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聴いてみた 第135回 ローリング・ストーンズ その16

前回のストーンズ学習から早くも1年以上が経過してしまった。
もう主なアルバムはだいたい聴いてみたという思い上がったつもりでいたが、先日読んだブライアン・ジョーンズの伝記本に触発されて、ブライアン在籍中の未聴アルバムを学習することにした。
1965年発表の「Out Of Our Heads」である。

Our_heads_2

アルバムタイトルはなんとなく知っていたが、調べてみるとけっこう複雑な事情のもとに発表されている。
まずイギリス盤とアメリカ盤で収録曲が大幅に違う。
曲数はどちらも12曲だが、英米共通の収録曲は半分の6曲しかない。
なによりアメリカ盤にある「Satisfaction」が、イギリス盤には収録されていないのだ。

また公式アルバムとしてもイギリスでは3枚目、アメリカでは4枚目にあたる。
ジャケットも全然違うので、タイトルこそ共通だけど別の作品と考えてよさそうだ。
イギリスとアメリカで中身の違うレコードになっている、というのはビートルズでもあるけど、半分しか共通曲がないというのもややこしい話だ。

さらに。
アメリカでは次のオリジナルアルバムとして「December's Children (And Everybody's) 」が同じ年の年末に発表されているが、これがイギリス盤「Out Of Our Heads」の収録曲といくつかかぶっていて、ジャケットも同じ写真を使っている。
「Out Of Our Heads」の実績としては、イギリス本国ではアメリカ盤が1位を記録したが、イギリス盤は最高2位に終わっている。
うーん・・結果はともかく、そこまで国別に戦略を変える必要があったんだろうか?

自分は今回渋谷のレコファンで中古CDを買ったのだが、確認したらアメリカ盤のデジタルリマスターであった。
大英帝国のストーンズについて、アメリカ盤で「聴いてみた」と宣言してよいものか少し心配にはなったが、年末の忙しいさなかにこんな力のないBLOGなんてどうせ誰も見ていないので、開き直って聴くことにした。
うっすら調べたところでは、どうやらアメリカ盤のほうが世界中でより出回っているらしい。
日本でも発売されたのはアメリカ盤と同じ内容だそうだ。
なので今後たぶんイギリス盤は買わないと思う。
安けりゃ買ってもいいんだけど。

目玉はもちろん「Satisfaction」である。
ここからストーンズを追い始めたという元少年の熱き文章が、ネット上のそこかしこに置いてある。
今まで聴いてみた初期作品の「12×5」「Aftermath」はいずれも良かったので、今回もほとんど不安はない。
果たしてブライアン・ジョーンズはわたくしの心にどのような音を響かせるのでしょうか。(安い表現)

・・・・・聴いてみた。
 
1.Mercy, Mercy
若きミックの魅力あるボーカルが全開である。
まずはスタートからいい感じ。
ドン・コヴェイ&ザ・グッドタイマーズというバンドのヒット曲のカバー。
オリジナルのほうの録音にはジミ・ヘンドリックスが参加してるそうです。

2.Hitch Hike
路線は前の曲に似ている。
単調なメロディだが、間奏の甲高いギターがアクセントになっている。

3.The Last Time
ジャガー&リチャードのオリジナル。
この曲は粗野なイメージがなく、どこかビートルズを思わせるコーラスワーク。
意外なサウンドだが、悪くない。

4.That's How Strong My Love Is
ルーズベルト・ジェイミソンという人の作品。
ワルツ調のリズムにミックのガサツなボーカルが乗っかってこれまた意外な音になっている。

5.Good Times
なんとなくレゲエっぽいゆるいリズムにほのぼのサウンド。
ミックは結構器用に歌っている。

6.I'm All Right
この曲だけライブバージョンで、疾走感に満ちたロック。
観客の叫び声がかなり近い感じで聞こえるので、それほど大きな会場ではないように思う。

7.(I Can't Get No) Satisfaction
言わずと知れたストーンズ初期の名曲だが、フルコーラスを真剣に通して聴くのは初めてである。
もっと粗暴で早いスピードのイメージがあったが、あらためて聴くとそうでもない。

