聴いてみた 第137回 エリック・クラプトン その2
今日聴いてみたのはエリック・クラプトンの最高傑作とも言われる名盤「Slowhand」。
昨年あたりからクラプトンの学習意欲はなんとか続いているが、前回聴いた「461 Ocean Boulevard」は決して自分に定着したわけではない。
イーグルスの各盤も同じような感想になるが、「ああいい音楽だなあ」とは思うが、「繰り返し聴きたいなあ」とはまだならない。
一生ならないかもしれないけど。
あまり無理して玉砕し以降一切聴かなくなりましたという展開も悲しいので、今回は知ってる曲も多い「Slowhand」を弱気のチョイス。
これでダメならこの先もうクラプトンを聴く資格はない。
そんな初心者向けマンション投資講座に向かう心境で池袋ユニオンにて617円で中古CDを購入。
「Slowhand」は77年発表。
チャートでは全米2位、全英23位を記録。
アルバムタイトルはヤードバーズ時代につけられたクラプトンの例のあだ名を使ったもので、由来はやはりギターの弦を切って交換する間に客席で起こった催促の拍手とのこと。
最近ネットや書籍でクラプトンに関するいろいろな文章を読んだが、スローハンドの由来については、やはり「ギターを弾く手の動きが早すぎてゆっくり動いて見える」という説は後からくっついた話のように思う。
「Slowhand」はブルースに回帰したアルバムと言われる。
「461 Ocean Boulevard」のような復帰途上のリハビリアルバムではなく、精力的にライブを行った勢いそのままでスタジオ入りし、心身ともに万全の体制で臨んだ力作とのこと。
全曲イギリスで録音され、プロデューサーはストーンズやツェッペリンのアルバムプロデュースでも有名なグリン・ジョンズ。
ブルース回帰盤と聞くと多少不安な面はあるが、知っている曲はそれほどどっぷりなブルースでもないので、まあなんとかなるだろう。
そんな「オレってインフルエンザにはかからないほうだから」と根拠もなくほざくバカサラリーマンのような思い上がった態度で聴くことにしました。
・・・・・聴いてみた。
1.Cocaine
オープニングは超有名な「コカイン」。
ただし発音はコケインである。
尊敬するアーチスト、J.J.ケイルのカバー。
ギターはもちろんクラプトン学習の教科書みたいにいい音がする。
全然明るくないのに、なぜか嫌いではない。
歌詞は「もし日常に飽きて逃げだしたいならコカイン」「不安を蹴飛ばしたいならコカイン」という薬物賛歌とも言える内容なのだが、クラプトンは逆説的にクスリとの決別を込めて歌っている、という説もあるようだ。
2.Wonderful Tonight
珠玉の名曲で、「日本では披露宴ソングの定番」と書いてあるサイトもあるけど、本当?
「Cocaine」との対比が象徴的な美しいバラードではあるが、先日読んだ本で、実は身支度や化粧の長いパティを皮肉った歌だと知った。
3.Lay Down Sally
軽快なリズムのカントリー風な曲。
これもベスト盤で聴いている。
4.Next Time You See Her
タイトルが思い出せなかったのだが、これもベスト盤で聴いていた。
少しのんびりしたゆるいリズム、どこかボブ・ディランのようにけだるそうに歌うクラプトン。
レゲエとカントリーをミックスしたような不思議な曲だが、いい曲である。
5.We're All The Way
初めて聴く曲である。
カントリー歌手のドン・ウィリアムスのカバーだそうだ。
ささやくようにクラプトンが歌い、左側奥から女性のバックボーカルが小さく聞こえる。
メロディは暗くはないが、クラプトンの声に抑揚がなく、やや重く感じる。
6.The Core
ギターやキーボードの音がなかなかかっこいいナンバー。
歌いだしがいきなり女性ボーカルで、クラプトンはむしろ後追いでサポートシンガーのように歌う。
この女性はボブ・シーガーのバンドにいたマーシー・レヴィという人で、曲もクラプトンとマーシーの共作とのこと。
ここまでで一番クラプトンのブルースギターが激しくうなる。
マーシーの声も曲調のわりには重くなくていい感じ。
7.May You Never
ミドルテンポでなんとなくジョージ・ハリスンのような雰囲気だが、曲はジョン・マーティンという人の作品。
8.Mean Old Frisco
一転どっぷりのブルース。
これもカバーで、作者はブルースミュージシャンのアーサー・クルーダップ。
サウンドは重いが、ギターの音は意外に悪くない。
