聴いてみた 第126回 ポール・マッカートニー&ウィングス
エンブレム問題で世間が揺れるさなか、怒濤の聴いてみた三連戦を敢行。
今回はBLOG歴11年半の中で最大級に大物の登場、ポール・マッカートニー&ウィングス。
もちろんBLOGで採り上げること自体初めてである。
実はポールもウィングスも例によって聴き方はとても雑で中途半端。(場内無反応)
ベスト盤も含め、聴いた実績は以下のとおり。
・Band on the Run
・Venus and Mars
・London Town
・Wings Greatest
・McCartney II
・Pipes Of Peace
・Give My Regards to Broad Street
・Unplugged (The Official Bootleg)
・All The Best
・Wingspan
公式オリジナルスタジオ盤は半分も聴いていない。
数だけで言えば今やストーンズのほうがずうっと鑑賞枚数は多いという状況。
あらためて振り返ると非常にズサンで危険な聴き方である。
洋楽に目覚めた時、ビートルズはすでに解散しており、ポールは「Goodnight Tonight」とか「Wonderful Christmas Time」なんかで柏村武昭と日本中の中学生を喜ばせていた。
家にはすでに「Venus and Mars」のLPがあり、姉は「Speed Of Sound」「Back To The Egg」なども聴いていたはずである。
自分が最初に聴いたポールのアルバムは、友人タケちゃんに借りた「McCartney II」だ。
テクノに傾倒したサウンドは正直好みのレベルとしては微妙だったが、殊勝にもタケちゃんの友情に感謝してダビングしたテープをありがたく繰り返し聴いていた。
「Pipes Of Peace」はFM番組「マイ・サウンド・グラフィティ」で全曲紹介していたものを録音。
「Broad Street」は貸しレコードである。
オリジナル盤でCDを持っているのは「London Town」だけだ。
この偏った中途半端な鑑賞履歴の要因は、やはりベスト盤の影響が大きい。
聴いてきた回数は圧倒的に「Wings Greatest」「Wingspan」が多く、「Broad Street」なんかもう25年くらい聴いてないと思う。
今回唐突にウィングスの初期作品を聴いてないことに不安を覚え、震える手で図書館から借りてきたのが「Red Rose Speedway」である。
「Red Rose Speedway」は72年発表。
前作「Wings Wild Life」の不評を払拭せんとリリースされたポール渾身の作品である。
レコード会社の命により、「ウィングス」ではなく「ポール・マッカートニー&ウィングス」名義での発売となった。
ウィングスだけだと売れない、という判断らしいが、当時のウィングスのブランドレベルはそんなもんだったんだろうか?
まあ理由はこれだけではないだろうけど、この判断も功を奏してか、めでたく全米1位を獲得し全英では5位を記録した。
72年と言えばビートルズ解散から2年しか経っておらず、ファンの間では当然再結成を望む声は多かったはずである。
しかしそんなファンの想いをよそにメンバーはそれぞれ個別に作品を発表し、評論家は目立つポールを好んで攻撃し、ファンはそれぞれの作品に喜んだり混乱したり再結成を夢見たり・・といった世相であったと思われる。
米英での評価や実績は高いようだが、日本ではポールやウィングスの「最高傑作!きぃいー!」と興奮する人もそんなにいない、という微妙な名盤とのこと。
果たしてどんなアルバムなのでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1.Big Barn Bed
やや辛口のサウンドで幕開け。
ポールらしいと言えばらしい音がする。
2.My Love
珠玉の名作、「My Love」。
この曲があるという理由だけでアルバムを買った人も多かったそうだ。
シンプルな構成だが、間奏のストリングスやギターの使い方は「Let It Be」「The Long And Winding Road」の流れをくむものだと思う。
評論家によって意見はまっぷたつらしく、「甘ったるいだけ」という厳しい評価もあるらしい。
3.Get On The Right Thing
おだやかに始まったかと思うと意外にノリノリ。
どこか「Oh! Darling」を思わせる。
4.One More Kiss
これもいかにもポールが好きそうなリズムとサウンドである。
童謡のような楽しそうな曲。
NHKの「みんなのうた」で流れても全く違和感がない。
5.Little Lamb Dragonfly
ゆったりとした流れに乗せて歌うポール、バックにリンダのコーラス、様々な楽器の音。
ウィングスの完成されたスタイルがここにある気がする。
ソロになった直後に作られた曲で、歌詞はジョンに向けて書かれたものという説があるらしい。
6.Single Pigeon
ピアノの弾き語り、終盤はいろいろ重なってくる短い曲。
7.When The Night
ややブルース調の曲。
このアルバムには珍しく、後半ポールがシャウト。
8.Loup(1st Indian On The Moon)
発表当時ポールは「アルバムにはピンク・フロイドのような曲もある」と発言したそうだが、そのフロイド調とはこの曲のことらしい。
確かにややプログレっぽく聞こえるインストである。
9.Medley
a) Hold Me Tight
b) Lazy Dynamite
c) Hands Of Love
d) Power Cut
ポールお得意のメドレーだが、なぜメドレーにしたんだろう?