8.Cry to Me
これもワルツのリズムだが、バラードのように始まり、サビはブルースでミックがシャウト。
後半よく聞こえるベースラインが意外にいい。

9.The Under Assistant West Coast Promotion Man(ウエストコーストの宣伝屋)
同じメロディが延々続くやや単調な曲で、ハーモニカはブライアン・ジョーンズ。
ナンカー・フェルジ名義となっているが、元はバスター・ブラウンという人の「Fannie mae」という曲だそうだ。

10.Play with Fire
フォークソング風の静かなサウンド。
ハープシコードの音が聞こえるが、これはジャック・ニッチェの演奏とのこと。

11.The Spider and the Fly(クモとハエ)
どんよりしたブルース。
ネットで調べるとこの曲を一番に推す人も多いが、自分の好みからは少しはずれている。
玄人好みの一曲ということだろうか。
終盤でブルース・ハープを吹いているのはミック。

12.One More Try
ラストはロカビリーのようなノリのいい曲。
誰かのカバーかと思ったが、これはジャガー&リチャードの作品。

全体としては非常に聴きやすい印象である。
若きストーンズがリズム&ブルースを彼らなりに実直に表現しており、ミックのボーカルも比較的おとなしい。
「Satisfaction」は先鋭的な曲として語り継がれることになるが、今あらためて聴いてみると思ったほど粗暴でも野蛮でもなく、わかりやすいリズムとメロディである。
この曲での成功が後の「Jumpin' Jack Flash」につながっているのがよくわかる。

ストーンズとしての多面性が表面化するのはこのアルバムの次の「Aftermath」からだと思われる。
「Aftermath」は全曲ジャガー&リチャードのオリジナルであり、使用した楽器の種類も格段に多くなっている。
そういう意味では今回聴いた「Out Of Our Heads」は、まだカバーを多用する自立前時代の最終作品ということになる。

ブライアン・ジョーンズの演奏については、使用楽器はギターの他にはハーモニカとオルガンとなっている。
だがどの音がブライアンによるものなのかがあまりわからず、CDには解説もなかったので残念ながら評価のしようがなかった。
この点はもう少しネットで確認したり、詳しい人からの指導が必要である。

さて前述のとおりアメリカ盤とイギリス盤ではジャケットも違うのだが、アートとしてはイギリス盤のほうがいいと思う。
イギリス盤のほうが隙間からのアングルや構図に工夫があるし、メンバーの表情もきりっとしたイギリス盤に比べ、アメリカ盤のほうはどうもぼんやりした印象である。

ところで、タイトルの「Out Of Our Heads」とはどういう意味なのだろうか?
直訳すると「俺達の頭の中から」だと思うけど、それではいったい何のことやらである。
俗語では「酒や薬でフラフラ」「正気じゃない」といった意味にもなるようなので、「オレたちイカレてるぜ!」みたいな感じなのだろうか・・?
この後ブライアンが本当にイカレて死んでしまったので、もしそういう意味でタイトルにしてたらとても皮肉な話なのだが・・・

ということで、「Out Of Our Heads」のアメリカ盤。
「12×5」「Aftermath」に比べてややインパクトは弱いものの、全体的には聴きやすく良かったと思います。
次回もブライアン在籍時代の「Between the Buttons」を聴いてみようかと考えております。

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
年の瀬の押し迫った時期に失礼します。

この作品は聞いたことがありません。手持ちの「ホットロックス」
という初期ベスト盤に2曲入っていましたので、聞き直しました。
1つは「Play with Fire」です。なんと、ベスト盤の1枚目3曲目
に収録されています。ひょっとして重要曲? と思って聞きましたが、
ブルースで粗野なイメージとはかけ離れた曲ですね。
もう1つは「サティスファクション」でした。ベスト盤では、上記の
曲に続いて4曲目に入っています。

この収録順から妄想すると、ストーンズらしさ、ストーンズの重要曲
は、今回紹介されている「Out Of Our Heads」移行に量産された
のかな? と思ったりもします。

ところで「サティスファクション」のイントロのギターは、
リチャーズが考えたのでしょうか。やっぱり天才ですね。
このオリジナルテイクを聞くと、最近のライブ演奏での
ゴージャス感はありませんが、60年代ビートバンドの趣が
感じられていいですね~。

