聴いてない 第220回 ハンブル・パイ
先日のボブ・ディランのノーベル文学賞受賞騒動、いったい何だったんでしょうか。
マスコミが「ディランは傲慢」で見出しも本文も止めちゃったもんだから日本中のディランのファンが委員会に対して「お前らのほうが傲慢」と総ツッコミ。
中には「お前らはディランを全然わかっていない」と親戚みたいに突っ込んじゃった人までいたのに、実は委員会側も「傲慢だがそれが彼というものだ」と理解した上での授与であったことが後から発覚。
発覚というかマスコミが委員会の見解を正しく報じなかっただけのようですけど。
さらにその後ディランが委員会側に対して「授賞式には行けたら行く」と大阪のおっさんみたいな返事をしており、自称「ディランをわかっているファン」の人をさらにあわてさせる展開に。
結局はマスコミもファンもディランのことをあんましよくわかっていないということですかね。
「行けたら行く」「考えとくわ」は大阪人ならNOの返事だそうですけど、果たして授賞式にディランは現れるのか?
ディランのことを何もわかっていない自分も固唾を飲んで見守りたいと思います。
さて今日のお題はハンブル・パイ。
ディランともアンナミラーズともあまり関係はなさそうですが、とりあえず名前を知ってるだけで1曲も聴いたことはなし。
特にぷく先輩に「聴けたら聴く」とか生返事していたわけではないけど、触れる機会もなくこの歳まで生きてきた状態。
こんな珍奇BLOGを始めて13年近くになりますけど、13年経ってもまだこういった案件が出てくるってのも救いようのない話ですが。
仕方なくハンブル・パイについてパイ生地をめくるようにうっすらと調査。
ハンブル・パイは1968年にスモール・フェイセズのリーダーであったスティーヴ・マリオットとハードのピーター・フランプトンを中心にイギリスで結成。
フランプトンの誘いでグレッグ・リドリーとジェリー・シャーリーが加入し、ハンブル・パイとして活動を開始。
メンバーそれぞれが別のバンドで成功体験を持つというスーパーグループの誕生であった。
なおハンブル・パイとは直訳すると「粗末なパイ」「面白くないパイ」という意味だが、「鹿の内臓で作ったパイ」の意味もあるらしい。
鹿の内臓ってのはなんだ?と思ったら、その昔イギリスでは鹿狩りに出かけた主人が、狩りの成果として仕留めた鹿の内臓を使ってパイを作り、使用人たちに分け与えたという習慣?みたいなものがあり、このパイがハンブル・パイと呼ばれた、ということだそうです。
鹿の内臓パイ、うまいんだろうか・・・
そんな鹿の内臓バンドは69年にアルバム「As Safe As Yesterday Is」をリリース。
70年にA&Mレコードへ移籍し、バンドと同名アルバム「Humble Pie(大地と海の歌)」を発表。
ここから音楽性も変化し、プログレやブギーといった志向を採り入れていく。
しかし71年の「Performance Rockin' The Fillmore」を最後にフランプトンはバンドを脱退。
後任にデイヴ・クレムソンが加入し、バンドはマリオットを中心とするブルース・ソウル路線に傾倒していく。
新生ハンブル・パイは72年に不朽の名作と言われる「Smokin'」を発表し、全米6位を記録。
翌年の2枚組アルバム「Eat It」は、一瞬アル・ヤンコビックの顔が浮かんでしまうようなタイトルだが、AからC面がR&Bのスタジオ録音、D面だけライブという変則構成で、これも大ヒット。
このアルバムでストーンズの「Honky Tonk Women」やレイ・チャールズの「I Believe to My Soul」をカバーしている。
だがこの頃からバンド内は摩擦が生じ始め、75年には解散してしまう。
1980年にマリオットとシャーリー、さらに元ジェフ・ベック・グループのボブ・テンチ、アンソニー・ジョーンズを加えた4人でハンブル・パイを再結成。
「On To Victory」「Go For The Throat」の2枚を出すものの、セールス的には振るわずチャート100位にも入ることなくやはり解散。
解散後もジェリー・シャーリーが時々ハンブル・パイを名乗って活動していたらしいが、ほとんど話題になることはなかったようだ。
90年代になってようやくマリオットとフランプトンが歩み寄りを始め、ハンブル・パイ再結成も近いと思われた。
しかしスティーヴ・マリオットは91年に寝タバコで火事を起こしてしまい44歳の若さで亡くなった。
このマリオットの死によって、純正ハンブル・パイ再結成は永久に不可能となってしまう。
21世紀になってからは時々再結成を行うが、いずれも一時的なものに終わっている。
ハンブル・パイ名義の公式アルバムは2002年の「Back On Track」が今のところ最後である。
この時のメンバーはグレッグ・リドリー、ジェリー・シャーリー、ボブ・テンチ、テイブ・コルウェルで、ピーター・フランプトンは参加していない。
なおグレッグ・リドリーは2003年に亡くなっている。
以上がハンブル・パイの略歴だが、知ってた話はひとつもない。
80年代の再結成とか91年マリオット焼死なんてどこかで聞いていてもおかしくなさそうだが、残念ながら柏村武昭はこのあたりは教えてくれなかった。
スティーヴ・マリオットは元スモール・フェイセズという肩書きなので、そこにピーター・フランプトンも加わってのスーパーグループというのはなんとなくわかるんだけど、そもそもスモール・フェイセズもピーター・フランプトンも全然聴いてないので、スーパーグループとしてのハンブル・パイのありがたみは全くわかっていない。
実は未だにエイジアのありがたみがわかっていないのと似ている。(違うような気もするけど)
