聴いてみた 第136回 スティクス
2017年最初の「聴いてみた」シリーズ、今日聴いてみたのはスティクスの「The Grand Illusion」。
80年代にはそれなりに聴いていたスティクスだが、70年代のアルバムは全然聴いておらず、ヒット曲もライブとベスト盤でなんとか押さえてきた状態。
結成当時はプログレバンドだったそうだが、いきなりそこから学習するのはハードルが高いと考え、妥協と打算の結果このアルバムに手を出した次第。
つーかやっぱりプログレやってるスティクスってあんまし興味わかないんです。
初期のファンの方々には申し訳ありませんけど・・
さて「The Grand Illusion」は77年の作品で、バンドとしては7作目。
メンバーは以下のみなさんである。
デニス・デ・ヤング(Vo・K)
チャック・パノッゾ(B)
ジョン・パノッゾ(D)
ジェームズ・ヤング(Vo・G)
トミー・ショウ(Vo・G)
前作「Crystal Ball」でトミー・ショウが加わり、産業ロック(←褒め言葉)への転換を遂げたスティクスは、この作品でも全米6位を記録。
この後も「Pieces Of Eight」「Cornerstone」で同じような路線を歩み、「Paradise Theater」で頂点を極める・・というのがスティクス栄光の歴史である。
バンドの興業的飛躍におけるトミーの功績は相当でかいものがあるが、同時にデレク・サットンという人がバンドのマネージャーを務めたことも大きな要因だそうだ。
デレクさんはスティクスの前はイエスやサバスやジェスロ・タルなどのマネージャーもやっていたとのこと。
今回は珍しく池袋のユニオンで中古CDを買ったのだが、どこの中古CD店でもスティクスについてはそんなに在庫を置いていない(と思う)。
いくつか知っている曲もあり、不安を全く感じることなく購入。
果たしてあたしは無事に三途の川を渡ることができるでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1.The Grand Illusion(大いなる幻影)
ライブでは聴いていたが、スタジオ録音をまともに聴くのは初めてである。
やや大げさで仰々しいサウンドだが、オープニングにはふさわしい雰囲気。
デニスのボーカルだが、個人的にはこの曲ではあまり歌唱力を発揮できていないように聞こえる。
力強いメロディのわりに歌詞は少し困惑した心情を表現している。
2.Fooling Yourself (The Angry Young Man)(怒れ!若者)
この曲もライブで聴いている。
トミーの作品で、イントロからトミーの曲らしい旋律。
トミーのボーカルはデニスに比べ若干弱いが、このキーボードとアコースティックギター中心の路線は好きなサウンドだ。
3.Superstars
引き続きトミーが歌う明るいポップな曲。
てっきりトミー作だと思ったら、デニス、ジェームズ、トミーの共作だそうだ。
4.Come Sail Away(永遠の航海)
全米8位の大ヒット曲。
これはライブ盤とベスト盤で聴いていたはずだが、タイトルを連呼するサビしか記憶にない。
そのサビまでが意外に長く、壮大だが複雑で変化に富んだ構成。
中盤以降の間奏部分は結構プログレっぽいが、終盤は再びロックに戻る。
5.Miss America
この曲もライブ盤とベスト盤で聴いている。
ジェームズの作品でボーカルもジェームズ。
ノリのいいリズムだが明るい曲ではなく、ジェームズの声もそれほど好みではない。
6.Man In The Wilderness(荒野の旅人)
トミーが歌う物憂げな曲。
トミー・ショウは他のアルバムでもこうして明るい曲と暗い曲を対比する形で配置してくることが多い気がする。
7.Castle Walls(幻想の城)
哀愁に満ちたメロディ。
LPでいうB面はやや暗い曲が続くので、このあたりで少し飽きる。
8.The Grand Finale(幻影の終わりに)
デニス、ジェームズ、トミーの共作。
タイトルのとおりエンディングに用意されたものと思われる完結メロディで、1曲目と対になる形で終わる。
知ってる曲も結構あったので当然なのだが、想定どおりのスティクスの世界観である。
デニス、ジェームズ、トミーという3人のシンガー兼ソングライターがそれぞれ個性を発揮し、さらにリズム隊のパノッゾ兄弟が各曲をホールド。
バンドの一体感もすでに完成している。
若い頃に聴いてたらきっと愛聴盤になっていただろう。
大まかにいうとA面は明るくポップ、B面は暗くてハード、というコンセプトのようだ。
ミーハーな自分の好みは当然A面になる。
A面の4曲はどれも素晴らしい一方で、暗い曲がB面に偏ってるので、もう少し曲順を変えてみてもよかったんじゃないかと思う。
個人的な感覚だが、サウンドのあちこちにプログレの残り香を感じることができた。(錯覚?)
