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聴いてない 第225回 アトランタ・リズム・セクション

ロックにも様々なカテゴリーがあるが、ふと気がつくと全くなじんでいないのがサザン・ロックという分野である。
もちろんメタルもプログレもキャンディポップも全然なじんでないのは同じだが、ことサザン・ロックに関しては基礎知識すら大貧弱である。
レイナード・スキナードやスティーブ・ミラー・バンドなどが該当する、ということくらいしか知らず、曲も全然聴いていない。

そんな中唐突に名前を思い出したアトランタ・リズム・セクション。
サザン・ロックに所属するということも今回初めて知った。
なぜ名前を知っているかというと、実は1曲だけ聴いているからだ。
それは81年の「Alien」だが、例によって柏村武昭の紹介でエアチェックしている。
なおこの曲と同時に録音したのはキッスの「エルダーの戦士」、ポリスの「Every Little Thing She Does Is Magic」など。

ただし柏村武昭は曲紹介はしたがバンドの経歴や秘密などは一切明かしていない。
・・・と思うのだが、あの番組はとにかく「トークを入れずに曲だけ録音する」という前提で必死にポーズボタンに手をかけて聴いていたので、柏村武昭がバンドの経歴などしゃべってたとしてもたぶん「いいから早く曲かけろよ!」とラジオを凝視していて、話の中身なんか覚えていないんだろうとも思う。
もともと誠実に曲だけを流しトークをかぶせないという寡黙なDJによる番組(そうか?)だったので、アトランタ・リズム・セクションに限らずどのアーチストでも情報発信は少なかったが。
なのでこのバンドについても、人数構成やキャリアやメンバーの名前なども全く知らない。

「Alien」はどこかAORの香りただようオトナなナンバーである。
他の曲にはさまれて録音されたので消すこともできず、そのまま聴いてきたという状態。
この曲以外にアトランタ・リズム・セクションをFMで聴いたことはたぶんない。
おそらくは日本での人気はそれほどでもなかったものと思われる。

録音してから35年以上(!)の歳月が流れているが、遅まきながらアトランタ・リズム・セクションについて調べてみた。(手遅れ)
今回もある程度覚悟はしていたが、やはりウィキペディアの日本語説明は見当たらない。
あちこち掘り起こして集めた情報をまとめると以下のような感じである。

アトランタ・リズム・セクションは名前のとおりジョージア州アトランタで結成・・と思ったら、厳密にはアトランタのそばにあるドラヴィルという街で結成されたようだ。
「江戸川リズム隊」と名乗っているが実は市川で結成、みたいなもんだろうか。
ちなみにアトランタと言えば当時からあのブッチャーのホームタウンであり、現在もブッチャーはアトランタにバーベキューレストランを持っているそうだ。
あ、もういいですか?こういう情報は・・・

で、アトランタ・リズム・セクション。
60年代に活躍していたクラシックスIVというバンドが源流と言われる。
クラシックスにいたギターのJ.R.コッブ、そのプロデューサーであるバディ・ビューイが地元アトランタのお友達を勧誘して結成。
他のメンバーはロニー・ハモンド(Vo)、バリー・ベイリー(G)、ディーン・ドートリー(K)、ロバート・ニックス(D)、ポール・ゴダード(B)。
バディ・ビューイはメンバーではないが、曲作りやマネージャーやプロデューサーなど裏方としてバンドを支えた人物。

72年にバンド名をタイトルにしたアルバム「Atlanta Rhythm Section」でデビュー。
しばらくは骨太なサザン・ロックを主体としていたが、徐々にソフトな路線に変更。
76年「So In to You」が全米7位を記録し、アルバム「A Rock And Roll Alternative」(邦題:ロックンロール魂)も大ヒット。
78年には「Imaginary Lover」がまたも全米7位となり、「I'm Not Gonna Bother Me Tonight」も14位のヒットとなった。
バンドの最盛期はこの頃と言われているようだ。

79年には「Do It Or Die」「Spooky」がヒットするが、ドラムのロバート・ニックスが脱退。
81年にアルバム「Quinella」(邦題:アトランタ・フィーリング)を発表。
この中に自分が聴いた「Alien」が収録されている。
柏村武昭もレコード会社一押しの新曲としてオンエアしたのだろう。
結果的にはこの「Alien」が全米チャート100位以内の最後のヒット曲となる。(最高29位)

その後アルバム発表の間隔は徐々に開いていき、2000以降オリジナルスタジオ盤はリリースしていないが、活動は継続しているようだ。
2012年にロバート・ニックスが、2014年にはポール・ゴダードが亡くなっている。
今のオリジナルメンバーはディーン・ドートリーだけとのこと。

ということでやっぱりどれも全部初めて知った話であった。(もう誰も驚かない)
歴代のアルバムジャケットを見てみたが、見覚えのある絵はひとつもなかった。

唯一聴いた「Alien」はもちろん地球外生物の話ではなく、居場所のない孤独な男を歌ったものだそうだ。
サウンドはキーボード主体でそれほど盛り上がりもなく落ち着いたメロディ。
悪くはないが、当時も今も振り向くような感情の高ぶりは特にない。
どこか同時期のドゥービー・ブラザーズのような音がするように思う。