9.Peaches And Diesel
ラストはインストナンバー。
リズムもメロディも「Wonderful Tonight」を少しいじったような感じで、安心して聴ける。
聴き終えた。
率直に言えば「461 Ocean Boulevard」よりもはるかに聴きやすい。
知っている曲も多かったせいもあるが、曲ごとの特徴は比較的はっきりしており、それがどれも自分にとってそれほど苦手な音ではなかったと思う。
クラプトン自身の充実した気力が伝わる作品である。(知ったかぶり)
多くの方々が名盤と評するのが少しだけわかった気がする。
グリン・ジョンズはこのアルバムで初めてクラプトンのプロデュースをすることになったが、それまでクラプトンに対してはあんましいい印象を持っていなかったらしい。
クスリや酒におぼれたダメなミュージシャンだと聞いていれば当然だとは思うが、実際アルバム作成にとりかかっても、クラプトンは怠け者ですぐスタジオを抜け出して外にサッカーしに行ってしまい、その度にグリンがスタジオに連れ戻してギターを弾かせたそうだ。
なのでグリン指導官がいなければ、おそらくこの名盤も生まれなかったということになる。
なんかこのグリン・ジョンズといいキース・リチャーズといい、「クラプトンは怠け者」って評判が多い感じですけど、こうなるとやっぱホントに怠け者なんでしょうね。
さてクラプトン。
この名盤を聴いて自分の中で評価が変わったかというと、まだはっきりとはわからない。
「Slowhand」は繰り返し聴きたいか?と八名信夫にすごまれたらうまく答えられるか不安なレベル。(伝わらない)
今のところまだクリームの音のほうが自分には合っているという感覚は変わらない。
やはりもう少し学習を継続する必要がありそうだ。(当たり前)
というわけで、「Slowhand」。
このアルバムは聴いて良かったです。
・・・ですが、この先どうしたらいいのか、少々迷っています。
70年代のアルバムとなると「Eric Clapton」「安息の地を求めて」「No Reason to Cry」が残っていますが、それよりは80年代の作品のほうが自分の耳には合いそうな気もするので・・・(いいから聴けよ)
いずれにしろ、近いうちに別の作品にトライしようと思います。
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。
私は80年代後半の派手派手しいクラプトンから入りました。
ですので、70年代のアルバムは総じて「地味」に聞こえましたが、
そのうちによさがわかるようになりました(あくまでも自分なりに)。
「スローハンド」は傑作です。冒頭3曲の代表曲もよいですが、
なんといっても「ザ・コア」のかっこよさにしびれます。
ギターのリフ、クラプトンと女性ボーカルのかけあい、疾走感の
あるキーボードなどなど、「ロックなクラプトン」全開です。
しかし、アルバム発表後の一時期を除いてライブでは
演奏されません。実に惜しいです。
>>グリン指導官がいなければ、おそらくこの名盤も生まれなかった
ある方によると、ミュージシャンは「叱ってくれる第三者」が
いないと、よいアルバムを制作できないのだそうです。
最近のクラプトンやベックのアルバムがパッとしない(異論は
多数ありそうですが)のは、
このお歴々が偉大になりすぎて、叱る気骨のある人が周りに
いないから、ということでした。
>>70 年代のアルバムとなると
「eric Clapton」は名曲が多いですが、すごくレイドバック
しています。「No Reason to Cry 」は、「スローハンド」に
近い感触ですが、多彩なゲストを招いていて楽しいです。
どちらもおすすめできます。
投稿: モンスリー | 2017.01.31 20:52
SYUNJIさん、こんにちは。
私は、クラプトンには惹かれずに、ジェフさんに走ったものですから
作品も「461オーシャン・ブルーバード」と定番の「いとしのレイラ」しか持ってません・・・
どちらも結構好きなほうですが、語るほどの思い入れはありません(笑)
>ギターの弦を切って交換する間に客席で起こった催促の拍手とのこと。
どういう意味ですか?「早く弦を張ってお前の最高のプレイを聴かせてくれよ」!!との催促なのか・・・
私はずっと後者の説だと思っていました。
収録曲の「ワンダフル・トゥナイト」は知っていますが結婚式の定番なんですね、それは意外だなぁ~
私も本当かどうか疑います・・・(笑)
CDは持っていませんけど、80年代の「オーガスト」だったかな?