ハンブル・パイというふわふわしたイメージから、勝手におだやかで軽いサウンドを想像していたが、全く違うようだ。
ネットで調べると、デイヴ・クレムソンのギターとスティーヴ・マリオットのボーカルが見事な調和で素晴らしいロックを聞かせる、という評価が非常に多い。
中には「ツェッペリンに匹敵するポテンシャル」「ペイジ&プラントを思わせる」と書いてあるサイトもあった。
ただしスティーヴ・マリオットの声はロバート・プラントのように金属的ではなく、ハイトーンではあるがハスキーなしゃがれ声だそうだ。
フランプトン脱退の理由はよくある「音楽性の違い」とのことだが、スティーヴ・マリオットは黒っぽいブルースやハードな音楽を追求したがっており、対してフランプトンはポップでアコースティックな音を好んでいたらしい。
もちろん聴いてみないと何にもわからないのだが、そうだとすれば自分の好みに合うのはフランプトン脱退以降である可能性が高い。
どっちもダメな恐れもあるが・・・
いずれにしろフランプトンは脱退後にソロで大成功しており、お互いの道を歩んで正解だった、ということだろう。
ネットでの評価では「Smokin'」「Eat It」の人気が特に高いようだ。
これまで全く視野に入ってこなかったバンドであるが、スティーヴ・マリオットの声やサウンドにわずかに興味がわいている。
上記2枚も含め、おすすめのアルバムを教えていただけたらと思います。
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。
ハンブル・パイは、スティーブ・マリオットとともに
名前だけ知っていました。一度も聞いたことがありません。
>>ふわふわしたイメージから、勝手におだやかで軽いサウンドを想像
私は全く逆で、60年ブリティッシュ・ハード・ブルースを勝手に
想像していました。多分、なにかの評論で読んだのだと思います。
SYUNJIさんの記事で、「Performance Rockin' The Fillmore」
にフランプトンが在籍していたことを知りました。これ、たまに
ロック評論で見かけます。
フランプトンは「カムズ・アライブ」しか聞いたことがありません。
しかしガッツあふれるロックで、好きです。ですので、
「Performance…」も「おおっ、聞かなければ!」と思いました。
思いましたが、「やっぱりハードブルース路線かも」と
思うと、二の足を踏んでしまいます。
とりあえずアマゾンあたりで「Smokin'」「Eat It」を試聴してみます。
投稿: モンスリー | 2016.11.09 21:33
モンスリーさん、コメントありがとうございます。
>スティーブ・マリオットとともに名前だけ知っていました。一度も聞いたことがありません。
え、そうだったんですか?なんか意外ですね。
自分はマリオットの名前もうろ覚え程度でしたが・・
>フランプトンは「カムズ・アライブ」しか聞いたことがありません。しかしガッツあふれるロックで、好きです。
「カムズ・アライブ」はやはり高い評価ですね。
自分が初めてフランプトンを聴いたのはもう12年前ですが、ガッツあふれるロックのはずが全く自分には定着せず、どんな音だったのかもう思い出せません・・
なので初期ハンブル・パイもおそらく玉砕する可能性大と思われます。
>とりあえずアマゾンあたりで「Smokin'」「Eat It」を試聴してみます。
自分もこのあたりからおそるおそる試してみようかと思います。
投稿: SYUNJI | 2016.11.10 15:55
SYUNJIさん初めまして。
ハンブルパイはsuperflyがHot 'N' Nastyをカヴァーしていた所為もあるのか
収録アルバムのSmokin' はTSUTAYAに良く置いてありますね。
投稿: ノエル | 2016.11.19 23:51
ノエルさん初めまして、コメントありがとうございます。
>ハンブルパイはsuperflyがHot 'N' Nastyをカヴァーしていた所為もあるのか収録アルバムのSmokin' はTSUTAYAに良く置いてありますね。
えっそうなんですか?
それはどちらも知りませんでした。
実は日本のアーチストも全然聴いてないのですが、superflyだけは好きでシングルだけですが少し聴いています。
そういえばカバー集のアルバムがありましたね。
教えていただいてありがとうございます。
ハンブル・パイとともに探してみようと思います。
投稿: SYUNJI | 2016.11.20 20:36
はじめまして!わたしはハンブルパイとスティーブマリオットが大好きですが、ハンブルパイはサンダーボックスがおススメです。
世間的にはスモーキンが代表作ですが、これは70年代のブルースを基調にしたブリティッシュハードロックです。
サンダーボックスはハードギターを抑えつつもファンク色をより強めた作品です。
ハンブルパイはブラッククロウズに特に影響を与えています。
投稿: まさけん | 2017.10.25 14:54
まさけんさん、初めまして。
コメントありがとうございます。
>世間的にはスモーキンが代表作ですが、これは70年代のブルースを基調にしたブリティッシュハードロックです。
>サンダーボックスはハードギターを抑えつつもファンク色をより強めた作品です。
なるほど・・と言ってもあまりよくわかってませんが、やはり作品ごとに特徴は異なるようですね。
自分にはハードロックなほうが合う可能性もありますが、ご紹介の2枚を聴き比べてみるといいのかもしれないですね。
投稿: SYUNJI | 2017.10.25 21:34