学習要領としては、まずはサザン・ロックのセンターにあるオールマン・ブラザーズ・バンドやレイナード・スキナードを聴いて概要を学び、その後応用編としてアトランタ・リズム・セクションや38スペシャルなどに広げていく、というのが正しいと思われる。
・・・とは思ったものの、今回突然アトランタ・リズム・セクションを思い出してしまったので、取り急ぎ皆様の鑑賞履歴や感想を教えていただけたらと思います。

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コメント

いつも楽しみにして読んでいます。今回のアトランタ・リズム・セクションもいろいろと掘り下げた内容の記事に関心しています。

サザンロックってどうしても、アメリカ南部の毛むくじゃらの男達の野太いロックをイメージしますので、日本ではあまり広まっていないのが現状ではないでしょうか?柏村さんも曲紹介しただけで多くは語らなかったのでしょう。(真相はわかりませんが・・・)

私の場合は<Alien>は聴いたことないですが、<イマジナリー・ラヴァー>を聴いて、アルバムを4枚程集めました。
なかでもライブアルバム≪アーユーレディー≫がお気に入りです。

やはり、サザンロックは、ジャック・ダニエル(妄想?)なんぞ飲みながら、時に熱く、時にゆったりとしたサウンドを楽しむのも醍醐味のひとつではないでしょうか!

投稿: かまぼこRock | 2017.06.08 20:55

かまぼこRockさん、コメントありがとうございます。

>サザンロックってどうしても、アメリカ南部の毛むくじゃらの男達の野太いロックをイメージしますので、日本ではあまり広まっていないのが現状ではないでしょうか?

イメージは確かにそんな感じですね。
柏村武昭がどう思ってたのかはわかりませんけど・・

><イマジナリー・ラヴァー>を聴いて、アルバムを4枚程集めました。

それはすごいですね。
ファンといって差し支えないのでは?

>なかでもライブアルバム≪アーユーレディー≫がお気に入りです。

「Are You Ready!」はライブ盤なんですね。
ジャケットがまたすごい盛り上がりな感じですね。

>やはり、サザンロックは、ジャック・ダニエル(妄想?)なんぞ飲みながら、時に熱く、時にゆったりとしたサウンドを楽しむのも醍醐味のひとつではないでしょうか!

そうですか・・
となると飲めないあたしはますますサザンロックを聴く資格がないような・・
「サザンロック聴くのにジンジャーエールなんか飲んでんじゃねえよ!」とぷく先輩からどつかれそうな気がします・・(妄想)

投稿: SYUNJI | 2017.06.09 21:30

SYUNJIさん

私もおなじく"Alien"をリアルタイムで聴いてAtlanta Rhythm Sectionの存在を知った人です。けっこう好きだったので収録されているQuinellaのCDを持っています。

実はこのアルバムを最初に手にいれたメディアはカセットテープでした。LPはもう売ってないしニーズもないからCD化もされてないような中途半端な時期に無性にこの曲を聞きたくなり、探していたらたまたま輸入盤やさんでカセットテープを見つけたのでした。
そこまでして手にいれたアルバムでしたが、Alien以外に気に入った曲はなかったです(笑)。

これ以外にも、90年頃に"So Into You"と"Imaginary Lover"の2曲を70年代ヒッツのコンピCDで聴いて彼らに興味を持ったことがありました。91年に過去作が再発されたので「ロックンロール魂」と「ベストオブARS」の2つを買って聞いてみたのですが、自分の予想とは違っていたようでその後ほとんど聴いていません。ARSは私の中では不完全燃焼で終わってしまったバンドになっています。

彼らはジャンル分けすればおそらくサザンロックなんでしょうけど、少なくとも私が聴いたアルバムはその匂いがほとんどありません。どちらかといえば楽曲はイーグルスに近いものがあります。イーグルスと言えばウエストコーストロック。サザンロックとウエストコーストロックって似てるんでしょうか・・・彼らが特殊なんでしょうか。なんだかわからなくなってきました。

投稿: Saki | 2017.06.10 01:32

Sakiさん、コメントありがとうございます。

>実はこのアルバムを最初に手にいれたメディアはカセットテープでした。

え、本当ですか?
それは今となっては貴重なメディアだと思いますが、まだお持ちなんでしょうか?

>そこまでして手にいれたアルバムでしたが、Alien以外に気に入った曲はなかったです(笑)。
>ARSは私の中では不完全燃焼で終わってしまったバンドになっています。

うーん、そうでしたか・・なかなか難しいバンドですね。
でもいろいろ聴いていくとそういうことってありますね。
自分もかなり前にプレイヤーというバンドの1曲だけ聴いて気に入ったのでベスト盤を買ったらそうでもなかった、という例がありました・・

>どちらかといえば楽曲はイーグルスに近いものがあります。

なるほど・・気がつきませんでした。
確かに言われてみると「Alien」はイーグルスの音にも似てますね。
アトランタ・リズム・セクションはアルバムごとの音楽性はかなり違うらしいので、サザン・ロックとひとくくりにはできないのかもしれないですね。

投稿: SYUNJI | 2017.06.10 20:42

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