「ハスラー2」の主題歌が入っているやつとか「ジャニーマン」とか聞き易くてかっこいい印象があります
私が中学生の頃には、もう表に出ない伝説的なギタリストのイメージだったので、
アルバムが発売された時は驚きでした・・・
「あぁ!!まだ現役なんだ・・・って」←失礼極まりない。
超有名なレジェンドって感じなんですけど、プライベートでよく来日するそうですね・・・
神様はどんだけラフなんだろうか・・・って思います(笑)
投稿: bolero | 2017.02.01 12:29
モンスリーさん、コメントありがとうございます。
>私は80年代後半の派手派手しいクラプトンから入りました。
うーん・・自分もいちおう導入は同じですが、まだ良さがわかるレベルにはなっていないですね。
>なんといっても「ザ・コア」のかっこよさにしびれます。
これは同感ですね。
ちょっと意外な感じの曲ですが、いい曲だと思います。
ライブでは演奏しないってのは残念ですけど、なんか権利関係の事情でしょうか。
>ある方によると、ミュージシャンは「叱ってくれる第三者」がいないと、よいアルバムを制作できないのだそうです。
そうなんでしょうね。
アーチストって自由人が多いみたいですから、その才能を最大限発揮させるためには叱る役の人間が必要なんでしょうね。
>「Eric Clapton」は名曲が多いですが、すごくレイドバックしています。
うーん・・そこがどうも躊躇するところだなぁ・・
レイドバックなサウンドにはまだあまりなじめてないんですよ。
だとすると「No Reason to Cry」から聴いたほうが良さそうです。
投稿: SYUNJI | 2017.02.02 21:33
boleroさん、こんばんは。
>どちらも結構好きなほうですが、語るほどの思い入れはありません(笑)
自分も今のところどちらも同じくらいのアルバム数を聴きましたが、語れるほどには至らないですね。
>私はずっと後者の説だと思っていました。
イギリスでは劇や歌を早く始めろという意志表示として、観客がゆっくりした拍手(はーやーくー、はーやーくー、みたいな感じなのか?)をするという慣習?があり、それをスローハンド・クラップというそうです。
クラプトンがステージで演奏中にギターの弦を切ってしまい、演奏を中断してモタモタと弦を張り替えていると、客席からスローハンド・クラップが起こった、という話ですね。
で、弦を切ることが度々あったクラプトンについたアダ名が「エリック・スローハンド・クラップトン」だそうです。
>CDは持っていませんけど、80年代の「オーガスト」だったかな?
あ、自分も最初に聴いたのは「オーガスト」です。
「Tearing Us Apart」が結構気に入ってたんですが、思ったほど定着しませんでした・・
>超有名なレジェンドって感じなんですけど、プライベートでよく来日するそうですね・・・
そういえば昔はよく格闘技の試合を見に来日してましたね。
K-1を東京ドームで見ていた時、ビジョンに客席にいたクラプトンの顔が映し出されて場内が騒然としたことがありました。
投稿: SYUNJI | 2017.02.02 21:55
こんにちは、JTです。
モンスリーさんもおっしゃっていますが、冒頭の3曲は本人も気に入っているようで、ライブでもおなじみの曲ですね。
>>なんといっても「ザ・コア」のかっこよさにしびれます。
>ライブでは演奏しないってのは残念ですけど
70年代は演奏していたようです。ライブのボックスセット「CROSSROAD 2」に収録されています。
これを聴く限り、熱くかっこいい演奏です。
ぜひまたライブでやって欲しいですね。
>8.Mean Old Frisco
これはデレク&ザ・ドミノスの幻のセカンドアルバムでも取り上げられていました。
「レイラ」のデラックスエディションで聴くことができます。
>この先どうしたらいいのか、少々迷っています。
>「Eric Clapton」「安息の地を求めて」「No Reason to Cry」
私の好みは以前も言いましたが「安息の地を求めて」ですが、「461」を地味した感じなので、後のドミノスのメンバも全員参加している「Eric Clapton」はどうでしょうか。
ではでは。
投稿: JT | 2017.02.04 13:51
JTさん、こんばんは。
クラプトンにはシビアなJTさんだと思ってましたが、意外に?温かい評価ですね。
>70年代は演奏していたようです。ライブのボックスセット「CROSSROAD 2」に収録されています。
そうなんですか・・封印というわけでもないようですが、今はなぜライブで演奏しないのだろう?
>これはデレク&ザ・ドミノスの幻のセカンドアルバムでも取り上げられていました。
あ、そうなんですね。
幻のセカンドアルバムですか・・
そういえばデレク&ドミノスはいちおうアルバムは聴いたんですけど、「レイラ」以外はほとんど印象に残ってません・・悪くはなかった記憶はあるんですが。
>私の好みは以前も言いましたが「安息の地を求めて」ですが、「461」を地味した感じなので、後のドミノスのメンバも全員参加している「Eric Clapton」はどうでしょうか。
うーん・・そうですか・・
「安息の地を求めて」は「461」を地味にした感じですか・・
それもまた難しそうだなぁ・・
グダグダ言ってないでさっさと全部聴けよって話ですよね・・
中古CD店で安い順に聴いてみます。(貧乏人)
投稿: SYUNJI | 2017.02.04 21:44