どの曲も楽しそうで、雰囲気にそれほど違いはないように思う。
「Power Cut」のイントロの音は、この後のアルバムにある「Rock Show」のエンディングに通じると感じる。
LPはここで終わりだが、CDでは以下のボーナストラックがある。
10.I Lie Around
ボーカルはデニー・レイン。
サウンドはモロにポールで、歪んだギターがいい感じである。
11 Country Dreamer
カントリー調のハイトーンな曲。
終始コーラスが当てられ、カーペンターズのようなサウンドになっている。
これはなかなかいい。
12.The Mess
ラストはライブ。
ウィングスの歴史上、唯一のライブテイクのみでの発表曲とのこと。
オランダ公演の音源だそうだ。
曲調がいろいろ変わるところはその後のポールの作風を思わせる気もするが、なんとなくツギハギな印象。
今回聴いた盤は旧版のようで、新版にはボーナストラックとして「C Moon」「Hi Hi Hi」も収録されている。
うーん・・これは収録してあったほうが良かったなぁ。
聴き終えた。
正直、全体としては今ひとつ物足りないという感じ。
ロック・バラード・カントリー・プログレといった各ジャンルを横断収録するお徳用詰め合わせなのだが、もうひとつくらいヒット曲があれば良かったのに・・と勝手なことを考えた。
この後ウィングスは「Band on the Run」「Venus And Mars」という名盤を発表しているのだが、申し訳ないがこれらと比較しても差ははっきり感じる。
「My Love」という名曲はあるが、もしそれすら収録されていなかったら・・と思うと、やはり評価としては厳しいところだと思う。
逆さに言うと「My Love」を頼りに聴いてみたのだ。
全曲知らないアルバムだったら、聴くのにもっと気合いが必要だったはずである。(小心者)
ビートルズ解散後、メンバーは今思うとわりと早くそれぞれの活動を開始している。
中でもポールは一番精力的に活動してきたのだが、ビートルズと同等かそれ以上のレベルの作品を求められるプレッシャーも相当なものだったと思う。
個人的には、他の3人はあまりそういうことを気にせず活動していたように思うのだが・・
で、ポールはソロやウィングスでアルバムを次々に発表するものの、やはり評判はなかなか上がらず、特に音楽的には素人のリンダをバンドに入れてしまったことは当然マイナス評価にしかならなかったであろう。
それでもバンドのプロモーションのため地道にヨーロッパなどでライブも行って・・といった状況の中で作られたのが「Red Rose Speedway」であった。
なのでネットでは「発展途上」という暖かい評価が多いようだが、この点は同感である。
それでもがっかりとか不満とか拒絶といった感覚はない。
このあたりはさすがはポールである。
聴いてもいない状態で言うのも失礼だけど、たぶんジョンやジョージの作品だと、大幅に困惑するものがきっとありそうな予感はするのだ。
評判が悪かったとされるリンダの歌や演奏も、特に気になるものではなかった。
ジャケットはポールの作品の中では最も印象的な絵ではないだろうか。
バラが顔半分を隠していてもポール・マッカートニーだとわかるし、口にくわえた真っ赤なバラと背景のハーレーのエンジンという硬軟の対比が鮮烈なアートだ。
なお撮影したのはリンダだそうです。
ジャケットのハデさに中身が追いついていないというキツイ評価もあるようだが・・
というわけで、ようやく聴いてみました「Red Rose Speedway」。
物足りないという感覚ではありましたが、聴いて良かったと思います。
ポールのソロやウィングスについては全盤制覇の意欲や野望はなく、ベスト盤を繰り返し聴いて満足してきたが、最近少しずつ危機感の予告編みたいなかすかな感情は芽生えつつある。(遅い)
なので今さらだが「McCartney」「Ram」「Wings Wild Life」「Speed Of Sound」「Back To The Egg」の5枚をじわじわと聴いていこうと思います。
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コメント
こんばんは、JTです。
「Red Rose Speedway」、ポールの70年代のアルバムの中で最も聞く頻度が少ないアルバムです。かつ70年代では一番最後に聞いたアルバムでもあります。
