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聴いてみた 第134回 ポール・マッカートニー

今日聴いてみたのはポール・マッカートニーのソロアルバム「McCartney」。
吉祥寺のパルコで開催された中古CDフェアで見つけて1488円で購入。
開催と言えば壮大な感じだが、買った時に場内にいた客は自分だけだった。
もうCDなんて中古でも売れない時代になってることを痛感。
なお自分が買ったのは1995年に発売された再発版である。

Mccartney

さて。
「McCartney」は1970年に発表されたポール初のソロアルバムであることは、ファンなら誰でも知っている。
しかし発表に至った経緯は、ビートルズ後追い世代である自分は今回ネットで調べてみて知ったことも多い。
大まかには以下のようだ。

69年9月:アップル社で行われたレコード会社との契約会議の席で、ジョンがビートルズ脱退の意志表明。(表沙汰にはならず)
69年末まで:ジョン脱退宣言のショックで、ポールがスコットランドに引きこもる。
69年末:持ち直したポール、ロンドンの自宅でソロアルバム用の録音開始。
70年2月:ポール、アビー・ロード・スタジオで「Every Night」「Maybe I'm Amazed」などを録音。
70年3月:ビートルズの「Let It Be」、リンゴのソロ、ポールのソロの発売順序を巡ってポールがアラン・クレインともめるが、結局リンゴのソロ→ポールのソロ→「Let It be」の発売順で落ち着く。
70年3月27日:リンゴのソロアルバム「Sentimental Journey」発売。
70年4月10日:ポール、マスコミ向けサンプル版でビートルズ脱退表明。すぐに新聞で報道される。
70年4月17日:「McCartney」発売。(アメリカでは20日、日本では6月25日)
70年5月8日:「Let It be」発売。(アメリカでは18日、日本では6月5日)

この流れで見ると、一般のファンはポール脱退をニュースで知り、さらにソロアルバム発表を知ってあわててレコード買う、ということになる。
どこまでがポールの意志によるものなのかわからないが、脱退宣言をソロアルバムのセールスに利用した、と見られるのもしょうがないタイミングだ。
実際この後長きにわたってポールは「ビートルズを解散させた男」として非難されることになり、この動きはジョンやジョージの不信を買うことにもなった。
メンバーもファンもレコード会社も事務所も大混乱の中で発表されたのが「McCartney」ということのようだ。

結果的にはジョンがこのポールのソロを作る動機になったと言える。
ジョンはビートルズ在籍中でありながらヨーコとともに独自の活動をすでに始めていて、ライブもやり始めていた。
ジョンの脱退意志を知らなかったポールは、ライブを始めたジョンに期待を寄せて「じゃあまた小さなクラブでギグでもどう?」と持ちかけたが、ジョンの回答は「オマエ何言うてんねん、オレもうビートルズやめたいんや」くらいにつれないものだったのだ。
ポールはショックで田舎に引きこもり、リンダの励ましによって蘇生する、というドラマな展開。
仮定は全く無意味だが、もしジョンがポールのライブ提案にもう少しゆるい回答をしていたら、ポールのソロアルバム誕生はもっと後になっていたのだろう。

これは全く自分の個人的な戯言なので「もっと勉強しましょう」とかのお説教はご遠慮願いたいけど、最初に脱退表明したのはジョンだったが、ジョンはもしかするとどこかで「ポール、オレは抜けるけどバンドはよろしく頼む」と思っていたのではないだろうか。
ポールがいればビートルズはなんとかなるだろうし、機会があればまた戻ってもいいし・・くらいに思っていたら、予想以上にポールが深刻に受け止めちゃって、ジョンより先に脱退宣言が表面化。
確かめる術はもうないけど、このあたりのズレが騒動を大きくしたんじゃないかなぁ・・などと勝手に思います。

いずれにしても「あのポール・マッカートニーがビートルズを脱退して初のソロアルバムを発表!」って、これ以上ないくらいのアオリであることは間違いない。
もし当時ネットがあったらYahooニュースでもダントツのトップニュースだったはずだ。
当時のナウいヤングの千々に乱れる心に思いをはせながら聴いてみることにしました。
果たしてポールはどんな音楽をファンに届けていたのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1. Lovely Linda
この曲は聴いたことがある・・と思ったらベスト盤にもあったことをすっかり忘れていた。
初のソロアルバムのスタートを飾るにふさわしい・・とも思えない、鼻歌のような小曲。