当然四天王のような理工学部系量子力学プログレではなく、文系プログレというかテニスサークル・プログレというかマスコミ研究会プログレというか、せいぜいそんな感じだけど。(全部意味不明)
「昔プログレをやっていた」という情報を仕入れてから聴いているので、そう感じるだけなのかもしれない。
トミー・ショウはスティクスの世界を拡張させた立役者として評価されているが、確かに作品はバラエティに富んでいて多彩である。
ただやはり明るいポップや軽快なロックで力を発揮するタイプだと思う。
あたしとしてはそっち系の曲だけで十分なのだが、これまで聴いてきたどのアルバムにも、トミーは暗めの曲を送り込んできている。
これはトミーだけでなくデニスもそうだ。
で、単純な話、自分はこの暗いスティクスはやや苦手だ。
このアルバムだと「Man In The Wilderness」「Castle Walls」あたりはどうも今ひとつ・・という感想になる。
もし子供の頃にLPを46分テープに落として聴いていたとしたら、B面に違う音楽を上書きしてた可能性も少しある。
まあトータルで聴けばそこはやはり信頼と実績のスティクスなので、敗北感はないのだが。
ジャケットはやはり元?プログレバンドらしく印象的なだまし絵だが、これはルネ・マグリットの「白紙委任状」という絵画作品をモチーフに作られたものだそうだ。
スティクスは数ある洋楽バンドの中では、ジャケットの出来がどれも非常にまともだと思う。
少なくともメンバーのダサい集合写真とかラシュモアの山に顔彫ったりとかメンバーの顔が火の玉に包まれて飛んでいったりなどといったポンチなジャケットはない。
(日本でのみ発売された「烈風」は論外だが・・)
というわけで、「The Grand Illusion」。
好みのレベルにおいては「Cornerstone」「Paradise Theater」にはやはり及ばず、特にB面に少し暗い曲が続くのでまるごと絶賛、という状態にはなりませんでしたが、聴いてよかったです。
トミー加入後の未聴盤「Crystal Ball」「Pieces Of Eight」も近いうちに聴いておこうと思います。
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。
以前の記事に「聞いたことがありません」と書きましたが、
その後、かなり聞きました。今ではすっかり気に入りバンドになりました。
プログレ時代(1~4枚目)も聞きましたが、大したことは
ありません。アメリカンプログレはカンサスに任せましょう。
このアルバムですが、私もA面収録曲の方が好きです。
「大いなる幻影」と「永遠の航海」が収録されているだけ
でも名作だと思います。
B面では人気の「ミス・アメリカ」がいいですね。これを
聞くと、TOTOのようにAORサウンドには行かなかったのが、
スティクスの個性だと思います。
あとやっぱり、コーラスが素晴らしいですね。
>>「Crystal Ball」「Pieces Of Eight」も近いうちに
数年前のライブで「The Grand Illusion」と共に
「Pieces Of Eight」を全曲演奏しており、本人達も気に入り
のようです。こちらをおすすめしておきます。
投稿: モンスリー | 2017.01.16 20:40
モンスリーさん、こんばんは。
>その後、かなり聞きました。今ではすっかり気に入りバンドになりました。
それはすごいですね。
自分は中年以降定着したバンドって全然ないんですが・・
>プログレ時代(1~4枚目)も聞きましたが、大したことはありません。
えーとそれは「プログレとしては大したことはない=難しくはない」なのか、「音楽として大したことはない=ショボい」なのか・・どちらですかね?
いずれにしても優先順位は低い感じですかね。
>TOTOのようにAORサウンドには行かなかったのが、スティクスの個性だと思います。
確かにそうですね。
スティクスの場合、ボーカル3人ともいわゆるAORサウンドには合わない声だと感じますね。
>数年前のライブで「The Grand Illusion」と共に「Pieces Of Eight」を全曲演奏しており、本人達も気に入りのようです。
なるほど。
でもこのライブではデニスはいないんですよね。
「Pieces Of Eight」も若い頃に一度聴いたような気もするのですが、あらためて学習してみようと思います。
投稿: SYUNJI | 2017.01.17 21:47