まあ、SYUNJIさんの感想通り、ぼんやりしたアルバムですね。大甘な「My Love」のせいなのでしょうか。1曲目は結構気に入っていますが。ジャケットも好みでないし。
とまあ、私にとっていいとこなし、って感じですねぇ。
>なので今さらだが「McCartney」「Ram」「Wings Wild Life」「Speed Of Sound」「Back To The Egg」の5枚をじわじわと聴いていこうと思います。
おお、この5枚は世間の評価はともかく、大好きなアルバムなんで、コメントも滑らかになります(笑)。
>ウィングスの歴史上、唯一のライブテイクのみでの発表曲とのこと。
うう、すんまへん、「Wings Over America」というライブ盤収録の「Soily」という曲もライブテイクのみなんです。
投稿: JT | 2015.08.31 01:14
SYUNJIさん、こんばんは。
早速ですが、
>>ジャケットのハデさに中身が追いついていないというキツイ評価
「ジャケ買い」という言葉がありますが、このアルバムは私にとって
「ジャケ買わない」
になります。ですので一度も聞いたことがありません。
「Band On The Run」や「Venus and Mars」はよいジャケなんですが。
SYUNJIさんの記事を拝見して、「My Love」という代表曲が
このアルバム収録曲なのを初めて知りました。
「Hi Hi Hi」はボートラ扱いなんですね。こういうロック曲が
多く収録されているとうれしいのですが、さすがマッカートニー
といいますか、懐が深すぎるといいますか、いろんな曲が収録
されているようですね。
>>ビートルズと同等かそれ以上のレベルの作品を求められる
>>プレッシャーも相当なものだったと思う。
なるほど~。
私としましては、「Venus and Mars」以上の出来を求められる
マッカートニーは大変だったろうなあと思っております(^^;)
投稿: モンスリー | 2015.08.31 20:25
JTさん、コメントありがとうございます。
>まあ、SYUNJIさんの感想通り、ぼんやりしたアルバムですね。大甘な「My Love」のせいなのでしょうか。1曲目は結構気に入っていますが。ジャケットも好みでないし。
そうですねぇ・・「My Love」は何度も聴いてきた名曲なので評価はしたいですが、アルバム全体だとなんとなくぼんやりはしてる気がしました。
ジャケットは結構好きですが・・
>おお、この5枚は世間の評価はともかく、大好きなアルバムなんで、コメントも滑らかになります(笑)。
おお、そうでしたか。
心強いです。(なんだそれ)
「Speed Of Sound」は子供の頃に姉が聴いていたので、聴けば思い出せる曲がありそうな気がします。
「Silly Love Songs」も収録されてますよね。
>「Wings Over America」というライブ盤収録の「Soily」という曲もライブテイクのみなんです。
あっ、すいません、そうでしたか。
調べてみたら確かに「Soily」もスタジオ録音版はないですね。
「Wings Over America」も姉がテープで聴いていたなぁ・・
これも聴いてみないといけませんね。
投稿: SYUNJI | 2015.09.03 21:14
モンスリーさん、こんばんは。
>ですので一度も聞いたことがありません。
あ、そうでしたか。
「Venus and Mars」はLPは姉が処分しましたが、付属のステッカーやシール類は自分の手元にあります。
このジャケットはいいですね。
>「Hi Hi Hi」はボートラ扱いなんですね。
そうです、今回聴いたCDには収録されていませんでした。
この曲はベスト盤収録だったのでよく聴いてはいました。
歌詞がヒワイという理由でBBCでは放送禁止だったそうですが・・
>私としましては、「Venus and Mars」以上の出来を求められるマッカートニーは大変だったろうなあと思っております(^^;)
うーん・・・確かにウィングスとしてはそのプレッシャーもあったかもしれませんね。
数年前に「London Town」を初めて聴いてみたのですが、タイトル曲は大好きですがアルバムとしてはやはり「Venus and Mars」には勝てないかなぁと感じました。
いずれにしても、挙げた5枚は世界遺産のような感覚で聴いていこうかと思っています。
投稿: SYUNJI | 2015.09.03 21:32