2. That Would Be Something(きっと何かが待っている)
これも同じフレーズを繰り返す実験曲。
シンバルは印象的だが、リハーサルっぽい感じがする。

3. Valentine Day
タイトルとあまり合っていない、やや辛口のブルース調インストナンバー。

4. Every Night
これもベスト盤収録だった。
おだやかなメロディで悪くない。
ベスト盤に入れたということは、ポール自身も気に入っていたのだろう。

5. Hot as Sun(燃ゆる太陽の如く)/Glasses
メドレーとなっているが、元は別々だった3曲をつなげたらしい。
いずれも短いのでどこが本来の切れ目なのかよくわからない。

6. Junk
この曲はかなり前から知っており、ビートルズを聴き始めた時に同時にテープに録音したことがある。
歌詞は物置に置かれたガラクタを擬人化しており、哀愁ただよう旋律とエンディングが好きだ。
ビートルズとしてインド滞在中に作った曲で、アンソロジーにも収録されている。

7. Man We Was Lonely(男はとっても寂しいもの)
リンダが参加した最初の曲。
あまり調和がとれている印象はないけど、ポールは楽しそうに歌っている。
ここまでの曲の中では一番丁寧に作り込まれているように聞こえる。

8. Oo You
ブルース基調のロック。
メロディはあまり明るくないのでそれほど楽しくはないが、ポールの趣味がにじみ出ている。

9. Momma Miss America
これもインストナンバー。
ドラムのサウンドは「Don't Pass Me By」なんかにも似ている。

10. Teddy Boy
アンソロジーにも収録されているので、メロディは覚えていた。
ベースが意外によく聞こえる。

11. Singalong Junk
「Junk」のインスト・カラオケ版。
ただし音や構成は全く同じではなく別テイクだそうだ。
確かにエンディングも違う。

12. Maybe I'm Amazed(恋することのもどかしさ)
唯一力のこもったシャウトを聴かせる、「Oh! Darling」にも似た完成度の高い曲である。
この後のアルバムにもこの路線の曲が時々出てくるので、ポールの得意技のひとつだろう。
フェードアウトで終わるのだが、もう少し豪快にラストを迎えてもいいように思う。
なおこの曲はアビー・ロードにあったEMIスタジオで録音されたそうだが、ポールは他のメンバーに知られないよう偽名を使ってスタジオ予約をしていたとのこと。
当時バンドはそこまでめんどくさい状況にあったということだが、悲しい話だ。

13. Kreen-Akrore
ラストはまたインストで、しかもプログレっぽい不思議なサウンドと構成。
動物の鳴き声や息づかいなどの効果音も入っている。
後半はこの効果音とドラムだけで、最後にまた思い出したようにギターが鳴る。
タイトルはブラジルのジャングルで暮らす原住民のことらしい。
うーん・・この曲はこのアルバムに必要だったのだろうか・・

聴き終えた。
知っている曲は「Junk」だけだと思っていたが、他にも聴いたことがある曲がいくつかあった。

全曲ポール作、演奏も全てポール。
このため作り込みは粗く、音もなんとなく曇っていてデモ盤みたいな感じがする。
曲のあちこちに末期ビートルズにもありそうな音が散りばめられている。
実際ビートルズ時代に作ったり録音しておいたりした曲もあるので、当然ではあるが。

全体的にはゆるく静かな調子の曲が多く、ビートルズ時代に得意としていたロックナンバーや物語調の楽しい楽曲はそれほど多くない。
インストが5曲もあり、やや間に合わせっぽい印象。
ラストの「Kreen-Akrore」もインストだがどこか散漫で、聴き終えた時の達成感は全然ない。
このあたりアルバムとしての組み立てとかバランスへの配慮は、ビートルズのアルバムとは比較にならないようだ。
ジョージ・マーティンもいないしね。

この後ポールはもう1枚のソロを経てウィングスを結成し、ワールドクラスのヒット曲や名盤を量産していくのである。
なのでこのソロアルバムは相対的に低い評価にならざるを得ないのが、多くのファンに共通することではないだろうか。
実際自分も繰り返し聴いてみてもそれほど大きな感動はわいてこない。

やはりこのアルバム、音楽として楽曲や歌声や演奏だけを純粋に鑑賞するのではなく、当時の状況や背景をふまえ、ポールの心情や決意、ジョンとの関係などをくみ取りながら聴くのが正しい姿勢であろう。
アルバムの付加価値もまさにそこにある。
全く同じ楽曲と構成だったとしても、もしビートルズが順調でその合間にポールが気まぐれに作ってみました的ソロアルバムだったら、セールスも評価も全然違ったものになっていたと思う。

ジャケットはリンダが撮影したドレンチェリーの写真。
ポールとリンダがカリブ海の島でバカンスを楽しんだ時、野鳥のために低い壁の上面にドレンチェリーを置いていたのを撮影した写真とのこと。
・・・ドレンチェリーって何?
調べたらお菓子の材料で、さくらんぼの種をとって砂糖漬けにして赤く着色したもの、だそうです。
あっそう・・・なんか醤油やイクラの宣伝ポスターみたいだと思ってたんですけど、そういうものだったんスね・・・

