企画ですから自分みたいな貧弱リスナーの好みとは大幅に違うとは思いますが。
エア・サプライなんか絶対入ってないだろうし・・

>で、必ず年に1回は聞き直します。「今日こそ、突然よくなっているのかも」と思うからです。

それはすごい鍛錬ですね・・
自分は3回聴いてダメだとほぼあきらめてしまいます。
ブラーやニール・ヤングも年1回は聴き直したほうがいいのかな・・

>この作品は、多感な10代に読まないと意味がないと思いました。

「ライ麦畑でつかまえて」は読んでませんが、音楽や映画も含めて10代の多感な時に芸術にふれる、というのが大事だというのは今ならわかりますね。
「Steve McQueen」もあらためて中二の気持ちでもう少し聴いてみようかと思います。(無理)

投稿: SYUNJI | 2017.05.11 22:13

SYUNJIさん、こんにちは。
夏休みの宿題で、これを聞きました。
1年ぶりに聞き直すと、今まではわからなかったことに気がつきます。
プロデュースがトーマス・ドルビーですので、85年当時の最先端の音楽テクノロジーが
反映されています。それでいて、どこかノスタルジーを感じさせるものが光ります。
シンセサイザー一辺倒ではなくギターとのバランスがよいですが、どこか遠くから
聞こえてくるようなサウンドです。こういうのを「センスがよい」というのでしょう。

2曲目「Bonny」は静かな中にも、パディ・マクアルーンの力んだボーカルでノリの
よさを見せます。歌詞は、単なる別れではなく結構難しいです。3曲目「Appetite」は、
女声ボーカルであるウェンディ・スミスの低音のコーラス、細かいリズムを刻む
シンセと高揚感が心地よいです。5曲目「Goodbye Lucille #1」はイントロにたっぷり
時間をかけて、コーラスのリフレインも印象的です。アルバム中、一番耳に残る曲でした。
個人的には、前半の切なさを感じさせる曲が好きでした。後半の曲では、ポップロック感
を前面に出した11曲目「When the Angels」がよかったです。

投稿: モンスリー | 2021.08.29 10:28

モンスリーさん、コメントありがとうございます。
ご紹介いただいてから4年ほど経過してますが、プリファブ・スプラウトも全然定着してないままです。すいません・・

>1年ぶりに聞き直すと、今まではわからなかったことに気がつきます。

定着はしてませんが、こういう感覚はわかりますね。
他のアーチストでもたまに聴くと新たな発見があるのは、自分にもわずかですが経験はあります。

>プロデュースがトーマス・ドルビーですので、85年当時の最先端の音楽テクノロジーが反映されています。

記事にも書きましたけど、トーマス・ドルビーはブルース・ウーリー&ザ・カメラクラブのアルバムに参加してたり、フォリナーのアルバム「4」でシンセサイザー弾いてたんですよね。
プリファブのサウンドとの共通点はあまりわかりませんでしたが・・

>シンセサイザー一辺倒ではなくギターとのバランスがよいですが、どこか遠くから聞こえてくるようなサウンドです。

ここは同感です。
臨場感はそんなに強くなく、どこか霞のかかったような不思議なサウンドですね。

プリファブも定着するまで時間のかかる音楽のようですが、自分も再学習してみようと思います。
なお4年前には「ブラーやニール・ヤングも年1回は聴き直したほうがいいのかな」などとほざいてましたが、結局どっちもウォークマンから消してしまいました・・

投稿: SYUNJI | 2021.08.31 18:33

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