それでは、よいお年をお迎えください。

投稿: モンスリー | 2016.12.30 21:56

モンスリーさん、コメントありがとうございます。

>この作品は聞いたことがありません。

おっとそうでしたか。
モンスリーさんならイギリス盤を持っているんじゃないかと勝手に思ってましたが・・

>この収録順から妄想すると、ストーンズらしさ、ストーンズの重要曲は、今回紹介されている「Out Of Our Heads」移行に量産されたのかな? と思ったりもします。

おそらくそうだと思います。
このアルバムではまだカバーが多数ありますので、記事にも書きましたがストーンズとしての多面性が表面化するのは次の「Aftermath」からではないでしょうか。

>ところで「サティスファクション」のイントロのギターは、リチャーズが考えたのでしょうか。

ネットで調べると色々な話が見つかりますが、アイディアは確かにキースの発想らしいですね。
あの印象的なギターの音は、キースがギブソン社のエフェクターのサンプル品を試してみたものだそうです。

今年も色々とご指導いただきありがとうございました。
来年も引き続きよろしくお願いします。
モンスリーさんも良いお年を。

投稿: SYUNJI | 2016.12.31 16:20

こんばんは、JTです。

以前、「サタニック・マジェスティーズ」より前のオリジナルアルバムを聴いた事がない、と発言しました。その後、「モノ・ボックス」なるものが発売されましたので、思い切って買ってみました。まだ全て聴いていないのですが、今回SYUNJIさんが「Out Of Our Heads」UK盤を取り上げられたので聴いてみました。

やはり「The Last Time」、「Satisfaction」の2曲の出来が飛びぬけていますね。

>もっと粗暴で早いスピードのイメージがあったが、

70年以降のライブ音源のイメージが強いのかと思います。

>ジャケットも違うのだが、アートとしてはイギリス盤のほうがいいと思う。

たまたまと思いますが、ブライアンの立ち位置が後ろで顔が小さいく写っていますね。

>ハーモニカはブライアン・ジョーンズ。

1つもバンドで2人のハーモニカ担当がいるのも珍しいですね。大抵はボーカルが担当している場合が多いですが、ストーンズの場合だと、ボーカルに被せてハーモニカの音を出せるという利点がありますね。

>「Out Of Our Heads」は、まだカバーを多用する自立前時代の最終作品

ビートルズでいうと「For Sale」の位置づけでしょうか。

というわけで今年もよろしくお願い致します。

投稿: JT | 2017.01.01 20:54

こんばんは、JTです。

あれコメントしたら
「スパムコメント対策のため、このコメントは非公開の状態で受け付けました。記事投稿者が内容の確認を行います。」
と出ました。

NGキーワードがあるのでしょうか?

投稿: JT | 2017.01.01 20:58

JTさん、コメントありがとうございます。
すみません、以前外国から売り込み系の迷惑コメントが連続投稿され、ブロック対策したのですが、そのNGワードが「sale」でした。

>その後、「モノ・ボックス」なるものが発売されましたので、思い切って買ってみました。

これすごいですね、CD15枚組ですか・・
「Out of Our Heads」はUS・UK盤両方入ってるんですね。

>たまたまと思いますが、ブライアンの立ち位置が後ろで顔が小さいく写っていますね。

アメリカ盤は顔全体が写っているのがキースだけですね。
イギリス盤は小さいですが一応全員顔全体がなんとか写ってますし、モノクロ写真も味があっていいと思います。

>1つもバンドで2人のハーモニカ担当がいるのも珍しいですね。

言われてみるとそうですね。
確かにライブでもボーカルにハーモニカをかぶせることができますね。
バンド結成当時ブライアンはミックにハーモニカを、キースにギターを教えていたそうですが、ミックは素直に学んだもののキースはブライアンの指導にはほとんど従わず、チャック・ベリーのマネばかりしていたそうです。

>ビートルズでいうと「For Sale」の位置づけでしょうか。

そう思います。
「For Sale」も14曲中6曲はカバーですね。

こちらこそ今年もよろしくお願いいたします。

投稿: SYUNJI | 2017.01.01 22:26

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