ということで、「McCartney」。
正直なところ音楽として聴いてよかった感はあまりありませんでした。
ただ周辺事情もいろいろ調べてみて聴いたことはよかったと思います。
解散前後のビートルズやポール・マッカートニーの一般教養として学習すべき教材であることは間違いありません。
残る70年代の作品も早いうちに学習しようと思います。

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コメント

こんばんは、JTです。

>ジョンはもしかするとどこかで「ポール、オレは抜けるけどバンドはよろしく頼む」と思っていたのではないだろうか。

新しい説ですね。確かにジョンなら「ビートルズは解散だ!」と言ってもおかしくないですが、「脱退」でしたから。

ちなみに「ゲットバックセッション」時に、ジョージが怒って一時的にビートルズを離れた事がありましたが、ジョンは「代わりにエリック・クラプトンを入れたらいいんじゃないか」、などと発言していました。(あのヤローは他のバンドに入りたい病だけじゃなかったんですね(笑))

>インストが5曲もあり、やや間に合わせっぽい印象。

確かに「レット・イット・ビー」の発売と自身の脱退宣言と合わせて、急いで作成した感はありますね。

楽曲をもっと揃えて、外部のメンバも入れて作ればよかったのですが。次作の「ラム」はその辺りの反省があったのか「マッカートニー」よりはかなり良い出来に仕上がっています。

なお、私のお気に入りのトラックは「Every Night」と「Junk」です。

投稿: JT | 2016.10.25 00:41

JTさん、コメントありがとうございます。

>新しい説ですね。確かにジョンなら「ビートルズは解散だ!」と言ってもおかしくないですが、「脱退」でしたから。

勝手な妄想ですけど、自分はなんかそんなように感じましたね。
ジョンはポールが脱退してソロアルバムまで作るとは思ってなかったんじゃないですかね。
「ポールならメンバーを変えてでもビートルズを続けるだろう」と思っていたのに、想定外の反応で修復できなくなったんじゃないかと・・

>ジョンは「代わりにエリック・クラプトンを入れたらいいんじゃないか」、などと発言していました。

そうなんですか?
クラプトンなら二つ返事ですぐ来ると思われてたんですかね・・?
もしかして、クラプトンは今でもまだストーンズ加入をあきらめていないとか・・

>次作の「ラム」はその辺りの反省があったのか「マッカートニー」よりはかなり良い出来に仕上がっています。

おお、そうですか。
それは期待できそうです。
知ってる曲もいくつかありますので、早めに学習しようと思います。

投稿: SYUNJI | 2016.10.25 22:02

SYUNJIさん、こんばんは。
>>「オマエ何言うてんねん、オレもうビートルズやめたいんや」

なんで大阪弁やねん(笑)

さて、私も聞き直しました。
私のように熱心なファンではなく代表的アルバムを浅~く聞いて
いる者ですと、いろいろある作品のワン・オブ・ゼム、のように
とらえることが出来ます。

発表当時はどうだったでしょうか。
ファンの多くは、「ロング&ワインディングロード」や
「アビーロード(の最後のメドレー)」、「ヘイ・ジュード」
的な曲が満載なものを期待していたのではないかと思います。

しかし、サウンドはかなり違うものになっていますね。
SYUNJIさんが書かれているように、驚きのインストや、
ジャムセッション風の曲がかえって目立ちます。

これは素人考えですが、ビートルズとの違いを出したかった
というより、「バンドの不在」のためではないかと
思われます。
「バンド・オン・ザ・ラン」や「ビーナス&マーズ」の
合間に聞くのがよいのかのしれません。

投稿: モンスリー | 2016.10.26 21:43

モンスリーさん、こんばんは。
「McCartney」、お持ちだったんですね。
やはりふつうは聴いてるもんですよね・・

>なんで大阪弁やねん(笑)

こういう時は大阪弁のほうが伝わるんじゃないかと思いまして・・
「ワシもうビートルズやめるんじゃ」でもいいかな。(←勝手にしろよ)

>いろいろある作品のワン・オブ・ゼム、のようにとらえることが出来ます。

そうですか・・こんなにトシ食ってから聴いてると、やはり余計な情報を入れすぎなんでしょうね。
たぶん子供の頃に聴いていれば、もっと純粋に定着していたと思います。

>ビートルズとの違いを出したかったというより、「バンドの不在」のためではないかと思われます。

うーん・・その通りですね。
実際ポールしか演奏していないそうですし、ジョージ・マーティンもフィル・スペクターもいないので、音はシンプルですね。
せめてリンゴだけでも参加してくれてたら、少しは違ったのかなぁ・・
残念ながら自分の場合、おそらく今後は「バンド・オン・ザ・ラン」や「ビーナス&マーズ」の合間にすらあまり入らない気がします。

投稿: SYUNJI | 2016.10.26 23:12

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